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10 国王視点
しおりを挟む第一王子が連れていかれた後の謁見の間でのこと。
謁見の間にいるのは国王と王妃、第二側妃の三人だけだ。
「はぁ…」
「陛下お疲れ様でした」
「ああ、そなたには迷惑をかけるな」
「いえ、お気になさらないでください。それに王妃様もお疲れ様でした」
「ええ、ありがとう」
王妃と第二側妃の仲は良好だ。お互いがお互いの役割を理解し今まで私を支えてきてくれた。本来なら第二側妃が第一側妃として嫁いでくるはずだったのだが、当時災害による支援をグラシオン国から受けていたことから廃妃を第一側妃として受け入れるしかなかった。
「…さてこれからのことだが第二、いやもう第一側妃だな。第二王子を王太子に任命することは決定なのだが婚約者をどうするればいいか…」
「陛下。婚約者の件ですが、もしかしたらいつかこんなことがあるかもしれないと思い、勝手ではありますがあの者の婚約者選定で次点だった令嬢をこちらで教育して参りました」
「…ほう。さすがだな。して進捗状況は?」
「はい。第二王子に充てられた予算から教師を雇わせていただきました。もちろんルナリア嬢には及びませんが、彼女も王妃になるに十分な実力を持っていますわ」
「ではその令嬢を王子の婚約者に?」
「ええ、そのつもりです」
「分かった。詳しいことは後程決めよう」
「かしこまりました」
優秀な第二側妃のお陰で婚約者の件はどうにかなりそうだ。
そして次にしなければならないことは…
「それとオーガスト家に手紙を出さねばならぬな」
「…そうですね。婚約者の件よりそちらを優先した方がよろしいかと」
「ああ。あの家と対立することは避けたいからな。あの家が本気を出せば我らなど簡単に潰されてしまうからな」
「ええ。味方でしたら心強いですが敵となれば容赦せずに叩き潰しに来るでしょう」
二人が言うようにオーガスト辺境伯家が本気を出せば王家など容易に潰されてしまうだろう。それだけの力をあの家は持っているのだ。味方である内は国境を護る者として大変心強いのだが。
「オーガスト辺境伯は最強の剣士と名高いからな。それに嫡男の剣の腕も辺境伯譲りで素晴らしいと耳にしたことがある。それに辺境伯夫人は王妃選定で次点だったな」
「はい。最終的には私が王妃となりましたが、次点であった彼女との差はほとんどありませんでした。今も現役で活躍している彼女はあの頃より格段に強くなっているはずです」
「そしてそんな一家に鍛えられている兵士達の実力も騎士団と遜色ないでしょう」
「ああ。そこにルナリア嬢まで出てきてしまえば我らの敗北は必至。ルナリア嬢の強さは規格外だからな」
「ええ。私から見ても彼女はずば抜けていました。私は彼女に勝てるイメージを一度も描くことができませんでしたから」
「王妃様がそこまで仰るなんてルナリア嬢の実力は本物なのですね…」
王妃の言う通りルナリア嬢はずば抜けて強い。騎士団でも歯が立たないだろうし、王妃が勝てないとなれば誰もルナリア嬢を止めることなどできないだろう。
「急ぎオーガスト家に遣いを出さなければな。当然今回の婚約破棄については何らお咎めは無しだ。むしろあやつのためにルナリア嬢の時間を無駄にしてしまったことを謝罪しなければ」
「それがよろしいかと」
「さて、これから忙しくなるだろう。二人とも大変だろうがよろしく頼むぞ」
「はい」
「ええ」
そうして私達はこの事態を収拾すべく動き始めるのだった。
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