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8 メイビス視点
しおりを挟む「この大馬鹿者がっ!」
ここは城の謁見の間。この場には俺の他に父と母、そして王妃と第二側妃がいる。
父は玉座に座り王妃はその後ろに控えて立っており、第二側妃は父の隣の席に座っている。なぜか俺と母は両手を縛られ跪かされているというのにだ。
俺はセントミル国の第一王子、そしていずれこの国の王となる男だ。それなのになぜ俺は今、父である国王から怒鳴られているのか意味が分からない。今日の卒業パーティーであの女と婚約破棄をし、可憐なエリンとの婚約を発表できていい気分だったのに父のせいで台無しである。あんな女は王妃に相応しくないのだからむしろ褒めて欲しいくらいなのになぜあんなにも怒っているのだろうか。
「父上!あの女は次期国王である私に相応しくありません!だから私に相応しいエリンを選んだだけのことです!一体何をそんなに怒っているのですか」
「…お前はそれを本気で言っているのか?」
「本気も何も私は次期国王として当然のことをしたまでです!」
「はぁ…。馬鹿だ馬鹿だと思ってはいたがここまでとはな」
「なっ!」
なぜ俺が馬鹿だと言われなければならないのか。王妃とは俺に愛される者がなるべきだと母から教えられてきたのだから俺は間違っていないのはずなのに。
「俺は教わった通りに愛する者を王妃に選んだだけです!それの何がいけないのですか!」
「答えは分かりきっているが一応確認しよう。それは一体誰から教わったんだ?」
「母上です!」
「ほう。では聞くがお前は王太子教育を受けていたはずだ。そこで王妃に選ばれる者はどういう者かを最初に学んでいるはずなのだが、それは覚えているのか?」
「っ!」
そう父に問われたが全く記憶にない。
(だって俺が王太子になるのは決まっていることなのだから、わざわざ面倒な勉強を真面目にする必要なんてないじゃないか!)
「その様子だと記憶の欠片も残っていないようだな。なぁ第一側妃よ。そなたにはこちらに嫁いでくる際に散々説明したはずだ。それなのにこれはどういうことなのだ?」
「ひっ!そ、それはっ…」
「グラシオンで問題児だったそなたを、貰い手がいないからどうかとそなたの父に頼まれて娶ったのがそもそもの間違いだったな。あの頃はグラシオンから多額の援助を受けていた手前受け入れるしかなかったが今や立場は逆なのは知っていたか?だからもうそなたを受け入れる必要はない!よってこの混乱を招いた元凶である第一側妃を廃妃とし、グラシオンに送り返すこととする!」
「へ、陛下!どうかお許しくださいっ!」
「今さら謝っても遅いのだ!衛兵!廃妃を連れていけ!」
「は、母上!?」
母上は衛兵に引きずられるように連れていかれてしまった。なぜ母上が廃妃にされ国から追い出されなければならないのか全く理解できない。
(…俺はそれほどまでのことをしてしまったのか?)
ここにきて何かがまずかったことに俺は気づき始めたが、それも今さらなのであった。
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