私に無関心の宰相様と結婚しました~無関心だと思っていたら、どうやら違うようです

Na20

文字の大きさ
上 下
9 / 12

7

しおりを挟む

…とそんなことを思い出しながら私は今王城のとある部屋に不法侵入している。
 "透過"の魔法を使っているので気づかれることはないし、そもそもこの部屋の主は疲れているだろうから魔法を使わなくても気配さえ消せば気づかれないだろう。



 --ドンッ!

「!」

「くそっ、どうして私はまだここにいるんだ!」


 部屋の主が苛立たし気に机を叩いた音に驚いてしまった。
 声は出さないように気をつけなければ。

 部屋の主の独り言は続く。


「本当なら今頃愛しのオルレシアと夜を過ごしていたはずなのに!なんだって結婚式の日まで私に仕事を回してくるんだ!宰相なんてなりたくなかったしなんなら今すぐ辞めてやりたい!…でもそうしたらオルレシアにダメな男と思われてしまうかもしれない。っ、それはダメだ!八歳も歳上の私なんかと結婚してくれたんだ。オルレシアには少しでも格好いいと思われたい!」


 この部屋の主であるレナルド・ミラスティの独り言はまだ続く。


「…でもだからって大臣達は私が若造だからとわざと仕事を押し付けてくるんだっ!侯爵家の私でも断るのが難しい奴らばっかりなのが腹立たしい!しかもかなり重要な仕事を押し付けてくるなんて頭がおかしいんじゃないか?私も沢山の仕事を抱えてるっていうのに…!断れない自分も情けないがやらないと困る人が出てきてしまうから結局私が毎日夜遅くまで仕事するしかないんだよな…。はぁ…オルレシアに会いたい…」

「……」


 私が結婚することに不安を抱いていなかった理由がこれだ。
 どうやら私はレナルド様に愛されているようなのだ。
 手紙や二人で出掛けているときにはレナルド様の気持ちに気づかなかったが、婚約してから三年が経った頃に交流が減ったことに不安を抱いた私は今と同じように部屋に侵入してレナルド様を調べていたのだ。…公爵令嬢としてはとても褒められたことではないが私の人生がかかっているのだ。なりふり構ってはいられなかった。

 調べた結果は大臣やラシ兄様に仕事を押し付けられ、毎日まともに寝ることもできずに仕事をしていたことにより私との交流が減ってしまっていたのだ。
 宰相なのだから断ればいいのにと思ったが仕事を押し付けてくる相手はレナルド様より歳上でかつ格上ばかりだった。それに王太子であるラシ兄様も。
 それにレナルド様は責任感がとても強い人なのだろう。自分の仕事も押し付けられた仕事も手を抜くことはなかった。


 しかしこのままでは小説どおりになってしまうかもしれない。でも今の私はただの婚約者なのでレナルド様の仕事に口を出すことはできない。
 どうしたものかと考えて出した答えが、結婚して晴れてレナルド様の妻になったらレナルド様の仕事を減らす手伝いをすること。(もちろん秘密裏に)
 そして仕事が減ればレナルド様の負担は減るし私との時間ができる。
 そうすれば仲良し夫婦も夢ではないはずだ。

 そうと決めた私は結婚式までに仕事を押し付けてくる輩の調査をしていたのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

地味令嬢を馬鹿にした婚約者が、私の正体を知って土下座してきました

くも
恋愛
 王都の社交界で、ひとつの事件が起こった。  貴族令嬢たちが集う華やかな夜会の最中、私――セシリア・エヴァンストンは、婚約者であるエドワード・グラハム侯爵に、皆の前で婚約破棄を告げられたのだ。 「セシリア、お前との婚約は破棄する。お前のような地味でつまらない女と結婚するのはごめんだ」  会場がざわめく。貴族たちは興味深そうにこちらを見ていた。私が普段から控えめな性格だったせいか、同情する者は少ない。むしろ、面白がっている者ばかりだった。

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

結婚式をボイコットした王女

椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。 しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。 ※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※ 1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。 1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)

処理中です...