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しおりを挟むこの世界には魔力が存在する。
誰もが魔力を宿して生まれてくるのだが、魔力を持っていても魔法が使えるわけではない。ほとんどの人は魔法を使うことなく生涯を終える。
ではその魔力は何にも使えないのかと言えばそんなことはない。魔法は使えずとも魔道具に魔力を注ぐことはできるのだ。なので日常の生活にも魔道具が根付いている。お湯が出る魔道具や明かりが灯る魔道具などだ。貴族でも平民でも皆が魔道具を使える世界になっている。
ただそんな中でも魔法を使える人はほんの一握りだが存在している。今現在は片手で収まる人数ではあるが。
魔法を使える人のことは敬意を込めて『魔法使い様』と呼ぶ。
魔法使いになれれば地位も名誉も財産も全てを手に入れることができるみんなの憧れなのだ。だが魔法使いになれる条件は未だに不明なのでこれは運としか言いようがない。
そして私もその運が味方してくれたのか、はたまた前世の記憶を思い出したからなのか魔法が使えるようになっていた。
今まではその他大勢と同じで魔道具に魔力を注げるだけだったのだが、前世の記憶を思い出してからなんとなく、使えないかなーっ!と想像してみたらできてしまった。
でも『魔法使い様』なんて崇め称えられたいわけではないので魔法が使えるようになったことは秘密にするつもりだ。
私がこれからやるべきことはまず婚約者であるレナルド・ミラスティの調査だ。
小説では妻や娘に無関心だった人間だが、実際に自分の目で確かめてみたいと思ったのだ。自分の目で確かめてこの人とは幸せな結婚ができないと思えば婚約破棄か婚約解消にしてもらうように動く予定だ。逆に幸せな結婚ができそうと思えばこのままこの婚約は継続したいと思っている。
我が家は公爵家だし、父も母もオルレシアを大切にしてくれている。頼めばオルレシアが望むようにしてくれるはずだ。
そして私は婚約者の姿を見つめている。
漆黒の髪に深い海のような青い瞳、スラッとしているが筋肉も程よく付いた身体の持ち主であることが伺える。
まぁ一言で言えばイケメンだ。
本当にどうしてこんな素敵な人が今まで婚約者を作らなかったのか不思議でならない。
(もしかしたら性格に難ありなのかしら?)
見た目でカバーできないほど性格が悪い可能性もあるので注意深く観察する必要がありそうだ。
私が今いるのは彼の勤め先である王城だ。
彼はミラスティ侯爵家を継ぐまでは王城で働く予定らしいが、非常に優秀だそうですでに次の宰相にと打診が来ているのだと父が教えてくれた。
小説でも悪役令嬢であるルナリアの父レナルドは宰相だったのでその通りになるのだろう。
仕事振りを観察していたが私でも分かるほど仕事が早い。それに同僚との仲も悪くなさそうだ。
あまり褒められたことではないのは分かっているが仕事終わりの彼も観察させてもらった。
性格が悪いわけでもなさそうなのでもしかしたら身分差で結ばれない恋人がいるのではと思ったがそれもなさそうだ。
調査した結果、数日彼を観察したが評判通りのイケメンであることが確認できただけなのだった。
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