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しおりを挟む父の話を聞き終わったが、私は呆れるしかなかった。正直なところ、理由があまりにもくだらなすぎて怒る気力すらわかない。
(母の望みが私の幸せ?馬鹿馬鹿しいにも程があるでしょ)
確かに国一番の存在になることが幸せだと思う人もいるだろう。だけど世の中のすべての人がそう思うわけではないし、私が母から生まれたからといって母と同じ想いを抱いているわけではない。
「まさかそんな理由で私は王太子殿下の婚約者にされたのですね。てっきりお父様が王家との繋がりを持ちたいからなのかと思っていました。もう少し早く、いえ、最初に私の気持ちを確認してくれてさえいれば……」
「……すまなかった」
「謝罪は結構です。謝られたところで今までのことがなかったことにはなりませんから」
「……そうだな」
謝罪されたからと言って今までの時間が戻ってくるわけでもないし、今さら仲のいい父娘にはなれない。
「ただこれだけは覚えておいてください。私とお母様はまったく別の人間です。そして私には私の考えや気持ちがあるのだと」
「っ!ああ、どうして私はそんな当たり前のことを……」
父は手のひらで自身の顔を押さえ小さく震えている。手の甲には涙だろうか、水滴がいくつも流れていたのだった。
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