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しおりを挟む嫌な予感がひしひしとするが、ここで話をやめるわけにはいかない。
「……一体どんな約束をしたのかしら?」
「うーん、まだみんなには秘密だって言われたけど、リリアナさんにならいいのかなぁ?」
「……いいんじゃない?」
「!そうだよね!実はね、シェザくんが私をお妃様にしてくれるんだって!」
「……は?」
意味不明な発言に私は淑女にあるまじき以下略。
(この子は何を言っているの?)
思考が停止しかけたが、この発言の真意を正確に理解しなければまずいと私の頭が警鐘を鳴らしていた。
「……王太子殿下があなたを妃にすると言ったのかしら?」
「そうよ!なんでもお妃様同士は絶対にお友達になれるって教えてくれたの!だから私がシェザくんのお妃様になれば、同じお妃様になるリリアナさんとお友達になれるって!」
「……」
「大好きなシェザくんのお嫁さんになれて、憧れのリリアナさんとお友達になれるなんて、わたし幸せっ!」
頭が痛くなってきた。アンバー男爵令嬢の言葉が真実であれば、おそらくシェザート殿下は彼女を側妃として迎え入れるつもりだ。馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、まさかここまでとは思いもしなかった。
そしてアンバー男爵令嬢と会話してわかったことは、彼女が何も考えていないということ。
彼女からしてみれば、たまたまシェザート殿下に恋をして、たまたま相手が王太子で、そしてたまたま恋人の婚約者が仲良くなりたいと思っていた私だっただけのこと。
ただ王妃と側妃は間違っても友達にはなれない。シェザート殿下がアンバー男爵令嬢を側妃にしたいがために言った嘘だと思うが、きちんと教育を受けてきた貴族ならそれが嘘だとすぐにわかるはず。それなのに妃になれると喜んでいる彼女のお花畑思考に私は身震いした。
「……そう。あ、ごめんなさい。私、先生に呼ばれていてもう行かないといけないの」
「あ!そうだったんだ!引き留めちゃってごめんなさい」
「いいえ、気にしないで。それじゃあ」
「はい!」
私は淑女らしからぬ速度で一心不乱に廊下を歩いた。あの場からは笑顔で去ったが、頭の中はは警鐘が鳴りっぱなしだ。
(まずい!まずいわ!このままだと馬鹿とお花畑に巻き込まれる未来しか見えない!そんなの御免よ!)
今まではなんとか我慢してきたが、もう無理だ。このままいけば確実に私の未来はまっくらだろう。こんなところでこれから先、一生を過ごすなど考えたくもない。
(家同士の契約なんて私の知ったことじゃないわ!解消は無理でもなんとかして婚約破棄しないと……!)
この日私は必ず婚約破棄すると強く決意したのだった。
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