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25 国民視点

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 帝国中に衝撃的な情報が駆け巡った。

 その情報というのが皇帝陛下と皇后陛下が何者かに毒を盛られるという事件が起こり、そしてその何者かというのが第一皇妃と宰相であるというあまりにも衝撃的な内容であった。

 いまだ国民には皇帝陛下と皇后陛下の無事は伝わってこない。これからこの国はどうなってしまうのかと国中が不安になっていたある日、七日後に皇室から声明が出されるとの情報が流れてきたのだ。

 国民は戸惑った。

 果たしてその声明は帝国にとって良いことと悪いことのどちらなのだろうかと。




 ◇◇◇



 そして七日後。
 皇室の声明を聴こうと皇城の前にはたくさんの国民が集まっていた。一体どんな声明なのだろうか。あちらこちらでそのような話がされていると、突然誰かが城のバルコニーを指差し叫んだ。


「おい、見ろ!誰か出てきたぞ!」

「皇帝陛下は無事なの?」

「皇后陛下は?」

「双子の皇子様と皇女様は?」


 国民たちが次々と叫ぶ。そんな中最初に城から出てきたのは…


「アンゼリーヌ第二皇女様だ!」



 ――ワァーー!


 そしてアンゼリーヌ第二皇女様の後から皇帝陛下と皇后陛下、それにレイモンド皇子様とカトリーナ皇様が姿を現した。


「みんなご無事だ!」

「あぁよかった!」

「皇子様と皇女様も大きくなられて!」



 国民たちが全員の無事に安堵しあちこちから歓声が聞こえる。皇族たちもその歓声に応えるように国民に手を振った。

 しばらくして落ち着いた頃を見計らい皇帝陛下が口を開いた。


「皆のもの!心配をかけた。だが私も皇后もこうして無事である。そして今日は私から皆に伝えることがある!」


 一体どんなことが皇帝陛下の口から語られるのだろうか。国民は固唾を飲んで見守っている。

 そして皇帝陛下が宣言した。


「本日をもって私は皇帝の座を退く!」



 ――ザワザワ…


 国民たちに衝撃が走った。数日前の情報も衝撃的であったが、今の皇帝陛下の発言はそれを上回るものだった。


「そして!私の後を継ぐ新たな皇帝は、第二皇女であるアンゼリーヌだ!」



 ――ワァァーーー!


 皇族方が城から現れた時よりも大きな歓声が上がった。それもそうだ。国民は次代の皇帝にマリアンヌ第一皇女様ではなくアンゼリーヌ第二皇女様を望んでいたのだから。

 なかなか鳴り止まぬ歓声の中、アンゼリーヌ第二皇女様が口を開いた。


「みなさん」


 アンゼリーヌ第二皇女様は叫んでいるわけでもないのに不思議と場が静まった。凛とした声が響き渡る。


「本日より私、アンゼリーヌ・ド・ラスティアがガルトン・ド・ラスティアの後を継ぎ皇帝となります。私は今日十八歳の誕生日を迎えました。十八歳とまだまだ若輩の身ですが、この国を想う気持ちは誰にも負けません。父から受け継いだこの国を今よりもっと豊かで平和な国にするために尽力することを、私は今ここでみなさんの前で誓います!」




 ――ウワァァァァァーー!


「新皇帝陛下万歳!」

「ラスティア帝国万歳!」

「アンゼリーヌ皇帝陛下ー!」


 アンゼリーヌ皇帝陛下が微笑みながら国民たちに手を振っている。その後ろで前皇帝陛下と皇后陛下、双子の皇子様と皇女様も手を振っていた。


 こうしてアンゼリーヌ皇帝陛下の十八歳の誕生日は、ラスティア帝国に住む人たちにとって忘れられない日となったのである。

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