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19 リオンハルト視点
しおりを挟む今俺は悩んでいる。いや、ずっと前から悩んでいるが正しいか。
俺の悩みはヴィーに俺の気持ちが全く伝わらないことだ。家族やケビンとノーラにはバレバレだというのに。それになぜか王妃様にも。
俺の伝え方が悪いのは分かっている。でも彼女を前にするとどうしてもうまく伝えることができない。彼女が色恋に全く興味がないのを知っているから余計だ。彼女が興味があるのはお金に関係あることばかり。それでも俺は彼女が好きだ。
今思えば俺の一目惚れだったのだろう。ヴィーは幼い頃から大人びていてしっかりしている子だった。そんな彼女を笑わせるのがあの頃の俺の楽しみであったのを今でも覚えている。
しかし幼い頃は自分の淡い恋心に気づかなかったが、彼女の両親が亡くなり疎遠になったことで恋心に気がついたのだ。
ヴィーに会えなくなって数年後のある日、突然彼女から会って話がしたいと手紙が来た。俺は彼女からの手紙に舞い上がっていたが、久しぶりに会った彼女の姿にとても驚いた。
数年振りに会った彼女は昔の面影を残しつつ美しく成長していたのだが、ずいぶんと痩せていた。それに手も肌も荒れており、目の下には隈ができていた。服もなぜか使用人のような服を着ていたのだ。彼女から両親が亡くなってからこれまでの話を聞き、驚くと同時に自分の無力さを痛感させられることになる。
そして何とか隙を見て家から出てきた彼女からお願いされたのだ。商会を立ち上げたいから手伝ってほしいと。
当時俺は十八歳でヴィーは十六歳。まだ成人を迎えていない彼女が商会を立ち上げるのは難しい。両親がいれば簡単にできるのだが、両親を亡くし彼女の親代わりは浪費癖のある叔父夫婦。とても頼める相手ではない。だから俺を頼ったのだ。
俺は当然彼女の頼みを引き受けることにした。これで彼女の役に立てると喜んでいた矢先、彼女から聞かされた話に俺は頭を殴られたような衝撃を受けた。
「リオ兄様が引き受けてくれて助かったわ」
「まぁ、ヴィーの頼みだからな」
「ふふ、ありがとう。これでラシェル侯爵家に嫁いでも稼げるようになるわ」
「…は?と、嫁ぐって、一体誰が」
「?当然私に決まっているじゃない。まぁ嫁ぐというよりも売られるって言い方が正しいけどね」
ヴィーはあっけらかんとしていたが、俺はそれどころではなかった。久しぶりに会うことができた好きな女の子が、他の男の元に嫁いでしまうなんてとてもじゃないが受け入れられるわけもなく。しかしそんな格好悪い姿を彼女に見られたくもないので、なんとか平常心を装ったのだった。
そしてその後ベル商会を立ち上げてすぐにヴィーはラシェル侯爵家に嫁いでいった。俺は想いを伝えることなく失恋してしまったのだ。
しばらく立ち直れそうにないと思っていたところに嫁いだばかりのヴィーから手紙が届いた。俺は急ぎその手紙を開け手紙の内容に歓喜したのだった。
そして誓った。
自分がヴィーを幸せにするのだと。
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