【完結】白い結婚なのでさっさとこの家から出ていきます~私の人生本番は離婚から。しっかり稼ぎたいと思います~

Na20

文字の大きさ
上 下
18 / 29

17

しおりを挟む

 元ラシェル侯爵邸の敷地にできた工房は無事に稼働を始めていた。発売から一年以上経つが化粧水の人気は衰えることなく今も売れ続けており、さらに今回の工房の稼働と合わせて貴族向けより安価な平民向けの化粧水の販売を始めた。売り上げは好調である。

 化粧水のレシピに関しては工房の責任者であるマークしか知らない。まだまだ売れ続けるであろう化粧水のレシピは知る人が少ないに越したことはないからだ。ただマークの負担は重くなるが、本人はその分給金がいいから問題ないと言ってくれている。やはりお金は偉大だ。

 そして私は化粧水の生産をしなくなったことによりできた時間で次の商品を開発した。それがシャンプーとリンスだ。
 この世界には固形の石鹸しかなく、洗うと髪が軋んで仕方がなかった。自分自身もそれがかなりストレスだったので記憶を思い出してからは手に入る材料で手作りシャンプーを作って使っていたのだが、ある日ラフィーネ様に聞かれたのだ。


「ヴァイオレットちゃん。前から気になっていたんだけど、髪の毛って何か特別なお手入れをしてるの?」

「いいえ?特に何もしていませんよ」

「本当?ヴァイオレットちゃんの髪の毛ってツヤツヤのサラサラじゃない?だから何かしてるんじゃないかってクリスティーナちゃんと話していたのよ」

「うーん…毎日シャンプーで髪を洗って、リンスをつけているくらいですかね。でもこれくらい普通…」

「しゃんぷー?りんす?」

「あ」


 このやり取りで私はシャンプーとリンスがこの世界にないものだということをようやく思い出したのだ。髪を洗う時に当たり前のように使っていたので忘れていた。そして気づいたと同時にこれは売れるのではと頭の中で計算を始める私であったのだ。

 その後シャンプーとリンスもたちまち大人気商品となった。価格が安価なことと香りが何種類もあり、女性たちの心をがっちり掴むことができた。今社交界はあえて髪を結わないのが流行りになっているくらいだ。みなツヤツヤサラサラの髪を自慢しているのだとラフィーネ様が教えてくれた。



 ◇◇◇



 そんなある日グレイル公爵家の夕食に呼ばれていた時のこと。食後のお茶を飲んでいるとベルトラン様から話しかけられた。


「ヴァイオレット、少し話があるんだがいいかい?」

「はい、もちろんです」


 私は手に持っていたカップを置きベルトラン様の話に耳を傾けた。改めて話とはなんだろうか。


「ヴァイオレットは王妃様がベル商会の商品を大変気に入っているのは知っているだろう?」

「はい。王妃様に愛用いただけているなんて大変ありがたいことです」

「そうだな。それでだな王妃様がぜひともヴァイオレットに会いたいとおっしゃってね」

「え!?私にですか?」

「ああ。先日王妃様にお会いした際に、商品の開発者に直接お礼を言いたいから会わせてほしいと言われたんだ」

「お礼だなんて…」

「ここだけの話、どうやら化粧水やシャンプーのおかげで陛下との仲がさらに深まったそうだよ」

「なるほど…」


 直接お会いしたことはないが王妃様は大変美しいと聞く。その王妃様が化粧水やシャンプーによってさらに美しさに磨きがかかったのなら、夫である国王様との仲が深まるのは当然だろう。そういうベルトラン様とラフィーネ様、アル兄様とクリス姉様も以前より仲がいいように見える。
 女性の努力によるものであるが、夫婦仲がいいことはとてもいいことだ。…今度は男性用の美容品を開発するのもいいかもしれない。男性も女性のために努力するべきだと思う。
 私は貴族男性向けの商品開発と頭のメモに書き込んでおいた。


「王妃様は無理矢理商会の情報を聞き出そうとするお方ではないからそこは安心してくれ」


 王妃様のお誘いを断ることなど一商会のオーナーにできるわけもないので、この話は受けるしかないだろう。さすがに緊張するだろうがせっかくの機会だ。この国の女性の頂点である王妃様との話の中から新商品のいい案が思いつくかもしれないと前向きに捉えることにした。


「分かりました」

「じゃあ日程が決まり次第連絡するよ」

「はい。よろしくお願いします」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚二年目、社交界で離婚を宣言されました。

松茸
恋愛
結婚二年目に、社交界で告げられたのは離婚宣言。 全面的に私が悪いと言う夫は、私のことなど愛していないよう。 しかしそれは私も同じですよ。

【完結】婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

本日、貴方を愛するのをやめます~王妃と不倫した貴方が悪いのですよ?~

なか
恋愛
 私は本日、貴方と離婚します。  愛するのは、終わりだ。    ◇◇◇  アーシアの夫––レジェスは王妃の護衛騎士の任についた途端、妻である彼女を冷遇する。  初めは優しくしてくれていた彼の変貌ぶりに、アーシアは戸惑いつつも、再び振り向いてもらうため献身的に尽くした。  しかし、玄関先に置かれていた見知らぬ本に、謎の日本語が書かれているのを見つける。  それを読んだ瞬間、前世の記憶を思い出し……彼女は知った。  この世界が、前世の記憶で読んだ小説であること。   レジェスとの結婚は、彼が愛する王妃と密通を交わすためのものであり……アーシアは王妃暗殺を目論んだ悪女というキャラで、このままでは断罪される宿命にあると。    全てを思い出したアーシアは覚悟を決める。  彼と離婚するため三年間の準備を整えて、断罪の未来から逃れてみせると……  この物語は、彼女の決意から三年が経ち。  離婚する日から始まっていく  戻ってこいと言われても、彼女に戻る気はなかった。  ◇◇◇  設定は甘めです。  読んでくださると嬉しいです。

〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…

藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。 契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。 そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。 設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全9話で完結になります。

【完結】略奪されるような王子なんていりません! こんな国から出ていきます!

かとるり
恋愛
王子であるグレアムは聖女であるマーガレットと婚約関係にあったが、彼が選んだのはマーガレットの妹のミランダだった。 婚約者に裏切られ、家族からも裏切られたマーガレットは国を見限った。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?

すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。 人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。 これでは領民が冬を越せない!! 善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。 『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』 と……。 そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

処理中です...