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しおりを挟むスターリン侯爵夫妻との交流が終わり今は帰りの馬車に揺られている。もちろんシェインと一緒にだ。
「それはそうと魔法薬学を専攻している生徒に協力してもらうなんて、よくあの場で思い付いたな」
そうシェインが言うように私がスターリン侯爵に提案したのは、学園の生徒が作る魔法薬を病院へ納めるという案だ。
「アレス国では魔法薬師はきちんと資格を取らなければ魔法薬を売ることはできないでしょう?私も資格がなかったから急いで取ったもの」
「ドルマン国は資格がなくても問題ないんだな」
「ええ。でも魔法薬への信頼度が変わってくるわね。やっぱり資格がある人が作った魔法薬の方が安心だもの」
「まぁそうだな」
「それでもスターリン侯爵は取引をしていたのだからそれだけ魔法薬が不足しているってこと。でも資格がないと個人では売ることができない。それなら個人ではなく学園という団体としてなら取引できるんじゃないかと思ったのよ」
「確かに団体との取引ならその中に資格を持つ者が一人でもいれば可能だな。でもそれならセレーナ一人で取引した方が簡単だしお金も稼げるのになぜ生徒を?」
「それは生徒のやる気を引き出すためよ。単純に自分が作った魔法薬に対して価値が付けられて報酬を貰えればやる気が出るでしょう?それに自分の作った魔法薬が実際に人の役に立っているって実感できるのはこれからの学ぶ意欲に繋がるはずよ」
「なるほどな」
今日の話では低級の回復薬を納めるのはどうかということになった。当然生徒が作った魔法薬は全て私が確認してからになるが、それくらいなら大した手間ではない。
材料は学園で購入するが生徒に報酬を支払っても利益が出るだろう。そしてその利益でまた材料を購入すればいい。
(まぁ生徒への報酬は当然相場より少なくなるけどそれでもいい刺激になるでしょう)
しかし一つだけ問題がある。そもそもこの問題をクリアしないことには話にならない。
「でも大丈夫かしら。もし学園長の許可が貰えなかったらどうしましょう」
「そこは俺からもお願いするよ。それに叔父は若手の教育に熱心な方だ。生徒のやる気に繋がるのであれば反対はしないさ」
「そうだといいけれど…」
「それよりも俺はセレーナの仕事が増えることの方が心配だ。セレーナ自身も魔法薬を作るんだろう?」
「ええ、そのつもりよ。でも作るのは生徒と同じ低級の回復薬と解毒薬だけだから大したことじゃないわ。数もそんなに多くないしね。あの家にいた頃に比べれば片手間でできるくらいよ」
「…はぁ。セレーナはこうと決めたら頑固だからな。あんまり無理はするなよ?辛くなったらいつでも俺を頼ってくれ」
「ふふっ。ありがとうシェイン」
その後無事に学園長からの許可を貰うことができた。生徒達にも声をかけると全員参加したいとのことだった。
この学園の生徒はみんなやる気に満ち溢れていて、教師としてとても嬉しい限りだ。それに私も生徒達から刺激を受け、更に充実した日々を送ることになるのだった。
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