【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~

Na20

文字の大きさ
上 下
18 / 37

11

しおりを挟む

 アレス国に来て二年が過ぎた頃、私はシェインと婚約をした。

 私が二十二歳、シェインが二十六歳とこの国では決して遅い年齢ではないのだが、シェインが王族であるうちに婚約した方がいいとのことで早いうちに婚約が整った。

 平民である私が王族であるシェインと結婚するにはどこかの貴族家の養子にならなければならない。なのですぐに婚約できないのではと思っていたのだが、案外早くに私を養子に迎えてくれるという家が見つかったのだ。

 その家とはスターリン侯爵家だ。

 スターリン侯爵家は領地はないが国内の病院を統括管理している名家である。そんなすごい家が私の養子先として名乗りをあげてくれたのは何か裏があるのではと疑っていたのだが、実際に侯爵夫妻とお会いすると疑っていた自分が恥ずかしくなるほどの素晴らしい人格者であった。

 正式に養子縁組をする前に何度かお会いして交流を深めた。スターリン侯爵は爵位を継ぐ前までは医師として働いていたそうで、今は二人いる息子さん達が医師として活躍しているのだそうだ。

 そして今日は正式に養子縁組をする前の最後の交流の場だ。交流もそろそろ終わる時間になった頃、スターリン侯爵からあるお願いをされた。


「セレーナさんに魔法薬師としてどうか力を貸して欲しい」

「魔法薬師として、ですか?」

「侯爵、セレーナに何をさせる気だ?」


 今までも交流する際にはシェインも同行してくれており今日も一緒だ。侯爵の発言にシェインが殺気だったのが分かる。


「シェイン落ち着いて!まずはお話を聞いてからにしましょう?」


 シェインは私の過去を知っているから過敏に反応してしまっているようだ。けれど養子縁組してからだと私が断ることができないだろうと、わざわざ養子縁組をする前に話をしようとしてくれた侯爵の心遣いにきちんと応えたいと思った。


「…そうだな。侯爵すまない。セレーナのことになるとどうも感情的になりやすくてな」

「いえ、殿下がセレーナさんのことを大切にされている証拠ですから気になさらないでください。それに私どももセレーナさんの事情は多少聞き及んでおりますので、殿下が心配するのは当然のことです」

「ええその通りだわ。むしろ殿下のそういったお顔を拝見できるなんて貴重だったわ、うふふ」


 どうやら王家からの説明で婚姻無効以外の事情は聞いているようだ。それにしてもシェインの殺気を目の当たりにしても平然としている侯爵夫妻はなかなか肝の据わった人達である。


「えっと、それでお願いとは?」

「ああそうだね。もしこの話を聞いて私達と養子縁組するのが嫌になったら遠慮なく言ってくれて構わないからね」

「わ、分かりました」

「実はね…」


 話を聞くとどうやら侯爵が力を貸して欲しいこととは魔法薬の供給についてであった。

 魔法薬は回復薬や解毒薬など病院でも医師の判断で使用されており常に在庫が必要なものなのだが、魔法薬師自体あまり人数がいないため供給が間に合っておらず困っていると。

 そこで魔法薬師の視点から問題解決に知恵を貸して欲しいとのことだそうだ。


「確かに魔法薬師は薬師に比べるとかなり人数が少ないからな」

「それはやはり魔力が必要だからでしょうか?」

「その通りです。魔法薬師になるにはある程度の魔力がなければ難しい。知識はあれど魔力量が少ないからと魔法薬師になることを諦める者も少なくないのです」

「魔法薬師は少ないけれど魔法薬はたくさん必要だということですね」

「ええ。けれどこの問題も一時だけは他国から輸入することによって解決していたのです」

「一時だけ、ですか?」

「はい。隣国のドルマン国で新たに魔法薬事業を始めた家があるとの噂を聞いて取引を願い出ました。そして三年前に契約をして一年程は契約通り魔法薬を輸入することができていたのです。しかし二年程前に突然納める魔法薬がないと言われ輸入できなくなりました。当然違約金は払ってもらいましたが、魔法薬が手に入らなくなってしまったんです」


 (…なんだか聞いたことのある話だわ。ドルマン国で新しく魔法薬事業を始めたのは間違いなくカリスト侯爵家。そして二年くらい前はちょうど私が屋敷を出た頃…)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

完結 この手からこぼれ落ちるもの   

ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。 長かった。。 君は、この家の第一夫人として 最高の女性だよ 全て君に任せるよ 僕は、ベリンダの事で忙しいからね? 全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ 僕が君に触れる事は無いけれど この家の跡継ぎは、心配要らないよ? 君の父上の姪であるベリンダが 産んでくれるから 心配しないでね そう、優しく微笑んだオリバー様 今まで優しかったのは?

契約婚なのだから契約を守るべきでしたわ、旦那様。

よもぎ
恋愛
白い結婚を三年間。その他いくつかの決まり事。アンネリーナはその条件を呑み、三年を過ごした。そうして結婚が終わるその日になって三年振りに会った戸籍上の夫に離縁を切り出されたアンネリーナは言う。追加の慰謝料を頂きます――

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

【完結】真面目だけが取り柄の地味で従順な女はもうやめますね

祈璃
恋愛
「結婚相手としては、ああいうのがいいんだよ。真面目だけが取り柄の、地味で従順な女が」 婚約者のエイデンが自分の陰口を言っているのを偶然聞いてしまったサンドラ。 ショックを受けたサンドラが中庭で泣いていると、そこに公爵令嬢であるマチルダが偶然やってくる。 その後、マチルダの助けと従兄弟のユーリスの後押しを受けたサンドラは、新しい自分へと生まれ変わることを決意した。 「あなたの結婚相手に相応しくなくなってごめんなさいね。申し訳ないから、あなたの望み通り婚約は解消してあげるわ」  ***** 全18話。 過剰なざまぁはありません。

危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました

しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。 自分のことも誰のことも覚えていない。 王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。 聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。 なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。

〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。

藍川みいな
恋愛
三年婚約しているオリバー殿下は、最近別の女性とばかり一緒にいる。 学園で行われる年に一度のダンスパーティーにも、私ではなくセシリー様を誘っていた。まるで二人が婚約者同士のように思える。 そのダンスパーティーで、オリバー殿下は私を責め、婚約を考え直すと言い出した。 それなら、婚約を解消いたしましょう。 そしてすぐに、婚約者に立候補したいという人が現れて……!? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話しです。

処理中です...