15 / 37
シェイン視点
しおりを挟むそれから数日後、働くにあたり詳しい条件などを話し合うために彼女が学園へとやって来たのだが、その話し合いの場でとても驚かされることがあった。
「…詳しい条件はこんなところだが何か質問はあるかい?」
「いえ大丈夫です。…ただ一つだけお伝えしたいことがあります」
「ん?なんだい?」
「雇っていただくにあたり今の偽りの姿では信用を得られないなと思いました。なので今ここで本来の姿に戻ります」
「はっ?なにを」
「では失礼して…」
そう言って彼女は鞄から小瓶を取り出し、一気に飲み干したのだ。
「ちょっと…!」
止める間も無いあっという間の出来事であった。一体彼女は何を飲んだのだろうかと思っていると彼女の身体に変化が現れた。
「なっ!?」
なんと彼女の髪と瞳の色が変化したのだ。茶色の髪がプラチナブロンドに、茶色の瞳が水色へと変わったのだ。
「本来はこの色なのですが、今まではこの色で生活するには不都合が多かったので魔法薬で色を変えていました。でもこれからは本来の姿に戻りしっかりと勤めていきたいと思います!」
「…」
(美しい髪と瞳だ。…確かにこの色なら隠していた方がリスクが少ないだろう。それなのに私からの信頼を得るためにリスクを負ってまで本来の姿を見せてくれたのか。とても誠実な女性だな)
「あの…?」
「あ、ああ!すまない。少し驚いてしまって」
「いえ!私も突然こんなことをしてすみませんでした」
「いや君の覚悟はよく分かったよ。これからよろしく頼む」
「は、はいっ!よろしくお願いします!」
「そうだ。ちゃんとした自己紹介がまだだったな。以前も伝えたが俺はこの学園で剣の教師をしているシェイン・アレスだ」
「え…、アレスって…」
「ああ。一応この国の第三王子でもあるが、そんなことは気にせず気さくに話しかけてくれ」
「え、ええっーー!?」
俺も先ほどのことはとても驚いたのでちょっとした仕返しのつもりで彼女を驚かせようと思ったのだが、想像していたより驚かせてしまった。
あの後彼女にはちゃんと謝罪したのだが、それすらも驚かせることになってしまった。せっかく同じ職場で働くのだから仲良くなりたいし、いつかは彼女の特別になりたいと思っている自分がいるが、出だしを失敗してしまったのでこれから挽回していきたい。
そのためにはどうすればいいかと悩む日々が始まろうとしていた。
504
お気に入りに追加
4,458
あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

契約婚なのだから契約を守るべきでしたわ、旦那様。
よもぎ
恋愛
白い結婚を三年間。その他いくつかの決まり事。アンネリーナはその条件を呑み、三年を過ごした。そうして結婚が終わるその日になって三年振りに会った戸籍上の夫に離縁を切り出されたアンネリーナは言う。追加の慰謝料を頂きます――

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?
ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。
レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。
アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。
ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。
そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。
上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。
「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

手放したくない理由
ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。
しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。
話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、
「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」
と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。
同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。
大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです
神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。
そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。
アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。
仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。
(まさか、ね)
だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。
――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。
(※誤字報告ありがとうございます)

あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる