【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~

Na20

文字の大きさ
上 下
11 / 37

7

しおりを挟む

「今日も一日終わったー」


 私は自分に与えられた研究室で椅子に座って身体を伸ばした。

 この仕事に就いてから一年が経過したが人に教えるというのは難しいなと日々痛感している。それでも充実しているし自分も今まで以上に成長していることが分かるこの毎日が楽しくて仕方がない。


「ふふっ、本当にラッキーだったわ」

「何がラッキーだったんだ?」

「わっ!な、何ですか!急に入ってこないでくださいよ!」

「いや、ちゃんとノックはしたぞ?」


 そう言って突然部屋にやって来たのはあの時のお客さんであるシェイン先生だ。いや、正確に言えばアレス国第三王子シェイン・アレス殿下であるが。


「殿下がわざわざ私の研究室に用事でも?」

「用事がないと来てはダメなのか?それにここでは同じ教師なんだから名前で呼んでくれ」


 シェイン先生とはあれから何だか関わることが多くって困ってしまう。同じ教師と言っても王子様と平民だ。どのような対応が正解なのか今でもよく分かっていない。それなのにシェイン先生はいつも私を気にかけてくれる。でも平民の私に返せるものなどなにもないし、シェイン先生にドキドキしてしまう自分にも嫌になる。


「はぁ。…シェイン先生」

「…いいな」

「どうしました?」

「ん?いいや、なんでもないさ」

「?それならいいのですが…。それで本当に何か用事でも?」

「いや、今日はもう仕事終わったんだろう?よかったら食事でもどうかと思って」

「え?私とですか?」

「当然だろう?そうじゃなきゃ俺は今ここにいないぞ?」

「…そうですよね」


 まさか食事に誘われるとは考えていなかったので思わず聞き返してしまった。今までも気にかけてくれてはいたが、こうして食事に誘われるのは初めてだ。しかし一緒に食事なんてしてしまえばこのドキドキが更に悪化してしまうかもしれない。

 ここは断るしかないと思い口を開いた。


「大変光栄なのですが今日は予定が…」

「肉がすごくおいしい店なんだが」

「行きます!…はっ!」

「くくく。よし、決まりな!今さらやっぱり行かないなんて言うのはなしだぞ?」


 (しまった!断ろうと思ったのにお肉に釣られて…!)


 これまでの食事のせいなのか記憶を思い出したせいなのか、食事に対する執着がとても強くなったように思う。特に食事の中でも肉と甘いものには目がない。まさに今回はおいしいお肉にまんまと釣られてしまったわけだ。

 これは完全に私の負けである。


「…分かりました」

「じゃあまた後で迎えに来るから準備しておいてくれよな」


 そう言ってシェイン先生は部屋から出ていき、一人残された私は深く息を吐いた。


「はぁ…。決まっちゃったものは仕方がないけどこれ以上ドキドキしないようにしなくちゃ」


 そう言いつつもつい髪の毛を気にしてしまう自分がいる。今はただプラチナブロンドの髪を一つに束ねているだけなので髪型を変えようか迷ってしまう。

 ちなみに私の本当の髪色はプラチナブロンドだ。茶色には魔法薬で変えていたし、以前の私はくすんだ金髪であったがこれも髪を染めていたのだ。本来はこのプラチナブロンドである。

 教師としてここに来るにあたり茶色の髪では実力を疑われることもあるだろうし、住むところも教師用の宿舎が完備されていたので安心できることもあり髪色を戻すことに決めたのだ。


 (そういえば髪色を戻した時シェイン先生すごく驚いてたっけ)


 そんなことを思い出しながら結局私は髪型を変えるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

契約婚なのだから契約を守るべきでしたわ、旦那様。

よもぎ
恋愛
白い結婚を三年間。その他いくつかの決まり事。アンネリーナはその条件を呑み、三年を過ごした。そうして結婚が終わるその日になって三年振りに会った戸籍上の夫に離縁を切り出されたアンネリーナは言う。追加の慰謝料を頂きます――

【完結】真面目だけが取り柄の地味で従順な女はもうやめますね

祈璃
恋愛
「結婚相手としては、ああいうのがいいんだよ。真面目だけが取り柄の、地味で従順な女が」 婚約者のエイデンが自分の陰口を言っているのを偶然聞いてしまったサンドラ。 ショックを受けたサンドラが中庭で泣いていると、そこに公爵令嬢であるマチルダが偶然やってくる。 その後、マチルダの助けと従兄弟のユーリスの後押しを受けたサンドラは、新しい自分へと生まれ変わることを決意した。 「あなたの結婚相手に相応しくなくなってごめんなさいね。申し訳ないから、あなたの望み通り婚約は解消してあげるわ」  ***** 全18話。 過剰なざまぁはありません。

幼馴染の公爵令嬢が、私の婚約者を狙っていたので、流れに身を任せてみる事にした。

完菜
恋愛
公爵令嬢のアンジェラは、自分の婚約者が大嫌いだった。アンジェラの婚約者は、エール王国の第二王子、アレックス・モーリア・エール。彼は、誰からも愛される美貌の持ち主。何度、アンジェラは、婚約を羨ましがられたかわからない。でもアンジェラ自身は、5歳の時に婚約してから一度も嬉しいなんて思った事はない。アンジェラの唯一の幼馴染、公爵令嬢エリーもアンジェラの婚約者を羨ましがったうちの一人。アンジェラが、何度この婚約が良いものではないと説明しても信じて貰えなかった。アンジェラ、エリー、アレックス、この三人が貴族学園に通い始めると同時に、物語は動き出す。

白い結婚をめぐる二年の攻防

藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」 「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」 「え、いやその」  父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。  だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。    妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。 ※ なろうにも投稿しています。

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです

神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。 そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。 アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。 仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。 (まさか、ね) だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。 ――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。 (※誤字報告ありがとうございます)

今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから

毛蟹葵葉
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。 ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。 彼女は別れろ。と、一方的に迫り。 最後には暴言を吐いた。 「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」  洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。 「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」 彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。 ちゃんと、別れ話をしようと。 ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。

処理中です...