離婚したい女と離婚したくない男の結婚

Na20

文字の大きさ
11 / 12

11

しおりを挟む

「それで?結婚が決まったのはめでたいけど、ちゃんと対策は考えているの?」

「……対策?」

「妹の護衛期間は三年だ」

「?それは当然知ってるが……」

「白い結婚」

「っ!」

「白い結婚は三年で成立する。ちょうど妹の護衛期間と同じだね」


 アーノルドの言葉に頭を思いきり殴られたような衝撃を受けた。結婚さえしてしまえば、あとは何年かかってでもカレンを振り向かせればいいと思っていたが、三年しか猶予がないことに今さら気がついたのだ。


 (護衛期間中は子どもを作ることはできない。ということは必然的に白い結婚になる。そしてその間にカレンを振り向かせることができなければ……)


「離婚、されちゃうかもね?」

「り、離婚……」

「だからそうならないようにちゃんと対策は考えてるの?」

「そ、それは、俺の気持ちをしっかり伝えて……」

「驚くほど言葉選びが下手なのに?」

「うっ」

「ほら、思い出してごらんよ。学園で頑張ってアイラス嬢に話しかけていたことをさ」

「……」


 アーノルドに言われ忘れたいと思っていた自分の黒歴史を思い出す羽目になった。

 例えば教師にわからないところを質問しているのを見かけたときには、一緒に勉強しようと誘いたかったのに、


『なんだ?こんなのもわからないのか?特別に俺が教えてやってもいいぞ』

『……結構です』


 全学年合同のダンスの授業では、カレンが着ていた当時流行りの可愛い系のドレスがカレンの雰囲気とは違っていたので、キレイ系のドレスの方が似合うと言いたかったのに、


『なんだそのドレスは。似合ってないな』

『……そうですね』


 カレンが男子生徒と話しているときに、鼻の下を伸ばしている男子生徒に対して警告しただけなのに、


『お前には不釣り合いだ』

『……関係ないのでほっといてください』


 と、このようにどうしてもカレンを前にすると素直に言葉が紡げずに失敗ばかりという情けない結果になっていた。


「言葉っていうのは相手に伝わらなくちゃ意味ないからな~」

「……わかってる」

「仕方ない。こうなったら僕がアイラス嬢を絶対に振り向かせるようにやる気を出させてあげようか?」

「っ!遠慮する!」


 こういう時のアーノルドは厄介で、自分がやると決めたことはなにがなんでも絶対に実行する男なのだ。ここは断るに限る。


「そう?それは残念」

「……まったく残念そうじゃないが」

「そんなことないよ?まぁ助けが必要な時は言ってくれ。僕はレイノの味方だからね」

「あ、あぁ」


 胡散臭い笑顔の王太子には間違っても頼らないと俺はこの日誓ったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたにわたくしは相応しくないようです

らがまふぃん
恋愛
物語の中だけの話だと思っていました。 現実に起こることでしたのね。 ※本編六話+幕間一話と後日談一話の全八話、ゆるゆる話。何も考えずにお読みください。 HOTランキング入りをしまして、たくさんの方の目に触れる機会を得られました。たくさんのお気に入り登録など、本当にありがとうございました。 完結表示をしようとして、タグが入っていなかったことに気付きました。何となく今更な感じがありますが、タグ入れました。

【完結】伯爵令嬢の25通の手紙 ~この手紙たちが、わたしを支えてくれますように~

朝日みらい
恋愛
煌びやかな晩餐会。クラリッサは上品に振る舞おうと努めるが、周囲の貴族は彼女の地味な外見を笑う。 婚約者ルネがワインを掲げて笑う。「俺は華のある令嬢が好きなんだ。すまないが、君では退屈だ。」 静寂と嘲笑の中、クラリッサは微笑みを崩さずに頭を下げる。 夜、涙をこらえて母宛てに手紙を書く。 「恥をかいたけれど、泣かないことを誇りに思いたいです。」 彼女の最初の手紙が、物語の始まりになるように――。

〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…

藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。 契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。 そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。 設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全9話で完結になります。

【完結】嫌われ者の王子様へ。契約結婚には相応の見返りを要求します。

曽根原ツタ
恋愛
ウェンディは夜会で婚約破棄をつきつけられた。しかし、落ち込む暇もなく次は、嫌われ者の第3王子から、彼を侮辱したと言いがかりをつけられ捕えられる。 契約期間を無事に終えたらなんでもひとつ願いを聞いてもらう代わりに、ウェンディは体裁を守るための「仮の妻」になった。 そして、婚約破棄と求婚の真相、ウェンディを利用しようとする王室の思惑、イーサンの本音が徐々に明らかになっていく。 嫌われ者の旦那様へ。 契約結婚には相応の見返りを要求します。 ウェンディが白い結婚の最後に要求するものとは……?

殿下!婚姻を無かった事にして下さい

ねむ太朗
恋愛
ミレリアが第一王子クロヴィスと結婚をして半年が経った。 最後に会ったのは二月前。今だに白い結婚のまま。 とうとうミレリアは婚姻の無効が成立するように奮闘することにした。 しかし、婚姻の無効が成立してから真実が明らかになり、ミレリアは後悔するのだった。

わたくしは悪役令嬢ですので、どうぞお気になさらずに

下菊みこと
恋愛
前世の記憶のおかげで冷静になった悪役令嬢っぽい女の子の、婚約者とのやり直しのお話。 ご都合主義で、ハッピーエンドだけど少し悲しい終わり。 小説家になろう様でも投稿しています。

私と結婚したいなら、側室を迎えて下さい!

Kouei
恋愛
ルキシロン王国 アルディアス・エルサトーレ・ルキシロン王太子とメリンダ・シュプリーティス公爵令嬢との成婚式まで一か月足らずとなった。 そんな時、メリンダが原因不明の高熱で昏睡状態に陥る。 病状が落ち着き目を覚ましたメリンダは、婚約者であるアルディアスを全身で拒んだ。 そして結婚に関して、ある条件を出した。 『第一に私たちは白い結婚である事、第二に側室を迎える事』 愛し合っていたはずなのに、なぜそんな条件を言い出したのか分からないアルディアスは ただただ戸惑うばかり。 二人は無事、成婚式を迎える事ができるのだろうか…? ※性描写はありませんが、それを思わせる表現があります。  苦手な方はご注意下さい。 ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

『白い結婚』が好条件だったから即断即決するしかないよね!

三谷朱花
恋愛
私、エヴァはずっともう親がいないものだと思っていた。亡くなった母方の祖父母に育てられていたからだ。だけど、年頃になった私を迎えに来たのは、ピョルリング伯爵だった。どうやら私はピョルリング伯爵の庶子らしい。そしてどうやら、政治の道具になるために、王都に連れていかれるらしい。そして、連れていかれた先には、年若いタッペル公爵がいた。どうやら、タッペル公爵は結婚したい理由があるらしい。タッペル公爵の出した条件に、私はすぐに飛びついた。だって、とてもいい条件だったから!

処理中です...