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あの後無事試合に間に合い勝利し三回戦に進むことができた。
(メルリルの病気も治ったし、試合にも間に合ってよかったよかった。きっとフィンメルはメルリルのためにも魔法のことは黙っててくれるでしょう。さてさて三回戦の相手は誰だろうな~…ってあいつ!?)
三回戦の対戦相手は元兄のダミアンだった。
(同じ山なのは知ってたけどまさか三回戦まで残ってるなんて。あんなやつでもやっぱり攻略対象者だから強いのか?)
でも攻略対象者がどんなに強かろうと私には勝てないし、ダミアンなんて私の足元にも及ばないだろうからこの試合はさっさと終わらせてしまおう。他の攻略対象者達(王太子は微妙だが)には特に恨みは無いので関わらなければいいやくらいにしか思っていないが、あいつだけは別だ。私がダリアローズになる前もなった後もあいつはダリアローズを家族として受け入れることはなかった。幼い頃は父親にそのように教えられてきたから仕方がなかったとしても、成長した今も何も変わることはなかった。ダリアローズは父と母に望まれて生まれてきただけなのにそれの何が罪だというのか。父も自分が望んで作った子どもなのにどうしてあのような扱いをすることができたのだろう。未だにあの二人を見ると前のダリアローズのものなのか悲しい気持ちが心の奥から溢れそうになり不快な気分になる。
(考えるのはやめよう。今は大切な家族ができた、それでいいんだ)
気分が下がりそうになったので考えるのを止めて控え室から試合会場へ向かう。会場に着くと既にダミアンがいてこちらを睨んできたが気にせず自分の位置につく。
(今の状況が気に食わないのは私だって同じなんだからね!)
すると試合が始まる直前にダミアンが口を開いた。
「…お前なんて生まれてこなければよかったんだ、そうすればみんなが幸せになれたのにっ!」
――プツン
その言葉を聞いて私の中の何かが切れる音がして、体の奥底から怒りが込み上げてくる。あんなやつに怒りの感情を抱くのは無駄だと頭では理解しているがあの言葉は許せそうにない。
(さっさと終わらせるつもりだったけどそのケンカ買ってあげる。後悔するといいわ)
「それでは、始めっ!」
合図と同時に駆け出し攻撃を仕掛ける。
「なっ!?」
私の攻撃を何とか剣で受け止めたが恐らくこの一撃で私との実力差に気づいただろう。でも簡単には負けさせてやらない。徹底的に追い詰めてやると心に決め、剣を振り続ける。ダミアンは私の剣を受け止めるだけで精一杯のようだ。
「あら、あなたって弱いんですね」
「なん、だとっ!?」
「私に対して強気な発言が多いからてっきり強いのかと思っていたのに…大したこと無いんですね」
「き、貴様っ!」
「そうだ!ただ剣を受け止めているだけでは暇でしょうから暇潰しに一つ面白いお話をしてあげますね」
「っ、ふざ、けるな、っ!」
途中で口を挟まれると面倒なので話せる余裕がなくなるくらいの速度で攻撃を続ける。
「ふざけていませんよ?ではよく聞いてくださいね」
――昔帝国のお姫様と王国の貴族が恋に落ちて結婚をしました。二人が王国で暮らし始めるとすぐに子どもを授かりました。しかし喜んだのも束の間、お姫様は体調を崩し無事に出産することができるのかは分からないとお医者様に言われてしまいました。そしてその言葉通りお姫様の出産はかなりの難産になり、一時は生死を彷徨うほどでしたが何とか男の子を出産しました。お姫様はその後奇跡的に回復し平穏な日常を過ごしていましたがある日こう思いました。『この子にキョウダイを作ってあげたい』と。しかし難産が原因でお医者様には次の出産は難しいと言われていました。もし望むのであれば命を落とす可能性が高い、と。お姫様と貴族は悩みました。貴族はお姫様を深く愛していたので命を落とす可能性があるのなら二人目はいらないと。でもお姫様はどうしても息子にキョウダイを作ってあげたいと。たくさん悩みましたがお姫様を愛する貴族はお姫様の望みを叶えてあげたいと思うようになりました。お姫様も貴族ももしものことがあるかもと覚悟をしました。その後二人目を授かりましたが今回も体調を崩してしまいました。なんとか出産できましたが体調が良くなることはなくそのまま亡くなってしまいました。貴族はもしものことを覚悟していたはずなのにお姫様の死を受け入れることができずに産まれてきた子を憎み、いないものとして扱いました。『お前さえ産まれてこなければ』と。その時に産まれた子どもは青い髪に青い瞳の女の子だったそうです。おしまい――
「…いかがでしたか?面白いお話だったでしょ?」
攻撃の手を緩めてあげると多少余裕ができたようで心なしか顔色が悪いダミアンが口を開いた。
「はぁ、はぁ…っ、…その後、どうなっ、たんだ?」
「どうとは?…そうですね、子どもは二人とも今も無事に生きていますよ。よかったですね」
「…その話、はっ、誰から、っ聞いたんだ?私はっ、そん、なふざけた話、聞いたこと、ないっ!嘘を、つくなっ!」
「ふふっ、このお話に心当たりでもあるんですか?」
「っ!いやっ、そういう訳、ではっ…!」
「そういえば誰に聞いたのかって話でしたね。この話はある国の尊いお方に教えてもらったんですけど誰だと思います?」
「…誰だっ?」
「元お兄様だから特別に教えてあげますね。このお話を教えてくれた方の名前は、ルドマルス・フォン・パレット。パレット帝国の前皇帝陛下…そして私たちのお祖父様ですよ」
「お祖父様、だと…?」
「あなたは先ほどの話は嘘だと仰いましたがお祖父様が嘘をつくと?」
「いや…」
そろそろ試合の時間が終わる頃なのではっきりと言ってあげることにする。
「そう、このお話は私たちの父と母のお話なんですよ!素敵ですよね、愛し合って結婚して子どもに恵まれて。でも一人目の子どもを産んだせいで次の子どもを産むことが難しくなったのに、その子どものために兄妹を作ってあげたいと思うなんて本当に素敵ですね。まぁその結果母が亡くなってしまったとしても」
「…」
ダミアンからは共感の声は聞こえなかったがそのまま続ける。
「散々私が生まれたせいだと思って憎んできたでしょうが、元を辿れば母の体調を悪くさせて生まれてきてさらに弟妹を作ってあげたいと思わせたお兄様のせいだし、もしものことを覚悟の上で子どもを作ったのにその覚悟を忘れて全てを私のせいにしたお父様が悪かったんです。お兄様、真実が分かって良かったですね?」
「そんな訳、あるはずが…」
どうやらもう剣を振る気力も無いようなのでダミアンの剣を弾き飛ばし首に剣を突き付けて終わりにする。
「試合終了!ダリアローズ嬢の勝ち!」
試合終了の合図に会場がまたざわめいている。ここまで勝ち進めば私の実力が本物だと認めざるを得ないだろうが、上級貴族で三学年であるダミアンが妹に負けたことに驚いているようだ。私はその場に座り込んでいるダミアンに近づいて行き耳元で話しかけた。
「嘘だと思うならあなたのお父様に聞いてみればいかが?まぁあの人は認めないと思うけどね。あと私が教えてあげられることはお祖父様と伯父様が大変お怒りだってことよ。ふふっ、許してもらえる日が来るかしら」
「ダリアローズ…」
「さようなら、お兄様。もう関わることがないことを願っているわ」
そう言って私はその場を後にした。ダミアンは教師に声をかけられるまでその場から動くことができなかった。
勝ち上がっていくとだんだん次の試合までの間隔が短くなってきて疲れが溜まってくるが私はまだまだ元気だ。先ほどの試合は試合ですらなかったので全く疲れていない。むしろ言いたいことを言えてスッキリした気分だ。
(あの二人が許してもらえる日は来るのかな?そもそもお祖父様と伯父様が怒っていることに今まで全く気づいてないのも問題よね。恐らく数年前からブルー領と帝国の取引が減ってきているはずなのに何も気づいてなさそう)
ブルー領にはローズ商会の本店があり、毎年の税収だけでかなりの金額になるので他が減っても困らなかったから気にもしなかったのだろう。ローズ商会のおかげで父と兄がこれまで贅沢してきたと思うと面白くはないが、今は父がローズ商会の商会長は私だということを知っている。今までの当たり前の生活が憎く、いないものとして扱ってきた娘による恩恵であると知ってさぞかし悔しいし恥ずかしいだろう。
(あの人は自分が優秀だと勘違いしているから笑えるわ。その息子も同じようだしね。後でお祖父様に近いうちにまた会いに行くって伝えなくちゃ)
(メルリルの病気も治ったし、試合にも間に合ってよかったよかった。きっとフィンメルはメルリルのためにも魔法のことは黙っててくれるでしょう。さてさて三回戦の相手は誰だろうな~…ってあいつ!?)
三回戦の対戦相手は元兄のダミアンだった。
(同じ山なのは知ってたけどまさか三回戦まで残ってるなんて。あんなやつでもやっぱり攻略対象者だから強いのか?)
でも攻略対象者がどんなに強かろうと私には勝てないし、ダミアンなんて私の足元にも及ばないだろうからこの試合はさっさと終わらせてしまおう。他の攻略対象者達(王太子は微妙だが)には特に恨みは無いので関わらなければいいやくらいにしか思っていないが、あいつだけは別だ。私がダリアローズになる前もなった後もあいつはダリアローズを家族として受け入れることはなかった。幼い頃は父親にそのように教えられてきたから仕方がなかったとしても、成長した今も何も変わることはなかった。ダリアローズは父と母に望まれて生まれてきただけなのにそれの何が罪だというのか。父も自分が望んで作った子どもなのにどうしてあのような扱いをすることができたのだろう。未だにあの二人を見ると前のダリアローズのものなのか悲しい気持ちが心の奥から溢れそうになり不快な気分になる。
(考えるのはやめよう。今は大切な家族ができた、それでいいんだ)
気分が下がりそうになったので考えるのを止めて控え室から試合会場へ向かう。会場に着くと既にダミアンがいてこちらを睨んできたが気にせず自分の位置につく。
(今の状況が気に食わないのは私だって同じなんだからね!)
すると試合が始まる直前にダミアンが口を開いた。
「…お前なんて生まれてこなければよかったんだ、そうすればみんなが幸せになれたのにっ!」
――プツン
その言葉を聞いて私の中の何かが切れる音がして、体の奥底から怒りが込み上げてくる。あんなやつに怒りの感情を抱くのは無駄だと頭では理解しているがあの言葉は許せそうにない。
(さっさと終わらせるつもりだったけどそのケンカ買ってあげる。後悔するといいわ)
「それでは、始めっ!」
合図と同時に駆け出し攻撃を仕掛ける。
「なっ!?」
私の攻撃を何とか剣で受け止めたが恐らくこの一撃で私との実力差に気づいただろう。でも簡単には負けさせてやらない。徹底的に追い詰めてやると心に決め、剣を振り続ける。ダミアンは私の剣を受け止めるだけで精一杯のようだ。
「あら、あなたって弱いんですね」
「なん、だとっ!?」
「私に対して強気な発言が多いからてっきり強いのかと思っていたのに…大したこと無いんですね」
「き、貴様っ!」
「そうだ!ただ剣を受け止めているだけでは暇でしょうから暇潰しに一つ面白いお話をしてあげますね」
「っ、ふざ、けるな、っ!」
途中で口を挟まれると面倒なので話せる余裕がなくなるくらいの速度で攻撃を続ける。
「ふざけていませんよ?ではよく聞いてくださいね」
――昔帝国のお姫様と王国の貴族が恋に落ちて結婚をしました。二人が王国で暮らし始めるとすぐに子どもを授かりました。しかし喜んだのも束の間、お姫様は体調を崩し無事に出産することができるのかは分からないとお医者様に言われてしまいました。そしてその言葉通りお姫様の出産はかなりの難産になり、一時は生死を彷徨うほどでしたが何とか男の子を出産しました。お姫様はその後奇跡的に回復し平穏な日常を過ごしていましたがある日こう思いました。『この子にキョウダイを作ってあげたい』と。しかし難産が原因でお医者様には次の出産は難しいと言われていました。もし望むのであれば命を落とす可能性が高い、と。お姫様と貴族は悩みました。貴族はお姫様を深く愛していたので命を落とす可能性があるのなら二人目はいらないと。でもお姫様はどうしても息子にキョウダイを作ってあげたいと。たくさん悩みましたがお姫様を愛する貴族はお姫様の望みを叶えてあげたいと思うようになりました。お姫様も貴族ももしものことがあるかもと覚悟をしました。その後二人目を授かりましたが今回も体調を崩してしまいました。なんとか出産できましたが体調が良くなることはなくそのまま亡くなってしまいました。貴族はもしものことを覚悟していたはずなのにお姫様の死を受け入れることができずに産まれてきた子を憎み、いないものとして扱いました。『お前さえ産まれてこなければ』と。その時に産まれた子どもは青い髪に青い瞳の女の子だったそうです。おしまい――
「…いかがでしたか?面白いお話だったでしょ?」
攻撃の手を緩めてあげると多少余裕ができたようで心なしか顔色が悪いダミアンが口を開いた。
「はぁ、はぁ…っ、…その後、どうなっ、たんだ?」
「どうとは?…そうですね、子どもは二人とも今も無事に生きていますよ。よかったですね」
「…その話、はっ、誰から、っ聞いたんだ?私はっ、そん、なふざけた話、聞いたこと、ないっ!嘘を、つくなっ!」
「ふふっ、このお話に心当たりでもあるんですか?」
「っ!いやっ、そういう訳、ではっ…!」
「そういえば誰に聞いたのかって話でしたね。この話はある国の尊いお方に教えてもらったんですけど誰だと思います?」
「…誰だっ?」
「元お兄様だから特別に教えてあげますね。このお話を教えてくれた方の名前は、ルドマルス・フォン・パレット。パレット帝国の前皇帝陛下…そして私たちのお祖父様ですよ」
「お祖父様、だと…?」
「あなたは先ほどの話は嘘だと仰いましたがお祖父様が嘘をつくと?」
「いや…」
そろそろ試合の時間が終わる頃なのではっきりと言ってあげることにする。
「そう、このお話は私たちの父と母のお話なんですよ!素敵ですよね、愛し合って結婚して子どもに恵まれて。でも一人目の子どもを産んだせいで次の子どもを産むことが難しくなったのに、その子どものために兄妹を作ってあげたいと思うなんて本当に素敵ですね。まぁその結果母が亡くなってしまったとしても」
「…」
ダミアンからは共感の声は聞こえなかったがそのまま続ける。
「散々私が生まれたせいだと思って憎んできたでしょうが、元を辿れば母の体調を悪くさせて生まれてきてさらに弟妹を作ってあげたいと思わせたお兄様のせいだし、もしものことを覚悟の上で子どもを作ったのにその覚悟を忘れて全てを私のせいにしたお父様が悪かったんです。お兄様、真実が分かって良かったですね?」
「そんな訳、あるはずが…」
どうやらもう剣を振る気力も無いようなのでダミアンの剣を弾き飛ばし首に剣を突き付けて終わりにする。
「試合終了!ダリアローズ嬢の勝ち!」
試合終了の合図に会場がまたざわめいている。ここまで勝ち進めば私の実力が本物だと認めざるを得ないだろうが、上級貴族で三学年であるダミアンが妹に負けたことに驚いているようだ。私はその場に座り込んでいるダミアンに近づいて行き耳元で話しかけた。
「嘘だと思うならあなたのお父様に聞いてみればいかが?まぁあの人は認めないと思うけどね。あと私が教えてあげられることはお祖父様と伯父様が大変お怒りだってことよ。ふふっ、許してもらえる日が来るかしら」
「ダリアローズ…」
「さようなら、お兄様。もう関わることがないことを願っているわ」
そう言って私はその場を後にした。ダミアンは教師に声をかけられるまでその場から動くことができなかった。
勝ち上がっていくとだんだん次の試合までの間隔が短くなってきて疲れが溜まってくるが私はまだまだ元気だ。先ほどの試合は試合ですらなかったので全く疲れていない。むしろ言いたいことを言えてスッキリした気分だ。
(あの二人が許してもらえる日は来るのかな?そもそもお祖父様と伯父様が怒っていることに今まで全く気づいてないのも問題よね。恐らく数年前からブルー領と帝国の取引が減ってきているはずなのに何も気づいてなさそう)
ブルー領にはローズ商会の本店があり、毎年の税収だけでかなりの金額になるので他が減っても困らなかったから気にもしなかったのだろう。ローズ商会のおかげで父と兄がこれまで贅沢してきたと思うと面白くはないが、今は父がローズ商会の商会長は私だということを知っている。今までの当たり前の生活が憎く、いないものとして扱ってきた娘による恩恵であると知ってさぞかし悔しいし恥ずかしいだろう。
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