攻略対象≪公爵子息≫の母に転生しました

Na20

文字の大きさ
上 下
22 / 22

エピローグ

しおりを挟む

「ママおはよう」

「おはよう」

「パパはまだ帰ってきてないの?」

「うーん、そろそろ帰ってくるはずなんだけど…」



 ―――ガチャ


「あっ!パパだ!」


 噂をすれば帰ってきた父親に、息子は勢いよく抱きついた。


「おっと。ただいま」

「おかえり!」

「おかえりなさい」

「ねぇパパ!また魔法を教えてよ!」

「こら、セドル。パパは帰ってきたばかりで疲れているんだからあとでにしなさい」

「えー!だってもっと強くなって、早くパパみたいな冒険者になりたいんだもん!」

「じゃあ朝ごはんのベーコンエッグはいらないのね?」

「わっ!た、食べる!」

「それじゃあ、まずは歯を磨いて顔を洗ってきなさい」

「わかった!わーい、ベーコンエッグだー!」


 セドルは父親から離れ、洗面所へと走っていった。七歳になったセドルは今でもベーコンエッグが大好物だ。見た目はずいぶんと成長したがまだまだ子どもである。


「もう…」

「ただいま」

「おかえりなさい。無事に依頼は終わったの?」

「ああ。だからしばらくは依頼は受けないつもりだ」

「無理に休まなくても大丈夫よ?レミアもケビンもいるし、町の人もいるから…」


 私はそう言いながら自身の大きく膨らんだお腹をさすった。私は今妊娠中だ。まもなく臨月に入ろうとしている。セドルは今からお兄ちゃんになることをとても楽しみにしているのだ。


「俺がルルの側にいたいんだ。…ダメか?」


 ダメかと聞いてくる彼が、大きな犬に見えて思わず笑ってしまう。


「ふふふっ。ダメなわけないじゃない。もちろん嬉しいわ」

「!よかった」

「それじゃあ頼りにさせてもらいますね」

「ああ、任せてくれ。ルルとセドル、そしてこの小さな命も俺が守る」


 彼の手がお腹をさする私の手に重なった。


「ロスト…」

「ルル…」


 そうして自然とお互いの顔が近づき、唇が重なる。会えなかった時間を埋めるかのような長いキスだった。
 それからしばらくして唇が離れると、ダイニングから私たちを呼ぶ声が聞こえてきた。


「ママ!パパ!早くごはん食べようよ!」


 どうやらセドルは私たちに気を遣ってくれたようだ。できた息子である。


「もう、僕お腹ペコペコだよ」

「じゃあとびきりおいしいベーコンエッグを作るわね」

「やった!」

「ふふっ。さぁ、あなたも一緒に食べましょう」

「ああ」



 こうして攻略対象≪公爵子息≫の母に転生した私は、今日も愛する家族に囲まれて幸せに暮らしている。


しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

【完結】お荷物王女は婚約解消を願う

miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。 それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。 アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。 今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。 だが、彼女はある日聞いてしまう。 「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。 ───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。 それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。 そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。 ※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。 ※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

処理中です...