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エピローグ
しおりを挟む「ママおはよう」
「おはよう」
「パパはまだ帰ってきてないの?」
「うーん、そろそろ帰ってくるはずなんだけど…」
―――ガチャ
「あっ!パパだ!」
噂をすれば帰ってきた父親に、息子は勢いよく抱きついた。
「おっと。ただいま」
「おかえり!」
「おかえりなさい」
「ねぇパパ!また魔法を教えてよ!」
「こら、セドル。パパは帰ってきたばかりで疲れているんだからあとでにしなさい」
「えー!だってもっと強くなって、早くパパみたいな冒険者になりたいんだもん!」
「じゃあ朝ごはんのベーコンエッグはいらないのね?」
「わっ!た、食べる!」
「それじゃあ、まずは歯を磨いて顔を洗ってきなさい」
「わかった!わーい、ベーコンエッグだー!」
セドルは父親から離れ、洗面所へと走っていった。七歳になったセドルは今でもベーコンエッグが大好物だ。見た目はずいぶんと成長したがまだまだ子どもである。
「もう…」
「ただいま」
「おかえりなさい。無事に依頼は終わったの?」
「ああ。だからしばらくは依頼は受けないつもりだ」
「無理に休まなくても大丈夫よ?レミアもケビンもいるし、町の人もいるから…」
私はそう言いながら自身の大きく膨らんだお腹をさすった。私は今妊娠中だ。まもなく臨月に入ろうとしている。セドルは今からお兄ちゃんになることをとても楽しみにしているのだ。
「俺がルルの側にいたいんだ。…ダメか?」
ダメかと聞いてくる彼が、大きな犬に見えて思わず笑ってしまう。
「ふふふっ。ダメなわけないじゃない。もちろん嬉しいわ」
「!よかった」
「それじゃあ頼りにさせてもらいますね」
「ああ、任せてくれ。ルルとセドル、そしてこの小さな命も俺が守る」
彼の手がお腹をさする私の手に重なった。
「ロスト…」
「ルル…」
そうして自然とお互いの顔が近づき、唇が重なる。会えなかった時間を埋めるかのような長いキスだった。
それからしばらくして唇が離れると、ダイニングから私たちを呼ぶ声が聞こえてきた。
「ママ!パパ!早くごはん食べようよ!」
どうやらセドルは私たちに気を遣ってくれたようだ。できた息子である。
「もう、僕お腹ペコペコだよ」
「じゃあとびきりおいしいベーコンエッグを作るわね」
「やった!」
「ふふっ。さぁ、あなたも一緒に食べましょう」
「ああ」
こうして攻略対象≪公爵子息≫の母に転生した私は、今日も愛する家族に囲まれて幸せに暮らしている。
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