上 下
11 / 22

出会い

しおりを挟む

 朝は日が登り始める前に起きて身支度を整え、朝食の準備をする。セドルはまだ夢の中だ。
 朝食はパンとスープ、それとセドルの大好物のベーコンエッグが定番だ。ベーコンエッグを焼きながらセドルの喜ぶ顔をを思い浮かべていると、美味しそうな匂いに釣られてセドルが起きてくる。


「おはよう」

「ママ、おはよう…」


 まだ眠い目を擦りながら朝の挨拶を交わす。セドルの身支度を整え、一緒に朝食を食べる。朝食を食べる頃にはセドルの目も完全に覚め、元気いっぱいだ。

 朝食を終え片付けをしてから仕事に向かうまでセドルと遊ぶ。遊んでいるとレミアとケビンがうちにやって来るので、二人にセドルを頼み仕事に向かう。

 仕事は朝から昼過ぎまでで、終われば家に帰り遅めの昼食を食べる。その後は薬草の採取と市場への買い出しにみんなで出掛け、日が沈む前に家に帰る。
 レミアと一緒に夕食を作り四人で食卓を囲み、片付けが終わるとレミアとケビンは隣の家に帰っていく。
 セドルと一緒にお風呂に入り、お風呂上がりにセドルの柔らかい髪を乾かしたら二人でベッドに潜り、お互いに今日の出来事を話す。うとうとし始めたセドルを寝かせた後、採取した薬草の処理を済ませたら再びベッドに戻り、眠りに就く。

 そしてまた朝が始まるのだ。



 ◇◇◇



 それはある日のこと。店で薬の調合をしていると一人の客がやってきた。


「ここは薬屋であってるか?」


 店に入ってきた男性が、店内を見回しながら聞いてきた。


 (知らない顔…。冒険者かな?)


 店に来る常連さんの顔は覚えている。知らない顔ということは冒険者の可能性が高い。店には回復薬などを求めてやってくる冒険者も多いのだ。


「はい。何かお求めですか?」

「冒険者ギルドでここの薬はよく効くって評判を聞いてな」


 やはりこの男性は冒険者のようだ。


「そうだったんですね。…あのすみません、あと少しで作業が終わりますのでお待ちいただけますか?」

「ああ、かまわない」

「ありがとうございます」


 私は急ぎ調合を終わらせマスクとエプロンを外し、服装を整えてから店内を見ている男性に声をかけた。


「お待たせしました」

「いや、大丈…っ!」

「お客様?」

「……」

「あの、どうかしましたか?」

「…あ、いや!な、なんでもない」

「そうですか?」

「あ、ああ」


 振り向き様に突然動きを止めた男性を心配したが、なんでもないと言うので気にしないことにした。


「今日は何かお求めですか?」

「…回復薬を一つお願いしたいのだが」

「回復薬ですね。……はい。こちらになります」

「助かる。…また来てもいいか?」

「もちろんです。実際に使ってみてお気に召しましたら是非ともまたいらしてくださいね」

「…また買いにくる」

「お待ちしてます」


 冒険者の男性は薬を受け取り、また来るとの言葉を残し店から出ていった。


 (新しいお客さんになってくれるかな?)


 そんなことを期待しながら私は再び調合を始めるのだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

【完結】何も知らなかった馬鹿な私でしたが、私を溺愛するお父様とお兄様が激怒し制裁してくれました!

山葵
恋愛
お茶会に出れば、噂の的になっていた。 居心地が悪い雰囲気の中、噂話が本当なのか聞いてきたコスナ伯爵夫人。 その噂話とは!?

【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
 もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。  誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。 でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。 「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」  アリシアは夫の愛を疑う。 小説家になろう様にも投稿しています。

婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。

白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?  *6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」 *外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。 卒業3か月前の事です。 卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。 もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。 カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。 でも大丈夫ですか? 婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。 ※ゆるゆる設定です ※軽い感じで読み流して下さい

処理中です...