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≪公爵子息≫
しおりを挟むセドル・アクレシアはアクレシア公爵家の長男だ。
セドルは公爵家の生まれに恥じぬ非常に優秀な子であったが、父親であるアクレシア公爵から疎まれて育つことになる。
◇◇◇
疎まれる原因は母のルルーシュにあった。母が父に一目惚れしたことで、父は愛する婚約者と結ばれることができなかったのだ。婚約者は自国の侯爵令嬢であったが、母は隣国の皇女。自国と隣国とでは国力が倍以上違う。だから父は母との縁談を受け入れるしかなく、婚約者とは別れるしか選択肢がなかった。
だが父に全く利益がなかったわけではない。むしろ多額の資金援助に隣国皇室との太いパイプを得て、自国での自身の立場を盤石なものにしていったのだ。
母は愛している男性と結ばれたことを喜んだ。母は皇帝陛下の末娘で家族から愛され大切に育てられ、欲しいものはなんでも手に入れてきた。だから父も自分のことを愛してくれていると思っていたのだ。実際初めのうちは大切にしてくれていたが、時が経つにつれ父は母を蔑ろにするようになった。
父は母との結婚で得た権力に酔いしれ、傲慢な男へと成り下がってしまったのだ。そしていつしか別れたはずの侯爵令嬢を愛人として本邸に住まわせ、母を本邸から離れへと追い出したのだが、ちょうどその頃に母の妊娠が発覚する。母は思っただろう。この子が生まれれば、あの人はまた自分を見てくれるのだと。
しかしそんな想いも虚しく私が生まれても何も変わることなく、さらに追い討ちをかけるように私が生まれて一年後には愛人が男の子を出産したのだ。それにより本来は正妻である母との間に生まれた私がアクレシア公爵家の嫡男として扱われるべきなのだが、愛人との子を嫡男として扱った。
けれど愛人との間に生まれた子は、法律上後継者とは認められない。だから父は法律を犯してまでも愛人との子を母が生んだことにしたのだ。母が黙ってさえいればバレないと考えたのだろう。
それを知った母は徐々に心を病んでいき、私が七歳の時に自害してしまう。しかし真実は邪魔になった母を自害に見せかけて父が毒殺したのだ。
私は母との結婚で利益を得たくせに、母を蔑ろにし続け、そして殺した父を到底許すことなどできなかった。それに厚かましくも公爵家に居座る父の愛人とその子どもも同罪だ。
だから私は力を付け、必ずアクレシア公爵家を潰すと心に決めたのだった。
◇◇◇
その後成長しヒロインと出会い、隣国皇室の力を借りアクレシア公爵家を潰すのだ。そして皇子となりヒロインは皇子妃として幸せに暮らす。
これが≪公爵子息≫、セドル・アクレシアのストーリーである。
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