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目が覚めたら
しおりを挟む「…今のは」
今のは間違いなく私の記憶。
「…そうだ。私、事故に遭って…」
少しずつあの時の出来事を思い出す。流れる血、冷えていく身体。私はあの後どうなってしまったのだろうか。
「…ここは?痛っ…」
状況を確認したく身体を起こそうとしたが、身体中が痛い。特にお腹から下に感じたことない痛みがあった。私は痛む身体をなんとか起こし辺りを見回すが、どうやら病院ではなさそうだ。
「一体ここは…」
「ルルーシュ様!」
「えっ?」
「よかった!お目覚めになられたんですね!」
「だ…っ!?」
「誰?」と聞こうとしたその時、彼女の頭上に文字が現れた。
名前:レミア
年齢:20
職業:ルルーシュの専属侍女
感情:ルルーシュ様が無事でよかった
(なに、これ…?)
ゲームなどでよく見かけるウィンドウのようなものが突如として彼女の頭上に現れたのだが、一体これはなんなのだろうか。
(それにルルーシュって、誰?)
レミアという女性が私を見てルルーシュ様と呼ぶのだが、私の名前は瑠々だ。多少似てはいるがルルーシュなどという変わったあだ名で呼ばれたことはない。
「えっと…」
「あれからルルーシュ様は三日も目を覚まさなかったのですよ!とても心配いたしました。…ぐすっ」
「えっ!?ほ、ほら泣かないで…」
何がなんだかわからないが、目の前で泣き出してしまった彼女をほっとくわけにもいかない。彼女には泣き止んでもらい、今の状況を確認しなければならないのだ。
しばらくすると落ち着いたようなので、私は質問をすることにした。
「えっと、レミア?」
「はい」
「私は三日間も眠っていたって本当?」
「本当です!あのあと気を失われてから今まで眠っておられました」
「あのあと…?」
「はい!ルルーシュ様はご子息様を出産されたのですよ」
「…はい?」
(今、なんて…)
「こちらで眠ってらっしゃいます」
レミアの手が指し示す方を見ると、ベビーベッドの中ですやすや眠る小さな赤子がいた。
「…かわいい」
すぅすぅと寝息をたてながら眠っている。
「ええ、本当に。ルルーシュ様によく似ていらっしゃいます」
「…そう?」
ルルーシュに似ているという赤子はシルバーヘアだ。ルルーシュとは外国人なのだろうか。そんな疑問を抱いているとレミアがなにか言いづらそうに口を開いた。
「あの…」
「どうかしたの?」
「…実は、ルルーシュ様が目覚める前にアクレシア公爵様がこちらにいらっしゃいまして…」
(アクレシア公爵…。やっぱりどこかで聞いたことがあるのよね)
「…それで?」
「ご子息様に名付けをされていきました」
「名前…」
(名前ってそんな簡単に決めちゃうの?普通は相談したり字画とか調べたりして決めるんじゃないの?)
私の中での赤子の名付けはそんな感覚なのだが、アクレシア公爵とやらは違うようだ。
「それで、この子の名前は?」
「…セドル・アクレシア様です」
「セドル・アクレシア……うっ!」
赤子の名前を口にした途端、激しい頭痛に見舞われた。頭が割れそうなくらい痛い。
「ル、ルルーシュ様!?」
「頭が、割れそう…」
「大変…!す、すぐに水をお持ちします!」
バタバタとレミアは出ていき、部屋には私と赤子の二人だけ。私は痛む頭を押さえながら赤子に視線をやった。
(セドル・アクレシア…。それにルルーシュって…っ!)
次の瞬間、頭の中に膨大な何かが流れ込んできた。しかしそれは一瞬のことで抗うことなく私の一部となり、痛みは嘘のように消えてなくなった。
そして私は今の状況を理解したのだ。
「私、“キミトモ”の世界に転生しちゃったんだ…」
どうやら私は“キミトモ”の攻略対象、『公爵子息』の母親に転生してしまったようである。
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