攻略対象≪公爵子息≫の母に転生しました

Na20

文字の大きさ
上 下
2 / 22

前世

しおりを挟む

「これオススメだから一回やってみて!」


 仕事帰り、久しぶりに会った親友に勧められたのがきっかけだった。


「えー。前もそう言ってたけど微妙だったし…」

「今回のやつにはオススメのキャラがいるの!ほら、前に言ってたでしょ?」

「ん?私なんか言った?」

「もー!忘れちゃったの?前にオススメしたやつの感想聞いた時に、メインヒーロー以外パッとしないって言ってたじゃん」

「ああ、そういえばそんなこと言ったね」

「そう!それで、その中でも『公爵子息』は一番選びたくない~って言ってたでしょ?」

「まぁだって?メインヒーローの『王太子』を選べば王太子妃になれるし、メインヒーロー以外のヒーローは何かしら特化した才能を持っていたじゃない?その中で『公爵子息』は平凡っていうか面白味がないっていうか」

「まぁ言いたいことはわかるけどさー」

「でしょ?」

「でも安心して!今回のはその『公爵子息』がいい感じなの!」

「いい感じって、説明適当すぎない?」

「まぁまぁ。ここで言っちゃったらつまらないでしょ?ねっ!やってみてよー!」

「はぁ。わかったわかった。やってみるけど面白くなかったらすぐにやめるからね」

「うん!」

「で、その乙女ゲームの名前はなんて言うの?」

「えっとね、『君と共に歩む道』。略して“キミトモ”!」

「ああこれね。……はい。インストールしたよ」

「じゃあクリアしたら感想聞かせてね!」

「はいはい」


 それから親友と別れ家に帰った私は、お風呂を済ませ冷蔵庫から冷えたビールを取り出した。


「ぷはー!今日も一日頑張ったぞ、私」


 毎日の楽しみである晩酌をしながらテレビを見ていると親友から連絡が来た。


 “もうやってみた?面白いでしょ?”


「あ、忘れてた」


 先ほどインストールしたゲームのことなどすっかり忘れていた。


「うーん…。面倒だけどせっかくインストールしたしやってみるかな。それにあの子に感想言うって約束しちゃったし」


 私はスマホから“キミトモ”を開いた。


「えーっと、攻略対象は『王太子』『公爵子息』『騎士団長子息』『天才魔法使い』『大商会の跡取り』か…」


 最初はメインヒーローである『王太子』を選ぶ人が多いだろうが、私は親友がオススメだという『公爵子息』を選んだ。貴重な晩酌タイムを使うのだから、ぜひとも私の固定概念を覆してほしいものだ。


「まぁ少しだけやったら寝よっと」


 そう決めてゲームを始めたのだが、『公爵子息』の攻略に夢中になり、気づけば外が明るくなっていた。


「よし、クリアー!……ふわぁ。あー明日も仕事だからそろそろ寝なきゃ…って嘘!?もうこんな時間!?」


 慌てて時計を見るとまもなく起床時間だった。これではもう寝れないと諦めた私は一睡もせず仕事へと向かうことになる。


「…今日帰ったら感想言わないとな」


 親友に感想を伝えるのは仕事から帰ってきてからにしようと決め、私は眠い目を擦りながら仕事へと向かった。しかしその道のりで私は事故に遭い、親友に感想を伝えられぬままこの世を去ってしまうのである。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結】お荷物王女は婚約解消を願う

miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。 それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。 アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。 今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。 だが、彼女はある日聞いてしまう。 「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。 ───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。 それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。 そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。 ※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。 ※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。

大好きな婚約者に「距離を置こう」と言われました

ミズメ
恋愛
 感情表現が乏しいせいで""氷鉄令嬢""と呼ばれている侯爵令嬢のフェリシアは、婚約者のアーサー殿下に唐突に距離を置くことを告げられる。  これは婚約破棄の危機――そう思ったフェリシアは色々と自分磨きに励むけれど、なぜだか上手くいかない。  とある夜会で、アーサーの隣に見知らぬ金髪の令嬢がいたという話を聞いてしまって……!?  重すぎる愛が故に婚約者に接近することができないアーサーと、なんとしても距離を縮めたいフェリシアの接近禁止の婚約騒動。 ○カクヨム、小説家になろうさまにも掲載/全部書き終えてます

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】広間でドレスを脱ぎ捨てた公爵令嬢は優しい香りに包まれる【短編】

青波鳩子
恋愛
シャーリー・フォークナー公爵令嬢は、この国の第一王子であり婚約者であるゼブロン・メルレアンに呼び出されていた。 婚約破棄は皆の総意だと言われたシャーリーは、ゼブロンの友人たちの総意では受け入れられないと、王宮で働く者たちの意見を集めて欲しいと言う。 そんなことを言いだすシャーリーを小馬鹿にするゼブロンと取り巻きの生徒会役員たち。 それで納得してくれるのならと卒業パーティ会場から王宮へ向かう。 ゼブロンは自分が住まう王宮で集めた意見が自分と食い違っていることに茫然とする。 *別サイトにアップ済みで、加筆改稿しています。 *約2万字の短編です。 *完結しています。 *11月8日22時に1、2、3話、11月9日10時に4、5、最終話を投稿します。

処理中です...