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006.合格と邂逅
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「ななななななななな、何が起こったんだ!?」
「お望み通り力を見せてやったのだが、これでは足りぬというのか?」
「充分過ぎるわ! 媒介物もなしに魔法を使って、あげく見たこともない強力な魔法を使うって!」
「ただの消滅魔じゅ・・・魔法なのだがな」
我とした事が、魔術と呼称しそうになってしまうとは。
「消滅魔法? なにそれおいしいの? アハハハハハ・・・」
それにしても、この審査員の人間は壊れたように小さく笑っているな。
なんというか・・・我をもってして不気味と言わざるおえぬ。
「それで? 我の結果はどうなのだ?」
「結果発表は纏めて・・・します・・・すすすすす・・・」
うむ・・・どうやら本当に壊れたようだ。
「ルキさん・・・やりすぎかと」
「あれでも力を抑えたつもりであったが・・・」
「もう何も言いません・・・」
「ここは人間の好機の目にさらされている。我が離れねばならぬようだな」
「一緒にいますね」
小娘も付いて来たか。利用価値が見出せている以上、傍に置くのも悪くなかろう。
試験を受けた人間共から離れ、しばしの時を過ごすと、先ほどの受付をしていた人間が、大きな羊皮紙をボードに貼り付けた。
「合格者はここに名前が記載されています! 自分で確認してください!」
「行きましょう、ルキさん」
「我の名前と、貴様の名前があればよいのだろう?」
「そうですよ。それを確かめに・・」
「我の名も、貴様の名もある」
「え!? ここから見えるんですか?」
「当然だが」
「いろいろ考えないようにしてたけど、もう人間業じゃない!」
我は人間ではないのだがな。小娘まで壊れたか?
「・・・何はともあれこれで、私達はアカデミーの生徒になるのですね」
「アカデミーか・・・どんなものか見せてもらおう」
「合格者は校舎の入り口に集合見たいです」
「大分と数が少ないな」
合格者は人間10匹程度。試験を受けたのは、これの何倍もいたと思うが。
この学び舎には、この人数では持て余すのではないか? 我ら魔族との戦争も終わりを告げ、人間は贅沢を覚えたようだ。
「まずは合格おめでとうと言ったところか」
女が1人学び舎から出てくる。そして我はそいつに見覚えがある。
こやつは・・・勇者共に居た女。
我が眠りについていた分、相応に歳を取っている。
見覚えのある姿は若い小娘であったが、今では子をなしていてもおかしくはないな。
「もたもたするな! とっとと校舎に入れ!」
女のその言葉に合格した人間共は、慌てて校舎と呼称された建物に入る。
我の記憶では奥で怯えている気弱な娘であったが、本来はこんな性格の女だったのだろうか。
「行きましょう」
小娘と共に校舎に入ろうとするが。
「あなた・・・見たこともない魔法だったわね。長身に顔立ち、合格よ。ふふふ、とってもおいしそう」
伸びてくる女の手を弾く。
「我に触るな」
小奴も復讐すべき相手。本来であればここで葬る所だが、それでは勇者に我が復活した事が伝わる。
小奴はギリギリのところで、生かされているだけなのだ。
「ふふふ、面白いわね。そんな子も嫌いじゃないは。あなたみたいな子が、必死に私を求める姿を見るのが、とっても好きなのよ」
「我が貴様に下るなどと、過大な幻想を抱く愚かな・・・!」
「すいません! 失礼します!」
小娘に手を引かれ、強引に話を中断させられた。
「何をしている!?」
「あの人はナーマです。魔王を討伐した勇者パーティーの一員で、最強の魔法使いと言われています。この分校のを任されている、校長でもあるんですよ? そんな人と問題を起こしたらどうなるか・・・」
「・・・あれが最強の魔法使い?」
「はい、ルキさんが使った魔法と、同等かそれ以上の魔法が使えるはずです」
「ほう・・・それは楽しみだな」
そうであれば、あの女の実力が分かれば、人間の魔法の上限も分かるというもの。
上手く立ち回り、あの女と人目につかぬ所で一騎打ちの場を作らねば。
「楽しみってなんですか! 年上が好みなんですか!?」
「貴様は何を言っているのだ?」
今度は突然怒り出しているが、かくも人間の感情というのは分からぬな。
校舎内にある講堂に、他の専攻の合格者共と共に集められ、入学の挨拶というのをさせられる。
このような人間の無意味な集団行動に、正直不快を感じざるおえない。
このような催しをする事に、何の意味があるというのか。
今も消費されている時を、実力向上の時にするべきではないのか?
「退屈そうですね、ルキさん」
「退屈どころではない・・・」
最後の催しが校長とやらの挨拶であり、マーナと呼ばれていたあの女が壇上に上がって来る。
「みなの入学を心より歓迎する。これから君達は・・・」
先ほどまでとの態度とは違い、威厳を出した様相である。
だが話終わると、女は舌なめずりをし我に目線を送ってきた。
その姿に、我の周りにいる男どもは生唾を飲み込んでいるようだ。
あんな女が好みなのか? 人間というのは分からぬな。
「寮を希望する人は記帳してから帰って下さい!」
受付にいた女が講堂の出口で声を張り上げる。
「寮とは何だ?」
「学校側が用意してくれる、家みたいなものです」
「家か・・・。貴様はどうするのだ?」
「私は・・・自分で借家を用意しようかと」
「ならば我もそうしよう。ここで人間と共同生活など、我には耐えられぬ」
「じゃあ、一緒に部屋を探しましょうか」
小娘に手を引かれ、我はノドの街へと歩む。
手を握られた事はいささか不愉快だが、我も我慢を覚えたので許してやるか。
並び歩く2人を、校長室から見下ろすマーナ。
「あんな若いだけの娘に、その子は渡さないわよ・・・」
強く唇を噛んでしまったのか、一筋の血が顎にまで流れている。
その地を拭い、魔導専攻の合格者名簿にある、ルキフェルの名前にキスをした。
「あ~ルキフェル、なんて素敵なの? わたしは・・・あなたのような子を待っていたのよ」
まるで愛おしい者を見るかのように、ガラス越しにルキフェルを眺めていた。
「お望み通り力を見せてやったのだが、これでは足りぬというのか?」
「充分過ぎるわ! 媒介物もなしに魔法を使って、あげく見たこともない強力な魔法を使うって!」
「ただの消滅魔じゅ・・・魔法なのだがな」
我とした事が、魔術と呼称しそうになってしまうとは。
「消滅魔法? なにそれおいしいの? アハハハハハ・・・」
それにしても、この審査員の人間は壊れたように小さく笑っているな。
なんというか・・・我をもってして不気味と言わざるおえぬ。
「それで? 我の結果はどうなのだ?」
「結果発表は纏めて・・・します・・・すすすすす・・・」
うむ・・・どうやら本当に壊れたようだ。
「ルキさん・・・やりすぎかと」
「あれでも力を抑えたつもりであったが・・・」
「もう何も言いません・・・」
「ここは人間の好機の目にさらされている。我が離れねばならぬようだな」
「一緒にいますね」
小娘も付いて来たか。利用価値が見出せている以上、傍に置くのも悪くなかろう。
試験を受けた人間共から離れ、しばしの時を過ごすと、先ほどの受付をしていた人間が、大きな羊皮紙をボードに貼り付けた。
「合格者はここに名前が記載されています! 自分で確認してください!」
「行きましょう、ルキさん」
「我の名前と、貴様の名前があればよいのだろう?」
「そうですよ。それを確かめに・・」
「我の名も、貴様の名もある」
「え!? ここから見えるんですか?」
「当然だが」
「いろいろ考えないようにしてたけど、もう人間業じゃない!」
我は人間ではないのだがな。小娘まで壊れたか?
「・・・何はともあれこれで、私達はアカデミーの生徒になるのですね」
「アカデミーか・・・どんなものか見せてもらおう」
「合格者は校舎の入り口に集合見たいです」
「大分と数が少ないな」
合格者は人間10匹程度。試験を受けたのは、これの何倍もいたと思うが。
この学び舎には、この人数では持て余すのではないか? 我ら魔族との戦争も終わりを告げ、人間は贅沢を覚えたようだ。
「まずは合格おめでとうと言ったところか」
女が1人学び舎から出てくる。そして我はそいつに見覚えがある。
こやつは・・・勇者共に居た女。
我が眠りについていた分、相応に歳を取っている。
見覚えのある姿は若い小娘であったが、今では子をなしていてもおかしくはないな。
「もたもたするな! とっとと校舎に入れ!」
女のその言葉に合格した人間共は、慌てて校舎と呼称された建物に入る。
我の記憶では奥で怯えている気弱な娘であったが、本来はこんな性格の女だったのだろうか。
「行きましょう」
小娘と共に校舎に入ろうとするが。
「あなた・・・見たこともない魔法だったわね。長身に顔立ち、合格よ。ふふふ、とってもおいしそう」
伸びてくる女の手を弾く。
「我に触るな」
小奴も復讐すべき相手。本来であればここで葬る所だが、それでは勇者に我が復活した事が伝わる。
小奴はギリギリのところで、生かされているだけなのだ。
「ふふふ、面白いわね。そんな子も嫌いじゃないは。あなたみたいな子が、必死に私を求める姿を見るのが、とっても好きなのよ」
「我が貴様に下るなどと、過大な幻想を抱く愚かな・・・!」
「すいません! 失礼します!」
小娘に手を引かれ、強引に話を中断させられた。
「何をしている!?」
「あの人はナーマです。魔王を討伐した勇者パーティーの一員で、最強の魔法使いと言われています。この分校のを任されている、校長でもあるんですよ? そんな人と問題を起こしたらどうなるか・・・」
「・・・あれが最強の魔法使い?」
「はい、ルキさんが使った魔法と、同等かそれ以上の魔法が使えるはずです」
「ほう・・・それは楽しみだな」
そうであれば、あの女の実力が分かれば、人間の魔法の上限も分かるというもの。
上手く立ち回り、あの女と人目につかぬ所で一騎打ちの場を作らねば。
「楽しみってなんですか! 年上が好みなんですか!?」
「貴様は何を言っているのだ?」
今度は突然怒り出しているが、かくも人間の感情というのは分からぬな。
校舎内にある講堂に、他の専攻の合格者共と共に集められ、入学の挨拶というのをさせられる。
このような人間の無意味な集団行動に、正直不快を感じざるおえない。
このような催しをする事に、何の意味があるというのか。
今も消費されている時を、実力向上の時にするべきではないのか?
「退屈そうですね、ルキさん」
「退屈どころではない・・・」
最後の催しが校長とやらの挨拶であり、マーナと呼ばれていたあの女が壇上に上がって来る。
「みなの入学を心より歓迎する。これから君達は・・・」
先ほどまでとの態度とは違い、威厳を出した様相である。
だが話終わると、女は舌なめずりをし我に目線を送ってきた。
その姿に、我の周りにいる男どもは生唾を飲み込んでいるようだ。
あんな女が好みなのか? 人間というのは分からぬな。
「寮を希望する人は記帳してから帰って下さい!」
受付にいた女が講堂の出口で声を張り上げる。
「寮とは何だ?」
「学校側が用意してくれる、家みたいなものです」
「家か・・・。貴様はどうするのだ?」
「私は・・・自分で借家を用意しようかと」
「ならば我もそうしよう。ここで人間と共同生活など、我には耐えられぬ」
「じゃあ、一緒に部屋を探しましょうか」
小娘に手を引かれ、我はノドの街へと歩む。
手を握られた事はいささか不愉快だが、我も我慢を覚えたので許してやるか。
並び歩く2人を、校長室から見下ろすマーナ。
「あんな若いだけの娘に、その子は渡さないわよ・・・」
強く唇を噛んでしまったのか、一筋の血が顎にまで流れている。
その地を拭い、魔導専攻の合格者名簿にある、ルキフェルの名前にキスをした。
「あ~ルキフェル、なんて素敵なの? わたしは・・・あなたのような子を待っていたのよ」
まるで愛おしい者を見るかのように、ガラス越しにルキフェルを眺めていた。
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