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三章

31.ヘリンと買い物(番外編)

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 本編の展開が中々複雑になってしまったので息抜きで書いた番外編その2です。
 タイミング的には19話と20話の間くらいの話です。
読まなくても展開には支障ありませんが箸休めだと思っていただけると幸いです。



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼



「さあフィオネ、起きて! さっさと着替えて!」

 もう何度目か分からないヘリンによる強制叩き起し式目覚ましにより、私は目が覚めた。

「んん......。今日はなんなの?」

 今日はせっかく丸一日休みを貰っているのに何故かヘリンに起こされた。

「なんなの? じゃないわよ、今日はこの国の建国記念日よ! 今日買わなかったらいつ買うのよ! バーゲンよバーゲン!」

「バー、......なんて?」

 どうやら今日は建国記念日による年に一回の大安売りの日らしい。

「あんた、着る服無いって言ってたわよね? 買いに行くわよ」

「あー......確かに。覚えたんだヘリン」

 確かに一枚も私服がないのは流石に不便である。
 買いに行くなら今日しかないかもしれない。

「まあね、それとあんたは今日重要な役目があるわ」
「?」

「――に・も・つ・も・ち。よろしくね♡」

 彼女から出た衝撃の言葉になんで私が!と反抗するも先日の祭りのときに服を貸してあげたのに、と言われて言い返せなかった。

(そんなことだろうと思ったよ......)

「さ、五十秒で支度しなさい。私は今日のバーゲンに命かけてるの。本気よ」

「はいはい」

 そうしてヘリンに急かされた私は支度をし、街に出た。
 時刻はまだ朝の七時なのに今日はすごく道を歩く人が多く、何やら騒がしい雰囲気だ。

「あれ可愛い」

 通り過ぎる同年代くらいの女の子の服を見て、ついぼそっと漏らしてしまった。

「ふーん、あれは向こうの通りの店ね。行くわよ」

「え、ヘリン? わあああ」

 次の瞬間、ヘリンは私の腕を掴み半ば引きづる形で走り出した。

「ついたわ。ここよ」

「はあ、はあ......」

 連れてこられたのはさっきの女の子が着ていたような可愛い服がたくさんある店だった。
 ぼーっと見ているとヘリンがさっさと入っていったので慌ててついていく。

 すると目に入ったのは店内にある白やピンクを基調としたシンプルなワンピースやフリルが多めのシックなドレスなど。

 生まれてこのかた服を自分で選ぶ機会など無かったので何をどう選んでいいか分からない。

(......シウォンはどういうのが好きなんだろう?)

 って、え。

 どうして今シウォンの顔が浮かんだの私。

「なんか、いっぱい服があって選べないな」
「そう? じゃあ、そうね。これとこれとこれ、試着するわよ」
「へっ? ヘリン引っ張るのはやめ、わあああ」

 私が初めての服屋に戸惑っていると、ヘリンが数着ぱぱっと選んだ服を渡されてまた腕を掴まれて試着室に連れていかれた。

「うーん、微妙ね。これは可愛いわ、似合ってる。これは可愛いけどサイズが合ってないわ。あー......次!」

「これ、可愛くない?」

「そうねえ、それも良いけどこっちの方が似合うわよ」

 彼女のジャッジによりどんどん服が捌かれていく。まるで鬼才ファッションデザイナーのような気迫だ。私はよく分からないので黙ってヘリンの着せ替え人形になるしか無かった。

「まいどありー」

「ふー良い買い物したわね」

 ヘリンが選んでくれたのは水色の刺繍が入ったワンピースとピンク色のチェックのスカート、そしてリボンのついたブーツだった。

「うん、これ全部可愛いね.....ヘリン、ありがとう」

「ばっ! これくらいでそんなに感謝されても嬉しくないんだからねっ!」

 なんか、そう言う彼女の耳が若干赤いのは気のせいだろうか。
 ここに来てからヘリンとは随分仲良く慣れたような気がする。もし自分に姉がいたらこんな感じなのかもしれない。

「まっこれから付き合わせると思えばこれくらいわね」
「?」
「あんた忘れてるでしょ」
「何を?」

 私は自分の服を買えたことにより、今朝起きた出来事をすっかり忘れていた。

「に・も・つ・も・ち」

 その瞬間、腕をがっ!と掴まれる。

「へっヘリン......ちょっとまっ、ああわあああ」

「さあ行くわよ。今から全店回るんだからもたもたしてたら置いてくからね!」

 そうしてそのあと私は地獄の全店巡り荷物持ちを一日中、させられたのだった。
 もう彼女とは一緒に買い物に行かないと心に誓ったフィオネでした。
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