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三章
29.悪逆の皇子
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私とシウォンはスワムが用意したドレスコードに着替えて本城に登城した。
(すごい、でかい......)
目の前には私がいた離れの宮とは比べ物にならないくらい大きな城がそびえ立っていた。
それにしてもこんな横に長い階段、登ったことがないよ......。
階段の両端には一段ごとに二人、槍を持った護衛兵が中央を向いて立っている。
「シウォン私、礼儀作法とか何も分からないんだけど」
「お辞儀する時だけ僕に合わせて。あとは大人しくしてれば大丈夫だよ」
私はスワムとシウォンの後ろに着いていくように緊張しながらも階段を登る。
「皇弟陛下、第二皇子の登城です!」
城の中に入ると、一斉に皆がこちらを見てざわついた。
「第二皇子だと......? あれが?」
「でも確かに王族特有の赤い目だな」
「なんでこのタイミングで現れたんだ?」
ヒソヒソと周囲からそんな声が聞こえる。
まるでこちらを鋭く値踏みするような視線に私は気分が落ち着かない。
「皇弟、シウォン、久しぶりだな?」
その時、一人の男が二人に声をかけた。
「お久しぶりです。兄上、お変わりないようで」
金髪の髪にシウォンと同じ赤い目。
シウォンとは二歳差らしいが、身長が頭二個分くらいの差がある。
物凄い圧だ。上から睨まれると萎縮してしまいそうなくらいの殺気を出している。
「お前は、随分と変わったな。目があの時と違う。何か”余計”なことを考えている目だ。生憎俺は忙しいんだが、二人して一体、何をしに来たんだ?」
「忙しいだろうな、国の危機だ。私達も出来ることがあるだろうと思ってね。それにシウォンは今日で十六だ。ここに立つ権利がある。君も人手が多い方が良いだろう?」
「......そうか、では二人とも俺の役に立ってくれよ」
そう言ってジークは誰からも分かるような蔑んだ目で二人を一瞥し、玉座の椅子に向かって歩き出した。
「シウォン、大丈夫?」
「ごめんね、フィオネ。怖かったでしょ? でももうちょっと頑張ってね」
シウォンはいつも話しているときより数段気を張っている。
しっかりした大人のように振る舞うシウォンはこんな状況なのにすごくドキドキする。
「ジーク皇子! トーユ国とユジ国がジーク皇子と話をさせろと言っております!」
その瞬間、慌てて走ってきた騎士がジークに告げる。
「なんだと?」
そう言って騎士を睨みつけると騎士はひぃ、と小さく悲鳴をあげた。
彼はおそらく部下からも恐れられているのかもしれない。
「トーユ国は我が国を侵略したいのではなく、こちらと条件付きで協定を結んでほしいと申しています。そのために強行に及んだと。国民を傷付ける意図は無いと言っています」
「はっ、条件とはなんだ?」
「トーユ国とユジ国を含む協定を結んだ国には今後攻撃しないこと、だそうです。受け入れないならトーユ国の海上貿易は再開しないと」
(なるほど、海上貿易か......これは呑むしかないよね)
しかし、そう思った私の想定を上回る返答が会場響く。
「なんだと? ならん。トーユ国の輸入を止められたままでは困る。しかし、ユジ国との鉱山の交渉は決裂した。それにあの国王、俺をコケにしやがって......!」
(え......)
わなわなとジークは震える。
様子を見る限り、彼はとにかくプライドが高いようだ。
「国王達をここに連れてこい。直接対話しなければ」
「分かりました!」
トーユ国と直接話なんてしたら彼は怒りに任せて斬り殺してしまうのではないだろうか?
私は内心焦りながらも流れに任せてその場を見守るしかなかった。
(すごい、でかい......)
目の前には私がいた離れの宮とは比べ物にならないくらい大きな城がそびえ立っていた。
それにしてもこんな横に長い階段、登ったことがないよ......。
階段の両端には一段ごとに二人、槍を持った護衛兵が中央を向いて立っている。
「シウォン私、礼儀作法とか何も分からないんだけど」
「お辞儀する時だけ僕に合わせて。あとは大人しくしてれば大丈夫だよ」
私はスワムとシウォンの後ろに着いていくように緊張しながらも階段を登る。
「皇弟陛下、第二皇子の登城です!」
城の中に入ると、一斉に皆がこちらを見てざわついた。
「第二皇子だと......? あれが?」
「でも確かに王族特有の赤い目だな」
「なんでこのタイミングで現れたんだ?」
ヒソヒソと周囲からそんな声が聞こえる。
まるでこちらを鋭く値踏みするような視線に私は気分が落ち着かない。
「皇弟、シウォン、久しぶりだな?」
その時、一人の男が二人に声をかけた。
「お久しぶりです。兄上、お変わりないようで」
金髪の髪にシウォンと同じ赤い目。
シウォンとは二歳差らしいが、身長が頭二個分くらいの差がある。
物凄い圧だ。上から睨まれると萎縮してしまいそうなくらいの殺気を出している。
「お前は、随分と変わったな。目があの時と違う。何か”余計”なことを考えている目だ。生憎俺は忙しいんだが、二人して一体、何をしに来たんだ?」
「忙しいだろうな、国の危機だ。私達も出来ることがあるだろうと思ってね。それにシウォンは今日で十六だ。ここに立つ権利がある。君も人手が多い方が良いだろう?」
「......そうか、では二人とも俺の役に立ってくれよ」
そう言ってジークは誰からも分かるような蔑んだ目で二人を一瞥し、玉座の椅子に向かって歩き出した。
「シウォン、大丈夫?」
「ごめんね、フィオネ。怖かったでしょ? でももうちょっと頑張ってね」
シウォンはいつも話しているときより数段気を張っている。
しっかりした大人のように振る舞うシウォンはこんな状況なのにすごくドキドキする。
「ジーク皇子! トーユ国とユジ国がジーク皇子と話をさせろと言っております!」
その瞬間、慌てて走ってきた騎士がジークに告げる。
「なんだと?」
そう言って騎士を睨みつけると騎士はひぃ、と小さく悲鳴をあげた。
彼はおそらく部下からも恐れられているのかもしれない。
「トーユ国は我が国を侵略したいのではなく、こちらと条件付きで協定を結んでほしいと申しています。そのために強行に及んだと。国民を傷付ける意図は無いと言っています」
「はっ、条件とはなんだ?」
「トーユ国とユジ国を含む協定を結んだ国には今後攻撃しないこと、だそうです。受け入れないならトーユ国の海上貿易は再開しないと」
(なるほど、海上貿易か......これは呑むしかないよね)
しかし、そう思った私の想定を上回る返答が会場響く。
「なんだと? ならん。トーユ国の輸入を止められたままでは困る。しかし、ユジ国との鉱山の交渉は決裂した。それにあの国王、俺をコケにしやがって......!」
(え......)
わなわなとジークは震える。
様子を見る限り、彼はとにかくプライドが高いようだ。
「国王達をここに連れてこい。直接対話しなければ」
「分かりました!」
トーユ国と直接話なんてしたら彼は怒りに任せて斬り殺してしまうのではないだろうか?
私は内心焦りながらも流れに任せてその場を見守るしかなかった。
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