27 / 50
二章
27.十六歳
しおりを挟む
シウォンは成人とする十六歳になるまでここで身を隠して、その後皇弟の力を借りて本城に戻り、ジークと継承権争いをするつもりらしい。
「じゃあ、シウォンはこの国の王様になるかもしれないってこと?......今から敬語使っても間に合うかな?シウォン様?」
「ふふっやめてよ。フィオネ、僕は君の友達なんだから今まで通り接してくれ」
シウォンは笑って返したが、本当に王位を継承すれば今のような”友達”みたいに軽口叩けることは無くなるだろう。
私はシウォンが友達だと言ってくれたことが嬉しいのに、“友達”だと言い切ってしまったことが少しだけ悲しかった。
(私はそれ以上の気持ちがあるのに――)
「そういえばヘリンはどうしてこのことを知ってたんだろう」
私は自分の気持ちに意識が向かないように咄嗟に彼に疑問を投げかけた。
「皇弟が信用してる数人の使用人には伝えてるって言ってたよ。僕はそのヘリンって人には会ったことないけどきっと君を巻き込まないように嘘をついたんだろうね」
「あ......シウォン、私も言ってないことがあった。その、私ここに来る前は――」
ゴーン......ゴーン
その瞬間、二人の会話を割くような大きな鐘の音が聞こえる。
ゴーン......ゴーン......ゴーン......。
鐘の音は次第に大きくなり、何度も何度も繰り返し鳴って止まらない。
「警報だ」
「この鐘、何の音? それにさっきから街の方が騒がしいような......」
私達は壊れた城壁の間から街を見下ろした。
すると遠くの方に人だかりが出来ているのが見えた。
しかし、なんだか様子がおかしい。
「シウォン、あの辺......」
「あそこは国境だ。それにあの旗......ユジ国じゃないか? なんでここに?」
「ねぇ、さっき警報って」
「! そうだ。さっきの鐘は間違いなく避難の合図だ。じゃあつまり、あれは――」
敵襲だ、とシウォンは言い切った。
「最近のジークは政策に失敗して、トーユ国にユジ国、その二つと協定を結んでいる周辺の国に恨まれている。もしかしたら、今この国は......戦争が始まったのかもしれない」
彼はそう言うと、すぐに私の横を通り過ぎてどこかに向かおうとする。
「シウォン! どこ行くの?」
「僕が止めに行く」
「えっ、どうやって......?」
「この時を待ってたんだ」
するとシウォンは何故か余裕そうな笑みで笑った。
真上に登っていた月は白くなり、いつの間にか朝になっている。
その朝日が、かつて初めて彼に会った時と同じようにあの綺麗な銀髪を照らしていた。
「僕は今日やっと、十六歳になったんだ」
「じゃあ、シウォンはこの国の王様になるかもしれないってこと?......今から敬語使っても間に合うかな?シウォン様?」
「ふふっやめてよ。フィオネ、僕は君の友達なんだから今まで通り接してくれ」
シウォンは笑って返したが、本当に王位を継承すれば今のような”友達”みたいに軽口叩けることは無くなるだろう。
私はシウォンが友達だと言ってくれたことが嬉しいのに、“友達”だと言い切ってしまったことが少しだけ悲しかった。
(私はそれ以上の気持ちがあるのに――)
「そういえばヘリンはどうしてこのことを知ってたんだろう」
私は自分の気持ちに意識が向かないように咄嗟に彼に疑問を投げかけた。
「皇弟が信用してる数人の使用人には伝えてるって言ってたよ。僕はそのヘリンって人には会ったことないけどきっと君を巻き込まないように嘘をついたんだろうね」
「あ......シウォン、私も言ってないことがあった。その、私ここに来る前は――」
ゴーン......ゴーン
その瞬間、二人の会話を割くような大きな鐘の音が聞こえる。
ゴーン......ゴーン......ゴーン......。
鐘の音は次第に大きくなり、何度も何度も繰り返し鳴って止まらない。
「警報だ」
「この鐘、何の音? それにさっきから街の方が騒がしいような......」
私達は壊れた城壁の間から街を見下ろした。
すると遠くの方に人だかりが出来ているのが見えた。
しかし、なんだか様子がおかしい。
「シウォン、あの辺......」
「あそこは国境だ。それにあの旗......ユジ国じゃないか? なんでここに?」
「ねぇ、さっき警報って」
「! そうだ。さっきの鐘は間違いなく避難の合図だ。じゃあつまり、あれは――」
敵襲だ、とシウォンは言い切った。
「最近のジークは政策に失敗して、トーユ国にユジ国、その二つと協定を結んでいる周辺の国に恨まれている。もしかしたら、今この国は......戦争が始まったのかもしれない」
彼はそう言うと、すぐに私の横を通り過ぎてどこかに向かおうとする。
「シウォン! どこ行くの?」
「僕が止めに行く」
「えっ、どうやって......?」
「この時を待ってたんだ」
するとシウォンは何故か余裕そうな笑みで笑った。
真上に登っていた月は白くなり、いつの間にか朝になっている。
その朝日が、かつて初めて彼に会った時と同じようにあの綺麗な銀髪を照らしていた。
「僕は今日やっと、十六歳になったんだ」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる