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二章

27.十六歳

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 シウォンは成人とする十六歳になるまでここで身を隠して、その後皇弟の力を借りて本城に戻り、ジークと継承権争いをするつもりらしい。

「じゃあ、シウォンはこの国の王様になるかもしれないってこと?......今から敬語使っても間に合うかな?シウォン様?」

「ふふっやめてよ。フィオネ、僕は君の友達なんだから今まで通り接してくれ」

 シウォンは笑って返したが、本当に王位を継承すれば今のような”友達”みたいに軽口叩けることは無くなるだろう。
 私はシウォンが友達だと言ってくれたことが嬉しいのに、“友達”だと言い切ってしまったことが少しだけ悲しかった。

(私はそれ以上の気持ちがあるのに――)

「そういえばヘリンはどうしてこのことを知ってたんだろう」

 私は自分の気持ちに意識が向かないように咄嗟に彼に疑問を投げかけた。

「皇弟が信用してる数人の使用人には伝えてるって言ってたよ。僕はそのヘリンって人には会ったことないけどきっと君を巻き込まないように嘘をついたんだろうね」

「あ......シウォン、私も言ってないことがあった。その、私ここに来る前は――」

 ゴーン......ゴーン

 その瞬間、二人の会話を割くような大きな鐘の音が聞こえる。

 ゴーン......ゴーン......ゴーン......。

 鐘の音は次第に大きくなり、何度も何度も繰り返し鳴って止まらない。

「警報だ」

「この鐘、何の音? それにさっきから街の方が騒がしいような......」

 私達は壊れた城壁の間から街を見下ろした。
 すると遠くの方に人だかりが出来ているのが見えた。
 しかし、なんだか様子がおかしい。

「シウォン、あの辺......」
「あそこは国境だ。それにあの旗......ユジ国じゃないか? なんでここに?」
「ねぇ、さっき警報って」
「! そうだ。さっきの鐘は間違いなく避難の合図だ。じゃあつまり、あれは――」

 敵襲だ、とシウォンは言い切った。

「最近のジークは政策に失敗して、トーユ国にユジ国、その二つと協定を結んでいる周辺の国に恨まれている。もしかしたら、今この国は......戦争が始まったのかもしれない」

 彼はそう言うと、すぐに私の横を通り過ぎてどこかに向かおうとする。

「シウォン! どこ行くの?」

「僕が止めに行く」

「えっ、どうやって......?」

「この時を待ってたんだ」

 するとシウォンは何故か余裕そうな笑みで笑った。
 真上に登っていた月は白くなり、いつの間にか朝になっている。
 その朝日が、かつて初めて彼に会った時と同じようにあの綺麗な銀髪を照らしていた。

「僕は今日やっと、十六歳になったんだ」
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