スラムメイドと幽霊坊ちゃんの夜会飯

月址さも

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二章

26.告白

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「久しぶり、フィオネ。最近こないから何かあったのかと思ったよ」

 城壁の間から見える並木道。
 赤く色づいていた葉っぱは私達が会わない間、茶色く色を変えていた。
 この城に訪れてから毎日が楽しくて、移り変わる日々があっという間に過ぎていく。

「シウォン、私にまだ隠してることがあるよね?」

「フィオネ......?」

「私、ヘリンから聞いたの。でもまだ信じてないよ。シウォンの口から聞くまでは」

「ちょっと待って、どうして怒ってるの? 僕何かしたかな?」

 シウォンは私の突然の態度に動揺していた。
 構わずに続ける。

「シウォンは前に言ったよね? 自分は捨てられた使用人の息子だって」

「!」

「ヘリンに聞いた後、色んな人にその”使用人”のことを聞いてみたの。でも、誰もそんな人は知らないって言われたの。そうだよね......だってシウォンは本当は――」

「待って!」

「――この国の第二皇子だから」

 その瞬間、強い秋風が二人の間を横切った。
 冷たく、身体に叩きつけられるような風はまるで二人の心の亀裂を表しているかのようだった。

「......本当なの?」

 心の底から出た疑問。
 それが本当なら私たちは今までのようにはいられないはずだ。

「――うん。嘘ついてごめんね」

「そんなあっさり! なんでっ......」

「フィオネ」

 シウォンはそう言うと私の手を両手で取り、悲しそうな、申し訳なさそうな顔で控えめに微笑んだ。

「話すよ、全部。僕が誰なのか。君にどうして隠してたのか。でもその前に僕は君に言わなきゃいけないことがあるね」

 君を傷つけてごめんね、と言ってシウォンは私に謝った。









「......大丈夫?」

「うん...急に泣いてごめん。もう大丈夫」

 私はシウォンが謝ってくれたことが嬉しくて泣いてしまっていた。

 シウォンから聞いた話をまとめると、第一継承権を持つ長男のジークは幼少期に母である女王陛下を亡くし、後妻の子供である弟のシウォンをよくいじめていた。

 いじめめを可哀想に思った周囲の人はシウォンだけを可愛がり、ジークを腫れもの扱いするようになった。
 それを逆恨みしたジークは後妻を階段から突き落とし、下半身麻痺の大怪我を負わせる。
 後妻は精神を病み、別荘で今も長期療養をしている。

(正直、ここまで聞いて結構衝撃的......)

 そんなことがあっても長男のジークを皇帝は可哀想に思い、その事実は隠蔽された。

 ジークの逆恨みに誰も巻き込みたくなかったシウォンは自らも精神を病んだふりをして皇弟に協力を依頼した。
 その結果ここに匿ってもらっている形になったという。

「匿うにしてもここ、結構ボロボロだし人が住むにはちょっと......」

「あえてだよ。こんなところ用があっても近づきたくないだろ?それに幽霊の噂も流したからほぼ100%ここには誰も寄りつかないと思ったんだ」

「幽霊!?」

 今の今までその存在も記憶も忘れていたが、そういえばあの幽霊もしかして――

「あの血まみれのお化け、シウォンなの?」

「血まみれ? ああ、魚捌いてた時のことかな? お化けなんかいないよ、それは全部皇弟が流してくれた噂さ」

「えっ」

 ――ええええええええ!?!?!?!?
 私は驚きのあまり、咄嗟にその場で大声で叫んでいた。
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