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二章
23.また助けられた
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「聞いた? ジーク皇子がトーユ国との貿易を停止したらしいわよ」
「えっどういうこと? トーユ国には侵略してないじゃない」
昼休憩の食堂でメイド達が騒いでる。
今日も今日とて話題は第一皇子のことだ。
「トーユ国は隣国のユジ国と平和協定を結んでるから先月の戦争でユジ国を攻撃されて怒ったみたい。それで貿易を停止するらしいわ」
「そんな! トーユ国の輸入が無かったら私達結構やばいんじゃないの?」
どうやら最近のジーク皇子は失敗続きらしく、ついにやらかしてしまったらしい。
「皇帝が病にかかる前はあんなにこの国は安定していたのに......」
「そうよね、このままジーク皇子が王になったらって考えると不安よね」
「ちょっとあんた達! そんなの誰かに聞かれてたらまずいわよ。口を慎みなさい」
「「はぁい......」」
最近皆元気が無い。
あの戦勝パーティーから一ヶ月、季節はすっかり秋になっていた。
「フィオネ、この後買い出し頼みたいんだけど大丈夫?」
「買い出し? いいよ。何を買ってくればいいの?」
「じゃがいもと生姜と豆とにんにくが切れてたわ。八百屋で全部買えるからお願いね。地図を渡すからこれを見て行くのよ」
地図を見ると赤いペンで八百屋に丸がしてある。
一人で買い出しは初めてだが、前にヘリンと言ったことがあるし、大丈夫だろう。
「じゃあ、行ってきまーす」
私はわくわくしながら城を飛び出した。
地図を見ながら記憶を頼りに歩いていくと見覚えのある看板を見つけた。
ここだ。
私は無事に八百屋にたどり着くことが出来た。
さっそくメモを見ながら店主に話しかける。
「あのー、じゃがいも三個と生姜一個と豆百グラムとにんにく六個ください」
「あいよーお嬢ちゃん。お使いかい? 偉いねえ、はい、全部で六十ドル」
私は財布を開け、お金を支払おうとした。
(十......二十......四十......あれ?)
「この前じゃがいももっと買った時二十五ドルくらいだったような」
「あー、実は値上げしたんだよ。トーユ国の船が来月から港に来ないって言うんだ。だからどうしても物価が上がっててね」
(そうなんだ......)
私は結局四十ドルしか財布に無かったので生姜とにんにくを諦めてじゃがいもと豆だけを買うことにした。残金五ドル......。
「まいどありー」
もしかしたら、全て買えなかったことにより料理長に怒られるかもしれない。
そう思うと私はいつの間にか帰る足取りが重くなっていた。
「きゃー! ひったくりよ!」
その瞬間、後ろから悲鳴が聞こえた。
振り返るとガタイの良い人相の悪い男がこちらに向かって一目散に走ってくる。
(えっ!?ええっ?!)
このままじゃぶつかる!でもどうすれば?
しかし私は為す術もなく、その場に立ち尽くした。
ぶつかるまで3......2.....1......
反射的にぎゅっと目をつぶる。
ドンッ!
大きい音がしたが、まだ衝撃は来ない。
え...?どういうこと?
私はゆっくり目を開けた。
するとそこには先程突進してきた男が目の前で倒れていた。
えっ、なんで!?
私は何も出来ずに目を閉じてただけだけど――
その瞬間、じんわりと太ももが熱くなっていることに気づいた私はそれがポケットからだということを理解した。
「まさか......これが?」
ポケットに入っていたのはあの時の指輪だった。
指輪はほんのうっすら青く光っている。
「ありがとうございます! あなたがひったくりを倒してくれたのよね? 本当にありがとう。これ、ほんの少しだけどお礼よ、持っていって」
「えっあの?」
何故か感謝されている......?
私は動揺しながらも受け取った袋の中身を見ると、そこには先程買えなかった生姜とにんにくがぎっしりと入っていた。
「えっどういうこと? トーユ国には侵略してないじゃない」
昼休憩の食堂でメイド達が騒いでる。
今日も今日とて話題は第一皇子のことだ。
「トーユ国は隣国のユジ国と平和協定を結んでるから先月の戦争でユジ国を攻撃されて怒ったみたい。それで貿易を停止するらしいわ」
「そんな! トーユ国の輸入が無かったら私達結構やばいんじゃないの?」
どうやら最近のジーク皇子は失敗続きらしく、ついにやらかしてしまったらしい。
「皇帝が病にかかる前はあんなにこの国は安定していたのに......」
「そうよね、このままジーク皇子が王になったらって考えると不安よね」
「ちょっとあんた達! そんなの誰かに聞かれてたらまずいわよ。口を慎みなさい」
「「はぁい......」」
最近皆元気が無い。
あの戦勝パーティーから一ヶ月、季節はすっかり秋になっていた。
「フィオネ、この後買い出し頼みたいんだけど大丈夫?」
「買い出し? いいよ。何を買ってくればいいの?」
「じゃがいもと生姜と豆とにんにくが切れてたわ。八百屋で全部買えるからお願いね。地図を渡すからこれを見て行くのよ」
地図を見ると赤いペンで八百屋に丸がしてある。
一人で買い出しは初めてだが、前にヘリンと言ったことがあるし、大丈夫だろう。
「じゃあ、行ってきまーす」
私はわくわくしながら城を飛び出した。
地図を見ながら記憶を頼りに歩いていくと見覚えのある看板を見つけた。
ここだ。
私は無事に八百屋にたどり着くことが出来た。
さっそくメモを見ながら店主に話しかける。
「あのー、じゃがいも三個と生姜一個と豆百グラムとにんにく六個ください」
「あいよーお嬢ちゃん。お使いかい? 偉いねえ、はい、全部で六十ドル」
私は財布を開け、お金を支払おうとした。
(十......二十......四十......あれ?)
「この前じゃがいももっと買った時二十五ドルくらいだったような」
「あー、実は値上げしたんだよ。トーユ国の船が来月から港に来ないって言うんだ。だからどうしても物価が上がっててね」
(そうなんだ......)
私は結局四十ドルしか財布に無かったので生姜とにんにくを諦めてじゃがいもと豆だけを買うことにした。残金五ドル......。
「まいどありー」
もしかしたら、全て買えなかったことにより料理長に怒られるかもしれない。
そう思うと私はいつの間にか帰る足取りが重くなっていた。
「きゃー! ひったくりよ!」
その瞬間、後ろから悲鳴が聞こえた。
振り返るとガタイの良い人相の悪い男がこちらに向かって一目散に走ってくる。
(えっ!?ええっ?!)
このままじゃぶつかる!でもどうすれば?
しかし私は為す術もなく、その場に立ち尽くした。
ぶつかるまで3......2.....1......
反射的にぎゅっと目をつぶる。
ドンッ!
大きい音がしたが、まだ衝撃は来ない。
え...?どういうこと?
私はゆっくり目を開けた。
するとそこには先程突進してきた男が目の前で倒れていた。
えっ、なんで!?
私は何も出来ずに目を閉じてただけだけど――
その瞬間、じんわりと太ももが熱くなっていることに気づいた私はそれがポケットからだということを理解した。
「まさか......これが?」
ポケットに入っていたのはあの時の指輪だった。
指輪はほんのうっすら青く光っている。
「ありがとうございます! あなたがひったくりを倒してくれたのよね? 本当にありがとう。これ、ほんの少しだけどお礼よ、持っていって」
「えっあの?」
何故か感謝されている......?
私は動揺しながらも受け取った袋の中身を見ると、そこには先程買えなかった生姜とにんにくがぎっしりと入っていた。
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