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二章
21.ドレッシング作り
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「野菜の臭みを消せる香辛料かあ」
勢いだけで厨房にきたは良いものの、実は全くと言っていいほどアイデアが浮かんでいない。
(砂糖......塩、オリーブオイル......)
私はなんとなく、その三つを混ぜて口に運んだ。
「うっ! なにこれあっま......」
これじゃただのあまじょっぱい油だ。口の中がベトベトして美味しくない。どうしよう。
完全に行き詰まっていると次の瞬間、後ろから人の気配がした。
「楽しそうだな?」
声のしたほうを振り向くと、そこにはランプを持ったライアンが立っていた。
「ラ、ライアン......!」
「フィオネ、深夜の厨房に出入りしてたのはお前だったんだな? 何をしているんだ? 俺も混ぜてくれ」
ライアンは笑いながら話しているが、全く目が笑っていない。
私は怒られる前に慌てて必死に事情を説明した。
「ほう、ドレッシングの研究か? それで今作ってるのが美味しくない......と。ふむ、それなら辛いソースはどうだ? 玉ねぎを炒めて作るソースだ」
玉ねぎ?野菜のドレッシングを野菜で作るの?
そんなやり方は聞いたことがない。それにどんな味になるのか想像がつかない。
「フィオネ、玉ねぎを切るのを手伝ってくれ」
そうして私はライアンと一緒に玉ねぎを切り始める。
あれだけ苦手だったみじん切りも今では朝飯前だ。
ライアンは鍋を用意し、玉ねぎを炒め始めた。
そうして炒めていくうちに徐々に光沢が出てくる。
「玉ねぎはいい感じだな。ここに調味料も入れて煮詰めてソースが出来る。さっきフィオネが作ったやつを入れよう」
「あっ! それは――」
私の制止も虚しく、ライアンはさっきの失敗作を鍋に入れてしまった。
(あああ......)
「よし、できたぞ。味見してみよう」
「う、うん」
私は意を決してソースを食べる。
その瞬間、口に玉ねぎのピリ辛い風味が広がった。
「え、美味しい」
なんと意外にも失敗作は玉ねぎと合わさってそれなりの味に変化していた。
あまじょっぱいソースに玉ねぎの辛さが合わさってお互いの悪いところを相殺している。
「悪くないな。でも何か一味足りない気がする」
しかし、ライアンは味のバランスが取れていないことに納得がいっていないらしい。
「確かに、何か清涼感があれば......」
ふと周りを見渡すと、布がかかった木箱の隙間から見えるレモンが視界に入った。
勢いだけで厨房にきたは良いものの、実は全くと言っていいほどアイデアが浮かんでいない。
(砂糖......塩、オリーブオイル......)
私はなんとなく、その三つを混ぜて口に運んだ。
「うっ! なにこれあっま......」
これじゃただのあまじょっぱい油だ。口の中がベトベトして美味しくない。どうしよう。
完全に行き詰まっていると次の瞬間、後ろから人の気配がした。
「楽しそうだな?」
声のしたほうを振り向くと、そこにはランプを持ったライアンが立っていた。
「ラ、ライアン......!」
「フィオネ、深夜の厨房に出入りしてたのはお前だったんだな? 何をしているんだ? 俺も混ぜてくれ」
ライアンは笑いながら話しているが、全く目が笑っていない。
私は怒られる前に慌てて必死に事情を説明した。
「ほう、ドレッシングの研究か? それで今作ってるのが美味しくない......と。ふむ、それなら辛いソースはどうだ? 玉ねぎを炒めて作るソースだ」
玉ねぎ?野菜のドレッシングを野菜で作るの?
そんなやり方は聞いたことがない。それにどんな味になるのか想像がつかない。
「フィオネ、玉ねぎを切るのを手伝ってくれ」
そうして私はライアンと一緒に玉ねぎを切り始める。
あれだけ苦手だったみじん切りも今では朝飯前だ。
ライアンは鍋を用意し、玉ねぎを炒め始めた。
そうして炒めていくうちに徐々に光沢が出てくる。
「玉ねぎはいい感じだな。ここに調味料も入れて煮詰めてソースが出来る。さっきフィオネが作ったやつを入れよう」
「あっ! それは――」
私の制止も虚しく、ライアンはさっきの失敗作を鍋に入れてしまった。
(あああ......)
「よし、できたぞ。味見してみよう」
「う、うん」
私は意を決してソースを食べる。
その瞬間、口に玉ねぎのピリ辛い風味が広がった。
「え、美味しい」
なんと意外にも失敗作は玉ねぎと合わさってそれなりの味に変化していた。
あまじょっぱいソースに玉ねぎの辛さが合わさってお互いの悪いところを相殺している。
「悪くないな。でも何か一味足りない気がする」
しかし、ライアンは味のバランスが取れていないことに納得がいっていないらしい。
「確かに、何か清涼感があれば......」
ふと周りを見渡すと、布がかかった木箱の隙間から見えるレモンが視界に入った。
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