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二章

18. 巨大な肉

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「すごい......お祭りだ......」

 大きい噴水のある広場は子供からお年寄りまでたくさんの人で賑わっていた。
 建物の窓と窓からいくつもの国旗が連なったロープがたくさん張られ、見渡すかぎり美味しそうな食べ物の売店で埋めつくされている。

「いい?フィオネ、二十時までには帰ること。あと知らない人に着いて行ったら絶対駄目よ。分かった?」
「え、ヘリンはその後どうするの?」
「ふっ。大人はね、門限なんてないのよ。じゃあねフィオネ、また明日」

 ヘリンは得意げに大人の特権を主張し、さっさとどっかに行ってしまった。

(いいなあ、大人は。まあそれはともかく、さっそくお祭りに来たんだからまずは――)

 私は周囲にある売店を見渡した。
 すると目に入ったのは見たことのない”巨大な肉”だった。

(これは......)

 どうやらこの肉を客の目の前で切り落として売っているようである。
 肉の前には数人の子供達が物珍しそうに目を輝かせて見ている。
 すると私より小さい子供の一人が店の男に話しかけた。

「すっげーなにこれ! おじさん、一つくれよ!」
「おう、ソースはどうする? ガーリックソースにチリソース、マスタードもあるぞ」
「えーと、じゃあガーリックソースで!」

 子供は代金を支払い、木の皿に乗った分厚いステーキを店の男から受け取った。

「うわあ、すげえ。美味そう」
「美味そう~! おい、早く食ってみろよ!」
「じゅる......いただきます」

 他の二人から見守られながらも子供はステーキを頬張った。

  ――もぐもぐ。

「......どうだ?」

「......美味しくないのか?」

 一口食べてからの長い沈黙。
 不安そうに二人が顔を覗き込む。周りの大人達も少し緊張した面持ちで子供を見ていた。

「う、う......」
「「 ――う?」」
「うめええええええ!!!」

 子供はそう言い放った後、ステーキをものすごい勢いで食べ始めた。

「お、おじさん! 俺にもステーキ一つ!チリソースで!」
「あいよ」
「お、お、俺にも一つくだせえ! マスタードで!」
「私にも二つちょうだい!」
「こっちにもステーキくれ!」
「あいよ!」

 様子を見ていた周囲の人も彼が美味しそうに食べてるのを見て食欲が湧いたのか、いつの間にかステーキの売店にはすぐに行列が出来ていた。

(私も...食べたい)

 私も急いで列に並ぶことにした。
 わくわくしながら並んでいるとあっという間に自分が注文する時が訪れる。

「お嬢ちゃん一人かい? じゃあ一つでいいかな?」

「あっえっと一つ......あっやっぱ二つで!」

「あいよ!」










 二十時の鐘が鳴る。その音で子供たちはゆっくりと広場から帰っていく。

「おっ! フィオネ帰るのか? ってすごい荷物だな。大丈夫か?」

「ライアンも来てたんだ。うん、平気。今から帰るから大丈夫だよ」

 偶然居合わせた料理長は顔を赤くし、ほんのりアルコールの匂いを漂わせている。
 きっと彼もめったにないお祭りを楽しんでいるのだろう。

「帰り道は分かるよな? ここから広場を出て真っ直ぐだぞ? 気をつけて帰れよ、おやすみ」

「うん、おやすみ」

 私はライアンに手を振って広場を後にした。
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