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第一章
1.美しい自然の国
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春の暖かな日差しが差す昼下がり。
この美しい自然の国、ミデリーがあるのも国王陛下のゼファがかつて手に負えなかった異種族を説得したおかげだった。
そんな彼も今年で六十四歳。
もうそろそろ次の世代に託しても良いと思っている。
だって国王にはあんなに優秀な第一王子がいるんだもの。
「はあ......。そりゃ兄さんはすごいよ」
城の屋根の上で寝転びながら、僕は整備された城下町を眺める。
そう、その第一王子というのは稀代の天才と謳われた僕の兄、アンディのことだった。
その人気は二十七歳という若さでありながら世間では次代の王は彼しかいないと太鼓判を押されるほど。
対して第二王子の僕、ミシェルは何をやっても兄のようには出来ず、世間では存在を忘れられてしまっているくらい影が薄かった。
いや、泣いてない。泣いていないからね......。
兄さんは頭が良いだけではなく、性格もとびきり良かった。だから僕のことをよく気遣ってくれたし、城内で肩身が狭くなることもなかった。
僕はそんな優しい兄さんを尊敬しているし、ちょっと嫉妬はするけど山のような書類を毎日処理しているのを見るとやっぱり自分が第二王子で良かったと、心底ホッとしてしまう。
そしてそんなモヤモヤとした気持ちで疲れた僕は今日も剣の稽古をサボってしまった。
今頃、執事のセバスチャンやメイドのメアリーが怒っているだろう。
はあ、憂鬱だ。戻ったらまたこっぴどく怒られるんだろうな――ってん?
その時、僕の視界に入ったのは城の後ろに止めてあったとある馬車だった。
御者は荷物を城内に運んでおり、その木箱から見える薬品を見るにそれは魔女の作った代物だと分かる。
(そうか、魔女......。それだ!)
その瞬間、とっさの思いつきをミシェルはすぐに実行した。
城の屋根を伝って器用に屋根裏部屋に入ると、使っていなかった黒いマントを手に取り、子供の時に練習用に使っていた短剣を探す。
あれ、この辺にあったような気がしたんだけど?
――みゃあ!
カランッ。
「っ!」
驚いて振り向くと、そこには窓の縁に立つ三毛猫がこちらを見ていた。
「あー、フユお前が持ってたのか。その短剣。通りで見つからないと思ったよ」
そう言ってフユが落とした短剣を拾う。
フユは野良猫だが、城で色んな人から餌を貰っているのでほとんど皆のペットみたいなものだった。
人間の言葉は分からないはずだが、なぜだかこいつには話が通じているような感じがする時がある。
「あ、そうだ。お前も一緒に行く?」
みゃあっ。
僕がそう聞くと元気に返事をしたフユはふろしき代わりにしたマントの中に勢いよく入った。
なんかぽかぽかしてあったかい。
作戦はこう。
まず、見張りの兵士を撒くために馬車の西側の窓からガラクタを落とす。
そしてその隙にあの馬車に乗り込むのだ。
「よし、フユ行くぞ!」
その後、無事にその作戦を成功させた僕達は魔女の住む家へと長い馬車の冒険が始まるのだった。
この美しい自然の国、ミデリーがあるのも国王陛下のゼファがかつて手に負えなかった異種族を説得したおかげだった。
そんな彼も今年で六十四歳。
もうそろそろ次の世代に託しても良いと思っている。
だって国王にはあんなに優秀な第一王子がいるんだもの。
「はあ......。そりゃ兄さんはすごいよ」
城の屋根の上で寝転びながら、僕は整備された城下町を眺める。
そう、その第一王子というのは稀代の天才と謳われた僕の兄、アンディのことだった。
その人気は二十七歳という若さでありながら世間では次代の王は彼しかいないと太鼓判を押されるほど。
対して第二王子の僕、ミシェルは何をやっても兄のようには出来ず、世間では存在を忘れられてしまっているくらい影が薄かった。
いや、泣いてない。泣いていないからね......。
兄さんは頭が良いだけではなく、性格もとびきり良かった。だから僕のことをよく気遣ってくれたし、城内で肩身が狭くなることもなかった。
僕はそんな優しい兄さんを尊敬しているし、ちょっと嫉妬はするけど山のような書類を毎日処理しているのを見るとやっぱり自分が第二王子で良かったと、心底ホッとしてしまう。
そしてそんなモヤモヤとした気持ちで疲れた僕は今日も剣の稽古をサボってしまった。
今頃、執事のセバスチャンやメイドのメアリーが怒っているだろう。
はあ、憂鬱だ。戻ったらまたこっぴどく怒られるんだろうな――ってん?
その時、僕の視界に入ったのは城の後ろに止めてあったとある馬車だった。
御者は荷物を城内に運んでおり、その木箱から見える薬品を見るにそれは魔女の作った代物だと分かる。
(そうか、魔女......。それだ!)
その瞬間、とっさの思いつきをミシェルはすぐに実行した。
城の屋根を伝って器用に屋根裏部屋に入ると、使っていなかった黒いマントを手に取り、子供の時に練習用に使っていた短剣を探す。
あれ、この辺にあったような気がしたんだけど?
――みゃあ!
カランッ。
「っ!」
驚いて振り向くと、そこには窓の縁に立つ三毛猫がこちらを見ていた。
「あー、フユお前が持ってたのか。その短剣。通りで見つからないと思ったよ」
そう言ってフユが落とした短剣を拾う。
フユは野良猫だが、城で色んな人から餌を貰っているのでほとんど皆のペットみたいなものだった。
人間の言葉は分からないはずだが、なぜだかこいつには話が通じているような感じがする時がある。
「あ、そうだ。お前も一緒に行く?」
みゃあっ。
僕がそう聞くと元気に返事をしたフユはふろしき代わりにしたマントの中に勢いよく入った。
なんかぽかぽかしてあったかい。
作戦はこう。
まず、見張りの兵士を撒くために馬車の西側の窓からガラクタを落とす。
そしてその隙にあの馬車に乗り込むのだ。
「よし、フユ行くぞ!」
その後、無事にその作戦を成功させた僕達は魔女の住む家へと長い馬車の冒険が始まるのだった。
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