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9.龍王の番
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9.龍王の番
麗華は離れて行く一団をぼんやり身送った。
踏まれた手が痛い。
「でも、仕方ないよね。その通りだもん」
自嘲しながら麗華は立ち上がった。
ここにさえ自分の居場所はないのだと。
自分のいるべき居場所はどこなのだろう。
わからない。
愛して欲しい。
撫でて欲しい。
笑いかけて欲しい。
私も同じだけ返すから。
見た目が怖いなら、この大きくて血みたいな瞳は潰すから。白い髪だっていつも汚して白く見えないようにするから。
なんだってするから。
◇◇◇
麗華は暫く動けなかった。
もうそろそろ戻った方がいいだろう。侍医のおじさんは何気に心配性だ。仕事だから心配してくれてるのだって分かってるけれど、それでも嬉しかったから。
あまり心配は掛けたくない。
麗華は違う道から帰る事にし、途中で下働きの宿舎がある所に差し掛かると洗濯女の使用人がいる場面に出くわした。
どうやら、ここは龍妃などの衣服を洗濯して管理する所のようだ。
女たちが洗濯板を使って衣装をゴシゴシ洗っている。
「ねぇ、聞いた?」
洗濯しながら同僚と思わしき女性に話しかける女。
「聞いた聞いた!従列5位の龍妃様が2位の泰然様の番様に楯突いたのですってね!」
「そうらしいわよ~!あの鼻持ちならない龍妃様ならいつかやると思ってたわ!」
「確かに!泰然様の番様は大人しくて可憐で序列とか気にしない方だけど、それでも番様だもの!5位の竜族の龍妃など申し訳ないけど足元にも及ばないのがわらないのかしら!」
「番様が何も言わないからって調子に乗っちゃったんでしょうね~いい気味だわ!」
「ほんとそれ!いつも裏でこそこそやってたのに泰然様に見られちゃって。その時の泰然様恐ろしかったらしいわよ」
いつの世もイジメや嫌がらせはあるらしい。
「その龍妃、泰然様から死なない程度に刑を言い渡されて5位の龍族の元に戻されたらしいわ」
「もう歩けないらしいわ。その龍妃。5位のお方は悲しんでらしたそうだけど致し方ないと苦笑されたとか」
ぶるっと女たちが震え上がる。
「やっぱり龍妃って一見愛されているように見えて、番様ほど大事にはされていないわよね。たぶんこれが番様であったら5位のお方も黙っていないはずよ」
「怖いわぁ~」
なんだか楽しそうに噂話をしていた。
「あら、あんた。こんな所に何の用だい?盗み聞きは感心しないね!」
麗華が立ち止まって聞いていたのがバレたようだ。
「す、すみません!」
「いや、別にいいけどね。誰だい?あんた。新しい下働きかい?」
麗華が質素な服を着ていたので勘違いしたようだ。
でもここは敢えて否定せずにいよう。
「そ、そうなんです。えと、ここから出る出入り口が分からなくなってしまって…大きな門は貴人が出入りするので通れませんし…」
「ああ。それならこの裏に小扉があるからそこから出入りしな。普段は私達くらいしか使わないけどねぇ」
クスクス笑いながら指で示してくれた。
「あ、ありがとうございます!」
麗華は裏に回り込んで扉を確認する。
ここから出られそうだ。下働きが使う扉なら警備も薄いだろう。
「ん?行かないのかい?」
「あ、忘れ物をしたみたいで!また使わせてもらいます!ありがとうございます!」
「そうかい?またね」
何とか誤魔化し、麗華は玉蘭の間に戻った。
因みに待ち構えていたおじさんがニコニコ笑いながら帰りが遅かった事を反省するように説教して帰って行った。
麗華は離れて行く一団をぼんやり身送った。
踏まれた手が痛い。
「でも、仕方ないよね。その通りだもん」
自嘲しながら麗華は立ち上がった。
ここにさえ自分の居場所はないのだと。
自分のいるべき居場所はどこなのだろう。
わからない。
愛して欲しい。
撫でて欲しい。
笑いかけて欲しい。
私も同じだけ返すから。
見た目が怖いなら、この大きくて血みたいな瞳は潰すから。白い髪だっていつも汚して白く見えないようにするから。
なんだってするから。
◇◇◇
麗華は暫く動けなかった。
もうそろそろ戻った方がいいだろう。侍医のおじさんは何気に心配性だ。仕事だから心配してくれてるのだって分かってるけれど、それでも嬉しかったから。
あまり心配は掛けたくない。
麗華は違う道から帰る事にし、途中で下働きの宿舎がある所に差し掛かると洗濯女の使用人がいる場面に出くわした。
どうやら、ここは龍妃などの衣服を洗濯して管理する所のようだ。
女たちが洗濯板を使って衣装をゴシゴシ洗っている。
「ねぇ、聞いた?」
洗濯しながら同僚と思わしき女性に話しかける女。
「聞いた聞いた!従列5位の龍妃様が2位の泰然様の番様に楯突いたのですってね!」
「そうらしいわよ~!あの鼻持ちならない龍妃様ならいつかやると思ってたわ!」
「確かに!泰然様の番様は大人しくて可憐で序列とか気にしない方だけど、それでも番様だもの!5位の竜族の龍妃など申し訳ないけど足元にも及ばないのがわらないのかしら!」
「番様が何も言わないからって調子に乗っちゃったんでしょうね~いい気味だわ!」
「ほんとそれ!いつも裏でこそこそやってたのに泰然様に見られちゃって。その時の泰然様恐ろしかったらしいわよ」
いつの世もイジメや嫌がらせはあるらしい。
「その龍妃、泰然様から死なない程度に刑を言い渡されて5位の龍族の元に戻されたらしいわ」
「もう歩けないらしいわ。その龍妃。5位のお方は悲しんでらしたそうだけど致し方ないと苦笑されたとか」
ぶるっと女たちが震え上がる。
「やっぱり龍妃って一見愛されているように見えて、番様ほど大事にはされていないわよね。たぶんこれが番様であったら5位のお方も黙っていないはずよ」
「怖いわぁ~」
なんだか楽しそうに噂話をしていた。
「あら、あんた。こんな所に何の用だい?盗み聞きは感心しないね!」
麗華が立ち止まって聞いていたのがバレたようだ。
「す、すみません!」
「いや、別にいいけどね。誰だい?あんた。新しい下働きかい?」
麗華が質素な服を着ていたので勘違いしたようだ。
でもここは敢えて否定せずにいよう。
「そ、そうなんです。えと、ここから出る出入り口が分からなくなってしまって…大きな門は貴人が出入りするので通れませんし…」
「ああ。それならこの裏に小扉があるからそこから出入りしな。普段は私達くらいしか使わないけどねぇ」
クスクス笑いながら指で示してくれた。
「あ、ありがとうございます!」
麗華は裏に回り込んで扉を確認する。
ここから出られそうだ。下働きが使う扉なら警備も薄いだろう。
「ん?行かないのかい?」
「あ、忘れ物をしたみたいで!また使わせてもらいます!ありがとうございます!」
「そうかい?またね」
何とか誤魔化し、麗華は玉蘭の間に戻った。
因みに待ち構えていたおじさんがニコニコ笑いながら帰りが遅かった事を反省するように説教して帰って行った。
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