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6.与えられた宮
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しおりを挟む「私には関係ないか。選定を受けたらすぐに追い出されるだろうし逃げる準備しなきゃ…」
何より問題を起こした麗華をあの家族が許すわけがない。
瑞麗にも何と言われるか想像しただけで気が滅入りそうになるが仕方ない。
そう言えばここ。番や龍妃が過ごす宮って言ってたけど、なんでそんな所に自分がいるのだろう。
全く持って謎だった。
皇宮には医務室のような場所だってあるだろうに。
何となく負に落ちない気がしたが、まぁいいかと再び目を閉じた。
◇◇◇
その頃、龍妃選定に挑んでいた瑞麗。
「あいつ、絶対目覚めたらただじゃおかない…」
「ほんとですよね。あんな事前代未聞です!旦那様がどんなにお怒りになるか…」
休憩中に4人で集まってヒソヒソ会話をしていた。
姉が粗相を犯した。
それも特大級の。
まさか、龍王陛下にご迷惑をかけるだなんて我が家の恥だ。
やっぱり連れて来るべきじゃなかったと心底思う。
あれから倒れた姉は床に激突するかと思われたが、何とそこに龍王自ら一瞬で移動し抱き止めたのだ。
あの瞬間周りの叫びは更に大きくなった。
あの光景は今でも目に焼き付いている。
龍王は無表情だったがあの出来損ないの姉を助けた。
私でさえ、近付く事すら出来ない至高のお方に。
瑞麗は激しい嫉妬に侵されていた。
幸い触れ合っていたのは一瞬ですぐに慌てた側近が姉を回収していたが。
その場は騒然。
無礼を働いた姉を良く思わない娘達が怒りを露わにした。
側近の方でさえ、龍王の行動が予想外だったのか困惑の表情をしており何とかこの場を収めようとしていたが、失敗に終わる。
「静まれ」
だが、龍王がそう口にするとそれまで騒いでいた娘達は一瞬で黙り込んだのだ。
「この者は体調が悪かったようだ。高熱ゆえ体調が戻り次第、番の選定は仕切り直す。これ以上騒ぐようならば即刻龍妃の資格は剥奪すると心得よ」
そう言葉を残した龍王は自身の宮に帰るため退出して行った。
「なんなのよ…あれはっ」
姉のくせに。
出来損ないのくせに。
化け物のくせに。
更に腹が立ったのが、姉が倒れた際ベールが剥がれ姉の素顔が晒された事だ。
龍王でさえ、その一瞬だけ目を見開いたのを瑞麗はしっかり見ていた。
容姿は不気味な姉だったが、造作は私よりも優れている。
それが密かに瑞麗のプライドを傷付けてもいた。
万が一、億が一、姉が気に入られてしまったら。
「いえ!絶対そんな事はありえないわ…!!」
ギリギリと姉に対する対抗心が芽生えていく。
本人すら認めようと思えない深層の部分。
まだ負けたわけではない。
「どうせあいつは選定が終わればすぐに実家に戻されるんだから……」
何を心配する事があるのか。
だが、どうしても何故か不安に襲われるのだ。
◇◇◇
皇宮内、とある一室。
そこには何人もの召使いが控えていた。
「あの者は…どうなりまして?」
豪華絢爛な宮の主人が特注の椅子に座りお付きの者に尋ねる。
「ご指示通り玉蘭の間を使用するよう指示を出し、そちらに運ばれたようです」
「まぁ。ありがとう」
「ですが、何故そちらに?」
「答える必要があって?」
妖艶な美女がギラリと侍従を睨むと滅相もないと侍従は目を逸らした。
「出過ぎた事を申しました」
「まぁ、いいわ。特別に教えてあげる」
にこりと笑う女性は実に可憐であったが、次の瞬間見せた素顔にはどす黒い感情が見え隠れしていた。
「だって皇宮の医務はあのお方の室から近いじゃない。あそこなら皇宮内から最も離れていてすぐ忘れ去られそうでしょう?それにあそこは曰く付きだしボロだし辛気臭い娘にはぴったりだわ?」
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