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3.成人の儀
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朝餉もなんとか準備に間に合わせ、バタバタと家人達が走り回る。
朝から瑞麗の室からは瑞麗の準備のため声が響き渡り力の入れようが伺えた。
櫛を通し結われた髪型は美しく、牡丹などの華やかな生花や父から新たに贈られた豪華な髪飾りが添えられていた。
衣装は特別な生地で織られた朱色の衣。
手持ちの扇は母から贈られた黒のレース生地。家宝の翡翠の玉佩が腰から覗いていた。
馬車が屋敷の門前に横付けされ後は乗り込むだけとなっており、門前に出て来た着飾った瑞麗が両親に挨拶をする。
「お父様、お母様行って参ります」
もしかすると今生の別れになるかもしれないので親子の別れは涙を誘うものだった。
「あぁ…!瑞麗…!こんなに綺麗になって…!母は嬉しいですよ」
「本当に。いつもの御転婆も形を潜めておるな。実に美しいよ。自慢の娘だ。きっと瑞麗なら番、もしくは龍妃になれるはずだ」
母が瑞麗を見ながら涙を流す。肩に触れ両手で娘を抱き締めた。
「はい…!お父様もお母様もお元気でお過ごし下さい…!親孝行出来なくなるかもしれない娘をお許し下さい」
「そんな事はない!おまえは我が家の自慢の娘だ。出来損ないとは違う。選ばれればそれこそが親孝行というものだ」
「そうよ!」
「…はい。お任せ下さい。必ず選ばれます」
親子の感動的なシーンであったが、父親の出来損ない発言の時だけ使用人と共に後ろに控えた麗華を睨み付けていた。
母は恐るように顔を背ける。
「なぁに。麗華。あんたそんな格好で行くのぉ?みすぼらしい事。精々目立たぬよう外套でも被って最後尾に下がってなさいよね。恥だわ恥」
瑞麗が普段着を着込んだ麗華を見て鼻で嗤った。
一緒に参加する使用人でさえ今日は着飾っている。一世一代の晴れ舞台に普段着で参加する娘などいない。
「我が家に迷惑だけはかからぬよう弁えよ。わかったな」
二人から蔑むように見られる麗華。
「…かしこまりました」
そんな麗華の様子を他の使用人達はクスクスと影で笑う。
(本当にアレはお嬢様と姉妹なのか…?恥ずかしいよな)
(本当よね。近付いたら呪われそうな容姿も恐ろしいわ。あの目を見てよ。呪われてるんじゃない?)
麗華は礼をしたまま唇を噛み締めた。
「さて、もう行きなさい。龍王陛下が龍陽で娘達を待っていよう」
「はい、お父様。」
「ではお嬢様、出発致しますので馬車の方へ」
「わかったわ」
馬車に乗り込む瑞麗に一族総出で見送る。
その後ろで目立たぬようひっそりと馬車に乗り込んだ麗華には誰も注目しなかった。
(きっと私は選定が終われば殺される。もう戻って来れない可能性もあるから荷物は纏めて来たけれど…どうなってしまうの……)
ぐったりと馬車の柱に背を寄り掛からせながら、麗華は一筋の涙を流した。
朝から瑞麗の室からは瑞麗の準備のため声が響き渡り力の入れようが伺えた。
櫛を通し結われた髪型は美しく、牡丹などの華やかな生花や父から新たに贈られた豪華な髪飾りが添えられていた。
衣装は特別な生地で織られた朱色の衣。
手持ちの扇は母から贈られた黒のレース生地。家宝の翡翠の玉佩が腰から覗いていた。
馬車が屋敷の門前に横付けされ後は乗り込むだけとなっており、門前に出て来た着飾った瑞麗が両親に挨拶をする。
「お父様、お母様行って参ります」
もしかすると今生の別れになるかもしれないので親子の別れは涙を誘うものだった。
「あぁ…!瑞麗…!こんなに綺麗になって…!母は嬉しいですよ」
「本当に。いつもの御転婆も形を潜めておるな。実に美しいよ。自慢の娘だ。きっと瑞麗なら番、もしくは龍妃になれるはずだ」
母が瑞麗を見ながら涙を流す。肩に触れ両手で娘を抱き締めた。
「はい…!お父様もお母様もお元気でお過ごし下さい…!親孝行出来なくなるかもしれない娘をお許し下さい」
「そんな事はない!おまえは我が家の自慢の娘だ。出来損ないとは違う。選ばれればそれこそが親孝行というものだ」
「そうよ!」
「…はい。お任せ下さい。必ず選ばれます」
親子の感動的なシーンであったが、父親の出来損ない発言の時だけ使用人と共に後ろに控えた麗華を睨み付けていた。
母は恐るように顔を背ける。
「なぁに。麗華。あんたそんな格好で行くのぉ?みすぼらしい事。精々目立たぬよう外套でも被って最後尾に下がってなさいよね。恥だわ恥」
瑞麗が普段着を着込んだ麗華を見て鼻で嗤った。
一緒に参加する使用人でさえ今日は着飾っている。一世一代の晴れ舞台に普段着で参加する娘などいない。
「我が家に迷惑だけはかからぬよう弁えよ。わかったな」
二人から蔑むように見られる麗華。
「…かしこまりました」
そんな麗華の様子を他の使用人達はクスクスと影で笑う。
(本当にアレはお嬢様と姉妹なのか…?恥ずかしいよな)
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「さて、もう行きなさい。龍王陛下が龍陽で娘達を待っていよう」
「はい、お父様。」
「ではお嬢様、出発致しますので馬車の方へ」
「わかったわ」
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その後ろで目立たぬようひっそりと馬車に乗り込んだ麗華には誰も注目しなかった。
(きっと私は選定が終われば殺される。もう戻って来れない可能性もあるから荷物は纏めて来たけれど…どうなってしまうの……)
ぐったりと馬車の柱に背を寄り掛からせながら、麗華は一筋の涙を流した。
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