龍王の番

ちゃこ

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3.成人の儀

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3.成人の儀



 ガラララララッ。


 各地から龍王国に召集された娘達を乗せた馬車が龍都、龍陽に急いで向かってゆく。
 成人の儀はここ龍陽で行われた。

 皆一番乗りすべく龍陽入りするため、龍陽に入るため関所の城門前に列を成した。

 雅国の宰相府からも豪華な装飾を施された馬車が瑞麗を乗せ関所に向かっていた。
 今年は瑞麗の他、麗華以下使用人数人も16になる娘がいたので瑞麗の馬車につき従うように別の質素な馬車に乗せられ随行している。




◇◇◇

 早朝、少し気を失っていた麗華は雀の鳴き声にうっすら目蓋を開けると、家人達が起床するための音が聞こえてきた。

 全身が燃えるように熱い。
 寒さは感じないが、内側から燃える様な熱さを感じるのとは裏腹に全身は芯から冷え切っていた。

 やはり予想通り高熱が自分を侵しているのだろう。
 でもそれは休んで良い事には決してならない。
 下半身は雪が積もった水分で濡れていたし長時間跪いていた為膝も悲鳴を上げていた。


 今日は成人の儀のため朝から準備の為におおわらわだ。
 雅国の宰相府からは幸い龍陽から距離は近い為、午後からの儀にも十分間に合う。
 龍王国の周りに配置されたそれぞれの国は少しでも龍陽から近い位置に都を置くので龍陽から遠ければ遠い程田舎となる。
 田舎出身者は10日以上前から移動を開始しているはずだ。


「あら、あんた。そんなところで跪いてちゃ邪魔よ!間に合うとは言ってもすぐ準備は始めないとだめなのよ!!」


 使用人の中でも同じ年の少女が麗華がいる元まで来た。
 少しそばかすが浮いてはいるが可愛らしい少女だ。

「あ……」

「なぁに?立てないって言うつもり?何したかは知らないけど、どうせお嬢様に迷惑かけたんでしょ!ほんとに役立たずなんだから!!ほら!さっさと立って!朝餉あさげの準備しなさいよ!?」


 少女は無理矢理跪いたままの麗華の腕を引っ張り上げ立たせた。

「ぎゃっ!?冷たい!何よこれ!さっさと着替えて来なさいよ!」

 掴んだ麗華の腕が冷え切っていたのに余程驚嘆したのかパッと手を離した。

「はい……」

 ノロノロと歩き始めた麗華に使用人の少女は気味悪そうに両腕を擦り合わせた。

「本当に気味が悪いわ…。何であんな子この屋敷にいるのかしら。っと!私も儀式には参加するんだから急いで準備しなきゃっ!」

 パタパタと小走りで少女自身も身支度にかかる。
 成人の儀だけは、普段どんなに貧しい家の子や使用人であろうと着飾る事が許されている。
 資金がなければ龍王国に申請すれば一式届けられる程だ。
 とは言え、名家の令嬢の使用人は令嬢よりも目立たないように着飾るのが普通なので送られて来た物の中に主人よりも華美な物があれば、主人の物と交換することすらある。
 少女も自力で準備出来なかったので申請していた。

「もし、にでもなれたらこの生活からもおさらば出来るんだから一生懸命アピールしなきゃ!」


 少女も自ら準備すべくパタパタと小走りで走り去った。

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