狂ったこの世界で

ちゃこ

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一章

バイト帰りの大学生 1

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20XX年。
日本、東京都内、某所。


「店長ぉ!そろそろ時間なんで先上がりますねー!」
「おー!お疲れさん!気ぃ付けて帰れよー」

私はバイト先のファストフード店の店長に声を掛けてから帰りの支度をした。
おっとタイムカードを切るのを忘れない内に押さなきゃ。

時々押し忘れてしまうから危ない危ない。

ロッカーに制服を仕舞い鍵を掛けて店を後にする。


「はぁ~……今日も疲れたー」

私はスマホを取り出しSNSなどチェックしていく。

「こいつ風邪で休んでたんじゃなかったっけ?なんで写真の背景が某有名レストランで夜景なんだ」

そこには今日大学を体調不良で休んだはずの友人が誰かと過ごしている風の写真がUPされていた。日付は今日だ。
友人の仮病疑惑にぷくくと密かに笑いながら私、奥村千鶴は暗い夜道を歩いて行く。
駅までは7分ほどだが裏道なので街灯はやや少ない。
そういえばこの前この辺で引ったくりがあったらしい。気を付けよ。

私はこの近くの大学に通う女子大生だ。
大学進学とともに上京し一人暮らしなのでバイトをいくつか掛け持ちしながら通っていた。

スマホを見ながら歩いていると、ピロンっと速報が入ってくる。


"A級ダンジョン攻略成功!攻略者は黎明ギルドの大型ルーキー!秋山俊樹!デビュー戦で昇級!”

「どんだけビックリマーク使うん」

速報の文字に突っ込みつつ、タップして記事を開いた。

"2ヶ月前にスカウトされた大型ルーキーが黎明ギルドのA級ダンジョン攻略レイドのリーダーに抜擢”

"スカウトされる以前の経歴は不明。情報求む”

"何故新人が上位ギルドのレイドを任されたのか”


などなど今日のダンジョンレイドに関する情報で溢れている。

「ふぅーん。まぁ私には縁の無い話だなぁ」


一人呟くと、千鶴は足早に駅に向かった。








この世界に突如現れた未知のダンジョン。
日本でも例外なく、ソレは突然姿を表した。
出現場所は特に法則性は無く、人々が密集する駅前や閑静な住宅街、森林地帯のど真ん中、色んな場所に人間の都合など関係なく出現した。
最初に現れたのは東京駅だった。
人々は最初ソレが何であるのか全く分からなかった。
皇居も近かった事から、即座に警察、消防、自衛隊が派遣されソレを一般人から隔離し様子を伺った。
大きさは大型トラックが一台通れそうな丸い形で、電磁波が出ているのかと思う様な光を発しているが向こう側は暗くなっておりどうなっているのかは不明。
裏側から見ても同じ光景だ。

これは何なのか。
科学者も派遣されたが一向にこの現象が解明出来なかった。
この現代日本において、いや世界中で同じ現象が観測され信じられず目を疑う者。
ネット民はファンタジーな出来事に沸き立ち色んな憶測が飛び交った。
敵国を持つ国々は相手が仕掛けたテロだと疑い、宗教関連の怪しい団体も騒ぎ出す。

そんな日が数日続き、各国が困惑する中、事態が動いたのはまずアメリカであった。

アメリカのソレが地球上に一番最初に出現したからだと後に研究者から発表されたが、ソレによって引き起こされた惨劇は後に"血の日曜日”と言われるようになる。
出現してから10日目の出来事であった。


その日は国民の休日であり、沢山の人々が外出していた。
もちろん物珍しさから、ソレを撮影したり自慢したりするために近くで見ようと沢山の人々がソレの周りに集まった。

一番最初に異変に気付いたのは一体誰だったかーー。


「おい……なんかあれ変じゃないか?」

誰が呟いたかはもはやわからない。
最初の異変は丸いゲートのような縁から放出されている電磁波に似た稲妻の色が少しずつ変色して行った事だった。
白っぽい色から赤く染まってゆく。

危機察知能力が高い人はこの時点でその場から離れていた。

「おい、おい、なんかヤベェぞっ……」
「マジかよ!すげーぞこれ!動画に上げれば再生数稼げるぜ!!」
「俺らここにいても大丈夫だよな……?」

次第に配置されていたアメリカ軍兵士にも緊張感が高まり、ゲートを囲むようにして銃を構えた。


ソレは唐突に"解放”された。




「全員下がれっ!何が起ごぁッ……」


一瞬だった。
最前列で銃を構えた兵士が周りに声をかけた時がその兵士の上頭半分を吹き飛ばした。
早すぎて何に攻撃されたのかもその場にいた者たちは分からなかった。
ただ、突然仲間が絶命した。
それだけが分かった。

「あがっ……」
「うわぁぁぁぁぁああ!!」

「下がれぇぇぇ!!全員下がるんだっっ!!」
「ちくちょう!どうなってやがるっ」
「銃が効いてないぞ!!」

前列にいる者から何かに吹き飛ばされていく。
そして、武器である銃が何かに向かって撃っても弾き返されていた。

「何なんだは!!モンスターかよ!?」
「ギャァァァ!!」
「た…助けてくれっ…たすけ」




兵士たちの目の前にいたのはゲートから這い出てきた、トカゲの様な生き物であった。

いや、空想上の生き物でならよく似た生き物がいる。



それを遠くから見ていた一般人、取材中のテレビ局、また配信動画を見ていたユーザーたちは驚愕した。

その場にいた者たちは一目散に逃げ惑い、記者たちは近くのビルに避難しながら中継を続けた。
ネットで配信を見ていた者たちは。


"ドラゴンか?”


とファンタジーお決まりのキャラクターに似た何かを当てはめた。

そこからは阿鼻叫喚の地獄絵図。
兵士は為す術なく殆どが何かに殺害された。





ーーーーこの日、世界のシステムが告げる。
ある者はそれを神と言った。







【融合開始】
















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