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シャバジョ

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「ごめん」
「…」
「ごめんなさい」
「うん」
「私が全部治す。あき君が嫌なとこちゃんと治す」
「うん」
「別れたくない…」泣き出す女。


 寝れなくて暇だから公園来たのにキモイのおる。耳あんま使ってないのにこんな所まで声が聞こえる。寝てないからイライラしてるのになんで激シャバなカップルの痴話喧嘩を耳から脳に入れなきゃならないんだぼけ。まず公園で喧嘩するなカップルは。そういうのは大阪駅とか難波の駅でサラリーマン達に見せつける様にやるもんなんだよお前らみたいなキモイのは。こんな所でやっても見てくれるのは俺みたいな暇人かそこら辺で遊んでるジャリだけだろうに。

「俺も別れたくない…」
 ほら来た。

「なーなー聞いてや」
「え…?あ、はい」
「一睡もせずに外出たんだよ。目がシャバくてさ」
「…はい」
「目つぶったらまぶた裏にあるモニターが赤色やったんよ、赤色って言うかオレンジに近いんだけど…今ピンクに変わったわ。」
「なんですか?」泣くのをやめた女。
「いつも黒色にスマホの光の残穢が残るだけだったのに思っきり色ついちゃって、危険信号かなんかかなーって思ったんだけど変に安心感あるから違うと思うんだよねーまあこんなシャバい事考えてたら何しても寝れないんよね。」
「今大事な話してるので…正直怖いです」

「気持ち悪いよお前」
「は?」泣くのを止めたかと思えば怒り出す女は忙しいな。
「厚かましく俺達に「この社会問題について貴方はどう思いますか?」って問いかけてくるクソッタレ監督が汗水あと金垂らして作ったクソッタレ映画ぐらい気持ちが悪い。」
 立ち上がって逃げようとする女の足を思いっきり踏んずけて抑える。
「あと面白くないお前らシャバい女男とそこで大声張る事で自己肯定感上げてるうるせえガキも面白くない声で分かる。」
  それだけ言ってからせっせこランニングを始める。が、寝てないせいかしんどくて堪らない。やめよう。満足はしたからとりあえずベンチに座ってタバコに火をつけてから水を飲む。

 一息していたらさっきのシャバ女(シャバジョ)が少し八の字眉毛で近づいてきた。

 「シャバい男は振ってきました。シャバい女って言ったのは撤回して下さい。」
「別に振ったからシャバくないって訳でもないけど面白いから撤回しとくわ。」
「なんでそんな楽しそうなんですか」
「我慢してないからじゃない?お前も我慢しないのが楽しくて男にキレられてたんじゃないの」
「我慢してます」
「何で怒ってたのあいつは」
「あの人が浮気して、連絡先消してって言ってるのに消さないからこっそり消したらキレられました。」
「やっぱシャバいわ。」
 女が隣に座ってきた。

「声聞いただけでこいつはおもんない人間なんだって決めつける時あるよな。会話の内容には関係なく声を一言聞いただけで決めつけてしまう。それは俺とかお前が今まで体験してきた日常の記憶のせいやと思う。俺みたいな奴今まで会った事あるか?どんな奴かこれまでの体験で予想した方が良いぞ。隣座る前にな。」
「…決めつけない方が良いんじゃないですか?」
「そうやねんけどこの方が楽なんよな。いちいち人の事信じるより決めつけてキモがってるぐらいが良いんだよ俺は。あとまあまあ当たってる。」
「…そうなんですか」


  もう一箱吸い終わるぐらいここに座ってる。女は喋らず俺の話聞いてるだけだし何がしたいのか分からない。

「お話するのが好きなんですか?」
「俺はベラベラ喋った後に体を動かすのが好きなんだよ。ベラベラと息継ぎもせずに喋ると頭が熱くなる。その後に体を動かすと体も頭ももっと熱くなる。気持ちいいんだ。」
「滅茶苦茶キモイですね。」
「良いんだよ」
「女の子とエッチするのは違うんですか?」「話聞く女なんてどこにいるんだよ」
「死体は喋りませんよ」
「死体は話を聞かないだろ」
「付き合いましょ」
「嫌だキモイもん」
「あなたもキモイじゃないですか」
「未成年は無理」
「二十いきましたーこの前」
「友達からな」
「はい!」

  三時間後、ホテルで吸い尽くされて付き合わないと止めないと脅されて付き合ってしまった。
「健二さんって優しいですよね。」火照った女が息を整えてタバコを咥えながら言った。なんて心のこもってない言葉なんだと少し呆れながら火をつけてやった。
「優しい人だと言われる事があるけど、それは違う。そう思ってくれる事が狙いではあるけど違う。「ありがとう」とか「優しいね」とかそういう言葉を期待して見返りを求めているだけ。気持ちよくなる為だけにやってるから面倒くさくて気持ちよくなれねーと思ったら人に優しくなんかしない。見捨てる。」
「お高くとまってるんじゃない?」
「は?」
「優しいですよ」

 うざいから俺もタバコに火をつけた。
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