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ダメ人間、服を買う ①
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とある夏の日の朝。
エアコンをガンガンにきかせた1Kの部屋の廊下に敷いた布団から、のそのそと俺は起き上がった。
時刻は9時36分。夏休みのダメ大学生にしては早起きをしたほうだと俺は自分を褒めてやる。
ボーっとしながら、冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出し、コップに移して一息に飲み干す。
ボトルから直接飲もうとして日向に怒られて以来、コップを使うようになった。
二度寝をするか、このまま活動開始するかで数秒迷った後になんとか勝利して日向を起こしに行く。
俺と同様にダメ大学生の日向はもちろん早起きなどしない。
昨日も、二人して夜中までゲームをしていたためこのままほっておいたら昼前まで寝ていることだろう。
「日向ー、そろそろ起きたらどうだ」
と、俺は日向に声を掛けるが、日向はうーん、、と僅かに声を出して寝返りを打つだけだ。
「ほら日向、起きろー。まともな生活目指すんだろ」
今度は肩をゆすりながらそれっぽい理由を付け加えて起床を促してみる。
「っん...。おきるー。環くん早起きだねー」
「もうそんなに早くないぞ。ほら起きた起きた。」
日向はまだ布団の中でウネウネしているが、この様子だと後数分もしたら勝手に起きてくるだろう。
そう判断して、俺は朝食を作りにキッチンに足を運ぶ。
朝食と言っても簡単なもので、食パンを焼いて目玉焼きを乗せるだけだ。
もともと俺も日向もひとり暮らしをしていたときには朝食なんてめったに食べていなかった。
それに比べたら、簡単なものでも毎日食べるようになっただけで大きな成長だ。
「朝ご飯ありがと」
「はいよ。今日もまた暑くなりそうだな」
「だね。寝ててだいぶ汗かいちゃったよ」
と言って日向は寝間着の上着をパタパタとはためかせ、チラチラといろいろなものが見えてしまう。
ふたり暮らしもそれなりに慣れてきて、日向はだいぶ無防備にになってきている。
俺も健全な男子大学生として、流石に目のやり場に困る。
食事を食べ進める事に集中して、なんともないふりをしてその場をやり過ごす。
ぜひとも自覚を持って生活してほしいものだ。
「なんか今日は予定あるのか?」
何気なしに日向に尋ねるも、いや、なにもないねー、と予想通りの返答が返ってくる。
だよなー、と俺も気の抜けた相槌を打つ。
「暇人だねー。」
「じゃあさ、ちょっと服買いに行きたいかも。」
「おお、環くんが?珍しいね」
「日向と暮らすようになってから外出する機会も増えただろ?そのときに来ていく服が全然ないなって思って」
「確かに、環くん夏は基本ジャージの短パンとTシャツの1パターンしかないもんね。」
ケラケラと楽しそうに日向に指摘されるが、その通り過ぎて何も言い返せない。
これまではめったに外出することもなく、そんなおしゃれしていくような場所には無縁の生活をしていたのだ。
その点、日向は同じダメ人間で引きこもり体質は俺と同じはずなのになぜか服はそれなりに持っているようだった。
これが男女の違いなのだろうか。少しだけ悔しい気持ちになりながらも、俺は恥を忍んで日向にお願いする。
「ってことで、ぜひ日向さんにご指導いただきながら服を買いに行きたいです」
「はっはっは、環くんがそこまで泣きながら懇願するなら仕方ないね!この日向先生が環くんに似合う服を選んであげよう!」
完全に調子に乗った日向がうっとうしいが、女子の視点で服を選んでもらえることなんてまたとない機会であることは事実。しばらくは日向の調子に合わせることにする。
エアコンをガンガンにきかせた1Kの部屋の廊下に敷いた布団から、のそのそと俺は起き上がった。
時刻は9時36分。夏休みのダメ大学生にしては早起きをしたほうだと俺は自分を褒めてやる。
ボーっとしながら、冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出し、コップに移して一息に飲み干す。
ボトルから直接飲もうとして日向に怒られて以来、コップを使うようになった。
二度寝をするか、このまま活動開始するかで数秒迷った後になんとか勝利して日向を起こしに行く。
俺と同様にダメ大学生の日向はもちろん早起きなどしない。
昨日も、二人して夜中までゲームをしていたためこのままほっておいたら昼前まで寝ていることだろう。
「日向ー、そろそろ起きたらどうだ」
と、俺は日向に声を掛けるが、日向はうーん、、と僅かに声を出して寝返りを打つだけだ。
「ほら日向、起きろー。まともな生活目指すんだろ」
今度は肩をゆすりながらそれっぽい理由を付け加えて起床を促してみる。
「っん...。おきるー。環くん早起きだねー」
「もうそんなに早くないぞ。ほら起きた起きた。」
日向はまだ布団の中でウネウネしているが、この様子だと後数分もしたら勝手に起きてくるだろう。
そう判断して、俺は朝食を作りにキッチンに足を運ぶ。
朝食と言っても簡単なもので、食パンを焼いて目玉焼きを乗せるだけだ。
もともと俺も日向もひとり暮らしをしていたときには朝食なんてめったに食べていなかった。
それに比べたら、簡単なものでも毎日食べるようになっただけで大きな成長だ。
「朝ご飯ありがと」
「はいよ。今日もまた暑くなりそうだな」
「だね。寝ててだいぶ汗かいちゃったよ」
と言って日向は寝間着の上着をパタパタとはためかせ、チラチラといろいろなものが見えてしまう。
ふたり暮らしもそれなりに慣れてきて、日向はだいぶ無防備にになってきている。
俺も健全な男子大学生として、流石に目のやり場に困る。
食事を食べ進める事に集中して、なんともないふりをしてその場をやり過ごす。
ぜひとも自覚を持って生活してほしいものだ。
「なんか今日は予定あるのか?」
何気なしに日向に尋ねるも、いや、なにもないねー、と予想通りの返答が返ってくる。
だよなー、と俺も気の抜けた相槌を打つ。
「暇人だねー。」
「じゃあさ、ちょっと服買いに行きたいかも。」
「おお、環くんが?珍しいね」
「日向と暮らすようになってから外出する機会も増えただろ?そのときに来ていく服が全然ないなって思って」
「確かに、環くん夏は基本ジャージの短パンとTシャツの1パターンしかないもんね。」
ケラケラと楽しそうに日向に指摘されるが、その通り過ぎて何も言い返せない。
これまではめったに外出することもなく、そんなおしゃれしていくような場所には無縁の生活をしていたのだ。
その点、日向は同じダメ人間で引きこもり体質は俺と同じはずなのになぜか服はそれなりに持っているようだった。
これが男女の違いなのだろうか。少しだけ悔しい気持ちになりながらも、俺は恥を忍んで日向にお願いする。
「ってことで、ぜひ日向さんにご指導いただきながら服を買いに行きたいです」
「はっはっは、環くんがそこまで泣きながら懇願するなら仕方ないね!この日向先生が環くんに似合う服を選んであげよう!」
完全に調子に乗った日向がうっとうしいが、女子の視点で服を選んでもらえることなんてまたとない機会であることは事実。しばらくは日向の調子に合わせることにする。
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