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第六章 ウソつき勇者と王宮の姫
6-6 さらわれたもう一人の姫
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現在夜の11時。大時計台は雷で壊れているので、手元の懐中時計で確認した。僕たちは王宮にある、作戦室に集まっている。この国の王【リチャード3世】、王宮騎士団長【リカルド】や騎士団員も複数もいる。アンナはすでにトロントを連れてきていた。
「リリア姫は部屋でお休みです。外傷はありませんでした。ただ眠っているだけのようです」
「うむ、娘にケガが無くてよかった。もしリリアを失ったら・・・・10年前を思い出す」
「ご安心を。リリア姫には、上官クラスの騎士を護衛につけております」
リチャード王はとりあえず安堵した。
「ケント殿といったな。この度は大変申し訳ないことをした。まさか、トロントが裏切るとは・・・・そして、騙されたとはいえ、牢に入れてしまったことを許してほしい」
「リチャード王、頭を上げてください。私たちは気にしておりません。それよりも、レイアが心配です」
「そうですな。あなた方の知り合いだというレイア殿か。だが・・・・」
リチャード王は少し言葉を濁した。リカルドは口を開いた。
「ケント殿、申し訳ないがリリア姫の命の恩人と言えど、いち町民のために、王宮騎士団は動けないのだ。護衛団をつかって探しましょう」
護衛団とは、簡単に言うと街の警察のようなものだ。王宮騎士団に比べれば、その能力は大きく見劣りする。
「リチャード王、それは違いますぞ。レイアはただの町民ではございませんぞ」
ジルが口を開いた。
「リチャード王に口答えをするとは、何と無礼な。貴様何者だ!」
「リカルドよ、まだ気づかぬか?お主ももまだまだじゃな。」
ジルはそういうと、ぼさぼさの髪に手をかけた。何と根元から外れた。その下には黒い髪がある。そして、大きく蓄えた髭も手をかけて引っ張ると、剥がれた。
「そ、その顔は・・・ラインハット団長!生きていらっしゃったのですか?」
そう、ジルは変装していたのだ。そして、本当の姿は前王宮騎士団長【ジルベルト・ラインハット】だったのだ。
「ラインハット!お主死んだと聞いていたが、生きていたのか?」
「はい、私はこの様に健在でございます」
「そうじゃったのか。そ、そうするとマリアはどうしたのだ?」
「お話いたします。驚かずに聞いてください。」
ジルは話し始めた。
「マリア姫が、グランムルグの外で消えたのは、ちょうど10年前の今頃でしたな。マリア姫は、グランムルグから出て、近くの山に遊びに行かれました。ご存知のように、私を含め、多数の護衛付きで。すると、待ち合わせたかのように魔人が現れ、襲われました」
「ああ、そこでマリアは連れ去られ、ラインハットは殺されたと聞いた」
「実はあの時、私は魔人と戦い、深手を負ったものの、倒したのです」
「な、なんだと?」
「ただ、致命傷を負わせ、滝に落ちて行く魔人が私に行ったんです。【今回だけで終わると思うな。何度も襲いに行く】と。私はそれを聞いて、このままマリア姫を王宮に戻すのは危険だと思いました。そもそも、魔人が我々を待ち伏せていたのは、必ず王宮に内通者がいるはずだと。その内通者を見つけるまでは、返すわけにはいかない。と」
ジルは続ける。
「私は、気を失っているマリア姫に、【封魔の石】を首に身につけさせました。マリア姫は生まれながら聖の属性を持ち、魔力がとても大きく、かつ王族の高貴なオーラを発していらっしゃいましたので、すぐに見つかってしまうと思ったからです。ただ、【封魔の石】の力はとても強く、マリア姫の記憶までも封じてしまったのです」
「ま、まさか、マリアは・・・・」
「ミラン殿、そこに飾ってある、マリア姫の小さいころの絵を見てください」
僕とミラン、アンナは部屋の壁に飾ってあった絵を見た。6歳くらいの女の子だった。
「こ、この顔・・・・レイアにそっくりじゃないか?」
「まさかアンナ姫って、レイアちゃんのことなの?」
「その通りじゃ。私とずっと、スーザン村で暮らしていたのじゃ」
「そうするとさらわれたのは・・・・」
「レイア、つまりマリア姫じゃ!」
「リリア姫は部屋でお休みです。外傷はありませんでした。ただ眠っているだけのようです」
「うむ、娘にケガが無くてよかった。もしリリアを失ったら・・・・10年前を思い出す」
「ご安心を。リリア姫には、上官クラスの騎士を護衛につけております」
リチャード王はとりあえず安堵した。
「ケント殿といったな。この度は大変申し訳ないことをした。まさか、トロントが裏切るとは・・・・そして、騙されたとはいえ、牢に入れてしまったことを許してほしい」
「リチャード王、頭を上げてください。私たちは気にしておりません。それよりも、レイアが心配です」
「そうですな。あなた方の知り合いだというレイア殿か。だが・・・・」
リチャード王は少し言葉を濁した。リカルドは口を開いた。
「ケント殿、申し訳ないがリリア姫の命の恩人と言えど、いち町民のために、王宮騎士団は動けないのだ。護衛団をつかって探しましょう」
護衛団とは、簡単に言うと街の警察のようなものだ。王宮騎士団に比べれば、その能力は大きく見劣りする。
「リチャード王、それは違いますぞ。レイアはただの町民ではございませんぞ」
ジルが口を開いた。
「リチャード王に口答えをするとは、何と無礼な。貴様何者だ!」
「リカルドよ、まだ気づかぬか?お主ももまだまだじゃな。」
ジルはそういうと、ぼさぼさの髪に手をかけた。何と根元から外れた。その下には黒い髪がある。そして、大きく蓄えた髭も手をかけて引っ張ると、剥がれた。
「そ、その顔は・・・ラインハット団長!生きていらっしゃったのですか?」
そう、ジルは変装していたのだ。そして、本当の姿は前王宮騎士団長【ジルベルト・ラインハット】だったのだ。
「ラインハット!お主死んだと聞いていたが、生きていたのか?」
「はい、私はこの様に健在でございます」
「そうじゃったのか。そ、そうするとマリアはどうしたのだ?」
「お話いたします。驚かずに聞いてください。」
ジルは話し始めた。
「マリア姫が、グランムルグの外で消えたのは、ちょうど10年前の今頃でしたな。マリア姫は、グランムルグから出て、近くの山に遊びに行かれました。ご存知のように、私を含め、多数の護衛付きで。すると、待ち合わせたかのように魔人が現れ、襲われました」
「ああ、そこでマリアは連れ去られ、ラインハットは殺されたと聞いた」
「実はあの時、私は魔人と戦い、深手を負ったものの、倒したのです」
「な、なんだと?」
「ただ、致命傷を負わせ、滝に落ちて行く魔人が私に行ったんです。【今回だけで終わると思うな。何度も襲いに行く】と。私はそれを聞いて、このままマリア姫を王宮に戻すのは危険だと思いました。そもそも、魔人が我々を待ち伏せていたのは、必ず王宮に内通者がいるはずだと。その内通者を見つけるまでは、返すわけにはいかない。と」
ジルは続ける。
「私は、気を失っているマリア姫に、【封魔の石】を首に身につけさせました。マリア姫は生まれながら聖の属性を持ち、魔力がとても大きく、かつ王族の高貴なオーラを発していらっしゃいましたので、すぐに見つかってしまうと思ったからです。ただ、【封魔の石】の力はとても強く、マリア姫の記憶までも封じてしまったのです」
「ま、まさか、マリアは・・・・」
「ミラン殿、そこに飾ってある、マリア姫の小さいころの絵を見てください」
僕とミラン、アンナは部屋の壁に飾ってあった絵を見た。6歳くらいの女の子だった。
「こ、この顔・・・・レイアにそっくりじゃないか?」
「まさかアンナ姫って、レイアちゃんのことなの?」
「その通りじゃ。私とずっと、スーザン村で暮らしていたのじゃ」
「そうするとさらわれたのは・・・・」
「レイア、つまりマリア姫じゃ!」
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