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第五章 ウソつき勇者と賢者の石
5-8 賢者の石の真実
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「どうしたんだケント、突然叫ぶなんて、お前おかしくなったか?」
「いや、そうじゃない。これはまさか・・・・」
僕は記憶を思い返していた。
「そもそもおかしいんだ。【ギガクロウ】は確かに【ビッグクロウ】のボスバージョンだ。だけど、ボスバージョンになるためには、【クリスタル】か、【賢者の石】を飲み込まないといけない」
「それのどこがおかしいんだ。実際ギガクロウがいたじゃないか。そして、さっき倒したぞ」
「よく思い出してほしい。賢者の石を大きなカラスが盗んでいったという証言を」
「だから、その大きなカラスがギガクロウなんだろ?」
「それは無い。だって賢者の石はまだ飲み込んでいないのに、なんですでにギガクロウがいるんだ?」
「言われ見れば確かにそうだな。賢者の石をビッグクロウが盗むならわかるが、すでにボスバージンになったギガクロウが盗む意味はな。」
「もしビッグクロウが盗んだのなら、ギガクロウは2体いるはず」
「つまり、盗んだのはどちらでもないことになるな」
僕は周りを見渡した。村人が盗まれた宝石が、そもそも一個もない。そして数々の証言、空には一瞬光ったカラスが飛んでいる。
「分かった。可能性が見えた。
「何言っているんだ。やっぱりケントは変になったか。
「【賢者の石】は手に入る。
「へ、ケント、冗談キツいぜ。ウソにしては下手だな。目の前で割れてるぞ。
「僕を信じて!」
僕は【ライアー・ストーン】を握りしめた。【ライアーストーン】は手に中で光り、そして消えた。やっぱりそうだ。
「なんだ、今の小さな光は?」
「アンナ、その割れた【賢者の石】をあの飛んでいるカラスに向かって投げてほしい」
「え?なんで?」
「いいからいいから」
アンナは割れた賢者の石をカラスに向かって投げた。そのカラスは飛んできた石を空中で咥えて、岩山の裏側に飛んで行った。
「カラスが持っていったわよ」
「追いかけるんだ!」
全員でカラスが飛んで行った方向に向かった。カラスは、見上げた岩山の中腹にある、小さな巣に止まっていた。よく見ないと分からない、ちょうど人の目からは死角になっている場所だ。
「ミラン、あの巣をロープで壊してほしい」
「おいおい、かわいそうなことするな。大丈夫か?」
「大丈夫だよ」
ミランはロープを鞭のようにしならせて、巣を壊した。すると、宝石がばらばらと落ちてきた。
「な、なんだ、宝石が落ちてきたぞ!どういうことだ?」
「それは、村の人々が盗まれた宝石です。そして、落ちてきた宝石の中の一つ、この薄く赤い色をした石が【賢者の石】です。」
「なんだって?」
全員が叫んだ。
「つまり、こういうことです。そもそも、【ギガクロウ】は【賢者の石】を盗んでいなかった。盗んだのはただのカラスです」
「でも、私は大きなカラスを見たんです」
「それは、夕方の太陽が斜めから差し込んだために、小さな影がとても大きく見えたんです。実際は普通のカラスだったんです」
「じゃあ何で【ギガクロウ】がいたの?」
「それは、村人から盗まれたクリスタルの影響です。ある村人が、2週間前にクリスタルをカラスのモンスターに盗まれたと証言していました。【ギガクロウ】の目撃が出始めたのは2週間前からなので、合致します。【賢者の石】が盗まれた1週間前の時点で、すでに存在していたんです」
「じゃあ、私が壊した石はまさか・・・・」
「【賢者の石】ではなく、村人から盗んだ【クリスタル】ですよ」
全員が納得した。上空にいたカラスが光ったのは、昨日盗んで、足に引っ掛かっていた指輪の反射だ。
僕の【ライアー・チェンジ】は、賢者の石を盗んだこの泥棒カラスに、先ほど破壊された宝石を咥えさせてくれたのだ。
そして、【賢者の石】は壊されずに残った。
「しかし、どこで分かったんだ?」
「持った時に、色が透明だったんですよ。【賢者の石】は、本来薄く赤い色をしているはずなのに」
「私は、何度も賢者の石を見ていたのですが、さっき分かりませんでした」
「それは、ここが【サンズロック】と呼ばれるくらい、岩が赤みを帯びているので、周りの色が入って透明なクリスタルが少し赤く見えのです。私も手に持つまでは気が付きませんでした」
「でも、なんでケントは【賢者の石】の色を知っているんだ?」
「え?まあ、なんとなくそんな気がしただけだよ。あはは」
とりあえず、とぼけて嘘をついた。あからさまに怪しいけど。
「ありがとうございました。その【賢者の石】は、あなたがたにあげます」
「え?いいんですか?」
「僕は先ほど目が覚めたんです。本当に大事なものが何かを。そしたら、そんな石は不要だってことが分かりました」
「分かりました。ではお言葉に甘えていただきます」
僕たちは、【賢者の石】を手にいれた。
「あと、この壊れたクリスタルの代わりに、私のクリスタルを盗まれた村人にあげてください」
「え?どうして?アンナさんがそこまでする必要はないですよ?」
「私も、宝石より大切なものに気がついてくれる人がいるかもと思ったので・・・・一度手放してみようと思います」
「アンナ、お前すごいな。ちょっと惚れ直したぜ」
「え?そう?そうなの??」
「でも待てよ、そもそも惚れていないのに、惚れ直すってのも変だな。今のは無しだ」
「ミラン、あんたって人は!!人の気も知らないで!!!」
アンナは思いっきりミランにパンチを繰り出した。ミランは飛ばされて崖から落ちて行った。ちょうど下には藁が積んであったので、そのクッションでケガは無なさそうだ。
辺りは日が落ちてきており、薄暗くなってきているのだが、藁に生えていた【光苔】の影響で、ミランの身体は輝いている。
「帰り道の道案内役は決まったわね」
暗い帰り道、ずっとカレンの機嫌をとっているミランを見ながら、僕は考え込んでいだ。
このクエスト、【クエクエ】ではこんなに複雑な内容ではなかった・・・・やはり、ゲームとこの世界は、完全に一致するわけではないということなのか?
---第五章 完---
「いや、そうじゃない。これはまさか・・・・」
僕は記憶を思い返していた。
「そもそもおかしいんだ。【ギガクロウ】は確かに【ビッグクロウ】のボスバージョンだ。だけど、ボスバージョンになるためには、【クリスタル】か、【賢者の石】を飲み込まないといけない」
「それのどこがおかしいんだ。実際ギガクロウがいたじゃないか。そして、さっき倒したぞ」
「よく思い出してほしい。賢者の石を大きなカラスが盗んでいったという証言を」
「だから、その大きなカラスがギガクロウなんだろ?」
「それは無い。だって賢者の石はまだ飲み込んでいないのに、なんですでにギガクロウがいるんだ?」
「言われ見れば確かにそうだな。賢者の石をビッグクロウが盗むならわかるが、すでにボスバージンになったギガクロウが盗む意味はな。」
「もしビッグクロウが盗んだのなら、ギガクロウは2体いるはず」
「つまり、盗んだのはどちらでもないことになるな」
僕は周りを見渡した。村人が盗まれた宝石が、そもそも一個もない。そして数々の証言、空には一瞬光ったカラスが飛んでいる。
「分かった。可能性が見えた。
「何言っているんだ。やっぱりケントは変になったか。
「【賢者の石】は手に入る。
「へ、ケント、冗談キツいぜ。ウソにしては下手だな。目の前で割れてるぞ。
「僕を信じて!」
僕は【ライアー・ストーン】を握りしめた。【ライアーストーン】は手に中で光り、そして消えた。やっぱりそうだ。
「なんだ、今の小さな光は?」
「アンナ、その割れた【賢者の石】をあの飛んでいるカラスに向かって投げてほしい」
「え?なんで?」
「いいからいいから」
アンナは割れた賢者の石をカラスに向かって投げた。そのカラスは飛んできた石を空中で咥えて、岩山の裏側に飛んで行った。
「カラスが持っていったわよ」
「追いかけるんだ!」
全員でカラスが飛んで行った方向に向かった。カラスは、見上げた岩山の中腹にある、小さな巣に止まっていた。よく見ないと分からない、ちょうど人の目からは死角になっている場所だ。
「ミラン、あの巣をロープで壊してほしい」
「おいおい、かわいそうなことするな。大丈夫か?」
「大丈夫だよ」
ミランはロープを鞭のようにしならせて、巣を壊した。すると、宝石がばらばらと落ちてきた。
「な、なんだ、宝石が落ちてきたぞ!どういうことだ?」
「それは、村の人々が盗まれた宝石です。そして、落ちてきた宝石の中の一つ、この薄く赤い色をした石が【賢者の石】です。」
「なんだって?」
全員が叫んだ。
「つまり、こういうことです。そもそも、【ギガクロウ】は【賢者の石】を盗んでいなかった。盗んだのはただのカラスです」
「でも、私は大きなカラスを見たんです」
「それは、夕方の太陽が斜めから差し込んだために、小さな影がとても大きく見えたんです。実際は普通のカラスだったんです」
「じゃあ何で【ギガクロウ】がいたの?」
「それは、村人から盗まれたクリスタルの影響です。ある村人が、2週間前にクリスタルをカラスのモンスターに盗まれたと証言していました。【ギガクロウ】の目撃が出始めたのは2週間前からなので、合致します。【賢者の石】が盗まれた1週間前の時点で、すでに存在していたんです」
「じゃあ、私が壊した石はまさか・・・・」
「【賢者の石】ではなく、村人から盗んだ【クリスタル】ですよ」
全員が納得した。上空にいたカラスが光ったのは、昨日盗んで、足に引っ掛かっていた指輪の反射だ。
僕の【ライアー・チェンジ】は、賢者の石を盗んだこの泥棒カラスに、先ほど破壊された宝石を咥えさせてくれたのだ。
そして、【賢者の石】は壊されずに残った。
「しかし、どこで分かったんだ?」
「持った時に、色が透明だったんですよ。【賢者の石】は、本来薄く赤い色をしているはずなのに」
「私は、何度も賢者の石を見ていたのですが、さっき分かりませんでした」
「それは、ここが【サンズロック】と呼ばれるくらい、岩が赤みを帯びているので、周りの色が入って透明なクリスタルが少し赤く見えのです。私も手に持つまでは気が付きませんでした」
「でも、なんでケントは【賢者の石】の色を知っているんだ?」
「え?まあ、なんとなくそんな気がしただけだよ。あはは」
とりあえず、とぼけて嘘をついた。あからさまに怪しいけど。
「ありがとうございました。その【賢者の石】は、あなたがたにあげます」
「え?いいんですか?」
「僕は先ほど目が覚めたんです。本当に大事なものが何かを。そしたら、そんな石は不要だってことが分かりました」
「分かりました。ではお言葉に甘えていただきます」
僕たちは、【賢者の石】を手にいれた。
「あと、この壊れたクリスタルの代わりに、私のクリスタルを盗まれた村人にあげてください」
「え?どうして?アンナさんがそこまでする必要はないですよ?」
「私も、宝石より大切なものに気がついてくれる人がいるかもと思ったので・・・・一度手放してみようと思います」
「アンナ、お前すごいな。ちょっと惚れ直したぜ」
「え?そう?そうなの??」
「でも待てよ、そもそも惚れていないのに、惚れ直すってのも変だな。今のは無しだ」
「ミラン、あんたって人は!!人の気も知らないで!!!」
アンナは思いっきりミランにパンチを繰り出した。ミランは飛ばされて崖から落ちて行った。ちょうど下には藁が積んであったので、そのクッションでケガは無なさそうだ。
辺りは日が落ちてきており、薄暗くなってきているのだが、藁に生えていた【光苔】の影響で、ミランの身体は輝いている。
「帰り道の道案内役は決まったわね」
暗い帰り道、ずっとカレンの機嫌をとっているミランを見ながら、僕は考え込んでいだ。
このクエスト、【クエクエ】ではこんなに複雑な内容ではなかった・・・・やはり、ゲームとこの世界は、完全に一致するわけではないということなのか?
---第五章 完---
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