上 下
7 / 41
第二章 王国騎士団入団試験と3人の女子

2-1 王都到着

しおりを挟む
カジカの村を出発して3日目、やっと王都に到着した。だいぶ日が落ちている。

大きな門の前で、僕たちは入口にいる戦士の格好をした門番に身分証明書を見せるように言われた。従者のダイアンは僕の証明書を見せた。

「あそこの家の子供か。」

そう言って通してくれた。なぜ両親のことを知っているのかをダイアンに聞くと

「そりゃ君の父さんはギルドの主人だからね。あの門番は冒険者からいろいろと情報を聞いているんだよ。」

なるほどと思った。

街の中に入った。久しぶりの王都はとても大きいなと改めて思った。でも、500年前の面影は何となくある。

僕は両親からもらった、試験合格までの宿屋のお金と宿屋の場所の地図を見た。なぜ合格までというと、試験に合格すれば寮に住めるからだ。寮は国からお金が出るので、無料だ。合格前提の対応である。

街は夕方で食事の時間が近いのか、たくさんの人が行き来している。とても賑やかだ。この賑やかさ、懐かしい。

ダイアンにはそのまま街の中を進んで行き、宿泊する宿の前まで送ってもらった。

「ここまでだね。じゃあ元気でね!」

従者への支払いは前払いだったので、そう言って去っていった。結構あっさりだな。

着いた宿屋は、看板に【マリーの宿屋】と書かれてあった。
しかし、それよりも目についたのは、巨大な猫の看板だ。入口を囲うようにレイアウトされている。僕はその猫のお腹の辺りに空いた空間に入っていき、そこにある扉を開けて中に入った。カランカランと鈴の音が鳴った。

「いらっしゃい、どちら様ですか?」

そう言って、若い女の子が出迎えてくれた。スレンダーでとても可愛らしい。同じ年くらいかな?

「僕はエリックです。今カジカの村から来ました。」
「あ、例のギルドの子供ね。お母さん、例の子が来たよ!」

そう言って奥の部屋に行った。すると、すぐにお母さんらしき人と一緒に出てきた。

「いらっしゃい、エリック。待っていたわよ。」

やさしい顔で話しかけられた。

「私はマリー。こっちが娘のマリアだよ。何か分からないこととかあったら遠慮なく聞いとくれ。」
「お世話になります。」

そう返答する。しかし、さっきから気になっていたのが、店の中にはたくさんの猫がいる。にゃあにゃあとすり寄って来る。

「あ、ごめんなさい、言うの忘れていたわ。私猫好きなの。」

聞いていないが、見れば分かる。

「猫は嫌いですか?」
「いや、結構好きですよ。一匹飼っているし。」
「え、ほんと?名前は、」
「タマって言います。」
「すごく可愛い名前ね。会ってみたいわ。でここにいる猫ちゃんたちなんだけど、名前は・・・」
「そう言えば、僕の部屋はどこですか?」

話が絶対長くなると思ったので、話を無理やり変えた。

「あ、そうだった。ごめんなさい。確か、素泊まり部屋だったわね。」

そう言って部屋へ連れていってもらった。

部屋をみると、ベッド一つがやっと入る程度で、ものすごく狭かった。素通り部屋とは、つまり一番安い、寝ること以外なにも出来ない部屋だった。僕は勉強とか入手した物を調べたりとか、幻獣達と顔を合わせて話をしたいので、ベッド以外にも空きスペースが欲しかった。

「もう少し広い部屋は有りますか?」
「有るけど、値段が上がるわよ。」
「大丈夫です。」

親から貰った宿代は素泊まり部屋分だった。だが僕は、カジカの村にいた頃、親に内緒で作ったエナジードリンクを冒険者たちに売っていた。結構元気が出るということで良く売れた。そのお金が結構たまっているので問題ない。
ちなみに、このエナジードリンクの知識も主従契約を結んだ幻獣達から教えて貰ったのだ。

僕は三人部屋に変えてもらった。ベッドが三つあったが、端に寄せて立てかけたために広くなった。これで充分だ。

この宿には食堂があり、この食堂で食べるかどうかはその都度決めるとのこと。宿泊者は食事代を割引してくれるとのことだったので、基本は宿で食べることにする。

到着後ある程度荷物を整理すると、外はすっかり暗くなっていた。なので、この宿の食堂で夕食を取った。家庭的な料理がたくさん出て、とても満足だ。相変わらず猫がすり寄ってきていた。ここまでされるとちょっと面倒。。。

「随分なついているわね。猫好きが分かるのかしら?」

正直、猫が好きかどうかはどっちでもよい。さっきは話をあわせるために言っただけなのだ。

食事後部屋に戻り、落ち着いたところでケットシーを呼んだ。

「兄き、どうしたにゃ?」
「ここの猫たちは知り合いか?」
「そうですにゃ。このマルチスの情報を探ってもらっているにゃ。」
「それはありがたい。にしても、いきなりなつかれていたのだが。」
「それは、兄貴がうまいマタタビを持っていることを教えたからだにゃ。」
「余計なことを。。。」

僕は仕方がないので、持っていた乾燥マタタビをタマにあげた。

「ありがとにゃ。ここの猫たちに配って来るにゃ。」

本当は薬として使うために取っていたのだか、このままでは無くなってしまいそうだ。しょうがないので、時間が空いたら、王都の外に出て取りに行くか。

すると、パトリシアが話しかけてきた。

「エリック様、あんまりやると、癖になりますぞ。」
「そうだね。考えます。」

陰の中にいるパトリシアに苦言を呈された。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】悪役だった令嬢の美味しい日記

蕪 リタ
ファンタジー
 前世の妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生した主人公、実は悪役令嬢でした・・・・・・。え?そうなの?それなら破滅は避けたい!でも乙女ゲームなんてしたことない!妹には「悪役令嬢可愛い!!」と永遠聞かされただけ・・・・・・困った・・・・・・。  どれがフラグかなんてわかんないし、無視してもいいかなーって頭の片隅に仕舞い込み、あぁポテサラが食べたい・・・・・・と思考はどんどん食べ物へ。恋しい食べ物達を作っては食べ、作ってはあげて・・・・・・。あれ?いつのまにか、ヒロインともお友達になっちゃった。攻略対象達も設定とはなんだか違う?とヒロイン談。  なんだかんだで生きていける気がする?主人公が、豚汁騎士科生たちやダメダメ先生に懐かれたり。腹黒婚約者に赤面させられたと思ったら、自称ヒロインまで登場しちゃってうっかり魔王降臨しちゃったり・・・・・・。もうどうにでもなれ!とステキなお姉様方や本物の乙女ゲームヒロインたちとお菓子や食事楽しみながら、青春を謳歌するレティシアのお食事日記。 ※爵位や言葉遣いは、現実や他作者様の作品と異なります。 ※誤字脱字あるかもしれません。ごめんなさい。 ※戦闘シーンがあるので、R指定は念のためです。 ※カクヨムでも投稿してます。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします

宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。 しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。 そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。 彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか? 中世ヨーロッパ風のお話です。 HOTにランクインしました。ありがとうございます! ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです! ありがとうございます!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...