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第一章 守護士

1-1 エリックへの転生

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彼はマルチス王国の田舎町の、小さいながらもギルドを営む夫婦の3人目の子供として生まれた。
名前はエリック。彼には年の離れた兄と姉が一人ずついた。

彼は生まれてから6歳までは普通の子供として過ごした。特質した何かがあるわけでもなく、どこにでもいる、ちょっと活発な子供だった。両親はとても可愛がって育ててくれた。

6歳を過ぎた頃、エリックは魔獣狩りに向かう大好きな兄と姉にこっそりとついていった。
兄は剣士、姉は魔法士の才能を生まれながら持っており、エリックが自我を持ち始めたころには、すでに冒険者として生活していた。

しかしながら、エリックは冒険者という仕事をよく分かっておらず、毎日出かける兄や姉が何処に行くのだろうと思い、後をつけてやろうと、護身用に気休め程度のナイフを腰に下げてついていった。

「母さん、俺たち今日は東の山の廃墟の方に行きます。」
「あの廃墟?何かあったの?」
「見たことがない、青い馬らしきものを見たと言う冒険者の話を聞いたので行ってみます。新しい魔獣かもしれないので。」
「気を付けるのよ。帰りは何時くらいになるの?」
「夕食前には帰るよ。」
「じゃあ、行ってきます。エリックは大人しく家で待っていてね!」

以前、一人で勝手に山に行き、大捜索でいろんな人に迷惑をかけた前科があるため、みんな心配している。しかし、そんな周りの心配をよそにエリックは行動した。

兄、姉には見つからないように隠れながら移動した。そして、東の山の廃墟に着いた。そこは、何百年も前に建物があったと思われ、敷地はかなり広い。エリックは見つからないように、兄と姉が入っていったこの廃墟の奥に向かう。

中に入ると天井は無く、壁が崩壊しており、風化がかなり進んでいた。

「なにがあったんだろう、ここは?」

そうエリックは思い、廃墟の中の景色にしばらく見とれていたが、はっとして周りを見回た。

「あ、お兄ちゃん、お姉ちゃんがいない!」

逸れてしまったようだ。兄・姉を探すために、奥のほうに歩いてった。

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、どこー?」

返事はない。

エリックは更に奥に進んだ。ちょっとした探検気分だ。エリックはどちらかというとこの感じは好きだ。
すると、大きな部屋だったであろう、広い空間に着いた。当然天井はない。エリックは部屋を見渡していた。

「何?風?」

突然突風が吹いてきた。部屋の中央を見ると、急に風が渦を巻き出した。しばらくすると渦が消え、占い師の格好をした男が現れた。左手に白く輝く玉を、右手に黒く淀んだ玉を持っていた。

「誰なの?」

なぜか驚くこともなく、恐怖も無かった。

「そこの坊や、どちらかを選ぶがよい。」

エリックは不思議と驚くことも無く、恐怖も無く、ただ綺麗だと思い白く輝く玉を選んだ。
すると、彼の脳裏に怒濤のごとくアーノルドの記憶が入り込んできた。

「思い出した。僕はアーノルドだった!魔王を倒すために転生したんだ!」
エリックは完全にアーノルドの記憶を取り込んだ。そして、勇者の頃の身体能力も取り戻した。

「ここは、旧魔王城か?」
「その通りでございます。なるほど、記憶を取り戻したということは、あなたが転生適合者ですか。」
「お前は何者だ?」
「ほほほ。私はただの占い師です。私はあなたのような方を探していました。」
「探していたとはどういうことだ?」
「この玉を受け入れることが出来る者のことです。あなたは適合者ということで、特別に能力の選択肢を与えましょう。剣士を選びますか?魔法士を選びますか?」
「突然何を言い出す?能力の選択とはどういうことだ?」
「記憶の戻ったあなたに、今さら説明は不要でしょう。ところで、あなたは転生前と同じく、一つの世に一人しか存在できない勇者の能力が選べすようです。他を選ぶことも出来ますが、また、勇者を選びますか?」

記憶を取り込んだ僕は、魔王を倒すべく転生したことを覚えている。

「お前が何者かわからないが、もちろん、勇、、、」

その時僕は思いだした。魔王がいなくなったあとの自分の顛末を。そうだ、僕は、、、

「守護士を選ぶ。」
「守護士ですか。。。あなたが転生した今の世界は、守護士は伝説上の・物語上でしか存在しない能力です。誰も同じ人はいませんよ。それでも選びますか?」
「二度も言わない。」
「よろしい。ではあなたは、今この瞬間から守護士となります。基本能力は勇者の頃の能力をベースに守護士向けに最適化いたしました。」

僕の身体が、違う何かになった感覚がした。だが、その違和感以外は特に変化はない。

「僕は守護士になったのか。ん、そう言えば、お前はあの時の。。。」
そう、転生前に勇者の素質があると言った占い師そっくりだ!

「お前はいったい何者だ!」
「ほほほ。先程申し上げました通り、ただの占い師です。さて、あなたが選ばなかったこちらの黒い玉は、別の適合者に与えることにしましょう。」
「どういうことだ。そもそも、その黒い玉は。。。もしかして、魔王の!」
「その通りでございます」
「その黒い玉をよこすんだ!!」

僕は腰に下げたナイフを取り出し、占い師に向かった。しかし、

「なぜだ、手が攻撃しようとしない!」
「お忘れになったのですが?あなたはもう守護士ですよ。守護士は攻撃は出来ないのですよ。」
そうだった、守護士は守ることに特化しており、攻撃は出来ないのだ。

「では、面白いものを見せていただきましたので、私はこれで。。。」
「待て、話は終わっていない!」

僕は叫んだが、占い師は風の渦を発生させて消えていった。黒い玉も無くなっていた。

「何者なんだあいつは。しかし、魔王復活は避けられないのか。。。探さなければ。」
そう思いながら、彼は廃墟から外へ出るために歩き出した。そしてふと気がついた。

「あ、そう言えば、希望の守護士になれた。」
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