真神ノ玉-雪原に爪二つ-

続セ廻(つづくせかい)

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第五夜 水よりも濃く

卅九 働かざる者食うべからず③※

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 十兵衛のにおいを吸い込むと、篤実の身体は内側に赤く光る炭をくべられたかのように火照る。頬や太腿、足の先まで欲に温められた血が通い、耳や頭の後ろが焚き火に当てられたかのように熱くなる。外はまだ肌寒く、何もしていないのに、篤実の丸くつるりとした額や着物に隠れた胸元にじわりと汗が滲んだ。

「……ゆき」

 十兵衛が篤実の名を呼び、喉をぐる……と鳴らす。碌に雨戸も無い庵の中だというのに、その声は籠の中に居るかのように篤実の鼓膜を擽る。

「ぁ……は……」

 篤実は背を反らし伸び上がって十兵衛に口付けた。

「た……のむ……十兵衛――おれを」

 ここは戦地ではない。本来ならば子を、世継ぎ作るためにおぼえるべき劣情を、全く意味の無い形で他人にはしたなく曝け出し、媚び、子種を強請る。

「見ないで……」

 十兵衛は篤実を抱き締める腕を弛め、熱い頬へ撫でるように口付けた。めくらである十兵衛に見るなと言う篤実の言葉に、大きな手を頭の後ろへ回して目隠しを取る。

「ゆき――少し、いや……かなり見苦しくてすまねえが」
「な、ぁに……」

 藍色の目隠しを取ると、今も尚残る傷が露わになった。十兵衛の手が篤実の横頭を包み、頭蓋の形や顔の作りを探る。手の甲から生える灰銀の毛並みが篤実の鼻梁を擽った。こそばゆさに目を細める篤実の顔に、十兵衛は己の目隠しを宛てがい、結ぶ。

「あ……」
「見るなと言う若君に目隠しというのも、妙かもしれんが……」

 温かな掌が篤実の頬を包み込んで、腕が身体を十兵衛の体温とにおいと、ごわついた毛皮へと抱き寄せる。

「これで、よい…十兵衛」

 手探りで篤実を想う十兵衛の心に触れて、胸が熱くなるのを感じながら肩口に顔を埋めた。

「んっ…はぁ……はっ…あ…」

 掌が背中を伝い降り、着物の上からしりたぶを揉む。密着させた下腹は、十兵衛のいきり立った魔羅に押し返されて、次元の違う質量を示された。

「ゆき…ゆき――ッ」

 十兵衛は時折身体をぶるりと震わせ、抱き潰してしまいそうになる衝動を堪えて篤実の身体を丹念に揉む。凍えぬように、壊れぬように。

「ひゃ…ぁ…はぅ、あ んぁ♡」

 ぞくぞくと背筋を震わせる篤実の耳をしゃぶり、耳殻を舌でなぞる。耳の後ろの当たりは篤実の唯一無二の香りが、なんとも言葉にし難い彼だけのにおいとしか言えないものがして、十兵衛の理性を焼く。

「ふ…はあっ」
「あ、あ はぁ…じゅうべ… もっと しゃ…しゃわって」

 ぐいっと着物の裾をたくし上げられ、布地が擦れる音が聞こえた。褌の中では先走りの露でとろとろに濡れた男雌核のような陰茎の先端が濡れた音と共に擦れ、糸を引く。

「ゆきは…どこもかしこも、そそって仕方ねえ」
「ひぁ…じゅうべえ…」
「儂の子種を…頭から腹の裏まで、くまなく塗りつけちまいてえんじゃ」

 十兵衛の両腕ががっしりと篤実の身体を捕らえ、まぐわいを真似るように下から揺さぶった。

「あっ はっ♡ ほ…♡ ぉ♡」

 其れだけなのに、まるで魔羅で貫かれたときのように篤実の身体の深いところが喜んでしまう。

「少しでも長く、お前を満足させるには…儂はどうすりゃあいい」

 尋ねながら帯を解き、褌を解き、温まった肢体を手でなぞり、首筋を舐めあげる。篤実の反応に耳を澄ませ声や身体の震えを感じ取る。篤実も密着する十兵衛の気配に淫欲の昂ぶりと守られているような心地よさを肌で感じ始めていた。

「い…っばい…ほしい」
「子種を…か」
「あ…あ♡」

 耳元で囁き合い、頬を擦り寄せ、舌を伸ばして舐めあげる。
 白い毛皮を纏う厚い胸板に、しなやかな肌色の身体を擦り付けて、二人同じにおいを纏う。

「は…ぁ」

 十兵衛はゴクリと喉を鳴らし繰り返し息を飲み込んだ。

「……ゆ、き…」

 二の腕や肩甲骨の周り、しりたぶや太腿。そこかしこが篤実の意志に関係なくひくひくと反応してしまう。何よりも、腹の奥が。

「十兵衛、じゅうべえ…」

 篤実は闇の中で十兵衛の毛皮と衣の境目を探り、砂浜に指を埋めるように肩を撫でた。

 温かい吐息が漏れ出し、次に濡れた熱い軟体がべろりと肌を舐める。首を捩りその舌を追いかけて、顎を舐め、舌を絡ませ合う。

「は、んぁ はぁ――あ」
「ふ…ぅ、ふー…」

 ちゅくっ、ぴちゅ…じゅっ、ぢぅ♡

 まるで舌がはじめからそのために作られた器官であるかのように何時までも絡み合った。
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