真神ノ玉-雪原に爪二つ-

続セ廻(つづくせかい)

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第三夜 冠を脱いだ者

廿三 若君に触れる※

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 告げられた台詞とは裏腹に、篤実の声はか細く震えていた。

「わか……ぎみ……」

「……ゆき、が……よい。……雪政と…――雪千代と」

 先程噛み付いた首筋からだろうか、血のにおいが未だに、若君の雄を掻き乱す香りに混ざり立ち上る。十兵衞は再び、篤実の頬から耳、首筋を舐める。
 同時に篤実の背を再び腕の中へと抱き締め直し、背から腰へ手を滑らせ、帯の結び目を解いた。

「雪政殿――儂の目には見えねえが……月夜の新雪の如き肌を、思い浮かべちまう」

「……こそばゆい」

「目には見えねえが」

 十兵衞は着物の裾から伸びる篤実の足に触れる。

「ッ……ふ……ぁ」

 足首から脹ら脛の肌を撫で、膝の裏に触れながら獣の口吻から熱い息を溢す。手が太腿へと上がると、其処が持つ熱は十兵衞の手に勝るとも劣らない量であった。
 じわりと肌自体が心地良い湿度を持って手に馴染むようであった。

「儂には、耳も鼻も、手も有る」

 十兵衞の白い髪が篤実に握りしめられ、頭皮を引っ張られる痒いような痛みに胸がざわつく。

「じゅう、べ…え」

 胡座を掻いた十兵衞の身体に、自らの身体を反らして擦り寄せる篤実はまるで猫が身を捩るかのようである。徐々に胸の動きが速くなり、彼は十兵衞の肩の毛皮へ顔を埋めた。

「雪政様」

「…己、は…ずうっと……堪えているの、だ。こんな…信じられぬかも…しれないが」

 こくりと唾を飲む微かな音すら十兵衞の耳は拾う。

「何を」

 愚直に訊ねる十兵衞に抗議するかのように、篤実の火照った手がぎゅうっと髪を引っ張った。

「痛ッ」

「ぅ…――き…訊く奴が、あるか、このっ ――ッ」

「なっ おっ おっ?」

 十兵衞は篤実の太腿を揉みながら、彼の言葉に混乱を来しながらも自分が失態を演じたことを今更に知った。

「……じゅうべぇ」

 一段と甘く強請り、篤実は十兵衞の襟を引っ張りながら後ろへ倒れ込む。

「もう、お前と交わること以外、考えとうない」

 篤実が頭を打たぬように手で支え、十兵衞は覆い被さるように四肢を突いた。がら空きになった十兵衛の着物の帯が引っ張られ緩む。

「は……」

 目眩がするほどの獣欲だ。

 ずっと十兵衞の逸物は褌越しに篤実を押し上げていたのだから、篤実の指にまさぐられて解放されればぶるんと揺れて、切っ先を若君へ向けた。

 十兵衞は四つん這いのまま、興奮のあまり全身の毛皮をぶわりと逆立てた。ぐる……と喉を鳴らし再び篤実の顔から首筋を舐め、妻のものだった衣をはだけていく。

「……ゆき」

 身体の大きな男が多い爪牙族の下では、人の中でも細身である篤実の身体はすっかり隠れてしまう程に二人の体格には差があった。手足の太さも、腰回りも同様に。

「壊しても、よいか」

 脚を開かせ、その身体を折り曲げる。

「壊して、ゆきの腹に儂を刻みつけてよいか」

 十兵衞は目が見えない。

 その目が最後にみたのは、戦場での篤実の姿であった。

 今、ゆきがどのような目で自分を見ているのか、それを想像することは篤実への冒涜であり、自分自身への冒涜であり、はらわたが捻られるような苦しみと、脊髄に薬を塗り込められるような快楽が襲う。

「いや……よいか、等と聞いたが」

 ひくりと揺れる足を掴み、尻のまろい形を亀頭でなぞる。双丘から谷へと伝い、皮膚の薄く骨の硬さを感じる一カ所を撫で其処から前へと探っていく。

「じゅうべ、え」

「壊したいんじゃ」

 ひくりと疼く、窄まりを捉えた。

 身体の下に捕らえた獲物は時折ぴくりと太腿を振るわせ、犬のように息を吐いている。

「ゆきが、他の男に股を開けんように、このまま抱き殺したい」

 ぬぷ、と先端を埋めた。

「あ、ぅ……は♡」

 待ち侘びて、気が狂いそうだったゆきの中へ、埋める。

「お主を殺すのは儂じゃ、ゆき」
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