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第二章 戦場に舞う天使の涙

第十一話 むーかし昔の話です 上

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 天使と堕天使は同じであり本来は天族という神族に並ぶ種族であった。
 天族にとって翼の色は自身が得意とする能力を現し翼の多さは力の強さを現す。
 では何故天族とは呼ばれず天使・堕天使と呼ばれるかというと遙か昔に起きた神々の戦いに原因がある。
 全種族を巻き込んだ戦いは『天上の大乱』と呼ばれ、この戦いにより最上位種故子供が出来にくい神族と天族は数を大きく減らした。
 この戦いで天族は大活躍したが故に神族は天族を恐れ天族を支配する事は画策する。
 そこで利用したのがある噂であった。
 最上位種の子供が出来にくいのは力が強すぎるからだ。ならば力を抑えれば子供が出来やすくなる。
 この噂を利用し神族は力を抑える光る輪を天使に提供する。自身も光る輪を付け安全だと信じさせて・・・
 光る輪が天使の間で普及した事で神族は本来の使い方をする。それは意思を封じ奴隷とする制御装置、一度付けたら外れる事がない光る輪。
 力ある天族の長達は弱体化したが意思があり同族解放のため何とか神族へ訴えたが待っていたのは光る輪の追加であった。
 これにより神に仕える天族を天使と呼び、まぬがれた者達を不浄な者神の敵、堕天使と呼んだ。

 クラフト王国にある安い宿で眠る金髪の少年は夢を見る。
 自身を救い地獄に堕としけれど感謝しいつか本当に救ってくれるかもと信じた者との出会いを・・・
 少年の名はユーリ・ラファエル。エメラルドグリーンに輝く十二の翼を持ち大中小と三重の光る輪を頭上に浮かばす熾天使である。
 その日、時空震と呼ばれる世界に穴もしくは亀裂が入った事を関知し調査のために部下を連れ時空震が起きた場所周辺を探索していた。
 探索中、男一人に女五人という奇妙な集団を見付け調査のために話をしに向かった。
 集団の代表であろう黒髪に紅い眼をした青年に近付こうとすると二人の美女に通行を塞がれた。
 一人は銀髪に燃えるような紅い眼をした黒を基調としたどこかの軍服を着た美女、もう一人は金髪に蒼穹が如く澄んだ眼をした紅を基調とした騎士服を着た美女だった。
 少年は誰がどう見ても天使の姿をしている。それも十二の翼を広げた熾天使だ。普通なら畏れて固まるはずだが集団は恐れる様子無く対峙している。
 青年の隣にいる銀髪に紫色の眼をした小柄な少女が青年に尋ねる。
「最上級の天使、熾天使ですがどうしますか?」
「天使に興味がある。幸い数は少ねぇ事だし、カミーラその熾天使を捕らえろ。エルザ周囲の天使を無力化して捕らえろ。レベッカ逃げ出す奴がいたら殺れ」
 通行を塞ぐ二人の美女と青年の背後にいる燃えるような紅い髪と眼をした軽装の美女が揃って言う。
「「「了解」」」
 そう言うと三人は有り得ない行動を起こす。
 金髪の美女は十二の光り輝く翼を広げて空を飛び様子を窺っていた天使達に剣を抜き襲い掛かり、紅い髪の美女はこの世界にあるはずがない大型二丁拳銃で天使を狙う。そして銀髪の美女が無手でユーリに襲い掛かり最上位種が無意識に張る自身への攻撃全てを無効にする無敵結界を破壊して殴り飛ばした。
 殴り飛んでいるユーリの背後にいつの間にか銀髪の美女がいて薙ぎ払うように手刀を首に打ち込みユーリの意識は失った。
 銀髪の美女はユーリの襟を掴むと引きずって青年の下へ行く。
 圧倒的な戦いを見ていた青年と紅い髪の美女、銀髪紫眼の少女と茶髪に黒い眼の少女は驚き口を少し開ける。
 青年は銀髪の美女に聞こえないよう銀髪紫眼の少女に尋ねる。
「なぁレティ、熾天使って強いはずだよな」
「はい。兄さんも苦戦すると思って一対一にしたんですよね」
「ああ」
 茶髪の少女が呟く。
「何あのバグキャラ。チート過ぎ」
 紅髪の美女が呟く。
「あれが使徒? 主越えてるじゃない」
 青年が苦笑いして言う。
「ハハハ・・・なぁ、使徒って謀反起こすかな? ヤベェよ。契約の時、自由契約にしちまったよ」
「それで良かったんじゃないですか? あれを御するのは無理ですよ」
 暫くして銀髪の美女が青年達の前に来て言う。
「今更、契約変更しないわよ」
 聞こえてた!
「やだなぁ。カミーラったら、冗談じゃん。冗談」
「嘘くさいわよ。ガレック」
「俺の名前ガレイクなんだけど・・・」
「じゃあ略してガイね」
「ガレックでいいです」
「個人的にはレイジって呼びたいんだけど・・・」
「そっちは真名だから本当に止めて」
「とっくに真名はバレてるって聞いたけど?」
「昔の話しだよ。紅月玲司の記録は全て消去したんだよ。知ってる奴も殆ど身内や友だけだ。敵で知ってる奴も漢字が分からないから言葉の意味が解らない。だから俺を縛る事が出来ない」
「なら真名で呼んでもいいじゃん」
「せっかく消したんだよ。何かの拍子に思い出したらどうするの!?」
「そんな事無いと思うけど」
「そこは念のためだよ」
「あっそ。っで、これどうすんの?」
 そう言ってカミーラは気絶しているユーリを軽く持ち上げる。
「そうだな。シャル、この天使の輪って奴を調べてくれ」
「了解」
 茶髪の少女がそう言うと空中にPCのモニターとキーボードが現れシャルと呼ばれた少女は天使の輪を調べ始める。
「電脳魔法かぁ。星の図書館に直結するんだろ。調べ物には便利だな。これでゲームが出来たら最高だけどなぁ」
「出来るよ」
「マジでか!?」
「星の図書館、星の記憶はこの星で出来たあらゆる物を記憶する。当然ゲームもこの星で出来たんだから記憶される例え世界が違っても」
「よっしゃぁぁぁ! もう天使なんてどうでもいいや。電脳魔法教えろ。ゲームしようぜ。ゲーム」
「いいわけないでしょ。少しは我慢してよ。お兄ちゃん」
 話しているうちに金髪の美女が全ての天使を捕らえシャルの前に連れて行った。
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