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小学生
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久しぶりに会った男友達が、こちらをいぶかしげに見ている。
彼―――戸田 浩一は、小学生の頃からの友人で、中学高校まで一緒で、何かと気が合って大学卒業して就職した今になっても、時々こうして二人で飲むことがあった。
今日は、久しぶりに飲もうと私が誘って、頼みがあると言っていた。
私は、無理なことを頼んでいることを承知で、息を吸い込んだ。
「彼氏のふりをしてください」
「なんでふりだ」
私こと中島 沙知には、幼馴染がいる。
マンションと呼ぶにはおこがましいような建物だが、まあ、マンションと名前がついているのでマンションてことで。
そのマンションの隣の部屋だった。
生まれた時からお隣同士だった幼馴染は、とても格好いい男の子だった。
保育園もお手て繋いで仲良く通ったものだ。
幼馴染は、林 修也という。
名前まで格好いい気がする。
彼には二つ上の兄がいて、その兄もまた格好良くて、頭が良くて運動もできてしかも優しいと言う何拍子揃えたよと、突っ込みを入れたくなるほど出来の良い人だった。
幼馴染の兄は、林 隼人と言う。
こちらも、名前まで格好いい。
彼らは非常に気立てが良く、私の面倒をよく見てくれていたと思う。
マンションの前の公園は、女の子だけで遊んではいけないと過保護な父が言い、その過保護な父は公園で遊んでくれないと言う理不尽な仕打ちをしてくれた。
その時に「隣の男の子と行く」と私が言い始めて、連れまわしたのが修也と隼人だ。
ほとんど年の変わらない私が言うのもなんだが、非常に物わかりの良い子たちだった。
おままごとにも付き合ってくれたし、鬼ごっこで私を捕まえるのは反則という無茶なルールにも笑って「いいよ」と言うような子たちだった。
その場合、鬼になるのは隼人よりも足の遅い修也だけということになるのだが。
まあ、あの頃は走り回っているだけで楽しかったのだからいいだろう。
それが変わってきたのが小学生に入学するとき。
お隣の林さんの向こう隣に引っ越してきた木村さん。
私と同じ年の心愛(ここあ)ちゃんという女の子がいた。
この子は非常に可愛い子で。
大きな目にふわふわの茶色い髪。色素が薄いのか、真っ白な肌をして、真っ赤な唇をしていた。
恥ずかしがり屋で、ママの背中に隠れて
「はじめまして」
小さな声で真っ赤になって言った。
アニメか。
今だったら大声で突っ込める。
最初は恥ずかしがりながらも、私と一緒に遊んでいた。
ただ、男の子…修也と隼人だが…がやってくると、真っ赤になって隠れてしまうのだ。
けれど、そこはさすができた兄妹。
修也の方はさすがに今までのように遊べなくなったことに気に入らなそうにしながらも、家の中でおままごとなんかをしていた。
けれど―――そのうちに、慣れてきた心愛ちゃんが笑うと、耳まで顔を真っ赤に染め上げたのだ。
きっと初恋の瞬間だったのだ。
目の前でそれを見た私は、何が起こったのかと思ってしまった。
男の子よりも女の子の方が、内面の成長が早いとは言うものの、私よりも彼らの方がよほど早かったのではないかと思う。
私にとっての彼らが、恋愛の対象になるよりも先に、彼らは心愛ちゃんに恋をした。
彼らはお姫様のように心愛ちゃんを扱い、それまで特別だった私の立場は消えてなくなった。
「もう小学生になったんだから」
という言葉と共に、鬼ごっこでは本気で捕まえられた。
私が唯一タッチできる心愛ちゃんをタッチすると、修也か隼人が近くに行ってわざとタッチされて、私は追いかけられる。
私はいつも鬼だ。
いや、修也に同じことをしていた。
うん、同じことをしていたよ!だから文句を言う筋合いじゃないことも理解しよう!
だけど、気に入らなかったんだ!
「もう、心愛ちゃんと遊ばない!」
―――その言葉で、私は一緒に遊んでくれる幼馴染を失った。
その時の私は自惚れとかそういう言葉を知る前だったが、自信があったのだ。
生まれてからずっと仲良くしていたという自負が。
私が怒れば、謝ってくるはずだと。
まあ、実際は心愛ちゃんに負けたのだけれどね!
小学校に通うようになっていて本当に良かった。
でないと私は友達一人もいない子になっていた。
登下校はきつかった。
心愛ちゃんはあからさまに私を無視するし、それを悲しそうに見る兄弟の視線も痛かった。
誰が悪いかなんて明白だ。
だけど、謝る気にはなれなかった。
その場所は、私の場所のはずだった。
自然、三人と会わないように登校は早く、下校は遅くなった。
そのときに、教室に一番早く来ていた浩一と仲良くなったのだ。
浩一はこっちに家を建てる予定があるとか何とかで、『区域外就学』というやつをしているのだと言った。
当時はもちろんこんな漢字はあてはめられていないのだけれど。
校区ではないところから、車で通っている都合上、早く来て遅く帰っているらしかった。
同じクラスで、出席番号が前後だったこともあり、仲が良くなった。
他にも、もちろん女の子の友達はできて、それなりに楽しくできていた。
活発な方の私は、男の子とサッカーをするのが大好きだったし、読書も好きだったので、女の子と本のことについて話すのも好きだった。
交友関係は広く、読書のおかげか勉強もできるし、振り返れば一番輝いていた時期だったな。
彼―――戸田 浩一は、小学生の頃からの友人で、中学高校まで一緒で、何かと気が合って大学卒業して就職した今になっても、時々こうして二人で飲むことがあった。
今日は、久しぶりに飲もうと私が誘って、頼みがあると言っていた。
私は、無理なことを頼んでいることを承知で、息を吸い込んだ。
「彼氏のふりをしてください」
「なんでふりだ」
私こと中島 沙知には、幼馴染がいる。
マンションと呼ぶにはおこがましいような建物だが、まあ、マンションと名前がついているのでマンションてことで。
そのマンションの隣の部屋だった。
生まれた時からお隣同士だった幼馴染は、とても格好いい男の子だった。
保育園もお手て繋いで仲良く通ったものだ。
幼馴染は、林 修也という。
名前まで格好いい気がする。
彼には二つ上の兄がいて、その兄もまた格好良くて、頭が良くて運動もできてしかも優しいと言う何拍子揃えたよと、突っ込みを入れたくなるほど出来の良い人だった。
幼馴染の兄は、林 隼人と言う。
こちらも、名前まで格好いい。
彼らは非常に気立てが良く、私の面倒をよく見てくれていたと思う。
マンションの前の公園は、女の子だけで遊んではいけないと過保護な父が言い、その過保護な父は公園で遊んでくれないと言う理不尽な仕打ちをしてくれた。
その時に「隣の男の子と行く」と私が言い始めて、連れまわしたのが修也と隼人だ。
ほとんど年の変わらない私が言うのもなんだが、非常に物わかりの良い子たちだった。
おままごとにも付き合ってくれたし、鬼ごっこで私を捕まえるのは反則という無茶なルールにも笑って「いいよ」と言うような子たちだった。
その場合、鬼になるのは隼人よりも足の遅い修也だけということになるのだが。
まあ、あの頃は走り回っているだけで楽しかったのだからいいだろう。
それが変わってきたのが小学生に入学するとき。
お隣の林さんの向こう隣に引っ越してきた木村さん。
私と同じ年の心愛(ここあ)ちゃんという女の子がいた。
この子は非常に可愛い子で。
大きな目にふわふわの茶色い髪。色素が薄いのか、真っ白な肌をして、真っ赤な唇をしていた。
恥ずかしがり屋で、ママの背中に隠れて
「はじめまして」
小さな声で真っ赤になって言った。
アニメか。
今だったら大声で突っ込める。
最初は恥ずかしがりながらも、私と一緒に遊んでいた。
ただ、男の子…修也と隼人だが…がやってくると、真っ赤になって隠れてしまうのだ。
けれど、そこはさすができた兄妹。
修也の方はさすがに今までのように遊べなくなったことに気に入らなそうにしながらも、家の中でおままごとなんかをしていた。
けれど―――そのうちに、慣れてきた心愛ちゃんが笑うと、耳まで顔を真っ赤に染め上げたのだ。
きっと初恋の瞬間だったのだ。
目の前でそれを見た私は、何が起こったのかと思ってしまった。
男の子よりも女の子の方が、内面の成長が早いとは言うものの、私よりも彼らの方がよほど早かったのではないかと思う。
私にとっての彼らが、恋愛の対象になるよりも先に、彼らは心愛ちゃんに恋をした。
彼らはお姫様のように心愛ちゃんを扱い、それまで特別だった私の立場は消えてなくなった。
「もう小学生になったんだから」
という言葉と共に、鬼ごっこでは本気で捕まえられた。
私が唯一タッチできる心愛ちゃんをタッチすると、修也か隼人が近くに行ってわざとタッチされて、私は追いかけられる。
私はいつも鬼だ。
いや、修也に同じことをしていた。
うん、同じことをしていたよ!だから文句を言う筋合いじゃないことも理解しよう!
だけど、気に入らなかったんだ!
「もう、心愛ちゃんと遊ばない!」
―――その言葉で、私は一緒に遊んでくれる幼馴染を失った。
その時の私は自惚れとかそういう言葉を知る前だったが、自信があったのだ。
生まれてからずっと仲良くしていたという自負が。
私が怒れば、謝ってくるはずだと。
まあ、実際は心愛ちゃんに負けたのだけれどね!
小学校に通うようになっていて本当に良かった。
でないと私は友達一人もいない子になっていた。
登下校はきつかった。
心愛ちゃんはあからさまに私を無視するし、それを悲しそうに見る兄弟の視線も痛かった。
誰が悪いかなんて明白だ。
だけど、謝る気にはなれなかった。
その場所は、私の場所のはずだった。
自然、三人と会わないように登校は早く、下校は遅くなった。
そのときに、教室に一番早く来ていた浩一と仲良くなったのだ。
浩一はこっちに家を建てる予定があるとか何とかで、『区域外就学』というやつをしているのだと言った。
当時はもちろんこんな漢字はあてはめられていないのだけれど。
校区ではないところから、車で通っている都合上、早く来て遅く帰っているらしかった。
同じクラスで、出席番号が前後だったこともあり、仲が良くなった。
他にも、もちろん女の子の友達はできて、それなりに楽しくできていた。
活発な方の私は、男の子とサッカーをするのが大好きだったし、読書も好きだったので、女の子と本のことについて話すのも好きだった。
交友関係は広く、読書のおかげか勉強もできるし、振り返れば一番輝いていた時期だったな。
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