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第一章
お菓子がおいしいわ
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馬車に揺られ、30分程度で王宮についた。
馴染んだ、何度も訪れた王宮。
だけど、初めて見たような感想が頭の中に浮かんでは消える。
うっわ~。絵~にも描けない美しさ~♪ってやつかな~。
ああ、何だか、愚か者になったような感想が頭の中に流れている。
侍従に案内されたのは、殿下の私室だった。
そう、殿下と二人きりでお会いするときは、いつもここだった。
王族のプライベートな空間に入れる人間は限られる。
そこに、招待され、一緒にお茶を飲めるのだ。
なんて誇らしい。……はずだ。
部屋の前の兵が、扉を開けた。
王宮でも、豪華な室内の真ん中に、二人分のお茶の準備がされていた。
殿下は、一応、立って出迎えてはくれたが、簡単な挨拶をすると、すぐに座ってしまった。
そして、自分は忙しいのだと言う雰囲気を前面に押し出しながら、書類を眺め始めてしまった。
ソファかと思うようなクッションのいい椅子に、大きなテーブル。
まさか、二人分じゃないわよねと思わせる、タワーにのった色とりどりのお菓子。
―――ああ、違う違う。
これは二人分よ。というか、殿下は召し上がらないから、私の分。
そして、私は、すこーししか食べないから、大半は無駄になるもの。
もったいないわ。
「今日はおとなしいな」
目の前で書類を広げた殿下がおっしゃった。
書類を見ている人に熱心に話しかけるのも話しかけづらいですからね。
「お忙しい中、お時間を取らせて申し訳ありません」
一応、謝っておこうかしら。
ここまで、あからさまに嫌味な態度を取られれば、来訪は迷惑だったのだと、簡単に分かるものだ。
それなら、きっぱり断ればいいものを。
ため息をつきたくなるのをこらえながら、頭を下げた。
殿下が、器用に片眉をあげてこちらを見た。
意外だと言う表情を、そのままに現して。
今更か。
心の声が聞こえそうなほど、如実に表情に表わしてくださってありがとうございます。
王族ならば、もう少し、そのあからさますぎる態度、どうにかならないのかしら。
癇に障る態度だけれど、金髪碧眼の麗しい顔はどんな表情をしても似合うわと、全然関係ないことを考えた。
この紅茶おいしいわ。
マフィンもおいしい。
あと、どうしましょう。
殿下は、仕事中だ。
こちらを、ちらりとも見ない。
私は、気兼ねなくおいしいお茶をいただいたので、構わないのだけれど、本当、失礼よね。
まだ来たばかりで、「それではさようなら」もできないなと思いながら、目の前に広げられている書類に目を落とす。
私に理解できるはずがないと、堂々と広げられる書類は、予算書だ。
いや、見積書か?
………。
はっ。無意識に一生懸命見つめてしまった。
数字を見ると、つい癖で。
……癖って何。私にそんな癖があるはずがない。
ない、よね。あれ、なんだろう。
そんな頭がゆらゆらした状態で、書類の不備が気になって口を出した。
馴染んだ、何度も訪れた王宮。
だけど、初めて見たような感想が頭の中に浮かんでは消える。
うっわ~。絵~にも描けない美しさ~♪ってやつかな~。
ああ、何だか、愚か者になったような感想が頭の中に流れている。
侍従に案内されたのは、殿下の私室だった。
そう、殿下と二人きりでお会いするときは、いつもここだった。
王族のプライベートな空間に入れる人間は限られる。
そこに、招待され、一緒にお茶を飲めるのだ。
なんて誇らしい。……はずだ。
部屋の前の兵が、扉を開けた。
王宮でも、豪華な室内の真ん中に、二人分のお茶の準備がされていた。
殿下は、一応、立って出迎えてはくれたが、簡単な挨拶をすると、すぐに座ってしまった。
そして、自分は忙しいのだと言う雰囲気を前面に押し出しながら、書類を眺め始めてしまった。
ソファかと思うようなクッションのいい椅子に、大きなテーブル。
まさか、二人分じゃないわよねと思わせる、タワーにのった色とりどりのお菓子。
―――ああ、違う違う。
これは二人分よ。というか、殿下は召し上がらないから、私の分。
そして、私は、すこーししか食べないから、大半は無駄になるもの。
もったいないわ。
「今日はおとなしいな」
目の前で書類を広げた殿下がおっしゃった。
書類を見ている人に熱心に話しかけるのも話しかけづらいですからね。
「お忙しい中、お時間を取らせて申し訳ありません」
一応、謝っておこうかしら。
ここまで、あからさまに嫌味な態度を取られれば、来訪は迷惑だったのだと、簡単に分かるものだ。
それなら、きっぱり断ればいいものを。
ため息をつきたくなるのをこらえながら、頭を下げた。
殿下が、器用に片眉をあげてこちらを見た。
意外だと言う表情を、そのままに現して。
今更か。
心の声が聞こえそうなほど、如実に表情に表わしてくださってありがとうございます。
王族ならば、もう少し、そのあからさますぎる態度、どうにかならないのかしら。
癇に障る態度だけれど、金髪碧眼の麗しい顔はどんな表情をしても似合うわと、全然関係ないことを考えた。
この紅茶おいしいわ。
マフィンもおいしい。
あと、どうしましょう。
殿下は、仕事中だ。
こちらを、ちらりとも見ない。
私は、気兼ねなくおいしいお茶をいただいたので、構わないのだけれど、本当、失礼よね。
まだ来たばかりで、「それではさようなら」もできないなと思いながら、目の前に広げられている書類に目を落とす。
私に理解できるはずがないと、堂々と広げられる書類は、予算書だ。
いや、見積書か?
………。
はっ。無意識に一生懸命見つめてしまった。
数字を見ると、つい癖で。
……癖って何。私にそんな癖があるはずがない。
ない、よね。あれ、なんだろう。
そんな頭がゆらゆらした状態で、書類の不備が気になって口を出した。
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