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第3章
第六一話 芽吹き
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真の冬の前年と真の冬の二年間の三年間は、寒さが非常に厳しかった。
特に真の冬の厳寒期は、戸外に出ることが死を意識させるほどの寒さだった。真夏でも地下二メートルまで掘ると、凍結していた。個体としての氷というわけではないが、シャーベット状だ。
厳寒期となる一二月から翌年二月には、地面はパワーショベルでも歯が立たないほど堅くなった。
だが、六月から九月までの四カ月間は、野菜の作付けと収穫ができた。真夏だが、奇妙な肌寒さがある気候ではあるが、野菜に限らず植物は成長できた。
我々は、斉木の指導でジャガイモだけを植え、ジャガイモだけを収穫した。
食事は極端に単調になったが、それでも飢えることはなかった。
豆苗と水菜以外の青い野菜はなく、サカナの燻製と干し肉以外の動物性タンパクは摂取できなかった。
それでも、食料状態は他のグループより相当によかったらしい。
アガタ一派に作物の一部を奪われた東地区は、真の冬二年目途中で食糧が尽きた。
各地区に支援を求めたが、応じたのは西地区だけだった。
どうであれ、東地区が北地区に対して敵対的であることは変わりないだろう。なぜならば、次の真の冬まで七〇年もある。東地区に対する北地区の好誼など、無視すればいい。
だから、食糧支援を名目に東地区から北地区への移住を「歓迎する」と宣した。
東地区にとっては体のいい口減らしになるし、北地区にとっては人口奪取の絶好のチャンスだ。
食料が逼迫していた約六〇家族、二〇〇人が応じた。
俺たちの作戦勝ちだ。
真の冬が終わるまで、争い事は〝コップの中の嵐〟でしかなかった。
寒いが、平和だった。
春。
二年目の真の冬が終わる三月初めには、明らかに寒さが和らぎ、四月中旬には雪が完全に消えていた。
過去数年とは異なる季節の移り変わりだ。
斉木の指導に従い、春蒔き小麦の作付けを始める。
誰もが張り切っていた。
夏。
昼間なら半袖で過ごせる。
真の冬の夏は、暖かい冬のようだった。だが、今年の夏は太陽の熱を感じる。
通商も盛んだ。
真の冬の年の半分は、昼間の街中でさえ堪え忍ぶような歩行だったが、行き交う人々の表情が明るい。
俺は、ヒトと精霊族の混血が多く住む街カンスクで、三人の男と会っている。
フルギア帝国帝都クラシフォンの商人組合長モイミール、街人の傭兵隊長ヒューホ、一般住民の長クーン。
仲介したのは、ブルグント人の商人キラード。
さほど広くない部屋の敷物の上で、三人の男が平伏している。
俺とキラード、給仕役のキラードの妻、そして通訳のチュールは先に入室していたが、三人はドアから入るとすぐに平伏した。その行為に相当驚いた。それは、キラードも同じだった。
フルギア人は皇帝に対しても平伏しない。平伏するのは、彼らにとっては神の使徒である白魔族に対してだけだ。
三人をテーブルに着かせることは、そこそこ大変だった。
三人が座り、対面に俺とキラードが着席する。キラードの妻が茶を用意し、少し下がって部屋の隅に立つ。
チュールが俺の後ろに立つ。
三人は平伏した際に、身分と名前を告げていた。
着座すると、モイミールが話し始めた。
「真の冬が訪れる前、使徒様は南に下られました」
俺はモイミールの言葉を反復する。
「南に?」
「はい。
南に下られました。
伝承の通り、真の冬が訪れる前に使徒様は南の海を渡られたようです。
ご下向の途中、街々にお泊まりになり、街々はご供物を供えたと聞いております。
使徒様は、海岸から南の海を渡ったそうです」
「ようするに!
白魔族は南に移動し、その道すがらヒトの街に立ち寄って、子供を供出させて、それを食ったわけだ!」
「ノイリン王……。
私たちにはそれ以外、何もできないのです」
「無力だと?」
「はい……」
「その無力な民が、俺に何の用だ?」
「使徒様がお戻りになりません……。
理由はわかりませんが……。
使徒様が南からお戻りになりません。
気付けば、使徒様の街、オンダリにヒトならざるものが住み着いていました。
使徒様の家畜を奪って……」
「理由があるとすれば、俺たちがオンダリを爆撃したからだろう」
「バクゲキ?」
「あぁ、空から爆弾を八発落とした。海岸部の二区画が消えたよ」
「……。
なぜ、そのような無体ことを……」
「人食い動物に、ヒトを食えばどうなるか教えたんだ」
「噂では、ノイリンは使徒様を恐れていないとか?
使徒様がノイリンを恐れていると?」
「それはわからない。
だが、白魔族は俺たちに対して、直接の攻撃はできない。地べたをチンタラ移動して攻め込む以外はね。
だが、俺たちはいつでも白魔族を空から攻撃できる。
これは事実だ」
「使徒様がお戻りになりません。
ですから、銃が手に入りません。
上流の人々は、誰も売ってくれません」
「槍と剣、弓矢で戦えばいい」
「ですが、西からヒトならざるものの軍がやって来ています。
いくつかの街が襲われ、一帯が皆殺しになった地域もあります」
「皇帝に保護を求めればいい」
「皇帝陛下は、使徒様のお帰りを待っておられます。
ですが、使徒様はお戻りにはなりません」
「戻ってきたら、引越祝いを送ろう。
今度は、特大の爆弾一六発だ」
モイミールは声を詰まらせた。
「クラシフォンが襲われたら、街人がたくさん死にます。
それだけは避けたいのです。
どうか、銃をお譲りください。
ノイリン王……陛下」
ノイリン王は蛮族が俺に付けた敬意を含む渾名であって、階級や職位を表すものではない。だから、通常国王や皇帝に対する〝陛下〟という敬称は使わない。
実際、俺はノイリンの〝王〟ではない。そのことは、フルギア人はよく知っている。知っていながら、俺を〝陛下〟と呼んだ。
モイミールの心の中で、俺の名に尊称を付けるならば、陛下、閣下、猊下など、どれを選ぶか考えて、たまたま陛下を選んだのだろう。フルギア帝国皇帝と同列に〝思っております〟との意思表示だ。
傭兵隊長のヒューホが引き継ぐ。
「最初は盗賊の類いと考えていたのですが、数百か千に達する軍勢のようなのです。
使徒様の庇護のないフルギア皇帝陛下では、諸部族に号令しても兵を集められません。
すでに、使徒様がお戻りになる様子がないことを、知らぬ部族はおりません」
「で、俺に話を振ったと?」
「ご無礼ながら……」
「無礼だね。
実に無礼だ。
それに、厚かましい。
信じられないくらいに!」
「返す言葉もございません……」
「真の冬の前、フルギア皇帝が何をしたか、知っているよね」
「存じております……」
「二八人が死んだ。
オンダリ爆撃は、その報復だ」
「恐れながら、皇帝陛下とフルギアの民は関係ございません。
皇帝陛下の所業は、民に責はございません」
「それは詭弁だね。
民が愚かだから、国家の指導者である皇帝が愚かなんだ」
長クーンが詫びる。
「もうしわけございません。
ノイリン王陛下。
フルギアの民も皇帝陛下の所業には、いささかの恐れを感じております。
ご判断に誤りが多いのでは……と」
言外に、皇帝は国を滅ぼしかねない、との意味を含めている。婉曲だが、明確な皇帝に対する非難だ。クラシフォンの街人に与えられている権限は極端に少なく、彼らが何をどう決断しようとも体制は変えられない。
反乱を起こしても、すぐに鎮圧される。それは、よくわかっていた。眼前の三人には、何もできないことも知っていた。
俺は、自分が欲している情報に傾注したかった。
話題を変える。
「傭兵隊長殿。
盗賊の数は千を超える、となると、もはや盗賊ではないでしょう」
「はい。
盗賊ではなく、軍でありましょう」
傭兵隊長ヒューホは、へりくだってはいるが、堂々としている。腹の座った兵士だ。この男は信頼できる。味方としても。敵としても。
「武器は?」
「すべての兵が、湾曲した刀を帯びていることはわかっています。
また、銃と砲に相当する武器を装備しています。
船で沿岸の街を襲い、砲撃を行っています」
「どんな銃?」
「わかりません。
ただ、銃の数は全兵に行き渡るほどのようです。
砲の数は一船で二〇とも五〇とも……。
いささか信じられませんが……。
それと、その船は空に浮いている……」
「空に浮いている?」
「恐怖のあまり、幻影を見たのでしょうが、生き残りの何人かが、空に浮かぶ巨船を見たと……」
「何だろうね?
で、その軍はヒト?」
「断じることはできませんが、ヒトに似ていることは確かで、精霊族や鬼神族ではありません。
私どもは〝ヒトならざるもの〟と呼んでいます。
髪の色は金、瞳は碧〈みどり〉だと伝えられています。
この街、カンスクの人たちに似ているともいわれますが、どうでしょう」
「金髪碧眼……。
精霊族に金髪はいないし、ここの街人の髪は例外なく見事な銀色だよ」
「はい。
美しい銀髪にございます」
俺は一瞬考え込んだ。
その間隙を突いて、傭兵隊長が俺の心に踏み込む。
「どうか、銃三〇〇をご融通いただけませんか?」
長クーンが続く。
「ご無礼ながら、フルギア金貨でお支払いいたしとうございます」
「銃口を我々に向けるんじゃ?」
「滅相もございません。
空から爆弾など、恐ろしくて……」
「考えましょう。
ですが、可能性は高くないですよ。
以後はキラードさんが窓口になります。
これでいかがか?」
三人は椅子から降り、再び平伏した。
フルギア人にとって、俺は白魔族並みに恐れられ、フルギア帝国皇帝と同列の存在になってしまったようだ。
うんざりする。
日没後、久々の全体会議が食堂で開かれた。
議題は、小銃三〇〇挺をクラシフォンの街人に売却するかどうかだ。当然、実弾もセットだ。
フルギア人が銃を欲する事情も話した。その上で、意見を求めた。
当然だが、斉木を中心に年長者には反対意見が多い。
若年の有力者、アンティ、イサイアス、金吾、金沢、ハミルカル、ベルトルドも反対だ。
チェスラクとクラウスは商売の観点から賛成。ケレネスは「事情は察するが、フルギアは信用ならん」と。だが、「小銃三〇〇なら売ってやれ」と。
だが、営利目的と感情を除くと、どうも二〇歳前後を境に、必ずしも反対ではないようだ。
珠月、ルサリィ、マルユッカ、ファタ、シルヴァは、明確な反対の意思を示さない。
そして、どうも、年長者とは異なる情報を持っているように感じる。
また、ディーノも「もう少し検討しては……」との意見だし、トルクも「いろいろと調べたほうがいいのでは……」という。
俺は議論が深まるにつれ、一部が何らかの情報を持っている可能性を感じ始めた。
若年者を問い詰めるよりも、年長者を攻めたほうが情報が出るように思う。
ディーノに尋ねる。
「ディーノさんは反対ではないようだけど……」
「明確に反対でも、賛成でもないんです」
「なぜです?」
「いや、ちょっと引っかかることがあって……」
「どんなことなんですか?」
「いや……、はっきりしていないので……」
「そこを何とか」
ディーノは少し逡巡してから話し始める。
「ジブラルタルなんですが、様子がおかしいのです。
半年ほど前から……。
前回の通信では、こちらの滑走路の幅と長さを聞いてきました。
伝えていいものか、秘密にすべきか判断できず、答えませんでしたが……」
サビーナが「知りたいのなら、教えてあげれば?」と答え、ディーノが「そういうものですか?」と尋ね返す。
俺がディーノに問う。
「滑走路について尋ねてきたことが、不自然?」
「えぇ、とても不自然です。
いままで、ノイリンについて尋ねてきたことなどありませんから……。
基本、彼らは『自分たちは文明人だけど、あなたたちは動物同然の生活で大変ですね』という態度なんです」
「それが、違ってきた?」
「えぇ、違ってきたんです。
もしかしたら、移動先を探しているのではないかと……」
「移動先?」
「ジブラルタルは、圧迫されているのではないかと……」
「北アフリカの白魔族に?」
「いいえ、別の何か……。
私が感じていることなのですが、相当に高度な文明を維持している地域が複数あるのだと思います。
おそらく二カ所。
ニュージーランドとマダガスカル……。
どちらも南半球にありますが、ジブラルタルは両方の北半球における拠点なのだと思うんです。
そして、ジブラルタルを圧迫しているのは、黒と白の魔族ではなく、機械文明を持つ別なヒトに似た動物ではないかと……」
俺は金吾を見た。
金吾が発言する。
「ジブラルタルが〝出店〟であることは、彼らの通信内容、そして我々との交信でも何となく察せられますが、本拠地の場所を特定できるような情報は出していないと思うんです」
ディーノが応じる。
「キンゴのいうとおりで、彼らは情報は出していないけれど、何となくそう思うんです」
俺は黙っていられなかった。
「ニュージーランドは、オーストラリアから二〇〇〇キロ、南極大陸から二六〇〇キロ離れている。人類が到達するまで、哺乳類はコウモリしかいなかった。
マダガスカルは、アフリカとの間にモザンビーク海峡があるが、その距離は最短四〇〇キロ。モザンビーク海峡の潮流は激しく、動物は渡れない。
それにマダガスカルはアフリカやインド亜大陸から分離して以来、九〇〇〇万年間孤立している。マダガスカルの動物は、原猿類を見てわかるとおり独特なんだ。
あの島は特殊だ。
ドラキュロがいない地域は、他にもあるかもしれないが、ニュージーランドとマダガスカルは特別可能性が高い。
俺たちには、行けないが……」
ディーノが続ける。
「確信はないのですが、ジブラルタルは孤立いているのではないか、と思うのです。
そして、助けを必要としているのではないか、と……」
金吾が疑問を口にする。
「そうかなぁ。
相変わらず、上から目線での発言が多いように感じるけれど……。
最近は、嫌な奴らだ、とまで感じるけど……」
ディーノが答える。
「確かに不遜です。
ですが、妙に弱気なんです。
最近は……。
ニュージーランドやマダガスカルには戻れず、ジブラルタルからは追われそうで、行くあてがないような……」
俺はトルクに意見を求めた。
「トルクさんも明確な反対ではないようだけど……」
トルクがいいにくそうに話し始める。
「近隣の村や街を回っていて、知ったことなのですが、沿岸部のフルギア人の一部が家族を避難させようとしているのです。
それと誰彼かまわず『銃を売ってくれ』と頼み回っています。
よほど切羽詰まっているのではないかと……。
西からとか、海からとか、はっきりはしませんが謎の種族が攻めてきている、と……」
能美が「謎の種族って、何?」とつぶやく。
トルクが続ける。
「赤いジャケット、白いズボン、黒のブーツ、反りの大きい刀を佩き、連発銃で武装しています。
長銃も短銃も、どちらも連発です」
斉木がトルクを強く見る。
「姿形、ヒトに近いとか、わかりますか?」
「ヒトではない、と……、聞きました。
ただ、人種が違うだけかもしれません。
最初は西の山脈(ピレネー山脈)のさらに西に住む人々では、と考えられていたようですが、違うのではないか、とも噂されています」
斉木が俺を見た。
「半田くん、どう思う?」
「先生は?」
「ヒト、精霊族、鬼神族、半龍族、森の人、黒魔族、白魔族。
新たな直立二足歩行動物の可能性……」
「その可能性は否定できませんね」
「ピレネーの西ならあり得るかね……?」
「ヨーロッパオオヤマネコは、ピレネーの西にはいませんからね。スペインオオヤマネコが生息していたわけですから……。
ホモ属だとしても、亜種はもちろん別種もあり得るでしょう」
「ホモ属かな?」
「ホモ属じゃない可能性もあります」
「例えば……」
「わかりません……。
姿が似ているのは、収斂進化の可能性もあるし……」
由加が問う。
「シュウレンシンカ?」
俺が答える。
「収斂進化は、生息環境が同じならば、形態は似てくる、という考え方だ。
サカナとイルカは、似ているだろう?」
斉木が尋ねる。
「半田くんは、ヒトをどう思う?」
「我々は、二〇〇万年間の進化を経験していません。
新生代第四紀更新世の時代、南北アメリカにはスミロドンが生息していました。
犬歯虎、サーベルタイガーとも呼ばれますが、上顎犬歯が二五センチにも達するネコ科の大型捕食動物です。
やがて、海面が下がり、ベーリング海峡が陸地となって、ユーラシアからアメリカに動物が渡ってきたわけです。
その中には、ピューマやジャガーなどのより進化したネコ科の大型捕食動物がいました。
もしかしたら、スミロドンはピューマやジャガーに生存競争で敗れた可能性がある……」
「ヒトがスミロドンだと?」
「そうは思いたくないですが……。
オーストラリアでは、有袋類のフクロオオカミをイヌの仲間ディンゴが駆逐しています」
「逆の例はあるかね?」
「逆?」
「移入してきた動物のほうが絶滅してしまう例……」
「通常、新たな環境に適応した外来生物のほうが強いですよ。
環境に適応できなければ、即、死滅です。
痕跡は残りにくいですが、絶滅してしまうほうが多いでしょう」
「ヒトは?」
「まぁ、外来生物ですね。
他地域からではなく、別年代からの移入ですけど」
「では、生き残ったヒトは強い?」
「どうでしょうね?
この環境に適応しつつあることは事実でしょうが、必ずしも適応しきってはいないわけで……」
「外来生物と外来生物とが、生存を賭けて争ったことは?」
「地球の歴史上、あったでしょうね。
元世界の三〇〇万年前、この世界なら五〇〇万年前、南北アメリカがパナマ地峡でつながりました。
そして、アメリカ大陸大交差が起きるんです。
南アメリカから北アメリカへ、北アメリカから南アメリカに動物が移動しました。
いろいろなことが起こったと思います。
捕食動物だと、南アメリカから北アメリカにピューマが移動、北アメリカから南アメリカにはスミロドンとジャガーの祖先が移動しています。
スミロドンは絶滅しましたが、ジャガーとピューマは南北アメリカで生息し続けました」
「共存は可能だと?」
「基本は……。
棲み分けをすればいいのですから」
「新たな二足歩行動物は、ピレネー以西で進化した?」
「ヒトとその近縁種は東アフリカで生まれました。
それ以外は、種レベルの進化はないかと……。亜種・品種に限定されると思います」
「ホモ・サピエンスもアフリカで生まれた?」
「はい。
ホモ・ネアンデルタールレンシスも、ホモ・エレクトゥスもアフリカで生まれました。
ホモ・ハビリスも、アウストラロピテクスも……」
「ホモ・ナレディは?」
「南アフリカから化石が発見されています。アフリカ以外からは発見されていません。
ホモ・エレクトゥスの脳容量の半分程度なのに、ホモ・サピエンスと同じ時代に生きていた別種人類ですね。
原始的な特徴と、進化した特徴の両方を持ち、埋葬の概念さえあった可能性がある……。
奇妙な人類です」
「我々はどうしたらいい?」
「人類は身体的な進化を待たずに、道具の使用によって環境に適応し、生息域を拡大してきました。
気候への適応も衣服の発明によって、対応しました。ヴュルム氷期の頃のことです。
これからも同じですよ」
「その新人類か、新人種か、はたまた新生物か、それに対しては?」
「排他的ならば戦うまでです。
協調的ならば、ともに生存を目指せばいい」
「だが、情報は〝排他的〟だね」
「ならば、それに備えるだけ……」
クラーラが発言。
「クラシフォンの街人は、ノイリンを見ています。
皇帝には見えていないことでも、街人には見えています。
ノイリンの意思によって、川の沿岸に住むヒトは運命が決まります」
言外に、銃を売って、との意味を含む。
金沢が冗談めかしていう。
「その新人類の武器が、レールガンや反粒子砲でないならば、どうにかなりますよ。
あと、魔法で帆船を空中に舞い上がらせない限りはね。
ウルツとストーマーに砲塔を載せちゃいました。
冬の間に」
クラウスが笑う。
「ウルツはいいね。
あれは役に立つ。カスカベルよりもいいよ」
シャンタルも同意する。
確かにその通りだ。
真の冬の間、農作業ができない八カ月間を利用して、車輌の整備や修理・改造、新造に邁進してきた。
ハーキム装甲車の中古車体を使って、機械式のブルドーザーまで作ったのだ。
それだけじゃない。カラバッシュからは、シュド・アビアシオン・フェネックの練習機兼軽攻撃機を四機、追加で購入している。
寒くても冬眠はしていない。
武器売却の結論は、クラシフォンに対しては小銃三〇〇挺の売却は控えるが、アシュカナンが求めている小銃五〇〇挺の商談には応じることとなった。また、アシュカナンには「追加の売却にも応じる」とした。
アシュカナンに利益を落とさせ、クラシフォンの街人にはアシュカナンに恩義を感じるように仕向けた。
そして、追加分がクラシフォンに渡ることを拒否しなかった。
その決定は後日、キラードからモイミールに伝えられた。
ノイリンと比較的懇意な大きなヒトの街は、ヴィレ、カンスク、カラバッシュ、アシュカナンだ。
クフラック、カンガブル、シェプニノとは、対立はしていない。
ドラキュロの西進阻止作戦において、最初から非協力的だったカンガブルとシェプニノ、途中から言行不一致となったクフラックとは双方に若干のわだかまりがある。
精霊族、鬼神族、半龍族とは、良好な関係を維持している。
黒魔族とは交戦していない。
白魔族はこの一帯から去り、北アフリカから戻ってこない。理由が不明で不気味ではある。
我々の爆撃が功を奏したとは、まったく考えていない。白魔族は、それほど脆弱な動物ではない。
ノイリン域内では、北地区と東地区は交戦しない程度に関係が悪い。
西地区とは〝同盟〟関係にあり、東南地区と南西地区とは付かず離れずの関係。
二〇歳前後までの若者たちには、独自の連絡網があるらしい。それは、フルギア深部にまで達するもののようだ。
何となく、それを感じてはいるが、実体はよくわからない。
真の冬が終わり、人々の表情は明るい。
だが、漠然とした不安が誰の心にもある。
その不安の出所がわからない。
二〇〇万年後にやって来て、自分自身明確に変化した部分がある。
本能だ。
純粋に生命体としての生存本能が活性化している。
そして、その本能、根源的な生命としての能力が、なぜか危険を知らせる信号を発している。
俺たちは、この世界に二トンダンプ、二トンダブルキャブトラック、軽トラの三輌を持ち込んだ。
このうち、ダンプは建設で使われ、ダブルキャブは大きく破損、軽トラは農場で活躍している。
俺たち家族が占有できる車輌は、なくなってしまっていた。
ダブルキャブの修理を考えたが、シングルキャブに修理・改造され、普通の小型キャブオーバートラックとして再生されてしまった。油圧のリフトゲートが便利なので、大活躍だ。
俺たちは、家族で使えるクルマを欲していた。また、最悪の事態を考えた場合、絶対に必要な移動手段でもある。
ダンプと旧ダブルキャブの所有権を放棄する代償に、二輌の引き渡し要求をノイリン北地区行政部に出した。
トラックを望んでいたが、無理だった。だが、代替車は悪くない。
一輌は、中東製のランドクルーザー70系のシャーシに軽装甲ボディを架装した警察車輌のようなライトバンだ。ごついデザインだが、後部対面シートに家族全員が乗れる。ドラキュロに囲まれても耐えられる。
もう一輌は、自衛隊の1/2トントラック(通称パジェロ)だ。荷台が狭く、使い道がないと判断された。
だが、手軽な脚として十分だ。
この四駆はチュールのお気に入り。
軽トラは手放さなかった。
真の冬の間、銃器店は開店休業状態だった。ドラキュロの行動が不活性なので、銃の需要が減ったのだ。
スマホやタブレットはよく売れた。西地区がWiFiの利用可能地域を広げたことが大きな要因。
そして、暖かくなると同時に銃が売れ出した。
ノイリンの中央地区は共同管理区域で、行政や商業の中心だ。北地区、東地区、西地区、東南地区、西南地区の五地区が居住区域。
東地区を除く四地区は、居住者の過半を〝世代を重ねた人々〟が占める。彼らには、ヒトのルーツを忘れた〝蛮族〟もいるし、記録を残す〝異教徒〟もいる。
そして、最近の移住者である〝新参者〟と力を合わせて、真の冬を乗り切った。
東地区はやや特殊だ。住民のほとんどが、二〇〇万年後にやって来て三世代以内の新参者が圧倒的に多い。
カルト的な宗教信者は少ないようだが、歪んだ自然崇拝や熱狂的な自然保護者が目立つ。ベジタリアンも多い。動物の殺生を禁じる教義を信奉する人々もいる。
WiFiの使用、スマホの利用を禁止するなど、科学技術に対する拒否もある。
武器を極端に嫌っていて、北地区や西地区のように武装強化を進めるグループには、厳しい発言がある。
世代を重ねた人々が少ないためか、やや現実離れした世界観を抱いているようにも感じる。理想と現実との乖離が、彼らを苦しめているようにも思える。
現実をありのまま受け入れることができないのかもしれない。
産業は農業のみで、若干の工業があるが、一六世紀か一七世紀程度のレベルしかない。工業は生活を維持する最低限でいいと考えているようだ。
自給自足を基本にしている。
他の四地区との交流は、没交渉ではないが比較的少ない。
若年者は、他地区との交流を禁じられている。他地区の男の子が、東地区の同年代の女の子に声をかけると、かなり厄介なことになる。
だが、協調性はあるし、独善的な主張を強硬にするということもない。
武器・武装を除けば、他地区への干渉はしない。
総合的な判断だが、害のある人々ではない。
現在のノイリンにとって恐ろしい相手は、ドラキュロが第一位、第二位が黒魔族だ。
ヒトは第三位だが、黒魔族との差は地球の直径ほどもある。
真の冬の前、ライン川東方において、俺たちは気化爆弾を投下した。
この際の様子は、ドラゴンの目を介して黒魔族は詳細に知っている。
そのためなのか、黒魔族がライン川を越えて西方に侵攻することはなくなった。一部のヒトと黒魔族との通商はあるようだが、それは密輸だ。密輸は、なくならない。
ドラキュロは減り、黒魔族の侵攻は遠のいた。そして、白魔族は北アフリカから戻らない。
ヒトの世界とノイリンは、平和を享受できるはずだった。
特に真の冬の厳寒期は、戸外に出ることが死を意識させるほどの寒さだった。真夏でも地下二メートルまで掘ると、凍結していた。個体としての氷というわけではないが、シャーベット状だ。
厳寒期となる一二月から翌年二月には、地面はパワーショベルでも歯が立たないほど堅くなった。
だが、六月から九月までの四カ月間は、野菜の作付けと収穫ができた。真夏だが、奇妙な肌寒さがある気候ではあるが、野菜に限らず植物は成長できた。
我々は、斉木の指導でジャガイモだけを植え、ジャガイモだけを収穫した。
食事は極端に単調になったが、それでも飢えることはなかった。
豆苗と水菜以外の青い野菜はなく、サカナの燻製と干し肉以外の動物性タンパクは摂取できなかった。
それでも、食料状態は他のグループより相当によかったらしい。
アガタ一派に作物の一部を奪われた東地区は、真の冬二年目途中で食糧が尽きた。
各地区に支援を求めたが、応じたのは西地区だけだった。
どうであれ、東地区が北地区に対して敵対的であることは変わりないだろう。なぜならば、次の真の冬まで七〇年もある。東地区に対する北地区の好誼など、無視すればいい。
だから、食糧支援を名目に東地区から北地区への移住を「歓迎する」と宣した。
東地区にとっては体のいい口減らしになるし、北地区にとっては人口奪取の絶好のチャンスだ。
食料が逼迫していた約六〇家族、二〇〇人が応じた。
俺たちの作戦勝ちだ。
真の冬が終わるまで、争い事は〝コップの中の嵐〟でしかなかった。
寒いが、平和だった。
春。
二年目の真の冬が終わる三月初めには、明らかに寒さが和らぎ、四月中旬には雪が完全に消えていた。
過去数年とは異なる季節の移り変わりだ。
斉木の指導に従い、春蒔き小麦の作付けを始める。
誰もが張り切っていた。
夏。
昼間なら半袖で過ごせる。
真の冬の夏は、暖かい冬のようだった。だが、今年の夏は太陽の熱を感じる。
通商も盛んだ。
真の冬の年の半分は、昼間の街中でさえ堪え忍ぶような歩行だったが、行き交う人々の表情が明るい。
俺は、ヒトと精霊族の混血が多く住む街カンスクで、三人の男と会っている。
フルギア帝国帝都クラシフォンの商人組合長モイミール、街人の傭兵隊長ヒューホ、一般住民の長クーン。
仲介したのは、ブルグント人の商人キラード。
さほど広くない部屋の敷物の上で、三人の男が平伏している。
俺とキラード、給仕役のキラードの妻、そして通訳のチュールは先に入室していたが、三人はドアから入るとすぐに平伏した。その行為に相当驚いた。それは、キラードも同じだった。
フルギア人は皇帝に対しても平伏しない。平伏するのは、彼らにとっては神の使徒である白魔族に対してだけだ。
三人をテーブルに着かせることは、そこそこ大変だった。
三人が座り、対面に俺とキラードが着席する。キラードの妻が茶を用意し、少し下がって部屋の隅に立つ。
チュールが俺の後ろに立つ。
三人は平伏した際に、身分と名前を告げていた。
着座すると、モイミールが話し始めた。
「真の冬が訪れる前、使徒様は南に下られました」
俺はモイミールの言葉を反復する。
「南に?」
「はい。
南に下られました。
伝承の通り、真の冬が訪れる前に使徒様は南の海を渡られたようです。
ご下向の途中、街々にお泊まりになり、街々はご供物を供えたと聞いております。
使徒様は、海岸から南の海を渡ったそうです」
「ようするに!
白魔族は南に移動し、その道すがらヒトの街に立ち寄って、子供を供出させて、それを食ったわけだ!」
「ノイリン王……。
私たちにはそれ以外、何もできないのです」
「無力だと?」
「はい……」
「その無力な民が、俺に何の用だ?」
「使徒様がお戻りになりません……。
理由はわかりませんが……。
使徒様が南からお戻りになりません。
気付けば、使徒様の街、オンダリにヒトならざるものが住み着いていました。
使徒様の家畜を奪って……」
「理由があるとすれば、俺たちがオンダリを爆撃したからだろう」
「バクゲキ?」
「あぁ、空から爆弾を八発落とした。海岸部の二区画が消えたよ」
「……。
なぜ、そのような無体ことを……」
「人食い動物に、ヒトを食えばどうなるか教えたんだ」
「噂では、ノイリンは使徒様を恐れていないとか?
使徒様がノイリンを恐れていると?」
「それはわからない。
だが、白魔族は俺たちに対して、直接の攻撃はできない。地べたをチンタラ移動して攻め込む以外はね。
だが、俺たちはいつでも白魔族を空から攻撃できる。
これは事実だ」
「使徒様がお戻りになりません。
ですから、銃が手に入りません。
上流の人々は、誰も売ってくれません」
「槍と剣、弓矢で戦えばいい」
「ですが、西からヒトならざるものの軍がやって来ています。
いくつかの街が襲われ、一帯が皆殺しになった地域もあります」
「皇帝に保護を求めればいい」
「皇帝陛下は、使徒様のお帰りを待っておられます。
ですが、使徒様はお戻りにはなりません」
「戻ってきたら、引越祝いを送ろう。
今度は、特大の爆弾一六発だ」
モイミールは声を詰まらせた。
「クラシフォンが襲われたら、街人がたくさん死にます。
それだけは避けたいのです。
どうか、銃をお譲りください。
ノイリン王……陛下」
ノイリン王は蛮族が俺に付けた敬意を含む渾名であって、階級や職位を表すものではない。だから、通常国王や皇帝に対する〝陛下〟という敬称は使わない。
実際、俺はノイリンの〝王〟ではない。そのことは、フルギア人はよく知っている。知っていながら、俺を〝陛下〟と呼んだ。
モイミールの心の中で、俺の名に尊称を付けるならば、陛下、閣下、猊下など、どれを選ぶか考えて、たまたま陛下を選んだのだろう。フルギア帝国皇帝と同列に〝思っております〟との意思表示だ。
傭兵隊長のヒューホが引き継ぐ。
「最初は盗賊の類いと考えていたのですが、数百か千に達する軍勢のようなのです。
使徒様の庇護のないフルギア皇帝陛下では、諸部族に号令しても兵を集められません。
すでに、使徒様がお戻りになる様子がないことを、知らぬ部族はおりません」
「で、俺に話を振ったと?」
「ご無礼ながら……」
「無礼だね。
実に無礼だ。
それに、厚かましい。
信じられないくらいに!」
「返す言葉もございません……」
「真の冬の前、フルギア皇帝が何をしたか、知っているよね」
「存じております……」
「二八人が死んだ。
オンダリ爆撃は、その報復だ」
「恐れながら、皇帝陛下とフルギアの民は関係ございません。
皇帝陛下の所業は、民に責はございません」
「それは詭弁だね。
民が愚かだから、国家の指導者である皇帝が愚かなんだ」
長クーンが詫びる。
「もうしわけございません。
ノイリン王陛下。
フルギアの民も皇帝陛下の所業には、いささかの恐れを感じております。
ご判断に誤りが多いのでは……と」
言外に、皇帝は国を滅ぼしかねない、との意味を含めている。婉曲だが、明確な皇帝に対する非難だ。クラシフォンの街人に与えられている権限は極端に少なく、彼らが何をどう決断しようとも体制は変えられない。
反乱を起こしても、すぐに鎮圧される。それは、よくわかっていた。眼前の三人には、何もできないことも知っていた。
俺は、自分が欲している情報に傾注したかった。
話題を変える。
「傭兵隊長殿。
盗賊の数は千を超える、となると、もはや盗賊ではないでしょう」
「はい。
盗賊ではなく、軍でありましょう」
傭兵隊長ヒューホは、へりくだってはいるが、堂々としている。腹の座った兵士だ。この男は信頼できる。味方としても。敵としても。
「武器は?」
「すべての兵が、湾曲した刀を帯びていることはわかっています。
また、銃と砲に相当する武器を装備しています。
船で沿岸の街を襲い、砲撃を行っています」
「どんな銃?」
「わかりません。
ただ、銃の数は全兵に行き渡るほどのようです。
砲の数は一船で二〇とも五〇とも……。
いささか信じられませんが……。
それと、その船は空に浮いている……」
「空に浮いている?」
「恐怖のあまり、幻影を見たのでしょうが、生き残りの何人かが、空に浮かぶ巨船を見たと……」
「何だろうね?
で、その軍はヒト?」
「断じることはできませんが、ヒトに似ていることは確かで、精霊族や鬼神族ではありません。
私どもは〝ヒトならざるもの〟と呼んでいます。
髪の色は金、瞳は碧〈みどり〉だと伝えられています。
この街、カンスクの人たちに似ているともいわれますが、どうでしょう」
「金髪碧眼……。
精霊族に金髪はいないし、ここの街人の髪は例外なく見事な銀色だよ」
「はい。
美しい銀髪にございます」
俺は一瞬考え込んだ。
その間隙を突いて、傭兵隊長が俺の心に踏み込む。
「どうか、銃三〇〇をご融通いただけませんか?」
長クーンが続く。
「ご無礼ながら、フルギア金貨でお支払いいたしとうございます」
「銃口を我々に向けるんじゃ?」
「滅相もございません。
空から爆弾など、恐ろしくて……」
「考えましょう。
ですが、可能性は高くないですよ。
以後はキラードさんが窓口になります。
これでいかがか?」
三人は椅子から降り、再び平伏した。
フルギア人にとって、俺は白魔族並みに恐れられ、フルギア帝国皇帝と同列の存在になってしまったようだ。
うんざりする。
日没後、久々の全体会議が食堂で開かれた。
議題は、小銃三〇〇挺をクラシフォンの街人に売却するかどうかだ。当然、実弾もセットだ。
フルギア人が銃を欲する事情も話した。その上で、意見を求めた。
当然だが、斉木を中心に年長者には反対意見が多い。
若年の有力者、アンティ、イサイアス、金吾、金沢、ハミルカル、ベルトルドも反対だ。
チェスラクとクラウスは商売の観点から賛成。ケレネスは「事情は察するが、フルギアは信用ならん」と。だが、「小銃三〇〇なら売ってやれ」と。
だが、営利目的と感情を除くと、どうも二〇歳前後を境に、必ずしも反対ではないようだ。
珠月、ルサリィ、マルユッカ、ファタ、シルヴァは、明確な反対の意思を示さない。
そして、どうも、年長者とは異なる情報を持っているように感じる。
また、ディーノも「もう少し検討しては……」との意見だし、トルクも「いろいろと調べたほうがいいのでは……」という。
俺は議論が深まるにつれ、一部が何らかの情報を持っている可能性を感じ始めた。
若年者を問い詰めるよりも、年長者を攻めたほうが情報が出るように思う。
ディーノに尋ねる。
「ディーノさんは反対ではないようだけど……」
「明確に反対でも、賛成でもないんです」
「なぜです?」
「いや、ちょっと引っかかることがあって……」
「どんなことなんですか?」
「いや……、はっきりしていないので……」
「そこを何とか」
ディーノは少し逡巡してから話し始める。
「ジブラルタルなんですが、様子がおかしいのです。
半年ほど前から……。
前回の通信では、こちらの滑走路の幅と長さを聞いてきました。
伝えていいものか、秘密にすべきか判断できず、答えませんでしたが……」
サビーナが「知りたいのなら、教えてあげれば?」と答え、ディーノが「そういうものですか?」と尋ね返す。
俺がディーノに問う。
「滑走路について尋ねてきたことが、不自然?」
「えぇ、とても不自然です。
いままで、ノイリンについて尋ねてきたことなどありませんから……。
基本、彼らは『自分たちは文明人だけど、あなたたちは動物同然の生活で大変ですね』という態度なんです」
「それが、違ってきた?」
「えぇ、違ってきたんです。
もしかしたら、移動先を探しているのではないかと……」
「移動先?」
「ジブラルタルは、圧迫されているのではないかと……」
「北アフリカの白魔族に?」
「いいえ、別の何か……。
私が感じていることなのですが、相当に高度な文明を維持している地域が複数あるのだと思います。
おそらく二カ所。
ニュージーランドとマダガスカル……。
どちらも南半球にありますが、ジブラルタルは両方の北半球における拠点なのだと思うんです。
そして、ジブラルタルを圧迫しているのは、黒と白の魔族ではなく、機械文明を持つ別なヒトに似た動物ではないかと……」
俺は金吾を見た。
金吾が発言する。
「ジブラルタルが〝出店〟であることは、彼らの通信内容、そして我々との交信でも何となく察せられますが、本拠地の場所を特定できるような情報は出していないと思うんです」
ディーノが応じる。
「キンゴのいうとおりで、彼らは情報は出していないけれど、何となくそう思うんです」
俺は黙っていられなかった。
「ニュージーランドは、オーストラリアから二〇〇〇キロ、南極大陸から二六〇〇キロ離れている。人類が到達するまで、哺乳類はコウモリしかいなかった。
マダガスカルは、アフリカとの間にモザンビーク海峡があるが、その距離は最短四〇〇キロ。モザンビーク海峡の潮流は激しく、動物は渡れない。
それにマダガスカルはアフリカやインド亜大陸から分離して以来、九〇〇〇万年間孤立している。マダガスカルの動物は、原猿類を見てわかるとおり独特なんだ。
あの島は特殊だ。
ドラキュロがいない地域は、他にもあるかもしれないが、ニュージーランドとマダガスカルは特別可能性が高い。
俺たちには、行けないが……」
ディーノが続ける。
「確信はないのですが、ジブラルタルは孤立いているのではないか、と思うのです。
そして、助けを必要としているのではないか、と……」
金吾が疑問を口にする。
「そうかなぁ。
相変わらず、上から目線での発言が多いように感じるけれど……。
最近は、嫌な奴らだ、とまで感じるけど……」
ディーノが答える。
「確かに不遜です。
ですが、妙に弱気なんです。
最近は……。
ニュージーランドやマダガスカルには戻れず、ジブラルタルからは追われそうで、行くあてがないような……」
俺はトルクに意見を求めた。
「トルクさんも明確な反対ではないようだけど……」
トルクがいいにくそうに話し始める。
「近隣の村や街を回っていて、知ったことなのですが、沿岸部のフルギア人の一部が家族を避難させようとしているのです。
それと誰彼かまわず『銃を売ってくれ』と頼み回っています。
よほど切羽詰まっているのではないかと……。
西からとか、海からとか、はっきりはしませんが謎の種族が攻めてきている、と……」
能美が「謎の種族って、何?」とつぶやく。
トルクが続ける。
「赤いジャケット、白いズボン、黒のブーツ、反りの大きい刀を佩き、連発銃で武装しています。
長銃も短銃も、どちらも連発です」
斉木がトルクを強く見る。
「姿形、ヒトに近いとか、わかりますか?」
「ヒトではない、と……、聞きました。
ただ、人種が違うだけかもしれません。
最初は西の山脈(ピレネー山脈)のさらに西に住む人々では、と考えられていたようですが、違うのではないか、とも噂されています」
斉木が俺を見た。
「半田くん、どう思う?」
「先生は?」
「ヒト、精霊族、鬼神族、半龍族、森の人、黒魔族、白魔族。
新たな直立二足歩行動物の可能性……」
「その可能性は否定できませんね」
「ピレネーの西ならあり得るかね……?」
「ヨーロッパオオヤマネコは、ピレネーの西にはいませんからね。スペインオオヤマネコが生息していたわけですから……。
ホモ属だとしても、亜種はもちろん別種もあり得るでしょう」
「ホモ属かな?」
「ホモ属じゃない可能性もあります」
「例えば……」
「わかりません……。
姿が似ているのは、収斂進化の可能性もあるし……」
由加が問う。
「シュウレンシンカ?」
俺が答える。
「収斂進化は、生息環境が同じならば、形態は似てくる、という考え方だ。
サカナとイルカは、似ているだろう?」
斉木が尋ねる。
「半田くんは、ヒトをどう思う?」
「我々は、二〇〇万年間の進化を経験していません。
新生代第四紀更新世の時代、南北アメリカにはスミロドンが生息していました。
犬歯虎、サーベルタイガーとも呼ばれますが、上顎犬歯が二五センチにも達するネコ科の大型捕食動物です。
やがて、海面が下がり、ベーリング海峡が陸地となって、ユーラシアからアメリカに動物が渡ってきたわけです。
その中には、ピューマやジャガーなどのより進化したネコ科の大型捕食動物がいました。
もしかしたら、スミロドンはピューマやジャガーに生存競争で敗れた可能性がある……」
「ヒトがスミロドンだと?」
「そうは思いたくないですが……。
オーストラリアでは、有袋類のフクロオオカミをイヌの仲間ディンゴが駆逐しています」
「逆の例はあるかね?」
「逆?」
「移入してきた動物のほうが絶滅してしまう例……」
「通常、新たな環境に適応した外来生物のほうが強いですよ。
環境に適応できなければ、即、死滅です。
痕跡は残りにくいですが、絶滅してしまうほうが多いでしょう」
「ヒトは?」
「まぁ、外来生物ですね。
他地域からではなく、別年代からの移入ですけど」
「では、生き残ったヒトは強い?」
「どうでしょうね?
この環境に適応しつつあることは事実でしょうが、必ずしも適応しきってはいないわけで……」
「外来生物と外来生物とが、生存を賭けて争ったことは?」
「地球の歴史上、あったでしょうね。
元世界の三〇〇万年前、この世界なら五〇〇万年前、南北アメリカがパナマ地峡でつながりました。
そして、アメリカ大陸大交差が起きるんです。
南アメリカから北アメリカへ、北アメリカから南アメリカに動物が移動しました。
いろいろなことが起こったと思います。
捕食動物だと、南アメリカから北アメリカにピューマが移動、北アメリカから南アメリカにはスミロドンとジャガーの祖先が移動しています。
スミロドンは絶滅しましたが、ジャガーとピューマは南北アメリカで生息し続けました」
「共存は可能だと?」
「基本は……。
棲み分けをすればいいのですから」
「新たな二足歩行動物は、ピレネー以西で進化した?」
「ヒトとその近縁種は東アフリカで生まれました。
それ以外は、種レベルの進化はないかと……。亜種・品種に限定されると思います」
「ホモ・サピエンスもアフリカで生まれた?」
「はい。
ホモ・ネアンデルタールレンシスも、ホモ・エレクトゥスもアフリカで生まれました。
ホモ・ハビリスも、アウストラロピテクスも……」
「ホモ・ナレディは?」
「南アフリカから化石が発見されています。アフリカ以外からは発見されていません。
ホモ・エレクトゥスの脳容量の半分程度なのに、ホモ・サピエンスと同じ時代に生きていた別種人類ですね。
原始的な特徴と、進化した特徴の両方を持ち、埋葬の概念さえあった可能性がある……。
奇妙な人類です」
「我々はどうしたらいい?」
「人類は身体的な進化を待たずに、道具の使用によって環境に適応し、生息域を拡大してきました。
気候への適応も衣服の発明によって、対応しました。ヴュルム氷期の頃のことです。
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「その新人類か、新人種か、はたまた新生物か、それに対しては?」
「排他的ならば戦うまでです。
協調的ならば、ともに生存を目指せばいい」
「だが、情報は〝排他的〟だね」
「ならば、それに備えるだけ……」
クラーラが発言。
「クラシフォンの街人は、ノイリンを見ています。
皇帝には見えていないことでも、街人には見えています。
ノイリンの意思によって、川の沿岸に住むヒトは運命が決まります」
言外に、銃を売って、との意味を含む。
金沢が冗談めかしていう。
「その新人類の武器が、レールガンや反粒子砲でないならば、どうにかなりますよ。
あと、魔法で帆船を空中に舞い上がらせない限りはね。
ウルツとストーマーに砲塔を載せちゃいました。
冬の間に」
クラウスが笑う。
「ウルツはいいね。
あれは役に立つ。カスカベルよりもいいよ」
シャンタルも同意する。
確かにその通りだ。
真の冬の間、農作業ができない八カ月間を利用して、車輌の整備や修理・改造、新造に邁進してきた。
ハーキム装甲車の中古車体を使って、機械式のブルドーザーまで作ったのだ。
それだけじゃない。カラバッシュからは、シュド・アビアシオン・フェネックの練習機兼軽攻撃機を四機、追加で購入している。
寒くても冬眠はしていない。
武器売却の結論は、クラシフォンに対しては小銃三〇〇挺の売却は控えるが、アシュカナンが求めている小銃五〇〇挺の商談には応じることとなった。また、アシュカナンには「追加の売却にも応じる」とした。
アシュカナンに利益を落とさせ、クラシフォンの街人にはアシュカナンに恩義を感じるように仕向けた。
そして、追加分がクラシフォンに渡ることを拒否しなかった。
その決定は後日、キラードからモイミールに伝えられた。
ノイリンと比較的懇意な大きなヒトの街は、ヴィレ、カンスク、カラバッシュ、アシュカナンだ。
クフラック、カンガブル、シェプニノとは、対立はしていない。
ドラキュロの西進阻止作戦において、最初から非協力的だったカンガブルとシェプニノ、途中から言行不一致となったクフラックとは双方に若干のわだかまりがある。
精霊族、鬼神族、半龍族とは、良好な関係を維持している。
黒魔族とは交戦していない。
白魔族はこの一帯から去り、北アフリカから戻ってこない。理由が不明で不気味ではある。
我々の爆撃が功を奏したとは、まったく考えていない。白魔族は、それほど脆弱な動物ではない。
ノイリン域内では、北地区と東地区は交戦しない程度に関係が悪い。
西地区とは〝同盟〟関係にあり、東南地区と南西地区とは付かず離れずの関係。
二〇歳前後までの若者たちには、独自の連絡網があるらしい。それは、フルギア深部にまで達するもののようだ。
何となく、それを感じてはいるが、実体はよくわからない。
真の冬が終わり、人々の表情は明るい。
だが、漠然とした不安が誰の心にもある。
その不安の出所がわからない。
二〇〇万年後にやって来て、自分自身明確に変化した部分がある。
本能だ。
純粋に生命体としての生存本能が活性化している。
そして、その本能、根源的な生命としての能力が、なぜか危険を知らせる信号を発している。
俺たちは、この世界に二トンダンプ、二トンダブルキャブトラック、軽トラの三輌を持ち込んだ。
このうち、ダンプは建設で使われ、ダブルキャブは大きく破損、軽トラは農場で活躍している。
俺たち家族が占有できる車輌は、なくなってしまっていた。
ダブルキャブの修理を考えたが、シングルキャブに修理・改造され、普通の小型キャブオーバートラックとして再生されてしまった。油圧のリフトゲートが便利なので、大活躍だ。
俺たちは、家族で使えるクルマを欲していた。また、最悪の事態を考えた場合、絶対に必要な移動手段でもある。
ダンプと旧ダブルキャブの所有権を放棄する代償に、二輌の引き渡し要求をノイリン北地区行政部に出した。
トラックを望んでいたが、無理だった。だが、代替車は悪くない。
一輌は、中東製のランドクルーザー70系のシャーシに軽装甲ボディを架装した警察車輌のようなライトバンだ。ごついデザインだが、後部対面シートに家族全員が乗れる。ドラキュロに囲まれても耐えられる。
もう一輌は、自衛隊の1/2トントラック(通称パジェロ)だ。荷台が狭く、使い道がないと判断された。
だが、手軽な脚として十分だ。
この四駆はチュールのお気に入り。
軽トラは手放さなかった。
真の冬の間、銃器店は開店休業状態だった。ドラキュロの行動が不活性なので、銃の需要が減ったのだ。
スマホやタブレットはよく売れた。西地区がWiFiの利用可能地域を広げたことが大きな要因。
そして、暖かくなると同時に銃が売れ出した。
ノイリンの中央地区は共同管理区域で、行政や商業の中心だ。北地区、東地区、西地区、東南地区、西南地区の五地区が居住区域。
東地区を除く四地区は、居住者の過半を〝世代を重ねた人々〟が占める。彼らには、ヒトのルーツを忘れた〝蛮族〟もいるし、記録を残す〝異教徒〟もいる。
そして、最近の移住者である〝新参者〟と力を合わせて、真の冬を乗り切った。
東地区はやや特殊だ。住民のほとんどが、二〇〇万年後にやって来て三世代以内の新参者が圧倒的に多い。
カルト的な宗教信者は少ないようだが、歪んだ自然崇拝や熱狂的な自然保護者が目立つ。ベジタリアンも多い。動物の殺生を禁じる教義を信奉する人々もいる。
WiFiの使用、スマホの利用を禁止するなど、科学技術に対する拒否もある。
武器を極端に嫌っていて、北地区や西地区のように武装強化を進めるグループには、厳しい発言がある。
世代を重ねた人々が少ないためか、やや現実離れした世界観を抱いているようにも感じる。理想と現実との乖離が、彼らを苦しめているようにも思える。
現実をありのまま受け入れることができないのかもしれない。
産業は農業のみで、若干の工業があるが、一六世紀か一七世紀程度のレベルしかない。工業は生活を維持する最低限でいいと考えているようだ。
自給自足を基本にしている。
他の四地区との交流は、没交渉ではないが比較的少ない。
若年者は、他地区との交流を禁じられている。他地区の男の子が、東地区の同年代の女の子に声をかけると、かなり厄介なことになる。
だが、協調性はあるし、独善的な主張を強硬にするということもない。
武器・武装を除けば、他地区への干渉はしない。
総合的な判断だが、害のある人々ではない。
現在のノイリンにとって恐ろしい相手は、ドラキュロが第一位、第二位が黒魔族だ。
ヒトは第三位だが、黒魔族との差は地球の直径ほどもある。
真の冬の前、ライン川東方において、俺たちは気化爆弾を投下した。
この際の様子は、ドラゴンの目を介して黒魔族は詳細に知っている。
そのためなのか、黒魔族がライン川を越えて西方に侵攻することはなくなった。一部のヒトと黒魔族との通商はあるようだが、それは密輸だ。密輸は、なくならない。
ドラキュロは減り、黒魔族の侵攻は遠のいた。そして、白魔族は北アフリカから戻らない。
ヒトの世界とノイリンは、平和を享受できるはずだった。
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