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第7章
07-171 王冠湾
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ベルーガの船橋には、幼児を含むメンバー全員が集まっている。今後の方針を決める重要な会議だ。
オークを追って200万年後に時渡りをしたものの、200万年後の世界は想定とはまったく違っていた。さらに、ヒトにとって、オークよりも危険なセロというヒトに似た動物までいる。
香野木恵一郎たちが生き残るには、大幅な方針変更と新たな覚悟が必要だった。この世界のヒトから見れば、香野木たちは船でやって来たこと以外にさしたる特徴がないのだ。
すでに埋没しているし、生存に艱難を感じている。
香野木が最初の発言をする。
「今後のことだけど……」
井澤貞之は、彼が考える原理原則を述べる。「どの勢力からも等距離、完全中立が理想だが、それは無理だろう。
だが、できるだけ中立がいい」
加賀谷真梨は、別な視点から議論する。
「この世界は想像とは異なっていて、貨幣経済が発展している。
お金を稼ぐ方法を考えないと、行き詰まるよ」
それは、誰もが感じていた。
長宗元親には、目算があった。
「南島だが、王冠湾と呼ばれている深い入り江がある。島の最北だ。
入り江の入口は、バンジェル島との水道に面している。王冠湾は徳利のような形をしているが、湾の奥に大理石製の構造物を見つけた。
半分以上砂に埋まっているが、間違いなく乾ドックだ。掘り出して、造船所を造ろう」
加賀谷真梨が疑義を示す。
「船を造るには、何カ月もかかるよ」
彼女が心配なことは、造船では資金の回収に時間がかかりすぎる点だ。
「小型の船を造る。
30メートル級の高速双胴船は、需要があると思う。
バンジェル島勢力は、4つの島に分散することになる。しかも、距離が近い。小型の高速船は役に立つ」
加賀谷真梨は、別なことを考えていた。
「もっと小さい船ではダメかな?」
長宗元親が訝る。
「ボートか?
小型のボートなら、バンジェル島の造船チームが建造している。原型は上陸用舟艇だろう。たぶん、ヒギンズボートだ。
あの船なら、ヒトも貨物も、クルマも載せられる。この世界に適している。我々が市場に入り込む余地はない」
「元親さん、DUKWは知っていますか?」
「水陸両用のトラックのこと?」
「えぇ、第二次世界大戦の頃に開発され、結構長く使われた……。
私が勤めていた会社に、観光用水陸両用車の開発打診があったの。そのとき、DUKWや後継のLARC-Vも研究材料だった。
DUKWは最も多く製造された水陸両用車で、航洋性も高かったから詳しく調べた。記録では、単独でドーバー海峡を渡れたとか。
水上なら5トン、陸上なら2.5トンの貨物が積める」
「真梨さん、それをここで……」
「えぇ、長宗さんが船の部分を造り、私が自動車の部分を造る。
どう?」
「真梨さん……。
目算はあるの?」
「長宗さん、バンジェル島の自動車工場は、ウニモグのコンポーネントを外販しているの。
修理用部品として……」
「ウニモグ?」
「ドイツ製の作業車で、悪路の走破性が高いトラック……。
装甲車のベース車輌になることも多い。
バンジェル島で製造されているバラクーダやディンゴもウニモグベースの装甲車よ」
「で?」
「ウニモグのサスペンションやエンジンを利用すれば、水陸両用車が作れるんじゃないかと……」
「真梨さん、ある程度の凌波性を確保しようと思えば、全長10メートルは必要だ」
「4トントラックと同じくらいの長さだから、大きすぎはしないはず……。
DUKWは6輪駆動だったけど、私が考えている水陸両用車は4輪駆動。
LARC-Vに似た船に近いボディに、4輪を取り付けるの。全体はLARC-Vに似ているけど、車体自体は純粋なトラックがいいと思う。左右と後方にアオリがある普通のトラックで、油圧クレーン付きのユニック車。
タイヤの空気圧を自在に変えられるようにして、軟弱な砂地でも動けるように……」
「小型であっても本格的な船として考えるなら、ビルジポンプが必要だな。
アオリは浸水の原因になる。クレーンがあれば、アオリは後方だけでいい。もちろん防水する」
里崎杏には、別な案があった。
「生活のために水陸両用トラックを作ることは、いいとは思うけど……。
ヌアクショット川を遡れる船が欲しいんだけど」
土井将馬が提案する。
「あの川を遡上するならエアボートかな。
部品は手に入るんじゃないかな。
6人が乗れて、1トン積めるクラスなら、手持ちの部品で造れると思う」
畠野史子が小首をかしげる。
「エアボート?」
里崎杏が説明する。
「飛行機のようなプロペラで推進するボートのこと。ホバークラフトに似ているけれど、ホバークラフトのように浮き上がる能力はないの。
船体の下に空気入りゴムの柱を並べて、船底をゴム板で覆うの。一種のゴムボートかな。
船底に突起物、舵やスクリュープロペラがないから、極端に水深の浅い場所でも滑走できる。
スピードはかなり出るね」
長宗元親が賛成する。
「いい案だ。
船体骨格は製作しなければならないが、部品はほとんどある。買うとしたらプロペラくらいだろう」
土井将馬が微笑む。
「小型単発機のプロペラが使えるよ」
香野木恵一郎が判断する。
「まず、拠点を南島王冠湾にしよう。
バンジェル島から離れることで一定の“独立”を保てるし、バンジェル島の勢力圏内であるから連携も保てる。
ズルイ考えだが、単独での生き残りは難しいにもかかわらず、誰かに指図されたくはない。
加賀谷さんの水陸両用トラックは、生活費と活動費を稼ぐにはいい計画かもしれない。1輌か2輌でも、相応の利益になるだろう。
ヌアクショット川の交通を開けば、一定の効果がある。我々の存在意義も示せるかもしれない。
長宗さん発案の高速の小型船は、この一帯では有効な乗り物だと思う。
我々にも必要だし、バンジェル島やクマンも欲しがるだろう。カナリヤ諸島も……。
それから、水陸両用車をもう1車種開発できないかな?
装甲車輌がいい」
加賀谷真理が微笑む。
「バンジェル島は、何種類かのロシア系装甲車を持っているの。ロシア系の装甲車は水陸両用だから、いいサンプルがあるかもしれない」
井澤貞之が提案する。
「ベルーガを王冠湾に移動させよう。
香野木さん、バンジェル島に王冠湾の“領有”を交渉してくれ。
使用許可が下り次第、テント倉庫4棟を設置する。次はヘリポート。湾岸から1キロ内陸に小さな池がある。湧水だ。その畔に家を建てよう。
乾期が終わる5月までにすべてを成し遂げる」
子供たちが一斉に喜びの声を上げる。
バンジェル島は、急速な人口増加にインフラが追いついていない。ノイリン北地区の大半と西地区のすべて、そしてコーカレイの一部が移住してきたからだ。
バンジェル島の真西25キロにある西島は、ノイリン東地区、東南地区、西南地区が開発を始めている。広大な農地が生まれるはず。
同じく北5キロにある北島には、ティッシュモックなどノイリンと関係が深い中小の街・集落が移住を開始している。
南島はピレネー山脈以西、イベリア半島内陸に住む褐色の精霊族が移住に向けた調査を始めている。
この大事業にあたって、バンジェル島には臨時政府が生まれ、司令官であった城島由加は解任された。
これは既定路線であり、彼女が失脚したわけではない。だが、城島由加には新たな任務は与えられず、政権から遠ざけられたことは事実だ。
コーカレイについては移住管理委員会が設立された時点で、デュランダルは総督を解任される。コーカレイの軍事を担ってきたベルタも軍司令官を退任していた。
半田隼人が生きていれば、臨時政府に対して一定の影響を行使できただろうが、彼の死は彼の仲間の事実上の失脚につながっていた。
臨時政府は、半田隼人派の影響力排除と移住の準備に忙しかった。半田隼人は味方が多い反面、彼を蛇蝎のごとく嫌う敵も多い。半田隼人派を重用すれば、軋轢が起こることは必定。
だから、円満な移住計画遂行にあたって、半田隼人死後の半田隼人派の排除は必要なことだった。
だが、政府の要職から排除したとしても、車輌、航空機、燃料、電子・電気製品、個人携帯火器の多くを押さえており、政権に対する隠然とした発言力は残っている。
それに3人の戦女神がいる。軍事的にも強大だ。
城島由加やデュランダルは、むしろ政権から距離を置くことを歓迎していた。政権から離れた中立の立場で、各国・各勢力との商取引ができるからだ。
ベルーガ・グループに対しての王冠湾沿岸の使用許可は、比較的簡単に下りた。理由は簡単。要請を断れば、ベルーガ・グループがクマンに協力を求めかねないからだ。
バンジェル島臨時政府は、ベルーガ・グループを引き留めたかったし、クマンに与されたくはなかった。
また、南島には褐色の精霊族が住むことになるが、権益確保のために少しはヒトがいたほうがいいと考えた。
王冠湾の対岸、バンジェル島側にはドミヤートと呼ばれる海とつながる汽水湖がある。
ここには航空機の組み立て工場を除く、半田隼人派の全生産設備が集中している。藻から製造する燃料の工場もここにある。
植物油を生産するための農園やエチルアルコールを生産するための圃場もある。植物油からは食料油とバイオディーゼルが、エチルアルコールからはガソリンの代替燃料が精製されている。
酒の蒸留所は少し離れた静かな山間部にある。
バンジェル島の中心部は島の北側だが、半田隼人は中心から離れたドミヤート地区を拠点に決めた。彼曰く「広々としていて、真水が豊富で、清々しくて開放的な土地だから」としていたが、それが理由ではない。
ここはまったくの荒野で、建造物は一切なかった。ここに建設された施設・建物は、すべてが半田隼人派の所有物だ。
それが、はっきりしている。これが、半田隼人の目的だった。政府と所有権でもめないための策だった。
そして、その対岸には、新たな移住者であるベルーガ・グループが拠点を築き始めていた。
彼らは“よそ者”と呼ばれた。世代を重ねたヒトたち、移住3世代以内の新参者、ヒトのルーツを忘れた蛮族、ヒトのルーツを知る異教徒に加えて、新たに“よそ者”という区分が生まれたのだ。
南島の高地を源流として、王冠湾に向かって流れる2つの川に挟まれた南北に細長い地域がベルーガ・グループの最初の“領地”になった。
ドミヤート地区には1500人が住む。これが、半田隼人派のすべてだ。半田隼人は数を力とする慣性に欠けていた。多数派工作はせず、意を同じくするヒトたちだけの集団を組織した。これが、意図的なら半田隼人の戦略と言えるのだが、実際は違う。
単なる偶然だ。
半田隼人の“影響力”を利用したいがために与していた多くのヒトたちは、彼の死によって簡単に見切りをつけた。
だが、主要工業を握るこの1500人は、バンジェル島において経済的・軍事的に侮れない勢力であった。
半田隼人派は、時を経ずにドミヤート・グループと呼ばれるようになった。
そして、ベルーガ・グループは王冠湾グループと呼び名が変わった。
臨時政府は、深い入り江と汽水湖、そして幅1キロもの水道で隔たれた、ドミヤートと王冠湾が連携するなど、まったく考えていなかった。
西ユーラシアと西アフリカ各地に散らばっているドミヤート派の面々が、湖にほど近いサッカー場に集まったのは、季節感の乏しい低緯度帯の雨期が終わり乾期が始まる頃だった。
半田千早もアトラス山脈東麓のNキャンプから戻っていた。
ドミヤート地区の区長にデュランダルが選出され、その場で新区長は、食品、化学、機械製造、造兵の4つに産業グループを大別する。この4グループの下に、車輌、航空、造船、電子・電気、酒類、農業、漁業、輸送、バイオ燃料などのサブグループが定められた。
そして、航空機の組み立て工場をドミヤート地区に移転させることを決定する。
そのための巨大な工場と滑走路が必要になるが、その建設が最優先事項とされた。
実際、バンジェル島飛行場は、航空機の増加に伴い、格納庫を必要としている。立ち退き後の組み立て工場は、格納庫として使える。
それは、臨時政府にとっても悪い話ではなかった。
ドミヤート地区で航空機組み立て工場と2000メートル級滑走路の建設が始まる。
同時期、南島王冠湾では沿岸から2キロの内陸で、大型テント倉庫4棟が設置され、小さなヘリポートが造られた。
香野木恵一郎は乾期が始まる頃には、人口が徐々に減っているノイリンにいた。
彼は、行きがかりで黒魔族との和平交渉に臨んでいた。半田隼人の後任として、黒魔族が香野木恵一郎を認めたからだ。
理由は単純で、黒魔族(ギガス)の精神感応に香野木恵一郎の精神が耐えられることと、半田隼人と香野木恵一郎の差し料(刀のこと)が同形式であったことから、黒魔族側がそう決めた。
黒魔族との休戦協定は、白魔族(オーク)と手長族(セロ)との二正面作戦を戦い抜くヒトにはどうしても必要だった。
香野木恵一郎を黒魔族側が気に入ったならば、ヒト側はそれでよかった。
香野木恵一郎は凡庸な見かけで、どうにでも操れるとヒト側は考えた。
水陸両用トラックの開発は、長宗元親の主導で始まる。それは、自動車の製造よりは船の建造に近かった。
クマンの商人は、なぜ王冠湾のヒトたちが内陸に船台を造ったのか訝っていた。
湾岸や河川の近くではなく、内陸に船台を造って、10メートル級の小型船を建造し始めたことが不思議でならなかった。
ドミヤート地区には、飛行可能な航空機がなかった。完成機のすべてが、臨時政府に移管されてしまったからだ。
ドミヤート地区の面々は、臨時政府から遠ざけられたが、それは主要メンバーだけではなかった。マーニ、ホティア、ララも例外ではない。
彼女たちは、飛行訓練さえままならなくなっている。
マーニとホティアは王冠湾地区に協力を求め、王冠湾地区が保有する2機のヘリコプターで飛行訓練を行う。
その対価として、ドミヤート地区は燃料の供給を行う。
これが、両地区最初の正規交流だった。
飛行機の組み立て工場建屋が完成する頃、2000メートル級滑走路も運用可能になる。格納庫など付随施設も不十分ながら整備されている。
すると、バンジェル島飛行場からC-1輸送機とT-4練習機が離陸。ドミヤート地区に降りた。
城島由加が約束した飛行場設備の無期限使用許可を臨時政府が取り消そうとしており、同時に王冠湾から遠いバンジェル島北部よりも、より近いドミヤート地区のほうが王冠湾地区にとっては便利だからだ。
王冠湾地区では、日常の足には軽自動車が使われている。軽自動車以外の小型車輌は、3トンダンプとワンボックスワゴンしかない。
水上の移動は、内湾用小型フェリーと複合艇、そして2基の水上バイクがあるだけ。船外機付きのゴムボートさえなかった。
勢い1人か2人の移動には、水上バイクが使われる。クマンの海岸までは5キロほど、新首都中心部までは12キロほどだが、この距離ならば水上バイクで十分だ。
これは注目を集めていた。イルカと競争するかのように並走する姿も目撃されたし、希に侵入してくる大型海棲トカゲの追撃を振り切る様子も見られている。
南島には、調査した範囲では陸棲ワニはいない。飛翔性ワニも目撃例がない。
しかし、海中には獰猛で巨大な捕食者がいる。18メートル級のメガロドン並みに大きいサメ、15メートル級の海棲トカゲ、12メートル級の海棲ワニなど。
クマンが西アフリカ沿岸に国を築きながら、海洋進出しなかった理由がここにある。小さな船で海に出ることは、自殺行為に等しいのだ。
安全な航海には、30メートル以上の頑丈な船体が必要とされている。
当然、海水浴は到底無理。
二足歩行で敏捷な陸棲ワニがいる陸は危険だが、海はサメ、トカゲ、ワニが食物連鎖の頂点に君臨する危険な場所なのだ。
セロ(手長族)が水上船を持たず、渡洋に飛行船を使う理由として、この海の生態系が影響しているのではないか、とする仮説は一定の説得力がある。
そんな海で、とても小さな水上バイクは非常に目立つ。
同時に王冠湾グループの正気の沙汰とは思えない行動は、眉をひそめさせたし、注目を集めた。
10メートル級水陸両用トラックの完成前に、6人乗りエアボートが完成する。ヌアクショット川遡上ようとして開発したが、このクローズドキャビンのエアボートは、すぐに近隣への輸送に大活躍。周辺諸都市との時間距離を飛躍的に縮める。
水陸両用トラックの完成は急いでいた。小型フェリーと3トンダンプで、住居用建設資材、焼成レンガやセメントなどを運んでいる。
しかし、この組み合わせでは、輸送力に限界があった。到底、雨期までに全員が居住できる建物は建設できない。
建設資材の輸送力増強は喫緊の課題であり、雨期の始まりと終わりに多い、豪雨から身を守るためにも恒久的住宅は絶対に必要だった。
だが、プロペラ以外の資材が揃っていたエアボートのほうが完成が早かった。
船体の浮力と船体と海面・地面とのサスペンションの役割を受け持つゴム柱は、ベルーガに搭載されていた救命ボートを分解して使った。
エンジンはターボチャージャー付き2リットルディーゼルで、減速機は自動車のオートマチックトランスミッションをそのまま使った。動力の伝達はベルト駆動となった。
キャビンのメーター類やステアリングホイール、操縦席などは、自動車のものを流用した。
足りない部品は、工作機械を使って自作した。
エアボートの完成によって、バンジェル島やクマンとの交通は極めて高速となった。プロペラが発生する大きな爆音は、王冠湾グループの存在をバンジェル島臨時政府とクマン政府に印象付けた。
南島は、バンジェル島本島、北島、西島とは誕生した経緯が異なっているとクマンの科学者たちは推測している。
理由は、本島、北島、西島の海岸線が比較的滑らかなのに、南島は極端に複雑だからだ。南島は南北に細長く、クマンは南側と北端は別の島だと考えていたほど。実際は狭い陸橋でつながっていて、1つの島だった。王冠湾は丸いとっくりのような形をしていて、外海への開口部は幅が80メートルほどしかない。
だが、縦深が2000メートルあり、水深は最大200メートルと深い。小さな湾にしては異例だ。
クマンでは、乾期の終わりに新たな国家元首を決める選挙がある。パウラは立候補しない意思を固めている。
候補者3人が出馬を表明している。クマンでは、国家元首はいかなる勢力・派閥からも距離を置くことが求められる。政治的権力は持たないが、国を統合する責任を負う。権限はなく、責任だけが課せられる厳しい職だ。
パウラは選挙後、新首都と旧王都間の鉄道を完成させ、湖水地域とのさらなる交易を目指す。だが、この決意表明は表向きで、アトラス山脈東麓にいるヒトの集団との交易を計画していた。
アトラス山脈越えのルートは見つかったが、デルピスと呼ぶ極めて狭いトレッドの3輪作業機と駄載以外では、物資の輸送ができない。
同時にアトラス山脈の豊富な資源をクマンに運ぶ方法がない。
道路か鉄道を建設する必要があるが、この大事業を遂行できるほどクマンの国力は強大ではなかった。
彼女は、道路・鉄道以外の第3の道を探す必要があった。
半田千早は焦っていた。ミエリキに「彼氏ができた」という噂を聞いたし、パウラはベルーガでやって来たよそ者の1人と「付き合っている」という憶測を聞いていたからだ。
このことだけは、なぜか2人に負けたくなかった。
パウラは休日のほとんどを、王冠湾で過ごしている。結城光二がエアボートや水上バイクの操縦を教えてくれるからだ。
王冠湾湾口には、網目25センチ四方の鎖で作った侵入防御網が張られていて、不審船はもちろん、海棲トカゲ、海棲ワニ、巨大サメの侵入を防いでいた。
湾内は安全で、子供たちは釣りや貝獲り、浅瀬での水遊びを楽しんでいる。
海は危険な場所と教えられてきたパウラには、信じられない光景だった。
マーニとホティアは、8時に王冠湾地区にやって来て17時にドミヤート地区に帰る。
ドミヤート地区では、ララはT-4練習機の操縦訓練を受け、ミエリキはC-1輸送機による西ユーラシアとの輸送を続けている。
王冠湾地区が作った水陸両用トラックは、DUKWにちなんでダックと呼ばれた。
水辺から離れた船台で造られていた小型船には、巨大なタイヤが付けられ、船首にはサメの目と口が描かれた。
陸上でのテスト走行の結果はサスペンションの強化が必要だとされたが、水上では計画通りに時速13キロで航行でき、凌波性にも問題がない。
建設資材の運搬を始めると、クマン政府は大きな関心を示し、王冠湾グループは5輌の売買契約の締結に成功する。
王冠湾グループにとって、初めての商談成立となった。
井澤貞之は「これで、生きていける」と言い、土井将馬は「ホッとしたよ」と呟き、加賀谷真梨は「次につなげたいね」と笑顔を見せた。
パウラの元首任期は、あと2週間。首席補佐官ブーカと防衛長官ディラリは退任し、クマン鉄道会社に転職することが決まった。
2人は、パウラと行動をともにすることを選んだ。
竣工した王冠湾グループの住居の前で、大きな焚き火が天を焦がす。
この焚き火は、土曜日の恒例になっていた。
最初は伐採した木の処分を兼ねて、笹原大和が始めたのだが、徐々に規模が大きくなり、子供たちが喜ぶことから、毎土曜の夕方に行うようになった。
焚き火を見詰めながら、パウラが結城光二に語りかける。
「ヌアクショット川の北にも川がある、との噂があるけど……」
「あぁ、知っている。
何人ものパイロットが見ている。
だけど、河口が見つかっていない。
川である以上、必ず河口があるはずなのに……」
笹原大和が遠慮しがちに口を挟む。パウラの声が甘えているように聞こえたからだ。
「内陸河川じゃないのかな。
誰もが大西洋に注ぐと考えているけど、西サハラ湖に流れ込んでいる可能性だってあるかも。
200万年前、モロッコにはドラア川という内陸河川があったけど、アトラス山脈南端付近を水源として、サハラ砂漠に流れ込んでいた。
総延長は1100キロ、下流の750キロは水無川だった……。
200万年前にはヌアクショット川はなかったのだから、その川が200万年後のドラア川である可能性はあるでしょ。
もし、ドラア川で海に流れ込んでいないとすれば、地下水脈になって大西洋に達している可能性もあると思う。
どちらにしても、海岸から100キロ圏内に川の痕跡があるんじゃないかと思う」
マーニとホティアが耳をそばだてていた。
「じゃあ、探検だね。
もうすぐ雨期。
雨期といっても、毎日降るわけでも、長時間降るわけでもない。十分に行動できる。
そのドラア川を探しに行こうよ!」
パウラが「装備はどうする?」と尋ねると、マーニが「ヘリ甲板付きの船がいるよ。それと、ヘリコプター2機」と即答する。
結城光二が「その後は?」と問うと、パウラが「ドラア川を見つけたら、遡上する」と断言。
パウラが「1500キロ分の燃料が積める水陸両用車が必要だね」と言うと、結城光二が「そんなもの、ここにしかないよ」と地面を指差す。
水陸両用トラックの最初の量産ロット5輌は、雨期が始まる前にクマン政府に納品できた。
ダック製造の過程で、わかったことがある。ドミヤート地区は臨時政府に疎まれているだけでなく、無形の圧力を受けている。
エンジンの供給が途絶え、Mi-8中型とMi-2小型ヘリコプターが製造できない。臨時政府は、旧西地区のターボエンジン製造メーカーを“国有化”し、ターボシャフトの供給を停止している。
その上でドミヤート地区は、ヘリコプター2機種の製造権譲渡を交渉されている。その金額の安さに地区上層部は抵抗の姿勢を見せているが、王冠湾地区から見ていると無駄な抵抗に思える。
それが理由なのだろう、ヘリコプターの開発チームからキラーエッグを「調べさせて欲しい」との打診があった。
ドミヤート地区はひどく損傷したOH-6カイユースを保有しており、この機を分解して構造を確認し、元はMD500(OH-6の民間型)であったキラーエッグで追確認する算段であることは明らかだった。
彼らと最も近しい土井将馬は、カイユースの開発が主目的ではなく、「競合機を開発するぞと脅して、権利譲渡の価格吊り上げを狙っているようだ」と報告している。実際、製造権譲渡の費用は、信じられないほど安価らしい。
それとアリソン250ターボシャフトエンジンの量産を画策している。この傑作小型ターボエンジンの量産が可能になれば、カイユースの製造は不可能ではない。
つまり、両にらみなのだ。権利譲渡を強要されたら高値で売り、その資金でカイユースを開発する算段。製造権を守れれば、それでよし。
本島中央やや南に移住した旧西地区も、臨時政府から圧力を受けている。ターボエンジンの製造権をもぎ取られたことからも、それがわかる。
臨時政府は、大型船舶建造と航空機製造の“国有化”を断固とした決意で推し進めている。
開発と製造が自由なのは、小型船と自動車だけだ。
ベースは違うが、ドミヤート地区と王冠湾地区は置かれている立場が似ている。西地区が移住した本島中南部タザリン地区も似ている。
同病相憐れむように、3地区は連携を深めていく。
王冠湾には仕事を求めるヒトと精霊族の混血がやって来ていた。
彼らの指導者は完全に後手を踏んでしまい、移住先が決まっていない。危機感を感じた個人が移住先を探していて、水陸両用トラックの噂を聞き、仕事を求めてやって来るのだ。
それと、小柄な精霊族ララ、褐色の精霊族ホティアが王冠湾と懇意にしていることも大きい。彼女たちの同族も、個人や家族単位で移住を希望している。
労働力不足に陥り始めていた王冠湾地区は、彼らと彼女らの来訪を歓迎する。住居が造られ、街が形成されていく。
単独でやって来て、家族を呼び寄せるもの。家族と一緒にやって来るもの。
いろいろだが、建設資材を運ぶためにダックの1号車は必要不可欠であり、一層の増強を考えなくてはならなかった。
王冠湾には、彼らの指導者である香野木恵一郎はいない。彼は西ユーラシアにいる。
だが王冠湾には、井澤貞之、長宗元親、加賀谷真梨、花山真弓、里崎杏といったリーダーとして十分な資質を持つメンバーが揃っていた。
大移住計画の只中にあって、混乱する社会を背景に、移住直後なのに王冠湾グループの存在感は徐々に増している。
オークを追って200万年後に時渡りをしたものの、200万年後の世界は想定とはまったく違っていた。さらに、ヒトにとって、オークよりも危険なセロというヒトに似た動物までいる。
香野木恵一郎たちが生き残るには、大幅な方針変更と新たな覚悟が必要だった。この世界のヒトから見れば、香野木たちは船でやって来たこと以外にさしたる特徴がないのだ。
すでに埋没しているし、生存に艱難を感じている。
香野木が最初の発言をする。
「今後のことだけど……」
井澤貞之は、彼が考える原理原則を述べる。「どの勢力からも等距離、完全中立が理想だが、それは無理だろう。
だが、できるだけ中立がいい」
加賀谷真梨は、別な視点から議論する。
「この世界は想像とは異なっていて、貨幣経済が発展している。
お金を稼ぐ方法を考えないと、行き詰まるよ」
それは、誰もが感じていた。
長宗元親には、目算があった。
「南島だが、王冠湾と呼ばれている深い入り江がある。島の最北だ。
入り江の入口は、バンジェル島との水道に面している。王冠湾は徳利のような形をしているが、湾の奥に大理石製の構造物を見つけた。
半分以上砂に埋まっているが、間違いなく乾ドックだ。掘り出して、造船所を造ろう」
加賀谷真梨が疑義を示す。
「船を造るには、何カ月もかかるよ」
彼女が心配なことは、造船では資金の回収に時間がかかりすぎる点だ。
「小型の船を造る。
30メートル級の高速双胴船は、需要があると思う。
バンジェル島勢力は、4つの島に分散することになる。しかも、距離が近い。小型の高速船は役に立つ」
加賀谷真梨は、別なことを考えていた。
「もっと小さい船ではダメかな?」
長宗元親が訝る。
「ボートか?
小型のボートなら、バンジェル島の造船チームが建造している。原型は上陸用舟艇だろう。たぶん、ヒギンズボートだ。
あの船なら、ヒトも貨物も、クルマも載せられる。この世界に適している。我々が市場に入り込む余地はない」
「元親さん、DUKWは知っていますか?」
「水陸両用のトラックのこと?」
「えぇ、第二次世界大戦の頃に開発され、結構長く使われた……。
私が勤めていた会社に、観光用水陸両用車の開発打診があったの。そのとき、DUKWや後継のLARC-Vも研究材料だった。
DUKWは最も多く製造された水陸両用車で、航洋性も高かったから詳しく調べた。記録では、単独でドーバー海峡を渡れたとか。
水上なら5トン、陸上なら2.5トンの貨物が積める」
「真梨さん、それをここで……」
「えぇ、長宗さんが船の部分を造り、私が自動車の部分を造る。
どう?」
「真梨さん……。
目算はあるの?」
「長宗さん、バンジェル島の自動車工場は、ウニモグのコンポーネントを外販しているの。
修理用部品として……」
「ウニモグ?」
「ドイツ製の作業車で、悪路の走破性が高いトラック……。
装甲車のベース車輌になることも多い。
バンジェル島で製造されているバラクーダやディンゴもウニモグベースの装甲車よ」
「で?」
「ウニモグのサスペンションやエンジンを利用すれば、水陸両用車が作れるんじゃないかと……」
「真梨さん、ある程度の凌波性を確保しようと思えば、全長10メートルは必要だ」
「4トントラックと同じくらいの長さだから、大きすぎはしないはず……。
DUKWは6輪駆動だったけど、私が考えている水陸両用車は4輪駆動。
LARC-Vに似た船に近いボディに、4輪を取り付けるの。全体はLARC-Vに似ているけど、車体自体は純粋なトラックがいいと思う。左右と後方にアオリがある普通のトラックで、油圧クレーン付きのユニック車。
タイヤの空気圧を自在に変えられるようにして、軟弱な砂地でも動けるように……」
「小型であっても本格的な船として考えるなら、ビルジポンプが必要だな。
アオリは浸水の原因になる。クレーンがあれば、アオリは後方だけでいい。もちろん防水する」
里崎杏には、別な案があった。
「生活のために水陸両用トラックを作ることは、いいとは思うけど……。
ヌアクショット川を遡れる船が欲しいんだけど」
土井将馬が提案する。
「あの川を遡上するならエアボートかな。
部品は手に入るんじゃないかな。
6人が乗れて、1トン積めるクラスなら、手持ちの部品で造れると思う」
畠野史子が小首をかしげる。
「エアボート?」
里崎杏が説明する。
「飛行機のようなプロペラで推進するボートのこと。ホバークラフトに似ているけれど、ホバークラフトのように浮き上がる能力はないの。
船体の下に空気入りゴムの柱を並べて、船底をゴム板で覆うの。一種のゴムボートかな。
船底に突起物、舵やスクリュープロペラがないから、極端に水深の浅い場所でも滑走できる。
スピードはかなり出るね」
長宗元親が賛成する。
「いい案だ。
船体骨格は製作しなければならないが、部品はほとんどある。買うとしたらプロペラくらいだろう」
土井将馬が微笑む。
「小型単発機のプロペラが使えるよ」
香野木恵一郎が判断する。
「まず、拠点を南島王冠湾にしよう。
バンジェル島から離れることで一定の“独立”を保てるし、バンジェル島の勢力圏内であるから連携も保てる。
ズルイ考えだが、単独での生き残りは難しいにもかかわらず、誰かに指図されたくはない。
加賀谷さんの水陸両用トラックは、生活費と活動費を稼ぐにはいい計画かもしれない。1輌か2輌でも、相応の利益になるだろう。
ヌアクショット川の交通を開けば、一定の効果がある。我々の存在意義も示せるかもしれない。
長宗さん発案の高速の小型船は、この一帯では有効な乗り物だと思う。
我々にも必要だし、バンジェル島やクマンも欲しがるだろう。カナリヤ諸島も……。
それから、水陸両用車をもう1車種開発できないかな?
装甲車輌がいい」
加賀谷真理が微笑む。
「バンジェル島は、何種類かのロシア系装甲車を持っているの。ロシア系の装甲車は水陸両用だから、いいサンプルがあるかもしれない」
井澤貞之が提案する。
「ベルーガを王冠湾に移動させよう。
香野木さん、バンジェル島に王冠湾の“領有”を交渉してくれ。
使用許可が下り次第、テント倉庫4棟を設置する。次はヘリポート。湾岸から1キロ内陸に小さな池がある。湧水だ。その畔に家を建てよう。
乾期が終わる5月までにすべてを成し遂げる」
子供たちが一斉に喜びの声を上げる。
バンジェル島は、急速な人口増加にインフラが追いついていない。ノイリン北地区の大半と西地区のすべて、そしてコーカレイの一部が移住してきたからだ。
バンジェル島の真西25キロにある西島は、ノイリン東地区、東南地区、西南地区が開発を始めている。広大な農地が生まれるはず。
同じく北5キロにある北島には、ティッシュモックなどノイリンと関係が深い中小の街・集落が移住を開始している。
南島はピレネー山脈以西、イベリア半島内陸に住む褐色の精霊族が移住に向けた調査を始めている。
この大事業にあたって、バンジェル島には臨時政府が生まれ、司令官であった城島由加は解任された。
これは既定路線であり、彼女が失脚したわけではない。だが、城島由加には新たな任務は与えられず、政権から遠ざけられたことは事実だ。
コーカレイについては移住管理委員会が設立された時点で、デュランダルは総督を解任される。コーカレイの軍事を担ってきたベルタも軍司令官を退任していた。
半田隼人が生きていれば、臨時政府に対して一定の影響を行使できただろうが、彼の死は彼の仲間の事実上の失脚につながっていた。
臨時政府は、半田隼人派の影響力排除と移住の準備に忙しかった。半田隼人は味方が多い反面、彼を蛇蝎のごとく嫌う敵も多い。半田隼人派を重用すれば、軋轢が起こることは必定。
だから、円満な移住計画遂行にあたって、半田隼人死後の半田隼人派の排除は必要なことだった。
だが、政府の要職から排除したとしても、車輌、航空機、燃料、電子・電気製品、個人携帯火器の多くを押さえており、政権に対する隠然とした発言力は残っている。
それに3人の戦女神がいる。軍事的にも強大だ。
城島由加やデュランダルは、むしろ政権から距離を置くことを歓迎していた。政権から離れた中立の立場で、各国・各勢力との商取引ができるからだ。
ベルーガ・グループに対しての王冠湾沿岸の使用許可は、比較的簡単に下りた。理由は簡単。要請を断れば、ベルーガ・グループがクマンに協力を求めかねないからだ。
バンジェル島臨時政府は、ベルーガ・グループを引き留めたかったし、クマンに与されたくはなかった。
また、南島には褐色の精霊族が住むことになるが、権益確保のために少しはヒトがいたほうがいいと考えた。
王冠湾の対岸、バンジェル島側にはドミヤートと呼ばれる海とつながる汽水湖がある。
ここには航空機の組み立て工場を除く、半田隼人派の全生産設備が集中している。藻から製造する燃料の工場もここにある。
植物油を生産するための農園やエチルアルコールを生産するための圃場もある。植物油からは食料油とバイオディーゼルが、エチルアルコールからはガソリンの代替燃料が精製されている。
酒の蒸留所は少し離れた静かな山間部にある。
バンジェル島の中心部は島の北側だが、半田隼人は中心から離れたドミヤート地区を拠点に決めた。彼曰く「広々としていて、真水が豊富で、清々しくて開放的な土地だから」としていたが、それが理由ではない。
ここはまったくの荒野で、建造物は一切なかった。ここに建設された施設・建物は、すべてが半田隼人派の所有物だ。
それが、はっきりしている。これが、半田隼人の目的だった。政府と所有権でもめないための策だった。
そして、その対岸には、新たな移住者であるベルーガ・グループが拠点を築き始めていた。
彼らは“よそ者”と呼ばれた。世代を重ねたヒトたち、移住3世代以内の新参者、ヒトのルーツを忘れた蛮族、ヒトのルーツを知る異教徒に加えて、新たに“よそ者”という区分が生まれたのだ。
南島の高地を源流として、王冠湾に向かって流れる2つの川に挟まれた南北に細長い地域がベルーガ・グループの最初の“領地”になった。
ドミヤート地区には1500人が住む。これが、半田隼人派のすべてだ。半田隼人は数を力とする慣性に欠けていた。多数派工作はせず、意を同じくするヒトたちだけの集団を組織した。これが、意図的なら半田隼人の戦略と言えるのだが、実際は違う。
単なる偶然だ。
半田隼人の“影響力”を利用したいがために与していた多くのヒトたちは、彼の死によって簡単に見切りをつけた。
だが、主要工業を握るこの1500人は、バンジェル島において経済的・軍事的に侮れない勢力であった。
半田隼人派は、時を経ずにドミヤート・グループと呼ばれるようになった。
そして、ベルーガ・グループは王冠湾グループと呼び名が変わった。
臨時政府は、深い入り江と汽水湖、そして幅1キロもの水道で隔たれた、ドミヤートと王冠湾が連携するなど、まったく考えていなかった。
西ユーラシアと西アフリカ各地に散らばっているドミヤート派の面々が、湖にほど近いサッカー場に集まったのは、季節感の乏しい低緯度帯の雨期が終わり乾期が始まる頃だった。
半田千早もアトラス山脈東麓のNキャンプから戻っていた。
ドミヤート地区の区長にデュランダルが選出され、その場で新区長は、食品、化学、機械製造、造兵の4つに産業グループを大別する。この4グループの下に、車輌、航空、造船、電子・電気、酒類、農業、漁業、輸送、バイオ燃料などのサブグループが定められた。
そして、航空機の組み立て工場をドミヤート地区に移転させることを決定する。
そのための巨大な工場と滑走路が必要になるが、その建設が最優先事項とされた。
実際、バンジェル島飛行場は、航空機の増加に伴い、格納庫を必要としている。立ち退き後の組み立て工場は、格納庫として使える。
それは、臨時政府にとっても悪い話ではなかった。
ドミヤート地区で航空機組み立て工場と2000メートル級滑走路の建設が始まる。
同時期、南島王冠湾では沿岸から2キロの内陸で、大型テント倉庫4棟が設置され、小さなヘリポートが造られた。
香野木恵一郎は乾期が始まる頃には、人口が徐々に減っているノイリンにいた。
彼は、行きがかりで黒魔族との和平交渉に臨んでいた。半田隼人の後任として、黒魔族が香野木恵一郎を認めたからだ。
理由は単純で、黒魔族(ギガス)の精神感応に香野木恵一郎の精神が耐えられることと、半田隼人と香野木恵一郎の差し料(刀のこと)が同形式であったことから、黒魔族側がそう決めた。
黒魔族との休戦協定は、白魔族(オーク)と手長族(セロ)との二正面作戦を戦い抜くヒトにはどうしても必要だった。
香野木恵一郎を黒魔族側が気に入ったならば、ヒト側はそれでよかった。
香野木恵一郎は凡庸な見かけで、どうにでも操れるとヒト側は考えた。
水陸両用トラックの開発は、長宗元親の主導で始まる。それは、自動車の製造よりは船の建造に近かった。
クマンの商人は、なぜ王冠湾のヒトたちが内陸に船台を造ったのか訝っていた。
湾岸や河川の近くではなく、内陸に船台を造って、10メートル級の小型船を建造し始めたことが不思議でならなかった。
ドミヤート地区には、飛行可能な航空機がなかった。完成機のすべてが、臨時政府に移管されてしまったからだ。
ドミヤート地区の面々は、臨時政府から遠ざけられたが、それは主要メンバーだけではなかった。マーニ、ホティア、ララも例外ではない。
彼女たちは、飛行訓練さえままならなくなっている。
マーニとホティアは王冠湾地区に協力を求め、王冠湾地区が保有する2機のヘリコプターで飛行訓練を行う。
その対価として、ドミヤート地区は燃料の供給を行う。
これが、両地区最初の正規交流だった。
飛行機の組み立て工場建屋が完成する頃、2000メートル級滑走路も運用可能になる。格納庫など付随施設も不十分ながら整備されている。
すると、バンジェル島飛行場からC-1輸送機とT-4練習機が離陸。ドミヤート地区に降りた。
城島由加が約束した飛行場設備の無期限使用許可を臨時政府が取り消そうとしており、同時に王冠湾から遠いバンジェル島北部よりも、より近いドミヤート地区のほうが王冠湾地区にとっては便利だからだ。
王冠湾地区では、日常の足には軽自動車が使われている。軽自動車以外の小型車輌は、3トンダンプとワンボックスワゴンしかない。
水上の移動は、内湾用小型フェリーと複合艇、そして2基の水上バイクがあるだけ。船外機付きのゴムボートさえなかった。
勢い1人か2人の移動には、水上バイクが使われる。クマンの海岸までは5キロほど、新首都中心部までは12キロほどだが、この距離ならば水上バイクで十分だ。
これは注目を集めていた。イルカと競争するかのように並走する姿も目撃されたし、希に侵入してくる大型海棲トカゲの追撃を振り切る様子も見られている。
南島には、調査した範囲では陸棲ワニはいない。飛翔性ワニも目撃例がない。
しかし、海中には獰猛で巨大な捕食者がいる。18メートル級のメガロドン並みに大きいサメ、15メートル級の海棲トカゲ、12メートル級の海棲ワニなど。
クマンが西アフリカ沿岸に国を築きながら、海洋進出しなかった理由がここにある。小さな船で海に出ることは、自殺行為に等しいのだ。
安全な航海には、30メートル以上の頑丈な船体が必要とされている。
当然、海水浴は到底無理。
二足歩行で敏捷な陸棲ワニがいる陸は危険だが、海はサメ、トカゲ、ワニが食物連鎖の頂点に君臨する危険な場所なのだ。
セロ(手長族)が水上船を持たず、渡洋に飛行船を使う理由として、この海の生態系が影響しているのではないか、とする仮説は一定の説得力がある。
そんな海で、とても小さな水上バイクは非常に目立つ。
同時に王冠湾グループの正気の沙汰とは思えない行動は、眉をひそめさせたし、注目を集めた。
10メートル級水陸両用トラックの完成前に、6人乗りエアボートが完成する。ヌアクショット川遡上ようとして開発したが、このクローズドキャビンのエアボートは、すぐに近隣への輸送に大活躍。周辺諸都市との時間距離を飛躍的に縮める。
水陸両用トラックの完成は急いでいた。小型フェリーと3トンダンプで、住居用建設資材、焼成レンガやセメントなどを運んでいる。
しかし、この組み合わせでは、輸送力に限界があった。到底、雨期までに全員が居住できる建物は建設できない。
建設資材の輸送力増強は喫緊の課題であり、雨期の始まりと終わりに多い、豪雨から身を守るためにも恒久的住宅は絶対に必要だった。
だが、プロペラ以外の資材が揃っていたエアボートのほうが完成が早かった。
船体の浮力と船体と海面・地面とのサスペンションの役割を受け持つゴム柱は、ベルーガに搭載されていた救命ボートを分解して使った。
エンジンはターボチャージャー付き2リットルディーゼルで、減速機は自動車のオートマチックトランスミッションをそのまま使った。動力の伝達はベルト駆動となった。
キャビンのメーター類やステアリングホイール、操縦席などは、自動車のものを流用した。
足りない部品は、工作機械を使って自作した。
エアボートの完成によって、バンジェル島やクマンとの交通は極めて高速となった。プロペラが発生する大きな爆音は、王冠湾グループの存在をバンジェル島臨時政府とクマン政府に印象付けた。
南島は、バンジェル島本島、北島、西島とは誕生した経緯が異なっているとクマンの科学者たちは推測している。
理由は、本島、北島、西島の海岸線が比較的滑らかなのに、南島は極端に複雑だからだ。南島は南北に細長く、クマンは南側と北端は別の島だと考えていたほど。実際は狭い陸橋でつながっていて、1つの島だった。王冠湾は丸いとっくりのような形をしていて、外海への開口部は幅が80メートルほどしかない。
だが、縦深が2000メートルあり、水深は最大200メートルと深い。小さな湾にしては異例だ。
クマンでは、乾期の終わりに新たな国家元首を決める選挙がある。パウラは立候補しない意思を固めている。
候補者3人が出馬を表明している。クマンでは、国家元首はいかなる勢力・派閥からも距離を置くことが求められる。政治的権力は持たないが、国を統合する責任を負う。権限はなく、責任だけが課せられる厳しい職だ。
パウラは選挙後、新首都と旧王都間の鉄道を完成させ、湖水地域とのさらなる交易を目指す。だが、この決意表明は表向きで、アトラス山脈東麓にいるヒトの集団との交易を計画していた。
アトラス山脈越えのルートは見つかったが、デルピスと呼ぶ極めて狭いトレッドの3輪作業機と駄載以外では、物資の輸送ができない。
同時にアトラス山脈の豊富な資源をクマンに運ぶ方法がない。
道路か鉄道を建設する必要があるが、この大事業を遂行できるほどクマンの国力は強大ではなかった。
彼女は、道路・鉄道以外の第3の道を探す必要があった。
半田千早は焦っていた。ミエリキに「彼氏ができた」という噂を聞いたし、パウラはベルーガでやって来たよそ者の1人と「付き合っている」という憶測を聞いていたからだ。
このことだけは、なぜか2人に負けたくなかった。
パウラは休日のほとんどを、王冠湾で過ごしている。結城光二がエアボートや水上バイクの操縦を教えてくれるからだ。
王冠湾湾口には、網目25センチ四方の鎖で作った侵入防御網が張られていて、不審船はもちろん、海棲トカゲ、海棲ワニ、巨大サメの侵入を防いでいた。
湾内は安全で、子供たちは釣りや貝獲り、浅瀬での水遊びを楽しんでいる。
海は危険な場所と教えられてきたパウラには、信じられない光景だった。
マーニとホティアは、8時に王冠湾地区にやって来て17時にドミヤート地区に帰る。
ドミヤート地区では、ララはT-4練習機の操縦訓練を受け、ミエリキはC-1輸送機による西ユーラシアとの輸送を続けている。
王冠湾地区が作った水陸両用トラックは、DUKWにちなんでダックと呼ばれた。
水辺から離れた船台で造られていた小型船には、巨大なタイヤが付けられ、船首にはサメの目と口が描かれた。
陸上でのテスト走行の結果はサスペンションの強化が必要だとされたが、水上では計画通りに時速13キロで航行でき、凌波性にも問題がない。
建設資材の運搬を始めると、クマン政府は大きな関心を示し、王冠湾グループは5輌の売買契約の締結に成功する。
王冠湾グループにとって、初めての商談成立となった。
井澤貞之は「これで、生きていける」と言い、土井将馬は「ホッとしたよ」と呟き、加賀谷真梨は「次につなげたいね」と笑顔を見せた。
パウラの元首任期は、あと2週間。首席補佐官ブーカと防衛長官ディラリは退任し、クマン鉄道会社に転職することが決まった。
2人は、パウラと行動をともにすることを選んだ。
竣工した王冠湾グループの住居の前で、大きな焚き火が天を焦がす。
この焚き火は、土曜日の恒例になっていた。
最初は伐採した木の処分を兼ねて、笹原大和が始めたのだが、徐々に規模が大きくなり、子供たちが喜ぶことから、毎土曜の夕方に行うようになった。
焚き火を見詰めながら、パウラが結城光二に語りかける。
「ヌアクショット川の北にも川がある、との噂があるけど……」
「あぁ、知っている。
何人ものパイロットが見ている。
だけど、河口が見つかっていない。
川である以上、必ず河口があるはずなのに……」
笹原大和が遠慮しがちに口を挟む。パウラの声が甘えているように聞こえたからだ。
「内陸河川じゃないのかな。
誰もが大西洋に注ぐと考えているけど、西サハラ湖に流れ込んでいる可能性だってあるかも。
200万年前、モロッコにはドラア川という内陸河川があったけど、アトラス山脈南端付近を水源として、サハラ砂漠に流れ込んでいた。
総延長は1100キロ、下流の750キロは水無川だった……。
200万年前にはヌアクショット川はなかったのだから、その川が200万年後のドラア川である可能性はあるでしょ。
もし、ドラア川で海に流れ込んでいないとすれば、地下水脈になって大西洋に達している可能性もあると思う。
どちらにしても、海岸から100キロ圏内に川の痕跡があるんじゃないかと思う」
マーニとホティアが耳をそばだてていた。
「じゃあ、探検だね。
もうすぐ雨期。
雨期といっても、毎日降るわけでも、長時間降るわけでもない。十分に行動できる。
そのドラア川を探しに行こうよ!」
パウラが「装備はどうする?」と尋ねると、マーニが「ヘリ甲板付きの船がいるよ。それと、ヘリコプター2機」と即答する。
結城光二が「その後は?」と問うと、パウラが「ドラア川を見つけたら、遡上する」と断言。
パウラが「1500キロ分の燃料が積める水陸両用車が必要だね」と言うと、結城光二が「そんなもの、ここにしかないよ」と地面を指差す。
水陸両用トラックの最初の量産ロット5輌は、雨期が始まる前にクマン政府に納品できた。
ダック製造の過程で、わかったことがある。ドミヤート地区は臨時政府に疎まれているだけでなく、無形の圧力を受けている。
エンジンの供給が途絶え、Mi-8中型とMi-2小型ヘリコプターが製造できない。臨時政府は、旧西地区のターボエンジン製造メーカーを“国有化”し、ターボシャフトの供給を停止している。
その上でドミヤート地区は、ヘリコプター2機種の製造権譲渡を交渉されている。その金額の安さに地区上層部は抵抗の姿勢を見せているが、王冠湾地区から見ていると無駄な抵抗に思える。
それが理由なのだろう、ヘリコプターの開発チームからキラーエッグを「調べさせて欲しい」との打診があった。
ドミヤート地区はひどく損傷したOH-6カイユースを保有しており、この機を分解して構造を確認し、元はMD500(OH-6の民間型)であったキラーエッグで追確認する算段であることは明らかだった。
彼らと最も近しい土井将馬は、カイユースの開発が主目的ではなく、「競合機を開発するぞと脅して、権利譲渡の価格吊り上げを狙っているようだ」と報告している。実際、製造権譲渡の費用は、信じられないほど安価らしい。
それとアリソン250ターボシャフトエンジンの量産を画策している。この傑作小型ターボエンジンの量産が可能になれば、カイユースの製造は不可能ではない。
つまり、両にらみなのだ。権利譲渡を強要されたら高値で売り、その資金でカイユースを開発する算段。製造権を守れれば、それでよし。
本島中央やや南に移住した旧西地区も、臨時政府から圧力を受けている。ターボエンジンの製造権をもぎ取られたことからも、それがわかる。
臨時政府は、大型船舶建造と航空機製造の“国有化”を断固とした決意で推し進めている。
開発と製造が自由なのは、小型船と自動車だけだ。
ベースは違うが、ドミヤート地区と王冠湾地区は置かれている立場が似ている。西地区が移住した本島中南部タザリン地区も似ている。
同病相憐れむように、3地区は連携を深めていく。
王冠湾には仕事を求めるヒトと精霊族の混血がやって来ていた。
彼らの指導者は完全に後手を踏んでしまい、移住先が決まっていない。危機感を感じた個人が移住先を探していて、水陸両用トラックの噂を聞き、仕事を求めてやって来るのだ。
それと、小柄な精霊族ララ、褐色の精霊族ホティアが王冠湾と懇意にしていることも大きい。彼女たちの同族も、個人や家族単位で移住を希望している。
労働力不足に陥り始めていた王冠湾地区は、彼らと彼女らの来訪を歓迎する。住居が造られ、街が形成されていく。
単独でやって来て、家族を呼び寄せるもの。家族と一緒にやって来るもの。
いろいろだが、建設資材を運ぶためにダックの1号車は必要不可欠であり、一層の増強を考えなくてはならなかった。
王冠湾には、彼らの指導者である香野木恵一郎はいない。彼は西ユーラシアにいる。
だが王冠湾には、井澤貞之、長宗元親、加賀谷真梨、花山真弓、里崎杏といったリーダーとして十分な資質を持つメンバーが揃っていた。
大移住計画の只中にあって、混乱する社会を背景に、移住直後なのに王冠湾グループの存在感は徐々に増している。
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