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第5章 解放編

第49話 ダール

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 バタ沖海戦直後、バタにダールが進出。これは、想定通りだった。
 アークティカは燃料を欲していたが、バタを占領して確保し続ける力はなかった。同時にアークティカの南部、赤い海沿岸において、2カ所の油田が見つかる。
 油田は海岸湿地にあり、自噴してはいないが、簡単な掘削で採取できた。埋蔵量はあまり多くないようだが、アークティカには十分だ。
 バタ沖海戦から1年後には、燃料製造プラントが完成し、燃料の生産が始まっていた。

 問題は、バタからの距離だ。直線で500キロない。もし、ダールが航空機を保有しているなら、爆撃される危険がある。
 アレナスは爆撃の効果を知っているだけに、ダールによる空からの攻撃を恐れた。
 油田近くに飛行場を建設し、戦闘機隊を配備する。イファ航空隊以外では、初めての常設航空隊だ。
 フォッカー戦闘機8機を配備するが、この頃には搭載エンジンであるブリストル・マーキュリーのパワー不足が問題になっていた。このエンジンは排気量が24.9リットルで、過給しても800馬力前後が出力の限界だった。
 いろいろと検討したが、馬力の向上は排気量のアップ以外には解決策が見出せなかった。
 ボアとストロークを165ミリのスクウェアとし、24.9リットルから31.8リットルにシリンダーを拡大することで、過給器を使えば1分間に2800回転で1400馬力を発生できると試算している。
 ストロークが変わらないので、直径は原型と同じ1.2メートル前後になる。
 大馬力星型9気筒エンジンとしては、かなり直径が小さい。同クラスのライト・サイクロンR-1820は1.4メートルある。マーキュリーの原型であるジュピターも同じくらいの直径だ。
 航空機用エンジンで、ボアとストロークがスクウェアな設計が存在するのか、それはわからない(著者柱:BMW801がスクウェアストローク)。
 しかし、試してみる価値はある。このエンジンは、イファの蒸気車工場で密かに開発が進められた。

 イファの蒸気車工場では、局地戦闘機“紫電”の復元作業が続けられている。
 レストアが目的ではないので、改良も行う。
 私は、元世界での仕事柄“紫電改”のことは知っていた。だが、あえて低翼化は目指さなかった。できるだけ作業工数を抑えたいことと、油圧や電動に関しての自信もある。
 後部胴体は、尾輪の直前付近で折れてしまっていたので、完全に再設計することになった。
 3点姿勢では、機首が立ち上がり気味の不自然さがあることと、横安定性の向上を期待して胴体を500ミリほど延長する。
 紫電の胴体断面は真円に使いが、後方に向かって縦長の長楕円になるようにデザインを改める。横から見た胴体は太いが、上方から見ると後方に向かって絞られていく。
 垂直尾翼と水平尾翼には損傷がないので、流用する。
 後部胴体の構造は、セミモノコック、フルモノコックではなく、大圏構造(竹籠と同じ)を採用した。軽合金の細い板を籠のように編み、機体後部の外形を作った。軽くて、強度があり、変形に強い。だが、作りにくい。
 外板には薄い軽合金板を使用した。外板は、強度を受け持っていない。
 つまり、前部胴体と後部胴体では、構造がまったく異なるように再構成したわけだ。
 折損して失われていた左主翼の再生は、右主翼を参考に慎重に進められ、使わなかった後部胴体を溶解して素材として再利用した。
 伸縮式の主脚は、伸縮は油圧、引き込みは電動に変更した。主脚の格納に要する時間は10秒となった。
 主翼下面の機関砲ポッドは取り除いた。武装はしていない。
 エンジンは、基本はオリジナルの誉二一型(ハ45-21)だが、水メタノール噴射装置を取り外した。
 この装置は過給機インペラの後方に噴射することで、エンジンの吸気温度を下げる。吸気温度が下がれば、デトネーション(異常な自己着火=高オクタン価燃料と同じ効果)が発生しにくくなる。過給器を使えば吸気温度が上がるので、冷却のために水メタノール噴射装置が使われる。
 デトネーションは、燃料のオクタン価が高ければ発生しにくい。
 第二次世界大戦では、87や92クラスのオクタン価の低い燃料を使っていた枢軸国側はこの装置を多用した。
 しかし、高オクタン価燃料が標準だった連合国側は、ほとんど使っていない。
 不要だからだ。
 この世界の燃料は総じて硫黄分が少なく高品質。オクタン価を上げることもたやすい。だから、水メタノール噴射装置は不要だ。ただし、燃料の絶対量が少ない。
 この装置の重さは100キロあり、水メタノールタンクは70リットル入る。合計すれば、200キロ弱もある。正規全備重量3900キロほどの飛行機にすれば、かなりの重量だ。

 紫電が飛行機の形になるまで、1年を要した。

 バタ沖海戦から3年が過ぎた。
 アークティカの燃料事情は、油田の発見と石油プラントの稼働で劇的に改善していた。当然だが、こういった情報は周辺諸国に瞬時に伝わる。
 対岸のバタを占領するダールが、興味を示さないはずはない。

 アークティカの沿岸には、レーダーサイトが複数あった。対水上と対空レーダーを設置している。
 神聖マムルーク帝国の侵攻を恐れているから……。
 ウサギと同じ。耳をそばだて、捕食者に奇襲されないよう己が生命を守る。

 アークティカ解放戦終結から6年、バタ沖海戦から3年を経ると、ようやく故国に帰還しようとする他国に逃れていた人々が現れる。
 通常は、個人か家族単位だが、数十人から数百人規模での帰還を打診してきたグループもある。
 人口が増えると、街と街を結ぶ交通が必要になってくる。
 アレナス⇔イファ⇔ルカナを結ぶ路面電車のような鉄道を、マルマまで延伸する計画が持ち上がる。
 時速60キロで走行できるので、マルマまで10時間ほどで往来できるようになる。線路は、アレナス⇔マルマ間の街道に沿って敷設し、沿線の街を再生していく計画だ。
 これに異を唱えたのは、チュレンやバルカナといったアークティカ北部沿岸の大都市。赤い海に沿って北進する路線の開発を先行させるべき、と。
 北部諸都市の意見をパノリアが支援し、国境を越えてパノリア領内への延伸を主張している。

 これは、大問題だった。
 表向き、アークティカとパノリアには国交がない。完全に断行していることになっている。
 が、鉄道延伸で、アークティカとパノリアが公然と接触。
 このパノリアの行動は、帝国を刺激する。

 アークティカの鉄道は、路面電車のようなもので、ヨーロッパ系の異界人たちが“トラム”と呼んだことから、この世界では鉄道=トラムだった。
 トラムの威力は絶大で、昼間は人を運び、夜間は貨物を運んだ。軌道はコンクリートで固めた、スラブ軌道に近いものだ。この技術はエリスから導入したが、アークティカは完全に自国のものにしている。

 パノリアほど露骨ではないが、南のルカーンも鉄道に興味を示していて、検分のため使節をアレナスに派遣してきた。
 アレナスで、キジルの中央行政府とルカーン政府派遣団との公然とした会談が実現した。
 ルカーンの外交使節が、会談の地にキジルではなくアレナスを選択した理由は、首都ではなく地方都市であることを、帝国への言い訳にしたかったのだと思う。
 ルカーンの議論は、赤い海に沿って、ルカーンからパノリアの都まで、鉄道を敷設してはどうか、という提案だ。ルートにもよるが、1000キロ近い鉄路の建設になる。
 簡単ではない。
 この提案を無碍にはできない事情がアークティカにはある。
 アークティカには、正式な国交がある国や街がないのだ。パノリアやルカーンの申し入れは、貴重だった。

 この頃から、アークティカは国際社会復帰への糸口をつかみ始める。

 鉄道が注目を浴びる中、航空機は違っていた。イファから飛び立ち、イファに戻るからだ。
 キジルとマルマには滑走路があるが、飛行場と呼べるような設備・施設はない。キジルの滑走路は、上空からパイロットが目視で、安全か否かを確かめて着陸する。
 羊が放牧状態で、着陸できないこともあった。
 旅客に仕える機体は、フェイトのビーチクラフト・ボナンザだけ。
 これでは、航空が栄えるわけがない。

 バタ沖海戦後……。
 ロシュディは、アレナス造船所が製造しているフォッカーD.XXIのコンポーネントを利用して、8人乗りの軽輸送機を計画した。
 また、WACO複葉機の技術を利用した複座の雷爆撃機を提案する。この機もWACOのコンポーネントを可能な限り利用する。
 どちらも開発開始から3年後には、生産できる状態まで進んでいる。
 鋼管、木と布、わずかな軽金属があれば作れるので、アークティカに向いている。
 それと、アレナス造船所の開発案件と競合しない。これは、重要。重複開発をしている余裕は、我々にはない。
 ロシュディは大きいドラゴン、キ109を「輸送機に改造すべきだ」と主張したが、これは却下された。
 雷撃の鮮烈な印象から、アレナス地方行政府が大反対したのだ。
 それもあって、可能な限り低速で飛行できる複葉の雷爆撃機が開発されることになった。ロシュディとしては雷爆撃機が完成すれば、キ109の輸送機化が認められると考えたようだが、そうはならなかった。

 ロシュディは、フランス、イギリス、ドイツ、アメリカの航空機開発事情に詳しく、技術的な情報も豊富だ。
 第二次世界大戦後、東アジアにやってきて、日本の航空機も数多く調査している。この時代の航空機に関しては、生き字引きのような人物だ。
 アークティカの事情にもっとも合う航空機の構造として、イギリス空軍のデ・ハビランド・モスキート全木製機、細い軽金属板で籠を編むように作る大圏構造のビッカース・ウェリントンの技術がふさわしいと判断していた。
 それは私も聞いていたし、作れるなら、とは思うが、双発機を作るほどの余裕はないように感じていた。

 ロシュディの指揮下でイファ蒸気車工場が試作した8人乗り軽輸送機は、油田との交通に投入される。
 油田には地名がない。もともと誰も住んでいない海岸で、地名はなかった。だから、地名は北油田となった。油田候補地が、南にもう1カ所あるからだ。
 北油田とアレナス間は200キロあり、ヘリコプターによる人員や一部物資の輸送を行っていたが、輸送機が加わったことで、大幅な能力増強が実現した。
 油田と石油プラントは、輸送機の増強・増便を要求している。

 ロシュディは、この世界になじんでいた。言葉もすぐに覚えた。日々を楽しんでもいる。私と同様、元の世界に家族を残していないからかもしれない。

 彼は、大圏構造の高翼双発輸送機を提案する。全長20メートル、全幅25メートルを超える大型機で、機体のほとんどを大圏構造で作り、外皮には帆布を張る。
 こんな大型機が作れるのか、疑問はあるが、設計・開発が本格化した。

 バーニーは、パイロットとしての仕事を続けながら、子供の成長を見詰めている。
 アークティカでは、航空機は戦争の道具として認識されているが、乗り物としては評価されていない。
 結果、パイロットの仕事は少なかった。フェイトたちは、各地に飛行場を作り、人員や物資の輸送をしないと、飛行機自体が廃れてしまう、と危機感を募らせている。
 実際、その通りだ。
 だから、ロシュディの双発輸送機計画の成功は、航空にかかわる全関係者にとって、絶対に必要だった。

 フォッカーD.XXI戦闘機をベースに開発した軽輸送機は、固定脚3車輪式の手堅い設計の機体だった。鋼管フレーム構造の胴体は全金属製になったが、主翼は全木製のまま。
 ゆったりではないが8人乗れ、このクラスの機体には十分なパワーがある空冷星型9気筒のエンジンによって、巡航時速320キロで飛行できた。
 月間1機のペースで製造し、1機ずつ微妙に違う点は相変わらずだが、マルマやキジルとの旅客輸送にも使われるようになる。
 また、連絡機として、マルマ地方軍に2機を販売した。イファ蒸気車工場としては、初めての販売実績だ。

 キジルの中央行政府は、国務代表はスピノオが続けているが、幼年学校事件以降、閣僚は大きく変わった。
 アレナスからリケルとスコルが入閣し、同時に高性能偵察機の必要性が強調され始める。
 そして、国軍総司令部直属の司令部偵察飛行隊が開隊されることになった。パイロットや整備要員は、イファから選抜され、機体も送り出す。
 アレナスの法により、異界物は地方行政府の所有となる。揚陸強襲艦ミストラルの搭載機もアレナス地方行政府の所有だ。イファの飛行隊は、管理しているに過ぎない。
 地方行政府の命により、キ102双発戦闘機2機とフォッカー戦闘機4機のキジル移動が決まる。
 キ102の武装は外され、機首には写真機が装備された。以後、キ102は“司令部偵察機”略して司偵と呼ばれるようになる。
 この時点で、キジルに本格的な飛行場が必要になり、建設が始まる。刺激されたマルマも滑走路を拡張し、軍民共用の飛行場にする工事を始めた。

 アレナスの防衛長官は、アリアンとなった。アリアンは補佐官にクラリスを指名。クラリスは「読み書きに自信がない」と固辞したが、アリアンは「この機会にしっかり覚えるがよい」と辞退を認めなかった。
 羊乳は牛乳よりも乳脂肪、乳固形分、ミネラルが豊富なことから、輸出食品としての需要が高まっており、クラリスを政権内に引き込むことで生産状況を知りたい行政府側の思惑もあった。
 また、アリアンは、防衛部門を海上部、陸上部、航空部の3部に分けた。この3部を防衛長官が統括するとした。
 常設部隊はないが、ある程度の即応体制が取れるようにした。

 チュレンの旧守備隊は、そのまま街に留まっている。移動を認めないのではなく、そのまま住んでもらっている。
 そうしないと、街が荒れてしまうからだ。
 人口が少なくなってしまったアークティカ特有の悩みだった。
 バルカナの守備隊一般兵は、彼らの望む地に移住した。王と若干の貴族が残り、手薄になったことからイワンたち旧バタの守備隊に移住してもらう。

 アレナスの対空レーダーは、250キロの探知距離がある。通常、アークティカの航空機以外がレーダーのPPIスコープに現れることはない。
 赤い海沿岸のレーダーサイトは、判断に迷っていた。赤い海を渡って、西から急速に接近する機影をとらえていたが、この空域を飛行するアークティカ機はない。
 アークティカ機の訓練は通常、内陸で行っている。特別秘匿にしてはいないが、ことさら他国に見られたくはないからだ。
 航空機は明らかに高速で東進しており、アレナスとイファのレーダーも捕捉していた。ただ、アレナスは「航空機ではない」と判断していた。
 推定時速が700キロを超えていたからだ。このため、アレナスの飛行機工場は、迎撃機を離陸させなかった。

 北油田を守る戦闘機隊は探知の連絡を受け、すぐに迎撃機を離陸させた。
 しかし、探知の連絡自体が遅れていた。
 高速で東に向かう“物体”は、あきらかに北油田に向かっている。

 マイケル・ハミルトンは、20代でネット系マーケットリサーチ会社を興し、成功した。父系は独立戦争以前に、母系は南北戦争以後に、アメリカに移住したと伝えられるが、はっきりしない。
 純粋なアングロ・サクソン系であることを“自称”しているが、本当のことはわからない。
 元世界では、キリスト教福音派であり、アメリカにおける伝統的価値観に立脚した社会の実現を目指していた。
 彼の会社にも多くの女性従業員がいたが、彼女たちを心底嫌悪していた。女性は、家庭で子育てと家事をすればいい。家庭を出て働くなど、ふしだらでしかない。
 彼は、この世界において、彼の価値観に合致した社会の実現を目指している。ダールの基本は農奴制に立脚した封建社会だが、支配階級の生活は彼が思い描く“伝統的価値観”に近い。
 しかし、赤い海の対岸に存在するアークティカは、制度的階級を否定し、平等や自由を謳う。予言の娘という“神もどき”を信奉し、宗教をないがしろにしている。
 特に奴隷制を否定する主張は許しがたい。彼の家には200の奴隷がいるが、奴隷を人と思ったことは一瞬たりとない。人の姿をした家畜だ。

 だから、アークティカが掘削に成功した油田の偵察が作戦立案された際、手を上げた。3人の仲間は、彼らが保有する以外の航空機があることを理由に「やめろ」と止めたが、不信心国家に鉄槌を下すために、引き下がりはしなかった。
 彼は、他の3人よりも“伝統的価値観”を重視していた。
 それに、この世界の下等な種族が、ノースアメリカンP-51マスタングと並ぶ、最強のレシプロ戦闘機であるグラマンF8Fベアキャットに対抗できる航空機を作れるとは思っていない。

 高度3000メートルから緩降下しながら増速し、高度500メートルで水平飛行に移る。
 前方から2機のレシプロ機が接近してくる。噂に聞く固定脚の単発戦闘機だ。

 フォッカー戦闘機の2機は、時速1000キロに達する相対速度で、濃紺の単発小型機が接近してくる状況に緊張していた。
 濃紺の単発機は考えられない上昇力で、2機を飛び越えると、真っ直ぐに北油田に向かっていく。

「爆弾を搭載していない!
 不明機は爆弾を搭載していない!」
 フォッカー戦闘機のパイロットは、胴体と主翼の下面に爆弾がないことを確認し、すべての友軍に伝える。
 北油田は、爆撃を最も恐れていた。

 フェイトとキッカは、ハヤテで出撃する。1機は解体され、1機は整備中だったが、2機は飛べる状態だった。
 レーダーは時速700キロで接近していると伝えている。フェイトはハヤテのテストで、水平で時速690キロを出していた。キッカは、急降下で時速880キロに達した。
 謎の戦闘機と戦えるのは、アークティカにはハヤテしかない。
 2人は、生命をかけて北油田を守る意思を固めていた。

 バーニーは、慌てて離陸する。先行する2機のハヤテをホーカー・シーフューリーで追う。武装はないが、飛行の妨害くらいならできるかもしれない。

 数分遅れて、ロシュディがシデンで離陸する。両翼に20ミリ機関砲のホ5を各1門装備している。1度も全力飛行していないが、フォッカーでどうにかなる相手ではない。
 危険は承知だ。
 それと、不明機の正体を見極めたかった。

 アレナスの飛行機工場隣接の滑走路からも1機が飛び立つ。
 テストパイロットを務めるナシュランが操縦する二式単座戦闘機“鍾馗”(キ44)だ。
 アレナスはキ44を再生した。搭載エンジンのハ109はなかったが、ミストラルに積み込まれていたハ112-Ⅱに積み替えている。
 ハ109の直径は1255ミリ、ハ112-Ⅱは1218ミリで前面の大きさは大差ない。重量はハ112-Ⅱから水メタノール噴射装置を取り外したので、やや軽かった。
 離昇出力はともに1500馬力だが、アレナス造船所飛行機工場がチューニングして回転数を上げ、1650馬力を発生していた。

 フェイトとキッカは、彼女たちの前方を飛ぶよく似た機影を確認する。
 フェイトが無線でキッカに告げる。
「ナシュランだ。
 ナシュランが先行している」

 マイケル・ハミルトンは、北油田と併設している製油所を偵察。全貌を画像に収める。彼が考えていたよりも大規模で、野蛮人と捨て置くには危険だと感じた。
 野蛮人に刃物を与えれば、文明人を殺しに来る。それは、歴史の必然だ。ならば、野蛮人は野蛮なうちに殺すべきだ。

 滑走路から機体をグレーに、エンジン・カウリング(カバー)を黒に塗装した戦闘機2機が西に向かって滑走していく。
 マイケル・ハミルトンは、いったん内陸深く入り、旋回して西に向かっていた。
 戦闘機2機は西の海岸に向かって、滑走路を進んでいる。
 対地攻撃には、最良のポジションだった。高度を下げ、両翼の12.7ミリ機関銃4挺を発射する。
 機関銃弾が滑走路を走り、先頭の機体を捉えた。滑走しながら大爆発を起こす。
 後続する1機は爆発に巻き込まれず、どうにか離陸したが、低空を高速で飛行するベアキャットを追撃できるほどの性能はない。
 野蛮人が見よう見真似で作った飛行機など、たかが知れた性能だ。

 南に向かって飛行するアークティカの5機は、北油田方向で火柱が上がる様子を確認した。
 フェイトは、「油田が攻撃された!」と全友軍に報告する。

 ナシュランは、濃紺の低翼小型機を発見。引き込み脚で、明らかにフォッカーとは違う。右にバンクした際、全貌を確認した。太い胴体で、コンパクトな機体だ。
 不明機は上昇に移る。

 マイケル・ハミルトンは、海面上数十メートルの低空から急上昇に移る。
 北の上空に何機かの機影を認めるが、野蛮人の作る飛行機でベアキャットの上昇力に追従できるはずはない。

 アークティカの5機は、高度500メートル付近を南に向かっていたが、不明機を追撃するために南西へ進路を変える。
 バーニーは、機体の特徴から「ベアキャットだ。異界物の戦闘機だ。注意しろ!」と全友軍に通告。
 アークティカの5機はベアキャットを追って、上昇を始める。

  マイケル・ハミルトンは判断ミスをした。上昇すれば速度が落ちる。北から向かってくる編隊は、高速で近付いている。
 だが、高度を上げれば追いつけないはず。ベアキャットの上昇力は卓越している。

 アークティカの5機は追いすがってはいるが、ベアキャットに追いつけない。ベアキャットが急上昇に移ると、ハヤテ、シデン、シーフューリーは団子状態になった。
 無武装で、2500馬力のエンジンを搭載するシーフューリーが少し先行するが、追いつけそうにない。

 ナシュランは、ベアキャットが急上昇を始めると「やった!」と声を出してしまった。
 彼の乗機キ44の全備重量は2800キロに達しない。彼は知らなかったが、ベアキャットの半分もない。
 現在、主翼の機銃は装備していない。機首の12.7ミリ2挺だけ。しかも、燃料は半載で、機関銃弾は各50発程度。軽荷状態だ。重量は2500キロに達しないはず。
 これを1650馬力のエンジンで引っ張る。
 ベアキャットの馬力重量比は2.2から2.4ほど。キ44はわずかに1.7。現在の状態なら1.5くらいだ。

 マイケル・ハミルトンは慌てた。野蛮人が操縦する翼がやけに短い戦闘機が、急上昇で追ってくる。彼我の距離が急速に縮まり、まもなく射程内に入ってしまう。
 緩降下で増速しながらの離脱に切り替える。

 ナシュランは、数メートル近付けば射程に収められるのに、機首を下げ降下に入る不明機の腹部が見えた瞬間、短く12.7ミリ弾を発射する。
 威嚇のつもりだったが、どこかに命中したようだ。しかし、不明機は何事もなく降下していく。

 マイケル・ハミルトンは、胴体下部に2発か3発の命中弾を感じた。しかも、1発は炸裂した。
 恐怖が操縦桿を倒させた。

 ナシュランは、急降下に移った不明機を追撃する。急降下なら負けはしない。
 瞬く間に追いついた。
 そして、ありったけの12.7ミリ弾を発射する。

 キッカは、不明機のエンジンからオイルが噴出してキャノピー(風防)を汚す様子を見ていた。
 プロペラがすぐに止まり、不明機は徐々に高度を落としながら滑空していく。

 バーニーのシーフューリーは、ベアキャットに止めを刺せる絶好の位置にいた。しかし、彼の機は無武装だった。何度もトリガーを引くが、弾が出るはずはない。

 北油田沖100キロ付近で、不明機が着水する。墜落ではなく、穏やかな海面にゆっくりと降りた。
 上空を5機のアークティカ機が旋回する。
 不明機のパイロットは、キャノピーを開けられないようで、脱出しない。
 フェイトは、沈みゆく不明機のコックピットの中でもがくパイロットを見ていた。
 顔も判別できる。
 若者ではない。
 バーニーよりもずっと年寄りだ。
 不明機はゆっくりと沈んでいく。
 コックピットに海水が入り、不明機のパイロットはやがて溺れる。
 パイロットが苦しそうにキャノピーを叩いている。
 そして、完全に没した。
 この付近は、1000メートルの深さがある。不明機は永遠に海底で眠ることになる。

 5機は不明機の沈没を確認して、それぞれの基地に戻った。

 航空隊に初めての戦死者が出た。いままでは細心の注意を払っていたので、事故死さえなかった。
 戦死者は、20歳のカルラ。アークティカ苦難の時代を生き抜いた女性。飛ぶことが大好きだった。
 キジル中央行政府は、カルラに勲章を贈った。アークティカ人の多くと同じように、彼女には血縁の家族がいない。勲章は彼女が所属する部隊の指揮官が受け取った。

 アレナス地方行政府会議室には、普段とは異なる顔ぶれがいる。
 全員が楕円の大きなテーブルについている。
 スピノオが入室すると、全員が立ち上がった。スピノオが全員を見る。
「カルラ飛行士の安らかな眠りを願いましょう」
 全員で黙祷する。
 着席すると、即座にチルルが発言。
「我がフォッカー戦闘機では、不明機に対して、まったく太刀打ちできなかったという。
 これは事実か否か?」
 その場にいなかった私は、沈黙している。バーニーが立ち上がる。
「スピノオ様、チルル様。
 フォッカー戦闘機では、ベアキャットには到底立ち向かうことはできません。
 速度が300キロも違うのです。
 ですが、あれ1機でしょう。
 この世界にベアキャットは存在しません」
 スピノオがバーニーを見る。
「だとしても……。
 同じものを作れないとは、言いきれないでしょう。
 我々がそれをしているのだから……」
 その通りだ。スピノオの心配は現実を見ている。
 バーニーは、彼が知っている情報を、ここで話すべきだ。私はそう思った。
 バーニーが着席し、アレナス造船所のシビルスが立つ。
「異界物に頼る戦い方は、危険だ。
 危険すぎる」
 その通りだ。ここにいる異界人全員がそう思っている。物体はいつかは朽ちる。
 フェイトが立ち上がる。
「不明機は、絶対にダールの戦闘機だ。バタに戻ろうとしていた。
 間違いない。
 あのような戦闘機がダールにあれば、アークティカは蹂躙されてしまう。
 私たちには、帝国と戦うための武器が要る」
 バーニーは沈黙しているが、自らの無言に耐え切れなくなったように立ち上がる。
「ダールには、確実に4機の飛行機があった。
 ヤコブレフYak-9、ラボーチキンLa-9、グラマンF8Fベアキャット、フォッケウルフFw190。
 このうち、ベアキャット以外はレプリカだ。そして、ベアキャットを落としたから、レプリカしかない。
 当然だが、レプリカの性能はわからない。
 だけど、推測はできる。
 この件で、シュンと話をした。
 私は、ダールがヤコブレフYak-9の生産を目論んでいると確信していたが、シュンは違った。
 ラジエーターやオイルクーラーの製造に手間がかかるから、空冷機だと。
 シュンが正しいとすれば、液冷エンジンのYak-9は候補から落ちる。
 ラボーチキンLa-9かフォッケウルフFw190が選択肢として残るのだが、思い出したことがある。
 ダールに組する4人のアメリカ人のうち、マイケル・ハミルトンはユーゴスラビアの小さな航空機会社を買収している。
 このウトヴァ社は、フォッケウルフFw190のレプリカを製造していた。エンジンは、ロシア製空冷星型14気筒1850馬力のシュヴェツォーフASh-82FNだった。
 ダールのフォッケウルフFw190はウトヴァ製だろう。だとすれば、エンジンはシュヴェツォーフだ。ラーヴォチュキンLa-9も同じエンジンだから、この2機のエンジンからコピーが作れる。
 機体はフォッケウルフFw190だと推測する。設計図はマイケル・ハミルトンが持っているはずだから……。
 我々は、ロシアが設計した強力なエンジンを積むフォッケウルフと戦うことになる」
 イファ蒸気車工場の工場長が発言を求める挙手をする。
「ヴィーナスエンジン……、イファではハ112-Ⅱをヴィーナス(金星=日本海軍はハ112-Ⅱを金星62型と命名)と呼んでいるんだが、ややロングストロークだが、スクウェアに近い。
 すまん。
 エンジンのシリンダーのボア(内径)とストローク(行程)の話なんだが……。
 現在は1分間に2600回転で最大馬力を出している。
 これを3000回転まで上げれば、1750馬力まで出せる。高回転化すれば軸受けに負荷がかかるが、クランクシャフトの材質を工夫したり、ベアリングの精度を高めれば、机上計算だが3250回転まで引き上げられる。
 あのエンジンには、まだ余裕がある。
 ハヤテやシデンのエンジンは18気筒で35.8リットル、ヴィーナスは14気筒で32.34リットル。排気量は大して変わらない。製造のしやすさは断然14気筒だ。
 これからは数も必要。
 我々は、ヴィーナスエンジンの量産を進めたい」
 アレナス造船所のシビルスも賛成。
「工場長の見識に賛成する。
 我々もヴィーナスの製造に賛成だ。
 機体だが、我々はキ44の開発を推進したい」
 ロシュディは、今後の展開を予測している。
「私がいた世界だが……。
 バトル・オブ・ブリテンという戦いがあった。
 イギリス海峡を挟んで、航空機同士が戦った。この海峡は最も狭い場所で40キロ。最も広いと200キロ。
 この海峡を挟んだ戦いでは、イギリスとドイツの戦闘機は、どちらも航続距離の短さに苦労した。
 フォッケウルフは航続距離が短い。我々には航続距離の長い機体が必要だ。
 私はハヤテの量産が適当と考える。
 ハヤテに高回転化ヴィーナスを積めば、かなりの性能が期待できる」
 バーニーが懸念を告げる。
「フォッケウルフFw190は本来、BMW801を搭載しているが、このエンジンは14気筒で41.8リットルの排気量がある。シュヴェツォーフASh-82FNは同じ14気筒で40.946リットル。
 ヴィーナスよりも30パーセント近く大排気量だが、それで戦い抜けるか?」
 私はヴィーナスと名付けられたハ112-Ⅱのメカニカル過給器をターボ過給器に交換すれば、そこそこ戦えると判断していた。
「過給器の役割は、擬似的に排気量を増やすことだ。
 能力の高い過給器を取り付ければ、ある程度の排気量差はカバーできる。
 ヴィーナスの原型ハ112-Ⅱには、ハ112-Ⅱルというターボチャージャー付きがあった。
 これを開発できれば、我々は劣勢にはならない」
 私は嘘を言った。ハ112-Ⅱルは確かに存在したが、当時の日本のターボチャージャーの使い方は間違っていた。
 ターボチャージャーは全域で使うマシンだが、当時の日本はスーパーチャージャーのように断接して使っていた。つまり、ターボを働かせたり、止めたりしていたわけだ。
 私は、そんなことをするつもりはさらさらない。
 リューリ・フリップラが立つ。
「シュンが望むことをするには、インジェクション(電子燃料噴射装置)という機械が必要。
 4ビットCPUならどうにか作れると思う」
 インジェクションが作れれば、全高度、全速度で、燃料の混合比調整を完全自動化できる。
 彼女は、それを言わなかった。だから、誰も意味がわかっていない。
 私がリューリの説明を引き継ぐしかない。
「リューリは大事なことを言ってくれた。
 インジェクションが作れれば、全高度、全速度で燃料の混合比を最適化できる。つまり、混合比の完全自動化が可能になる。
 パイロットの負担が劇的に減る」
 ロシュディは、彼の経験から航空機開発の提案をする。
「アークティカの国土は、東西に長いから、フォッケウルフはマルマはもちろん、キジルまで侵攻できないと思う。
 戦場は沿岸の街、アレナス、チュレン、バルカナと内陸100キロまで。海岸から60キロのルカナは、爆撃されるかもしれない。
 内陸の街には爆装状態では侵攻できない。
 主戦場は、沿岸の街と沿岸から東に100キロまでの圏内だ。
 キ44はドロップタンクを装備すれば1600キロ、キ84ハヤテは2500キロも飛べる。ハヤテなら250キロ爆弾を2発積んでバタを爆撃できる。
 キ44は迎撃戦闘機、キ84は戦闘爆撃機の位置付けでアレナスとイファで、同時に開発を進めてはどうだろう?
 どちらも同じエンジンを搭載することを前提に……。
 問題は搭載する機関銃だ」
 ヴェルンドは落ち着いていた。
「20ミリのホ5と12.7ミリのホ103のどちらも量産可能。
 陸戦用で製造しているブローニングM2と同じ仕組みなんだ。ただ、20ミリのホ5はともかく、12.7ミリのホ103を製造する意味があるのか……。
 同じ12.7ミリでもブローニングとは違う弾なので、補給の面で都合が悪い。
 ブローニングの軽量化で、折り合いをつけてくれるとうれしいんだが……」
 ホ5とホ103は、どちらもブローニングM2が原型だ。ヴェルンドの希望には利がある。
 しかし、ヴェルンドは別なことも提言する。
「マ103という弾だけど、完全な炸裂弾だし、信管は非常に簡単な構造で効果が高い。
 信管に空洞があり、命中すると空洞内部を圧縮するんだ。断熱圧縮が発生して、信管内部の火薬が発火する。
 簡単で、量産性に優れている。
 それと、銃が軽いし弾も軽い。ホ103をどうするか……」
 航空関係からはホ103への支持が多く、7.92ミリ弾を発射するブローニングM1919は大量に製造しているが、12.7ミリのM2は限定的なので、ヴェルンドとしては製造を中止してもいいかと考えていたようだ。
 会議の途中でヴェルンドは、ホ103の製造は不可避と受け取ったようだ。

 チルルが結論を述べる。
「アレナスはキ44を、イファはハヤテを開発・製造する。
 新型戦闘機はホ5とホ103の2種類の機関銃を装備する。
 それ以外の飛行機の開発は……」
 ロシュディが挙手。
「どうか、輸送機の開発は継続させてもらいたい。
 航空輸送は、アークティカの役にきっとなるから……」

 キ44とキ84の優先開発となり、大圏構造という一風変わった輸送機は継続検討となる。
 それ以外の航空機の計画は、すべて中止となった。
 アークティカは、空の総力戦を戦い抜く準備を始めた。
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