大絶滅 5年後 ~自作対空戦車でドラゴンに立ち向かう~

半道海豚

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第2章 相馬原

02-038 センチュリオン

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 相馬原が入手したセンチュリオンは、Mk.5/2に相当する。Mk.5の主砲を105ミリのロイヤルオードナンスL7に換装したタイプだ。
 全重は52トンを超え、車体長は7.55メートルもある。
 車体には原設計以後に、いろいろな追加装備が施されていて、車体前面には50.8ミリもの増加装甲が施されている。車体後部には外付け装甲板箱型燃料タンクもある。
 加賀谷真理は、これらをすべて撤去した。エンジンルーム上部の装甲ハッチは、軽量で熱に強いものに変更するなど、大幅な軽量化を図り、40トンをわずかに超える程度に抑えることに成功した。
 エンジンが小型軽量高出力となったことから、走行性能は飛躍的に向上した。
 戦闘機の操縦桿のような一本バーによる操縦は、感触がいいとはいえない。
 エンジンの換装にともなって、トランスミッションも交換。操向は小径の円形ハンドルになった。

 オークが使用する兵器は、耐熱素材で防げることはわかっているし、炭素繊維を厚く貼り付けた上から、耐熱塗料を吹き付ければ、防げることはわかっている。
 オークやギガスとの戦いでは、熱い装甲が必要なわけではない。
 25から50ミリ程度の装甲と車体全周への耐熱加工があれば、オークやギガスと互角に戦える。
 問題は、何もなくなった世界で、炭素繊維や耐熱塗料を見つけることだ。
 これは、偶然を期待する以外、解決策はない。

 相馬原のセンチュリオンと60式装甲車は、明るい灰色の車体であった。
 炭素繊維や耐熱タイルなどの耐熱素材を貼り付け、その上から厚く黒鉛を塗布し、さらに白の耐熱塗料を塗ったからだ。下地の炭素と少し混和した。

 乾燥した草原のような風景のなかを、センチュリオン改と60式装甲車改が新潟に向かって進む。ランドマークはほとんどないので、信濃川左岸河口を目的地にしている。
 10月になれば三国峠には雪が降る。11月には、雪に閉ざされて新潟には行けなくなる。
 夏は寒いが、冬はもっと寒い。
 これが、現在の北関東の気候だ。雨は多く、降塵も多い。

 数日、雨は降っていない。泥濘はなく、土埃がひどい。
 操縦は葉村翔太、砲塔には香野木恵一郎、ラダ・ムー、金平彩華の3人が乗る。
 センチュリオン改の前方を60式装甲車改が進む。こちらには、奥宮要介と加賀谷真梨が乗る。
 我々が進んでいるルートは、おそらく三国トンネルが開通する以前の旧街道に沿っているのだと思う。
 単に走れそうな地形に沿って、轍が刻まれているだけだ。道とはいえない。
 三国トンネルは健在だが、古いので崩落の危険があるとされている。
 それと、群馬と新潟の県境の冬の厳しさはヒトが住むには過酷すぎる。
 新潟には物資探索で向かう人々はいても、住人はもういない。東京への避難を拒む頑迷なヒトはいたのだが、最初の冬で生命が絶えた。

 かつて、苗場スキー場だったと思われる地形に達する。
 現在は、リフトやゴンドラはない。ただ、斜面に草が生えているだけだ。
 もちろん、高木は一本もない。雨が降れば、土砂崩れが簡単に起こる。
 大地の安定は、名も知らぬ雑草に頼るほかない。
 それでも、再生しつつある。
 眼前をシカの群が通過した。クマも見たし、トラもいた。
 これには驚いた。ヒト以外の動物も相当数生き残っているようだ。
 房総には、ゾウやライオンもいるらしい。

 センチュリオン改と60式装甲車改は、どちらも軽快に動いている。両車ともエンジンの換装など、大幅な改造を受けており、ほぼ新造といっていい。60式装甲車改は、エンジンの搭載位置まで改めている。
 必要な移動手段確保のために、旧式の車体を流用したに過ぎない。

 地形に沿って、湯沢、南魚沼、魚沼、小千谷、長岡、三条、新潟と進んでいく。
 湯沢付近と思われる地形からだと、日本海まで130キロほどだ。
 予定では日没直前ごろ、信濃川河口に達する。
 全員が寡黙だ。
 1年前は草さえなかった。草原化しただけでもたいへんな変化なのだ。それでもかつてを知っているのだから、この世界が虚無であるように感じてしまう。
 だから、発する言葉がなくなるのだ。
 その反動なのか、動物を見つけると大騒ぎになる。
 オークとギガス以外のすべての動植物が、ヒトの同士のように思えてしまう。
 互いに「助かってよかったね」と声をかけ合うような……。

 香野木たちは、日本海の海岸に達する直前で野営の準備を始める。
 シカ、カモシカ、イノシシなどの大型草食哺乳類の生存が確認されており、こられを獲物とするオオカミやヒグマが本州にも進出している。
 また、ヒトに害を加える無頼の輩もいる。
 野営は極めて危険だ。
 2人3交代で、警戒する。

 香野木と奥宮は、日没から24時までを担当する。
 2人はセンチュリオン改の砲塔から上半身を出している。
「奥宮さん……。
 ギガスをどう思う?」
「実際に遭遇してみないと、何とも……。
 ヨーロッパと中央アジアの情報が、微妙に違いますよね」
「あぁ。
 ヨーロッパは1000輌を超える戦車を集めたらしい。
 そのうち半分が滑腔砲で、残りがライフル砲だったようだ。
 ヨーロッパはライフル砲の効果が大だとしている。
 中央アジアはライフル砲が主力で、少数の滑腔砲があったらしい。
 中央アジアは、ライフル砲と滑腔砲で戦果に差はないとしている。
 ヨーロッパと中央アジアでは、装甲の認識も違う。
 ヨーロッパは重装甲は必須だとしているけれど、中央アジアは大口径機関砲の至近での直撃に耐えられれば十分だ、としているね」
「ギガスの武器がオークのそれに準じるならば、重装甲は無意味ですよ。
 実際、連中の兵器は105ミリの砲身だって一瞬で切断してしまうんですから……」
「イギリス製のスコーピオン軽戦車を装備するフィリピンの生き残りは、ベトナムに渡って、かなりの戦果を上げたらしい」
「ブラジルじゃぁ、カスカベルとかいう装輪装甲車が互角以上に戦ったようですよ」
「ヨーロッパの情報は、俺たちの経験や他地域の情報と比べるとズレがあるね」
「えぇ、ヨーロッパ以外は、砲の威力よりも機動力を重視しているようですが……」
「ヨーロッパはAP(徹甲弾)が効果があるとしているけれど、他地域はHEAT(成形炸薬弾)を多用したようだ」
「ズレてますよ」
「ズレてるね」
「ギガスは来ますかね?」
「来るだろうね。
 東へ、東へ、と進んでいる。
 ユーラシア大陸を東に進めば、日本列島に行き着く。
 その先は太平洋だ。
 この島はどんずまりだ」
「氷河の話を聞きましたけど……」
「北極の氷が急速に拡大しているらしいね。
 シベリアの大半、アルタイ山脈以北に巨大な氷床が出現したらしい。
 地球は寒冷化に向かっている」
「温暖化だと、子供のころは聞いたんですけど……」
「イエローストーンの噴火で、すべてが変わった……」
「2億年後に行ったヒトたちは、どうなったんでしょうね」
「4億とか6億とか、実際は数千とか。
 2億年後に行った人数ははっきりしないらしい。
 生き残れやしないよ」
「この時代に残った我々も生き残れませんよ」
「このままじゃね。
 だが、道はあるはずだ。
 生き残るための……。
 関東だけで、2万人も生き残っているんだ。食料の生産が何とかなれば、道は開ける」
「寒冷化していますよ」
「鹿児島にでも行くか?」
「鹿児島はもうないですよ」
「だね。
 姶良カルデラの破局噴火で吹っ飛んじまった。
 鹿児島湾も、薩摩半島も、消えちゃったね」
「阿蘇も大噴火しましたよ」
「九州は引っ越し先にはならないか……」
「無理ですね……」
「すぐに行けて、暖かいところは?」
「伊豆とか」
「関東のほうが条件がいいよ。
 東京湾沿岸のほうが、生存可能性が高い、だろうねぇ」
「日本列島って、いつごろからヒトが住んでいるんでしょう?」
「4万年とか、3万年前、らしい。
 原日本人は、3万年以上前に日本列島にたどり着いたんだ。
 7万年前にインドネシアのトバ湖にあった巨大火山が噴火した。
 これがトバ事変と呼ばれる人類史上最大の危機となったんだ。
 このころはまだ、人類は一属一種ではなかった。
 ホモ・サピエンス、ホモ・ネアンデルターレンシス、ホモ・エレクトゥスが併存していた。
 ホモ・サピエンスとホモ・ネアンデルタールレンシスは、トバ事変を乗り切ったけれど、ホモ・エレクトゥスは絶滅したといわれている。
 トバ火山は、大量の火山灰を排出したため、6000年にわたって地球の寒冷化を招き、これがきっかけとなってヴュルム氷期に突入してしまう。
 その後、2万5000年前にホモ・ネアンデルターレンシスが滅ぶ」
「ムーさんの仲間ですよね」
「まぁ、ムーさんがいる以上、絶滅してはいないけどね。
 それに、中央アジアでギガスに痛手を負わせたのもホモ・ネアンデルターレンシスの仲間のデニソワ人の子孫らしい。
 インドネシアのフローレンス島には、小型の人類が1万6000年前まで住んでいた。
 彼らは、ホモ・エレクトゥスの亜種だったらしい。
 1万6000年前といえば、日本列島ではもうすぐ縄文時代が始まるんだ。
 遺伝子解析で、原日本人は非常に古い人種で、他の東アジア人とは系統が異なっていることがわかっている」
「でも、絶滅しかかっている……」
「イエローストーンが大噴火する前、まだ世界が平穏だった時代、日本の人口は西暦3000年には2000まで減るという研究があったけど、この数じゃぁ事実上絶滅だよね」
「1000年後は2000人?
 日本全国で?」
「あぁ。
 日本列島では、人口の減少現象は3回しか起きていない。
 縄文晩期、縄文海進が終わり、食糧の確保が難しくなった時代。
 鎌倉幕府の終焉と室町幕府の開府のころ。このときの人口減少は疫病が原因とされている。江戸時代末期には明確に減ったわけではないけれど、人口が停滞した。
 そして、20世紀末から21世紀初頭にかけて。
 気候の激変、疫病の蔓延、それと同じくらいこの時代は日本人には生きにくい環境だったんじゃないか、と……」
「とどめの一発で、このまま……」
「それはないね。
 これほどの環境激変は、どんな生物にも生存本能の活性化を促す。
 たぶん、日本列島は人口増に転じるよ。
 きっと……。
 そう信じたい」

 朝方小雪が舞った。
 この夜の特筆すべき出来事は、これだけだった。

 日の出とともに新潟市内に向かう。
 もちろん、地上には何もないが、地下に残る物資を探すサルベージ屋が何組も活動している。
 戦車が突然現れたので、武器を構える人々がいる。
 何もする意思がないことを示すため、手を振る。

 センチュリオン改には、74式戦車に残っていた105ミリ砲弾が20発積まれている。HEAT弾(対戦車榴弾=成形炸薬弾)、AP(徹甲弾=炸裂しない貫通弾)、HE(榴弾=軟目標に使う炸裂弾)を積んできた。
 
 戦闘の予定はないし、その意思もない。機関銃弾を含めて、一応積んでいるだけ。
 主砲との同軸機関銃は7.62ミリのブローニングM1919、砲塔上の機関銃は榛名山麓製造の7.62ミリのラインメタルMG3だ。
 巨大な車体は、水冷V型10気筒ターボディーゼルの強力なパワーで、軽快ではないが鈍重でもない。

 日本海は静かだった。新潟の海岸は、砂浜になっていた。
 信濃川は、清流の趣がある。
 川岸に戦車を止める。
 奥宮要介が主砲に砲弾を装填する。
 砲口は日本海に向いている。砲口の先には佐渡がある。

 105ミリ砲の発射音は凄まじいものであった。
 発射と同時に砲身が後座し、巨大な車体が揺れる。
 奥宮要介が微笑む。
「異常なしです」
 ラダ・ムーが砲塔内に潜り込む。
「彼方まで飛んでいき、海面に巨大な水柱を上げた。
 これなら、ギガスの乗り物を落とせるかもしれない」

 さらに、3発を発射。
 新潟までやって来た目的の1つである、主砲の発射テストを完了する。

 60式装甲車改の車体上に立つ、加賀谷真梨が微笑んでいる。

 柏崎・上越方向から、20輌もの小型四輪駆動車の車列が向かってくる。
 一瞬、緊張が走る。
 先頭は4輌の軽装甲機動車。少数の自衛隊の1/2トントラック。その他は、ランクル、パジェロなどの民間四輪駆動車だ。1輌だけ、グリーンとホワイトのツートンに塗装された珍しい旧車のいすゞTW6輪駆動トラックがある。そのトラックには、ミニショベルが積まれている。

 車列が、戦車から100メートル離れて止まる。
 若い男が1人降りてくる。
 躊躇いなく、真っ直ぐ歩いてくる。

 加賀谷真梨が60式装甲車改上から地面に飛び降りる。
 土埃が舞う。
 香野木恵一郎も地面に降りる。
 加賀谷と香野木が、若い男に向かって歩いて行く。
 奥宮要介は、見られないよう砲塔内で89式5.56ミリ小銃のマニュアルセイフティを解除する。

 男が名乗る。
「西辺です。
 長野から東京に向かっています」
「香野木です」
「加賀谷です」
 香野木恵一郎が問う。
「東京に向かうには、遠回りでしょう」
「碓氷峠は土砂崩れで、通行不能です。
 それで、松本→甲府経由を考えたのですが、三国峠は通行できると聞いて……」
「三国峠を越えて新潟まで来た。
 三国トンネルも健在だし、関越トンネルも崩れていない。
 東京まで行ける」
「そうですか。
 ルートの情報が欲しかったので……。
 ですが、凄い戦車ですね」
「大陸の東側に、例の動物が達したらしい」
「食人動物の噂は聞いています」
「それとは別種だ。
 ヒトを捕らえて家畜にする」
「……。
 別種……」
「あぁ。
 なるべく早く、東京に向かったほうがいい。
 秩父に厄介な連中がいるから、気をつけて。
 川越より東京湾側は、市ヶ谷台の勢力圏だ。
 川越までは、休まずに走ったほうがいい」
「厄介なヒトたち?」
「新座園子という元国会議員のグループだ。“日本を再定義する”と主張している連中だよ。
 連中に従わないグループには、残虐行為を平気で働く。
 みなさんが連中に捕まらないことを祈るよ。
 武器があれば、手放さないほうがいい」

 西辺と名乗った男の車列は、信濃川に沿って三条方向に向かった。

 加賀谷真梨が主砲発射後の車体を点検している。
 異常はない。
 さらに3発を発射。
 砲、砲塔、車体に異常はない。

 センチュリオン改と60式装甲車改は、その日の12時、相馬原への帰途につく準備を始める。

 ラダ・ムーが日本海を見ている。
 隣に立った奥宮要介に告げる。
「私の知っている海とは違う」
「地中海はもっと明るかった?」
「いいや、寒かったからね。
 何だろうね。
 この海には、禍々しさを感じる」
「あれは……?」
 奥宮要介が沖を指差す。
「ギガスの乗り物だ!」

 海面上5メートルほどを飛行する、ギガスの大型浮航機がゆっくりと陸に近付いてくる。
 双眼鏡で確認するが1機だ。
 正面を向いているため全長はわからないが、幅は20メートルはありそうだ。
 ちょっとした貨物船よりも大きいかもしれない。

 香野木は即断した。
「戦車には、俺、奥宮さん、ムーさんが乗る。他はAPCで後退してくれ」
 加賀谷真梨が問う。
「香野木さん、どうするつもり?」
「迎え撃つ。
 上陸を阻止できるか、それはわからない。
 巨大船を豆鉄砲で撃つようなものだから。
 でも、何もせずに上陸させるよりも、ヒトの武器が通用するのか、しないのか、見極めるだけでも価値はある」

 ギガスの乗り物は、あまりに巨大で距離感がまったくつかめない。
 レーザー側遠機が距離2000を計測したところで、主砲を発射する。
 香野木が操縦、ラダ・ムーが装填、奥宮が砲手を務める。
 奥宮の指示で、ラダ・ムーはAP(徹甲弾)を装填。
 発射。命中するが、反応がない。砲弾は外板を貫通したようだが、機体が巨大なため反応が薄いのだ。
 HEAT(対戦車榴弾)を発射。
 これには反応があった。機体内で小さな爆発を確認する。
 HE(榴弾)を発射。
 これは効果があった。船体が傾く。
 正面に3発のHEを命中させ、この弾種は弾切れ。
 HEATを発射しする。目標が巨大で、かつ退避行動をしないので、全弾命中する。

 目標の前面投影面積が徐々に小さくなる。後退しているのだ。
 レーザー距離計もそれを示している。

 加賀谷真梨は、ギガスが現れたことを無線で相馬原に伝える。
 おそらく、この無線は市ヶ谷台を初めとする各グループが傍受している。
 オークに加えて、ギガスとの戦いが始まるのだ。

 60式装甲車改は、地上から一切の人工物と自然物が消えた新潟市内に留まっている。
 新潟市内も草原と化している。
 市内では、会津のグループが地下から物資をサルベージしていた。
 リーダーは兼坂という50歳代の男だった。
 加賀谷真梨が警告する。
「ギガスという食人動物とは違う、別種が海岸に近付いている。
 私の仲間が撃退したけど、ここは危険だと思う」
 兼坂は小馬鹿にしたように返す。
「臆病者と一緒にしないでくれ。
 俺たちは食人動物をかなり殺したぞ」
「そうですか。
 警告はしましたよ」
「その装甲車、いいな。
 置いていけ」
「それはできません」
「殺すぞ?」
 葉村翔太が兼坂の額を躊躇いなく撃つ。
 加賀屋真理が60式装甲車改12.7ミリ重機関銃を構える。

 会津のグループは8人だった。兼坂が死に、7人。
 7人全員が両手を挙げている。
 若い男がいった。
「撃たないでくれ。
 あなたたちの物資を奪うつもりはない。
 それと、知っていたら教えて欲しい。
 東京は安全なのか?」
 加賀谷真梨が答える。
「いろいろあったけど、いまは安全よ」
「ぼくたちは、これから会津に戻る。
 会津に戻って、東京に行くメンバーを集める。
 なるべく早く、東京に向かうよ。
 それと、きみ、兼坂を殺してくれてありがとう。
 彼は、小物な暴君だったんだ。
 会津には、やつの女房と娘がいる。
 この2人は、兼坂よりも凶暴なんだ」
 葉村翔太が励ます。
「無事に東京に行けるといいね。
 会津にはどれくらい残っているの?」
「僕らのグループは30人ほど」
「ギガスという新しいヒトの敵が日本に上陸する。
 ヒトは団結しないと。
 生き残れないよ」
「きみたちは、どこから来たの?」
「群馬、北関東からだ」
「ルートは?」
「三国峠は通行できる」
「確実なルートは、会津→新潟→三国峠→沼田に抜ける……」
「郡山に抜けて4号の痕跡をたどって東京を目指すルートが最短で、安全だと思うけど……」
「山間部は、土砂崩れが多発している」
「知っている。
 山に木や草がなくなって、雨水をためることができなくなったからね」
「地形がどんどん変わっていく。
 そのうち、徒歩以外での移動ができなくなるよ」
「会津はそんな感じなの?」
「そうだね」
「それならば、東京に集まったほうがいい」

 ヒトを捕らえて家畜として使役する、直立二足歩行動物が日本列島に侵入してくる。
 絶滅しかけている人類は、生存を賭けた新たな戦いに入る。

 ※続編は「200万年後」第6章です。どうか、こちらをお読みください。
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