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第2章 相馬原
02-031 正体
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花山真弓は、その日のうちに相馬原に戻り、以後数日間は小雪が舞う曇天であった。
好天であっても、太陽光は上空を覆う薄茶色の塵に遮られているが……。
結城光二が操縦するMD500は、来栖早希と百瀬未咲、そして小麦粉100キロを乗せて、市ヶ谷台を目指した。
結城光二は当日に帰還し、来栖早希と百瀬未咲は1カ月以内に帰還の予定だ。
由衣と愛美は、来栖から「1カ月の冬休みだよぉ~」と言われたが、嬉しくはなかった。
来栖が留守の間、相馬原の人々にはやることが山積していた。
井澤貞之は建築家で、住宅の設計を主たる仕事にしていたそうだ。雪解け以降、現有の物資で地上に建物を造ることができるかを検討してもらっている。
井澤加奈子の顔の腫れは、だいぶ治まってはいたが、それでも酷かった。未咲がいなくなり、少しふさぎ込んでいる様子があると、夏見智子が報告してくれた。
金平彩華に未咲の代わりを頼みたいが、それは無理だろう。彩華には見せかけの優しさがない。未咲の帰還を待つしかない。
厳冬期は2月中旬から始まり、3月中旬まで続いた。この間は、まさに越冬であった。毎日、大粒の雪と強い風が吹き、屋外へ出ることはほとんどできなかった。
地下3階には、運び込んだ玄米と小麦粉があり、地下4階には機関砲や榴弾砲の弾薬が備蓄されている。だが、床面の半分は空いている。ここが運動場となり、子供たちの遊び場であった。
この時期は、外部監視カメラの修理以外で、屋外に出ることはなかった。
3月初旬、来栖から全作業の終了と天候が回復次第の帰還要請があった。
畠野史子3曹は大きなおなかを抱えながら、結城を叱咤して、MD500の整備を行っている。
このヘリは交換部品がないので、いつまで使えるかわからないが、あとしばらくは頑張ってもらいたい。
天候は3月中旬まで回復しなかった。積雪は2メートルを超え、群馬側でさえこの状況であることを考えると三国山脈の新潟側は想像さえできない。
天候の間隙を縫って、好天時に結城がMD500で出発。その日のうちに、来栖と未咲が帰ってきた。
東京も大雪に苦しんだらしい。太平洋側を発達した低気圧が頻繁に通過し、そのたびに湿った大粒の雪が降る。常時50センチほどが積もっているようだ。
来栖は帰還した当日の夜、全員をモニター室に集めた。普段は姿を見せない井澤加奈子もいる。未咲が彼女の隣に座っている。
「オークの正体がわかったわ」
来栖がわずかに息を整える。
「やはり、ヒト属ではない。
300万年以上前、アウストラロピテクスの一群から進化したヒト科動物よ。
同じ頃、最古のヒト属のホモ・ハビリスが現れているけど、それとは別系統のヒト科動物が彼らの祖先」
由衣が「はい!」と元気よく手を上げた。
「チンパンジーと人間も祖先は同じなんでしょう?」
「そうね。祖先は同じ。
ヒトの系統とオランウータンの系統が分岐したのが1300万年前、ゴリラが800万年前、チンパンジーが490万年くらい前、ホモ・ハビリスは230万年前に現れたから、チンパンジーよりはヒトに近いけど、オークはヒトではない。
ヒトに似ているけど、ヒトではないの」
「でも、ヒトと祖先は同じなんでしょ」と結城が尋ねる。
「その通りよ。
同じ論理で、ヘビとヒトの祖先も同じよ。
いつ、分かれたかの違いだけ。
大事なことは、ヒトではないこと。
オークはヒトをオークの一種でないことを理解しているから、食料にしている。
私たちもオークがヒトの一種でないことをしっかりと理解しなければ、オークの餌として生きるほかないの」
花山が「市ヶ谷台にも説明したの?」
「ええ、したわ。
でも、塩田代表をはじめ、ほぼ全員が混乱していたわ。
ヒトに似ている理由は、単に生息環境と生態が似ていたから。それだけ。
サカナとクジラの姿が似ているのと同じ。
姿が似ていても同種じゃないの。
マグロは自分と大差ない姿形の他のサカナを餌にしているでしょ。それと同じで、オークは姿の似ている我々を食べることに抵抗がないの。
市ヶ谷台は、オークとのコミュニケーションを考えているようだけど、それは無理。
ヒトとオークは生態系が重なるから、どちらかしか生存できない。
ガウゼの法則、競争排除則ね。
300万年前から10万年前まで、南北アメリカにはスミロドンという24センチもの長い牙を持つネコがいたけど、ジャガーやピューマといった大型のネコが進出してくると、運動能力に優れた新参者が生息領域を増やしていって、結局は絶滅してしまう。
私たちも同じ。
オークが私たちを餌だと思わなくなっても、両方が生き残ることは無理でしょう」
ラダ・ムーがボソッと言った。
「オークと心を通わせるなんて、不可能だ」
香野木恵一郎は別のことが聞きたかった。
「で、来栖さんが持ち帰った情報はそれだけじゃないでしょ」
「もちろんよ。
ちょっと話がそれるけど、山岳地帯、飛騨山脈、木曽山脈、赤石山脈、丹沢山系、阿武隈山系とかだけど、シカ、ニホンカモシカ、イノシシ、ツキノワグマ、リスやテン、ムササビ、モモンガ、そして鳥も。野生動物が生き残っている。
それから、どうやって生き延びたのか不明だけど、ブタやウシなどの家畜の生存も確認されている」
全員が互いの顔を見合わせた。
来栖が続ける。
「生態系がある程度回復すれば、我々の生存可能性も高まる」
香野木は来栖をさらに促した。
「他に面白い話は?」
「私の専門じゃないし、軍事的なことは疎いけど、オークやギガスとの戦いには歩兵戦闘車が有効だそうよ。
口径20から40ミリの機関砲は、連中の乗り物のほとんどを破壊できるとか。
それと、ギガスは全長100メートル、全幅15メートルの低空を浮揚する乗り物を使うそうだけど、戦車の主砲で撃墜できると聞いた。
それから、戦車の複合装甲は連中の武器を貫通させないそうよ」
花山が一回唇を舐めてから発言する。
「ムーさんの説明の通りね。
彩華ちゃん、どうなの?」
「対空自走砲、装甲輸送車、自走10榴改とも稼働します。準備OKです」
花山が加賀谷真梨を見た。
「部品取り用の4輌から2輌を再生しようと試みています。
戦闘用ではなく、移動手段としてですが……」
香野木がその移動用車輌について質問した。
「どういったクルマなの?」
「キャタピラ付きのトラックかな。
操縦席は戦闘機のようなキャノピーで覆い、砲塔の載っていた後部はトラックの荷台みたいになっているの。
雨が降ったら、タイヤじゃ走れないでしょ」
その説明に、全員が頷いた。
井澤親子は戸惑っているようだった。
「あのぉ、皆さんは秩父のことを忘れていませんか?」
花山が即答する。
「秩父は出てくれば叩く。連中に屈するつもりはない」
未咲が来栖を促した。
「来栖先生、あのことを言わないと」
全員が来栖を見た。
「消滅現象のことだけど。
市ヶ谷台の分析というわけではなく、あのときに起きたこと、地球上も、宇宙でもだけど、分析したデータをつなぎ合わせると、消滅現象は自然災害ではなかったらしいの」
全員が息をのんだ。
「誰もが感じていることだと思うけど、地上の物質が広範囲に消滅するなんていう自然現象が観測されたことは有史以来ない。
それ以前の地質学や地球物理学、あるいは古生物学でもそんな現象は記録されていない。
だから、誰もが疑っている。
消滅現象は、宇宙人の攻撃だったんじゃないかって。
でも、その仮説、外れじゃなかったみたい。
月と地球の中間あたりの軌道に、突然巨大な円筒形の物体が現れたの。
円筒形の直径は月の半分にも達する大きなもので、それが高速で北極側に移動した直後、1回目の消失が起き、ゆっくりと南極側に移動したあと、2回目の消失が起きた……。
このとき、地球上は大混乱だったから、以後のデータはないのだけれど……。
インド洋の海中に展開していた潜水艦、アメリカ、イギリス、ロシアの原子力潜水艦と日本の潜水艦なんだけど、位置ははっきりしないらしいんだけど、アフリカのタンザニア、ヴィクトリア湖の東岸、セレンゲティ国立公園の西端付近から巨大なエネルギーが宇宙に放出され、その直後に例の円筒が四散した……。
その直後、大気圏に突入する物体が数百個、200から300らしいけど、観測されたの。
大気圏に突入してきた物体にオークが乗っていて、円筒形、たぶんオークの母船を破壊したのがギガス……」
いつも冷静な奥宮要介陸士長が気色ばんだ。
「じゃぁ、俺たちはオークとギガスの戦争に巻き込まれたのか!」
「そういうことになるわね」
「そんな、そんなことでたくさんのヒトが死んだのか!」
「ヒトだって戦争すれば、罪のない野生動物が死ぬでしょ。それと同じよ」
「来栖先生!」
香野木が止めた。
「奥宮さん、きみの憤りはわかる。我々も同じだ。だが、来栖さんが悪いわけではない。
我々は生き残るために何ができるのか、どうすればいいのかを考える。
それだけだ」
奥宮はうなだれた。
「すみません。感情が高ぶってしまって……」
彩華が質問する。
「オークが使った大気圏突入カプセルの底辺の直径は、東京ドームと等しいって聞いたけど、一艇に五万体乗っていたとして、300艇なら1500万体。
ちょっと多い数よね。
1艇2万とすれば、400万。
最大1500万、最低400万。
人類はどれだけ生き残ったのだろう?」
来栖が答える。
「市ヶ谷でも、何度もその話が出たけど、確かなところはわからないみたい。
最低でも数十万、多ければ1000万みたいなアバウトな推計しかできないみたい」
畠野が発言する。
「ヒトは数の上でも劣勢ね」
加賀谷真梨が応じる。
「いや、そんなことはないよ。春には1人増える」
畠野がお腹をさすり、少し笑った。
そして、「でも、劣勢だからといって、新座園子はないよね。
香野木さん、どうするの」
香野木は答えないわけにはいかなくなった。
「新座園子は放ってはおけない。
かといって、諭せば誤りに気付くタイプではないだろう。
話し合いで何ともならないなら、殺し合いしかない。
オークを叩く前に、背後を突かれないように新座園子を叩く」
香野木の決意に反対するメンバーはいなかった。
好天であっても、太陽光は上空を覆う薄茶色の塵に遮られているが……。
結城光二が操縦するMD500は、来栖早希と百瀬未咲、そして小麦粉100キロを乗せて、市ヶ谷台を目指した。
結城光二は当日に帰還し、来栖早希と百瀬未咲は1カ月以内に帰還の予定だ。
由衣と愛美は、来栖から「1カ月の冬休みだよぉ~」と言われたが、嬉しくはなかった。
来栖が留守の間、相馬原の人々にはやることが山積していた。
井澤貞之は建築家で、住宅の設計を主たる仕事にしていたそうだ。雪解け以降、現有の物資で地上に建物を造ることができるかを検討してもらっている。
井澤加奈子の顔の腫れは、だいぶ治まってはいたが、それでも酷かった。未咲がいなくなり、少しふさぎ込んでいる様子があると、夏見智子が報告してくれた。
金平彩華に未咲の代わりを頼みたいが、それは無理だろう。彩華には見せかけの優しさがない。未咲の帰還を待つしかない。
厳冬期は2月中旬から始まり、3月中旬まで続いた。この間は、まさに越冬であった。毎日、大粒の雪と強い風が吹き、屋外へ出ることはほとんどできなかった。
地下3階には、運び込んだ玄米と小麦粉があり、地下4階には機関砲や榴弾砲の弾薬が備蓄されている。だが、床面の半分は空いている。ここが運動場となり、子供たちの遊び場であった。
この時期は、外部監視カメラの修理以外で、屋外に出ることはなかった。
3月初旬、来栖から全作業の終了と天候が回復次第の帰還要請があった。
畠野史子3曹は大きなおなかを抱えながら、結城を叱咤して、MD500の整備を行っている。
このヘリは交換部品がないので、いつまで使えるかわからないが、あとしばらくは頑張ってもらいたい。
天候は3月中旬まで回復しなかった。積雪は2メートルを超え、群馬側でさえこの状況であることを考えると三国山脈の新潟側は想像さえできない。
天候の間隙を縫って、好天時に結城がMD500で出発。その日のうちに、来栖と未咲が帰ってきた。
東京も大雪に苦しんだらしい。太平洋側を発達した低気圧が頻繁に通過し、そのたびに湿った大粒の雪が降る。常時50センチほどが積もっているようだ。
来栖は帰還した当日の夜、全員をモニター室に集めた。普段は姿を見せない井澤加奈子もいる。未咲が彼女の隣に座っている。
「オークの正体がわかったわ」
来栖がわずかに息を整える。
「やはり、ヒト属ではない。
300万年以上前、アウストラロピテクスの一群から進化したヒト科動物よ。
同じ頃、最古のヒト属のホモ・ハビリスが現れているけど、それとは別系統のヒト科動物が彼らの祖先」
由衣が「はい!」と元気よく手を上げた。
「チンパンジーと人間も祖先は同じなんでしょう?」
「そうね。祖先は同じ。
ヒトの系統とオランウータンの系統が分岐したのが1300万年前、ゴリラが800万年前、チンパンジーが490万年くらい前、ホモ・ハビリスは230万年前に現れたから、チンパンジーよりはヒトに近いけど、オークはヒトではない。
ヒトに似ているけど、ヒトではないの」
「でも、ヒトと祖先は同じなんでしょ」と結城が尋ねる。
「その通りよ。
同じ論理で、ヘビとヒトの祖先も同じよ。
いつ、分かれたかの違いだけ。
大事なことは、ヒトではないこと。
オークはヒトをオークの一種でないことを理解しているから、食料にしている。
私たちもオークがヒトの一種でないことをしっかりと理解しなければ、オークの餌として生きるほかないの」
花山が「市ヶ谷台にも説明したの?」
「ええ、したわ。
でも、塩田代表をはじめ、ほぼ全員が混乱していたわ。
ヒトに似ている理由は、単に生息環境と生態が似ていたから。それだけ。
サカナとクジラの姿が似ているのと同じ。
姿が似ていても同種じゃないの。
マグロは自分と大差ない姿形の他のサカナを餌にしているでしょ。それと同じで、オークは姿の似ている我々を食べることに抵抗がないの。
市ヶ谷台は、オークとのコミュニケーションを考えているようだけど、それは無理。
ヒトとオークは生態系が重なるから、どちらかしか生存できない。
ガウゼの法則、競争排除則ね。
300万年前から10万年前まで、南北アメリカにはスミロドンという24センチもの長い牙を持つネコがいたけど、ジャガーやピューマといった大型のネコが進出してくると、運動能力に優れた新参者が生息領域を増やしていって、結局は絶滅してしまう。
私たちも同じ。
オークが私たちを餌だと思わなくなっても、両方が生き残ることは無理でしょう」
ラダ・ムーがボソッと言った。
「オークと心を通わせるなんて、不可能だ」
香野木恵一郎は別のことが聞きたかった。
「で、来栖さんが持ち帰った情報はそれだけじゃないでしょ」
「もちろんよ。
ちょっと話がそれるけど、山岳地帯、飛騨山脈、木曽山脈、赤石山脈、丹沢山系、阿武隈山系とかだけど、シカ、ニホンカモシカ、イノシシ、ツキノワグマ、リスやテン、ムササビ、モモンガ、そして鳥も。野生動物が生き残っている。
それから、どうやって生き延びたのか不明だけど、ブタやウシなどの家畜の生存も確認されている」
全員が互いの顔を見合わせた。
来栖が続ける。
「生態系がある程度回復すれば、我々の生存可能性も高まる」
香野木は来栖をさらに促した。
「他に面白い話は?」
「私の専門じゃないし、軍事的なことは疎いけど、オークやギガスとの戦いには歩兵戦闘車が有効だそうよ。
口径20から40ミリの機関砲は、連中の乗り物のほとんどを破壊できるとか。
それと、ギガスは全長100メートル、全幅15メートルの低空を浮揚する乗り物を使うそうだけど、戦車の主砲で撃墜できると聞いた。
それから、戦車の複合装甲は連中の武器を貫通させないそうよ」
花山が一回唇を舐めてから発言する。
「ムーさんの説明の通りね。
彩華ちゃん、どうなの?」
「対空自走砲、装甲輸送車、自走10榴改とも稼働します。準備OKです」
花山が加賀谷真梨を見た。
「部品取り用の4輌から2輌を再生しようと試みています。
戦闘用ではなく、移動手段としてですが……」
香野木がその移動用車輌について質問した。
「どういったクルマなの?」
「キャタピラ付きのトラックかな。
操縦席は戦闘機のようなキャノピーで覆い、砲塔の載っていた後部はトラックの荷台みたいになっているの。
雨が降ったら、タイヤじゃ走れないでしょ」
その説明に、全員が頷いた。
井澤親子は戸惑っているようだった。
「あのぉ、皆さんは秩父のことを忘れていませんか?」
花山が即答する。
「秩父は出てくれば叩く。連中に屈するつもりはない」
未咲が来栖を促した。
「来栖先生、あのことを言わないと」
全員が来栖を見た。
「消滅現象のことだけど。
市ヶ谷台の分析というわけではなく、あのときに起きたこと、地球上も、宇宙でもだけど、分析したデータをつなぎ合わせると、消滅現象は自然災害ではなかったらしいの」
全員が息をのんだ。
「誰もが感じていることだと思うけど、地上の物質が広範囲に消滅するなんていう自然現象が観測されたことは有史以来ない。
それ以前の地質学や地球物理学、あるいは古生物学でもそんな現象は記録されていない。
だから、誰もが疑っている。
消滅現象は、宇宙人の攻撃だったんじゃないかって。
でも、その仮説、外れじゃなかったみたい。
月と地球の中間あたりの軌道に、突然巨大な円筒形の物体が現れたの。
円筒形の直径は月の半分にも達する大きなもので、それが高速で北極側に移動した直後、1回目の消失が起き、ゆっくりと南極側に移動したあと、2回目の消失が起きた……。
このとき、地球上は大混乱だったから、以後のデータはないのだけれど……。
インド洋の海中に展開していた潜水艦、アメリカ、イギリス、ロシアの原子力潜水艦と日本の潜水艦なんだけど、位置ははっきりしないらしいんだけど、アフリカのタンザニア、ヴィクトリア湖の東岸、セレンゲティ国立公園の西端付近から巨大なエネルギーが宇宙に放出され、その直後に例の円筒が四散した……。
その直後、大気圏に突入する物体が数百個、200から300らしいけど、観測されたの。
大気圏に突入してきた物体にオークが乗っていて、円筒形、たぶんオークの母船を破壊したのがギガス……」
いつも冷静な奥宮要介陸士長が気色ばんだ。
「じゃぁ、俺たちはオークとギガスの戦争に巻き込まれたのか!」
「そういうことになるわね」
「そんな、そんなことでたくさんのヒトが死んだのか!」
「ヒトだって戦争すれば、罪のない野生動物が死ぬでしょ。それと同じよ」
「来栖先生!」
香野木が止めた。
「奥宮さん、きみの憤りはわかる。我々も同じだ。だが、来栖さんが悪いわけではない。
我々は生き残るために何ができるのか、どうすればいいのかを考える。
それだけだ」
奥宮はうなだれた。
「すみません。感情が高ぶってしまって……」
彩華が質問する。
「オークが使った大気圏突入カプセルの底辺の直径は、東京ドームと等しいって聞いたけど、一艇に五万体乗っていたとして、300艇なら1500万体。
ちょっと多い数よね。
1艇2万とすれば、400万。
最大1500万、最低400万。
人類はどれだけ生き残ったのだろう?」
来栖が答える。
「市ヶ谷でも、何度もその話が出たけど、確かなところはわからないみたい。
最低でも数十万、多ければ1000万みたいなアバウトな推計しかできないみたい」
畠野が発言する。
「ヒトは数の上でも劣勢ね」
加賀谷真梨が応じる。
「いや、そんなことはないよ。春には1人増える」
畠野がお腹をさすり、少し笑った。
そして、「でも、劣勢だからといって、新座園子はないよね。
香野木さん、どうするの」
香野木は答えないわけにはいかなくなった。
「新座園子は放ってはおけない。
かといって、諭せば誤りに気付くタイプではないだろう。
話し合いで何ともならないなら、殺し合いしかない。
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